転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第7巻第2章 連携

シャルルとの訓練

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「聖剣にも慣れてきたみたいだな」

 訓練の休憩中、シャルルはマヤへと声をかけた。

「まあね。ちょっと前までは聖剣にも振り回されてたけど、毎日カーサに訓練付き合ってもらってるし」

「そういえば、カーリを呼び出すのが目標だって言ってたな。呼びだせたのか?」

「ううん、全然。カーサとはそこそこいい勝負ができるようになってきたんだけどね。カーリが戦いたいと思うレベルではないみたいだね」

「私としては、特になんの強化も受けていない状態で、今のマヤと互角に戦えるカーサに驚くんだが……凄まじいなオークの剣聖というのは」

「ははっ、たしかにそうだね。まあカーサは歴代でもトップクラスに強いらしいから、それもあるかも。初代剣聖のカーリはそのカーサより強いわけだけど」

「恐ろしい限りだ。今は仲間だから頼もしいが、絶対敵には回したくないな」

「だね。剣技だけであそこまで強いとかなり厄介だし。そうだシャルルさん、同じ女の子と教えてほしいことがあるんだけど」

「どうしたんだ改まって。というか、私に女らしさが必要な質問をするつもりか? 知っての通り私は長らく男のふりをして生きてきたんだぞ? 普通の少女にするような質問には、まともに答えられる気がしないのだが……」

 シャルルはオーガであることを隠して人間の男の冒険者のふりをして過ごしていた期間が長い。

 正直女性らしさというものは、シャルルが最も自身がないものの一つだ。

「まあまあいいからいいから。実はさ、カーサが恋に悩んでるみたいでね?」

マヤは真剣な表情で話し始める。

「ほう、あのカーサが」

 自分と同じく戦いの世界に生き、色恋とは縁遠いと思っていたカーサが恋に悩んでいると聞き、シャルルは一気に興味をそそられた。

「うん。で、シャルルさんに聞きたいのはここからなんだけど、自分より背の高い女の子って、男の人はどう思うと思う?」

「自分より背の高い女性を男性がどう思うか、か……」

 質問を聞いて、ようやくマヤがシャルルに相談してきた理由がわかった。

 マヤは小柄な方で、今回の相談のような場合はほとんどありえない。

 しかし、シャルルやカーサは違う。

 シャルルはオーガで、カーサはオークだ。

 どちらも人間や他の亜人種と比べて、大柄な種族である。

 同族の間であれば、男性の方が背が高い場合がほとんどだが、他種族と比べると、他種族の男性よりオーガやオークの女性の方が背が高いことがほとんどだ。

「ほら、私は小柄だからわからなくて……」

 ちなみに、男だった頃のマヤは、どちらかといえば小柄な女性が好きだったので、マヤ自身の感覚でアドバイスをすると、カーサを傷つけてしまうだろう。

「なるほど。しかしマヤ、身長とはそんなに気にするものだろうか?」

「どういうこと?」

「つまりだ、恋愛において大切なのは、そんな外見的な部分じゃないんじゃないか、ということだ」

「まあ正論だね」

「だろう? だがおそらく、そんなことはカーサもわかっているのだろうな。私は恋愛経験がほとんどないからわからんが、カーサは怖いのではないか?」

「怖い、か……そうかもしれないね」

 恋愛において怖いという感覚には、マヤにも覚えがあった。

 ウォーレンのことが好きだとわかった後、いざ告白するまで、まだ告白したわけでもないのに、やれ「ウォーレンさんは白い髪の女の子は嫌いなんじゃないか」だの、「身長が低すぎて異性として見られてないんじゃないか」だの、色々なことを考えて怖くなったものだ。

「経験がないからこんなことを言えるのかもしれないが、カーサはとりあえず告白すればいいと思うぞ。実際どうなんだ、マヤから見てカーサとその想い人の関係は」

「そうだなあ……」

 マヤは以前じゃれ合っていた時のカーサとパコの様子を思い出す。

「お姉ちゃんと弟、かな」

「ふむ……仲が悪いという訳では無いが、お互い意識している感じでもない、という感じか」

「そうだね、まさにそんな感じ。でも、少なくともカーサはパコ君の事意識していると思うんだよね。この前会いに行ったときもおしゃれしてたし」

「そのパコとやらは、まだ子供なのか?」

「まあ子供ではあるけど、姉弟みたいな好きと、恋愛的な好きの違いがわからないほど子供ってわけじゃないよ?」
  
「では、やはり告白してしまえばいいと思うぞ」

「だよね~。わかった、ちょっとそれとなくアドバイスしてみるよ」

 マヤは勢いをつけて立ち上がると、再び剣を構えた。

 シャルルも立ち上がると、マヤの隣で剣を構える。

『休憩は終わりか?』

 どこからともなく聞こえたルースの声に2人が頷くと、2人の目の前にルースが魔法で生み出した無数の剣士が姿を現した。

***

「くっ!」

「やった! 今度は私の勝ちだね!」

 マヤとカーサが高速で交差した後、カーサが膝をついたのを見て、マヤはぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ。

「かなり、つかい、こなせて、きた、ね。本当に、強く、なって、ると、おもう」

「ありがと。それもこれもカーサのおかげだよ。でも、褒めても罰ゲームは手加減しないからね、カーサお姉ちゃん?」

 マヤの言う通り、今日の戦いに1回毎に負けたほうが勝ったほうの言うことをなんでも1つだけ聞く、という罰ゲームをかけている。

 ちなみに、マヤがカーサを「カーサお姉ちゃん」と呼んでいるのもこの罰ゲームによるものだ。

「ごまかせ、なかった、か。マヤちゃんの、いじわる」

 この「マヤちゃん」呼びももちろん罰ゲームである。

「誤魔化せないよ。じゃあ、カーサにはパコ君に告白してもらおうかな」

「………………今、なんて?」

 カーサはしばらく絶句した後、驚いた様子でゆっくりとマヤに確認する。

「パコ君に告白して、って言ったんだよ。好きなんでしょ、パコ君のこと」

「わ、私、は、別に……それに、パコの、事だ、って、1回、も、言って、ない、のに…………どう、して?」

 たしかにマヤがここ数日受けていた相談は、「年下を好きになるっておかしいのかな」とか「自分より身長の高い女の子ってどうなのかな」とか「ドワーフとオークの恋愛は変かな」とかそんな内容で、一言もカーサ自身とパコのことだとは言っていなかった。

 だからといって、隠せてもいなかったわけだが。

「もちろん嫌なら流石にやめてもいいけど……でも、パコ君のこと好きなんでしょ?」

「うん。好き、だと、思う」

「じゃあ、告白したほうが良いって。大丈夫だよ、私も応援するから」

「わか……った。私、頑張って、見る」

 カーサは決心した表情で、しっかりと頷いた。
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