83 / 86
銀狐の章
第069話「第一次鍋大戦 ①」
しおりを挟む
「ただいま」
「ただいまなのじゃ!」
「ただいまなのニャ!」
「お帰り、お兄ちゃん!」
家に帰るとすぐに光が駆け寄ってくる。
「モー君おかえりなさい」
何気ない日常。何気ない風景の一コマ。
それがなぜか大切なもののように思えた。
「お兄ちゃんどうしたの?」
不思議そうにオレの顔を覗き込む光。
――?とシェンとニャンを見る。
「まあ、色々とあったのニャ」
「その件については、後でゆっくりと語るとするのじゃ」
光はいぶかしげな顔をしていたが「まっ、いいか」とすぐに元の表情に戻った。
「鍋の準備はできているぞ」
あーちゃん先輩が自信満々に胸を張る。
こういう時には先輩の明るさに助けられる。
あーちゃん先輩が腕に抱きついてきた。
負けじと反対側に光がしがみついてくる。
「さぁ、鍋を始めよう!」
こうして、第一次鍋大戦は始まったのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
IN リビング。
「さて諸君、厳選なる審議の結果。今夜の鍋はしゃぶしゃぶに決定しているわけだが……」
わざわざ色眼鏡をかけゲンドウポーズで意味深に語りだすあーちゃん先輩。
まあ、オレが「たまにはしゃぶ鍋とか食べたいな」と言ったのが発端ではあるのだが――「厳選」と「審議」はいったいどこら辺のことを言っているのだろうか。
テーブルの上にはすでに下ごしらえを済ませた食材たちが並んでいる。
後はGOサインさえ出ればいつでも出撃できる。
「ここで、重要な役割を決めなければならない」
「ま、まさかそれは……」
光が口元に手を当てた。
えっ、鍋で需要な役割ってなんだ?
「そう、鍋奉行とアク代官よ!」
「ニャンと!それは強そうなのニャ!」
「うむむ、鍋奉行……アク代官……重要な役どころなのじゃ」
ニャンとシェンの目付きが変わった。
まあ、大事な役どころではあるがそこまで意気込まなくても……
「鍋を制する者は世界を制する」
あーちゃん先輩のスケールはめっちゃ広いな大きいな。
「「せ、世界……!!」」
そこの二人、まともに信じるなよ。
でも、この二人を見ているとなんだかほっとする。
あの後、シェンは買い物に付き合わず「ちょっと用事ができたのじゃ」といって結局買い物には参加しなかった。
何かしらの用事があったのか――オレは詮索しなかったし、戻って来たシェンも何も言わなかった。
でも、彼女の顔を見ていると何となく安心してしまう自分がいる。
――おおッといかん。ここで感化されてしまってはいけない。
オレは頭を一振り。
「よし、鍋奉行はオレがやろう」
せっかくだ。ここはオレにも張り切りさせてもらおうじゃないか。
□■□■□■□■用語解説□■□■□■□■
【さぁ、鍋を始めよう】
小説「ノーゲーム・ノ―ライフ」の中の主人公「空」のセリフ「さぁ、ゲームを始めよう」のパロディ?
【ゲンドウポーズ】
『新世紀エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウがよくするポーズのこと。両肘を机の上に立て、両手を口元で組むもの。口元が見えない事により表情を隠す事ができる。見ていてあまり気分のいいものではないので実際にやることはおすすめしない。
【鍋奉行とアク代官】
鍋とあらば口を出し、アクが出ればこれをすくう。二人で一つ!鍋の正義は二人で守る!
「ただいまなのじゃ!」
「ただいまなのニャ!」
「お帰り、お兄ちゃん!」
家に帰るとすぐに光が駆け寄ってくる。
「モー君おかえりなさい」
何気ない日常。何気ない風景の一コマ。
それがなぜか大切なもののように思えた。
「お兄ちゃんどうしたの?」
不思議そうにオレの顔を覗き込む光。
――?とシェンとニャンを見る。
「まあ、色々とあったのニャ」
「その件については、後でゆっくりと語るとするのじゃ」
光はいぶかしげな顔をしていたが「まっ、いいか」とすぐに元の表情に戻った。
「鍋の準備はできているぞ」
あーちゃん先輩が自信満々に胸を張る。
こういう時には先輩の明るさに助けられる。
あーちゃん先輩が腕に抱きついてきた。
負けじと反対側に光がしがみついてくる。
「さぁ、鍋を始めよう!」
こうして、第一次鍋大戦は始まったのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
IN リビング。
「さて諸君、厳選なる審議の結果。今夜の鍋はしゃぶしゃぶに決定しているわけだが……」
わざわざ色眼鏡をかけゲンドウポーズで意味深に語りだすあーちゃん先輩。
まあ、オレが「たまにはしゃぶ鍋とか食べたいな」と言ったのが発端ではあるのだが――「厳選」と「審議」はいったいどこら辺のことを言っているのだろうか。
テーブルの上にはすでに下ごしらえを済ませた食材たちが並んでいる。
後はGOサインさえ出ればいつでも出撃できる。
「ここで、重要な役割を決めなければならない」
「ま、まさかそれは……」
光が口元に手を当てた。
えっ、鍋で需要な役割ってなんだ?
「そう、鍋奉行とアク代官よ!」
「ニャンと!それは強そうなのニャ!」
「うむむ、鍋奉行……アク代官……重要な役どころなのじゃ」
ニャンとシェンの目付きが変わった。
まあ、大事な役どころではあるがそこまで意気込まなくても……
「鍋を制する者は世界を制する」
あーちゃん先輩のスケールはめっちゃ広いな大きいな。
「「せ、世界……!!」」
そこの二人、まともに信じるなよ。
でも、この二人を見ているとなんだかほっとする。
あの後、シェンは買い物に付き合わず「ちょっと用事ができたのじゃ」といって結局買い物には参加しなかった。
何かしらの用事があったのか――オレは詮索しなかったし、戻って来たシェンも何も言わなかった。
でも、彼女の顔を見ていると何となく安心してしまう自分がいる。
――おおッといかん。ここで感化されてしまってはいけない。
オレは頭を一振り。
「よし、鍋奉行はオレがやろう」
せっかくだ。ここはオレにも張り切りさせてもらおうじゃないか。
□■□■□■□■用語解説□■□■□■□■
【さぁ、鍋を始めよう】
小説「ノーゲーム・ノ―ライフ」の中の主人公「空」のセリフ「さぁ、ゲームを始めよう」のパロディ?
【ゲンドウポーズ】
『新世紀エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウがよくするポーズのこと。両肘を机の上に立て、両手を口元で組むもの。口元が見えない事により表情を隠す事ができる。見ていてあまり気分のいいものではないので実際にやることはおすすめしない。
【鍋奉行とアク代官】
鍋とあらば口を出し、アクが出ればこれをすくう。二人で一つ!鍋の正義は二人で守る!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
108
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる