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第4巻第2章 諜報部隊結成
カーサの異変
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「カーサー」
オリガと二度寝して目を覚ました後、オリガの髪を梳いてあげたり、オリガに髪を梳いてもらったりと楽しく身支度を整えたマヤは、カーサの部屋を訪ねていた。
ちなみにオリガは、学校で授業を手伝っている日だということで、身支度を整えるなり学校へと出かけていったため、もう屋敷にはいない。
「どう、したの、マヤさん」
「わわわっ、ちょ、ちょっとカーサ! 流石にそんな格好でドア開けたちゃだめだって!」
マヤは下着姿で出てきたカーサを、慌てて部屋の中に押し込むと急いでドアを閉める。
よく見れば、上に至っては下着すらつけておらず、大迫力の胸元を隠しているのは首にかけたタオルだけだった。
「どう、して? 私、マヤさん、なら、裸でも、恥ず、かしく、ない、よ?」
「いやいやいや、そういう問題じゃないから。そもそも私が1人だとは限らないでしょ? そうだなあ……例えば私がパコ君を連れてきてるかもしれないじゃん?」
「うっ……それは、ちょっと、はずか、しい」
ちなみにパコというのはドワーフの少年である。
昔カーサの村に来ていた商人の息子で、カーサのちょっとした幼馴染のような人物だ。
「でしょ? だからもう、あんな裸みたいな格好でドアを開けちゃだめだからね」
「うん、わかった、気を、つける」
カーサは少し顔を赤らめながら頷いた。
顔を赤らめてもじもじしているのと言うのは、カーサにしては珍しい反応だ。
「うん、わかればよろしい。それじゃあまずは服を着ようね。ていうか、そもそもなんであんなあられもない格好だったの?」
「あられも、ない……」
「いやごめんごめん、あられもないは言いすぎたかも。どうして下着姿だったの?」
「それは、トレーニング、してた、から」
「トレーニング?」
言われてみてみれば、カーサは半裸なだけでなく、その玉のような肌には汗のしずくが光っていた。
「そう、筋力、トレーニング。もっと、強く、なる、ために」
「へえ、そうなんだ。今まで気が付かなかったよ」
「うん、最近、始めた、から。それで、マヤさんは、私に、何か、用?」
話しながらいつもの服を着終わったカーサの言葉で、マヤはようやく自分の用事を思い出した。
カーサが半裸で出てきた衝撃ですっかり忘れるところだった。
「そうだったそうだった。今からパコ君とエマちゃんに会いに行くんだけど、カーサも来る?」
「パコ達に?」
「うん、一応カーサのお兄さんの事もなにか知ってるかもしれないし、気になることもあるし」
というのは実は嘘で、本当の理由は、例の報告書の内容がカーサの耳に入るのを避けるためである。
これが今朝急いでラッセルと相談して出した直近の対応だった。
ついでにマヤの指示でハミルトンの娼館のせいで親を失ったドワーフの子どもたちに行っている支援の状況を直接確認しておきたいというのもある。
「じゃあ、ついて、いく。ふふっ、パコ、元気、かな」
今から嬉しそうにしているカーサを見ていると、なんだか悪い気がするが、まだ理由がわかっていない今の段階で、ウォーレンが殺人鬼だという情報がカーサの耳に入ってしまうのはなんとしても避けたいので仕方がない。
「よし、じゃあ決まりだね。私の方の用意ができたら声をかけるから、簡単に旅の用意だけして待っててくれるかな」
「うん、わかった。すぐ、終わる」
「あはは、確かにカーサは荷物少ないもんねー。それじゃあ私も用意しに行ってくるから、ちょっと待っててね」
マヤはカーサの部屋をあとにすると、急いで寝室やら私室やら国王室やらを行ったり来たりして、大急ぎで必要なものをかき集めると、片っ端から収納袋に突っ込んでいった。
十数分後、マヤが用意を整えて戻ってくると、いつもより少しだ大人っぽく着飾ったカーサが荷物を片手にベッドに腰掛けていた。
「いやー、ごめんごめん。それじゃあ行こうか」
「うん、行こう」
「ふふふっ」
「どう、したの、マヤさん?」
屋敷の正面玄関への廊下で、前を歩くマヤが突然柔らかく笑いだしたので、カーサは首を傾げる。
「ううん、カーサがかわいいなあ、と思ってね。似合ってるよ、その服。誰かに選んでもらったの?」
今のカーサの服装は、いつものどちらかといえば質素で質実剛健といった感じのやや露出がありながらもそれは動きやすさを重視した結果、というような服装とは違い、女性的で可愛らしいデザインだった。
主張が激しくならない程度にフリルをあしらった濃いオレンジ色のブラウスにベージュのロングスカートの組み合わせは、全体的に落ち着いた印象ながらスタイルのいいカーサが着るとそれだけで十分魅力的だ。
「レオノルさんに、選んで、もらった」
カーサがくるりと一回転すると、スカートが大きな花を作る。
「そういえば、2人って結構仲良かったもんね」
2人とも高身長でスタイル抜群なので、何かと話が合うのか、レオノルとカーサはよく2人で買い物に行ったりしているようなのだ。
「うん、仲良し」
「パコ君、褒めてくれるといいね」
「……パコは、関係、ない」
恥ずかしそうに視線をそらすカーサを微笑ましく思いながら、2人はシロちゃんにまたがり、パコとエマのところへと出発したのだった。
***
「マヤさん……」
パコとエマが住むドワーフの里までの道中、ちょうど距離的に折り返し地点かな、というくらいのところで、カーサが緊張した声音でマヤへと囁いた。
「どうしたの? 敵?」
「たぶん。魔物……じゃない、きっと、魔人」
「ってことは、ベルフェゴール配下の残党かな?」
「きっと、そう。どうする? こっちに、来てる、けど」
「うーん、どうしよう? 無力化できそう?」
「たぶん、強くない、感じ、だから、大丈夫」
「わかった、それじゃあ迎え撃とうか」
マヤはシロちゃんの手綱を引いて止まらせる。
「マスター、言ってくれれば止まったのです」
「ごめんごめん、つい昔の癖でさ」
シロちゃんに指摘されたマヤは、頭をかいて謝る。
そんなことをしているうちに、5人の魔人がマヤたちを取り囲んだ。
「カーサ、できれば殺さないでね」
「うん、わかっ――」
ドクンっ!
マヤの言葉に、答えようとしたカーサは、どこか不気味な、自分のものとは思えない様な鼓動が自分の胸から聞こえた気がして、胸を見下ろす。
ドクンっ!!
先程よりも更に大きな鼓動に、カーサが戸惑っていると、サッとその意識に雲がかかった。
それと当時に、カーサは体の自由が効かなくなる。
「殺さぬならば死合にあらず。そして、剣は死合でしか育たぬ以上、全てが死合であることが望ましい。さすれば」
「カーサ?」
いつものとぎれとぎれのゆっくりした話し方から一点、滔々とわけのわからないことを語り始めたカーサにマヤは困惑する。
なんだか嫌な予感がしたマヤだったが、その予感はマヤがなにかする前に的中してしまう。
「さすれば、これは殺すしかあるまい」
カーサの剣が一瞬で10回閃いたかと思うと、次の瞬間、首を切り落とされ、心臓を突き刺された魔人が5人地面に転がっていた。
「なるほど、初めてでこれだけできるとは。なかなかいいではないか、お主」
カーサは暫く自分の手を開けたり締めたりしていたが、やがてそれだけつぶやくと、糸の切れた人形のように地面へと倒れ込んだのだった。
オリガと二度寝して目を覚ました後、オリガの髪を梳いてあげたり、オリガに髪を梳いてもらったりと楽しく身支度を整えたマヤは、カーサの部屋を訪ねていた。
ちなみにオリガは、学校で授業を手伝っている日だということで、身支度を整えるなり学校へと出かけていったため、もう屋敷にはいない。
「どう、したの、マヤさん」
「わわわっ、ちょ、ちょっとカーサ! 流石にそんな格好でドア開けたちゃだめだって!」
マヤは下着姿で出てきたカーサを、慌てて部屋の中に押し込むと急いでドアを閉める。
よく見れば、上に至っては下着すらつけておらず、大迫力の胸元を隠しているのは首にかけたタオルだけだった。
「どう、して? 私、マヤさん、なら、裸でも、恥ず、かしく、ない、よ?」
「いやいやいや、そういう問題じゃないから。そもそも私が1人だとは限らないでしょ? そうだなあ……例えば私がパコ君を連れてきてるかもしれないじゃん?」
「うっ……それは、ちょっと、はずか、しい」
ちなみにパコというのはドワーフの少年である。
昔カーサの村に来ていた商人の息子で、カーサのちょっとした幼馴染のような人物だ。
「でしょ? だからもう、あんな裸みたいな格好でドアを開けちゃだめだからね」
「うん、わかった、気を、つける」
カーサは少し顔を赤らめながら頷いた。
顔を赤らめてもじもじしているのと言うのは、カーサにしては珍しい反応だ。
「うん、わかればよろしい。それじゃあまずは服を着ようね。ていうか、そもそもなんであんなあられもない格好だったの?」
「あられも、ない……」
「いやごめんごめん、あられもないは言いすぎたかも。どうして下着姿だったの?」
「それは、トレーニング、してた、から」
「トレーニング?」
言われてみてみれば、カーサは半裸なだけでなく、その玉のような肌には汗のしずくが光っていた。
「そう、筋力、トレーニング。もっと、強く、なる、ために」
「へえ、そうなんだ。今まで気が付かなかったよ」
「うん、最近、始めた、から。それで、マヤさんは、私に、何か、用?」
話しながらいつもの服を着終わったカーサの言葉で、マヤはようやく自分の用事を思い出した。
カーサが半裸で出てきた衝撃ですっかり忘れるところだった。
「そうだったそうだった。今からパコ君とエマちゃんに会いに行くんだけど、カーサも来る?」
「パコ達に?」
「うん、一応カーサのお兄さんの事もなにか知ってるかもしれないし、気になることもあるし」
というのは実は嘘で、本当の理由は、例の報告書の内容がカーサの耳に入るのを避けるためである。
これが今朝急いでラッセルと相談して出した直近の対応だった。
ついでにマヤの指示でハミルトンの娼館のせいで親を失ったドワーフの子どもたちに行っている支援の状況を直接確認しておきたいというのもある。
「じゃあ、ついて、いく。ふふっ、パコ、元気、かな」
今から嬉しそうにしているカーサを見ていると、なんだか悪い気がするが、まだ理由がわかっていない今の段階で、ウォーレンが殺人鬼だという情報がカーサの耳に入ってしまうのはなんとしても避けたいので仕方がない。
「よし、じゃあ決まりだね。私の方の用意ができたら声をかけるから、簡単に旅の用意だけして待っててくれるかな」
「うん、わかった。すぐ、終わる」
「あはは、確かにカーサは荷物少ないもんねー。それじゃあ私も用意しに行ってくるから、ちょっと待っててね」
マヤはカーサの部屋をあとにすると、急いで寝室やら私室やら国王室やらを行ったり来たりして、大急ぎで必要なものをかき集めると、片っ端から収納袋に突っ込んでいった。
十数分後、マヤが用意を整えて戻ってくると、いつもより少しだ大人っぽく着飾ったカーサが荷物を片手にベッドに腰掛けていた。
「いやー、ごめんごめん。それじゃあ行こうか」
「うん、行こう」
「ふふふっ」
「どう、したの、マヤさん?」
屋敷の正面玄関への廊下で、前を歩くマヤが突然柔らかく笑いだしたので、カーサは首を傾げる。
「ううん、カーサがかわいいなあ、と思ってね。似合ってるよ、その服。誰かに選んでもらったの?」
今のカーサの服装は、いつものどちらかといえば質素で質実剛健といった感じのやや露出がありながらもそれは動きやすさを重視した結果、というような服装とは違い、女性的で可愛らしいデザインだった。
主張が激しくならない程度にフリルをあしらった濃いオレンジ色のブラウスにベージュのロングスカートの組み合わせは、全体的に落ち着いた印象ながらスタイルのいいカーサが着るとそれだけで十分魅力的だ。
「レオノルさんに、選んで、もらった」
カーサがくるりと一回転すると、スカートが大きな花を作る。
「そういえば、2人って結構仲良かったもんね」
2人とも高身長でスタイル抜群なので、何かと話が合うのか、レオノルとカーサはよく2人で買い物に行ったりしているようなのだ。
「うん、仲良し」
「パコ君、褒めてくれるといいね」
「……パコは、関係、ない」
恥ずかしそうに視線をそらすカーサを微笑ましく思いながら、2人はシロちゃんにまたがり、パコとエマのところへと出発したのだった。
***
「マヤさん……」
パコとエマが住むドワーフの里までの道中、ちょうど距離的に折り返し地点かな、というくらいのところで、カーサが緊張した声音でマヤへと囁いた。
「どうしたの? 敵?」
「たぶん。魔物……じゃない、きっと、魔人」
「ってことは、ベルフェゴール配下の残党かな?」
「きっと、そう。どうする? こっちに、来てる、けど」
「うーん、どうしよう? 無力化できそう?」
「たぶん、強くない、感じ、だから、大丈夫」
「わかった、それじゃあ迎え撃とうか」
マヤはシロちゃんの手綱を引いて止まらせる。
「マスター、言ってくれれば止まったのです」
「ごめんごめん、つい昔の癖でさ」
シロちゃんに指摘されたマヤは、頭をかいて謝る。
そんなことをしているうちに、5人の魔人がマヤたちを取り囲んだ。
「カーサ、できれば殺さないでね」
「うん、わかっ――」
ドクンっ!
マヤの言葉に、答えようとしたカーサは、どこか不気味な、自分のものとは思えない様な鼓動が自分の胸から聞こえた気がして、胸を見下ろす。
ドクンっ!!
先程よりも更に大きな鼓動に、カーサが戸惑っていると、サッとその意識に雲がかかった。
それと当時に、カーサは体の自由が効かなくなる。
「殺さぬならば死合にあらず。そして、剣は死合でしか育たぬ以上、全てが死合であることが望ましい。さすれば」
「カーサ?」
いつものとぎれとぎれのゆっくりした話し方から一点、滔々とわけのわからないことを語り始めたカーサにマヤは困惑する。
なんだか嫌な予感がしたマヤだったが、その予感はマヤがなにかする前に的中してしまう。
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