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第1話
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手を引かれ連れてこられたお屋敷は、これまで俺が仕えていたものより小ぶりだった。
それでも「おかえりなさいませ」と出迎える人たちはみなさん立派だった。
俺は自分がここでやっていけるのか、ますます不安になった。
伯爵様は軽く会釈してみなさんに応えると、伯爵様の後ろで小さくなっていた俺を前に突き出した。
「キヨノさん、今日からここが貴方の家ですよ。
紹介しましょう、私の妻のキヨノさんです。
皆、よろしく頼みます」
みなさんが俺に深く礼をした。
俺はあわててぴょこっと頭を下げた。
「緊張しないでくださいね。
貴方の家なのですから、自由に振る舞ってください」
伯爵様はにこっと俺に笑いかけると、また俺の手を引いてお屋敷の中に入っていった。
朝から続いた思いもかけない出来事に俺は疲れ切っていた。
ぼんやりした頭のまま俺はある部屋に連れてこられた。
青い畳の匂いがした。
そこには女中さんが控えていた。
「キヨノさん、身体が楽になるものに着替えましょう」
伯爵様が女中さんにあれこれ言うと、女中さんは言われたとおりに次々と畳紙を開いていく。
「そうですね、これだとあまり締め付けずに済むかな。
これに合う帯は、どれかな」
「こちらはいかがでしょう」
「いやいや、それはキヨノさんには色が濃すぎる。
もう少し明るいものがいいです」
「はい」
着物を選ぶと今度は次々と帯が畳紙から現れた。
「ああ、これがいい。
シノ、どうかな」
「お似合いだと思います」
「よかった。
お待たせしてすみません。
貴方の着物が見つかりましたよ。
お疲れのようですから私が着せて差し上げましょう」
俺は拒む気力もなかった。
されるがまま、田村様から着てきた着物を脱がされ伯爵様自らが着つけてくれた。
「素敵ですよ、キヨノさん」
「はぁ、ありがとうございます」
間抜けた返事しかできなかったが、伯爵様は笑ってくれた。
そして今度は洋間に通され、見たこともないふかふかした長椅子に俺を座らせると「私も着替えてきますね。少し待っていてください」と言い残し、出ていった。
うとうとしてしまったらしい。
洋装を解かれ着物姿の伯爵様に軽く揺すられ、目を開けた。
本当のところはもうこのまま寝てしまいたかった。
「キヨノさん、食事の用意ができましたよ。
少しでもお腹に入れてからおやすみください。
今夜はシェフが腕によりをかけ……」
伯爵様が何かおっしゃっているが、俺は手を引かれ歩きながら寝ていた。
そして今度は大きな畳の部屋に連れてこられると、握り飯が二つと汁物が乗った黒い漆のお膳が運ばれてきた。
「今夜はこちらを食べて眠りなさい」
「はい、伯爵さ…」
俺は手を合わせるともそもそち握り飯を一つと汁を腹に収めるのが精いっぱいだった。
もう、目を開けていられない。
「いいですよ、キヨノさん。
私が運んでいってあげます」
他の人の声がするが、目は閉じていて俺は伯爵様の声だけを聞き取った。
「大丈夫だ。
私が運ぶ。
すべては明日、お話しよう」
俺は大きな手と胸に抱かれたようだった。
そしてふかふかしたものに寝かされると、むにっと何かを感じた。
「おやすみなさい、キヨノさん」と言われた気がした。
がはっきりとわかることなく、俺は眠りに落ちていった。
それでも「おかえりなさいませ」と出迎える人たちはみなさん立派だった。
俺は自分がここでやっていけるのか、ますます不安になった。
伯爵様は軽く会釈してみなさんに応えると、伯爵様の後ろで小さくなっていた俺を前に突き出した。
「キヨノさん、今日からここが貴方の家ですよ。
紹介しましょう、私の妻のキヨノさんです。
皆、よろしく頼みます」
みなさんが俺に深く礼をした。
俺はあわててぴょこっと頭を下げた。
「緊張しないでくださいね。
貴方の家なのですから、自由に振る舞ってください」
伯爵様はにこっと俺に笑いかけると、また俺の手を引いてお屋敷の中に入っていった。
朝から続いた思いもかけない出来事に俺は疲れ切っていた。
ぼんやりした頭のまま俺はある部屋に連れてこられた。
青い畳の匂いがした。
そこには女中さんが控えていた。
「キヨノさん、身体が楽になるものに着替えましょう」
伯爵様が女中さんにあれこれ言うと、女中さんは言われたとおりに次々と畳紙を開いていく。
「そうですね、これだとあまり締め付けずに済むかな。
これに合う帯は、どれかな」
「こちらはいかがでしょう」
「いやいや、それはキヨノさんには色が濃すぎる。
もう少し明るいものがいいです」
「はい」
着物を選ぶと今度は次々と帯が畳紙から現れた。
「ああ、これがいい。
シノ、どうかな」
「お似合いだと思います」
「よかった。
お待たせしてすみません。
貴方の着物が見つかりましたよ。
お疲れのようですから私が着せて差し上げましょう」
俺は拒む気力もなかった。
されるがまま、田村様から着てきた着物を脱がされ伯爵様自らが着つけてくれた。
「素敵ですよ、キヨノさん」
「はぁ、ありがとうございます」
間抜けた返事しかできなかったが、伯爵様は笑ってくれた。
そして今度は洋間に通され、見たこともないふかふかした長椅子に俺を座らせると「私も着替えてきますね。少し待っていてください」と言い残し、出ていった。
うとうとしてしまったらしい。
洋装を解かれ着物姿の伯爵様に軽く揺すられ、目を開けた。
本当のところはもうこのまま寝てしまいたかった。
「キヨノさん、食事の用意ができましたよ。
少しでもお腹に入れてからおやすみください。
今夜はシェフが腕によりをかけ……」
伯爵様が何かおっしゃっているが、俺は手を引かれ歩きながら寝ていた。
そして今度は大きな畳の部屋に連れてこられると、握り飯が二つと汁物が乗った黒い漆のお膳が運ばれてきた。
「今夜はこちらを食べて眠りなさい」
「はい、伯爵さ…」
俺は手を合わせるともそもそち握り飯を一つと汁を腹に収めるのが精いっぱいだった。
もう、目を開けていられない。
「いいですよ、キヨノさん。
私が運んでいってあげます」
他の人の声がするが、目は閉じていて俺は伯爵様の声だけを聞き取った。
「大丈夫だ。
私が運ぶ。
すべては明日、お話しよう」
俺は大きな手と胸に抱かれたようだった。
そしてふかふかしたものに寝かされると、むにっと何かを感じた。
「おやすみなさい、キヨノさん」と言われた気がした。
がはっきりとわかることなく、俺は眠りに落ちていった。
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