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19章 期末テスト
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もうじきお待ちかねの夏休みである。しかし、夏休みの前に苦難が待ち受けていた。期末試験である。夏休みに入る前に突破しなければならない関門である。
慈美子もその関門に向けて、休み時間中に教室の自分の席でテスト勉強を始めようとしていた。そんな中、いつものように城之内が慈美子の邪魔をしにやってきた。
「ほほほほほ!地味子さん!精が出ますわねえ!」
「ちょっと!邪魔しないでくれる?」
「あらあら…。随分ですわねえ!」
「何か用なの?」
城之内は自信に満ち溢れた顔で、慈美子に宣戦布告する。まるで軍国主義の独裁者のような表情である。
「ほほほ!わたくしと勝負致しません?」
「勝負?」
「そうですわ!期末テストの合計点が高かった方の勝ち!ですの!」
「別にいいけれど…」
城之内はその言葉を聞いて腹黒そうにニヤリと笑った。慈美子はその不気味な笑みに冷や汗をかいた。
「勿論!ただ勝負するだけでは面白くありませんわ!関都さんを賭けて勝負致しません?」
「な、な、な、なんですって!!!?」
慈美子は叫ぶように驚きの声を上げた。その大声にクラスが振り向く。慈美子はしまったと恥ずかしそうな顔をする。
「シー…!」
城之内は人差し指を口に当て、慈美子を注意した。慈美子は恥ずかしくなり、熱でも出したかのように顔が真っ赤になった。
他の皆が慈美子から目を離すと、城之内は話の続きを始めた。
「勝った方が関都さんを手に入れる…って事でよろしいかしら?」
「よろしくないわよ!そもそも関都くんは私とあなたの事なんてどうとも思ってないわよ!」
「!」
城之内は図星を付かれて、顔に青筋ができていた。しかし、城之内はいたって強気である。この勝負を取りやめる気はないのだ。
「…よろしいですわ。では、こうしましょう。負けた方は関都さんから手を引く…って事でよろしいかしら?負けたら、関都さんとは必要最小限以外は一切口を利かず、関都さんと遊ぶ事も、勿論付き合う事も告白する事も禁止ですわ!」
「えぇ…」
城之内の提案に慈美子はドン引きした。関都を賭けの対象にしようとするのが信じられなかったのだ。しかし、城之内は慈美子を挑発した。
「もしかして勝つ自信がありませんの?」
「そんな事はないけれど…関都くんをそんな賭けに利用するなんて…」
「そんな事を言って…怖気づきましたの?戦う前から負けを認めるんですのね?」
「いいえ!分かったわ!分かったわよ!約束すればいいんでしょ!?その代わり、あなたもきっちり約束を守ってよ!あなたが負けたら金輪際関都くんに近づかないで!」
「ええ。勿論ですわ!」
慈美子は勝負には乗り気ではなかったが、城之内が関都に付きまとうのを止めてくれるなら、勝負に乗るのもありかなと思った。関都ある所に城之内ありと言わんばかりに、関都に粘着している城之内に内心嫉妬していたのだ。
それだけではない。慈美子は城之内に勝つ自信があった。転校前の学校では、慈美子はトップクラスの成績を収めていたのである。そのため、テストには自信があったのだ。
しかし、油断はならない。
「こうしちゃ居られないわ!今以上に勉強しなきゃ!」
こうして、慈美子は休み時間もずっと勉強に励んだ。これも城之内の狙いである。城之内は慈美子が居ないのを良い事に関都を独り占めしていた。
城之内も人一倍勉強しなければならないはずである。しかし、休み時間は余裕の表情で関都と談笑していた。
「関都さん。今度の土曜日と日曜日わたくしとテスト勉強致しません?」
「土曜日も日曜日も3時から用事があるんだ。2時半までの間で良いなら付き合うよ?」
(やったわあああ!!!やりあましたわあああ!!!)
「ええ、では朝の9時から2時半までわたくしの部屋でじっくり勉強致しましょう!」
「うん!」
「お昼はごちそう致しますわ!」
こうして、関都と城之内は勉強会の約束をした。勿論2人っきりで。
そうして、いよいよ約束の土曜日がやってきた。関都は城之内家のチャイムを鳴らす。
ピーンポーン!
「こんにちは~!おじゃましま~す!」
「お帰りなさいませ!あらやだ!わたくしたら言い間違いましたわ!いらっしゃいませ!」
勿論わざとである。城之内は関都を大歓迎した。関都と勉強をする事にしたのは関都が好きだからだけではない。関都は、テストでいつも首席なのである。そんな関都と勉強する事は効率的に学習できて一石二鳥なのだ。
「さっそく、お勉強しましょう!」
城之内のその言葉を皮切りに、2人は優雅にテスト勉強をした。すると、城之内が消しゴムを落とした。消しゴムは関都の手元に転がって行った。
関都が拾おうとすると、同時に城之内も消しゴムに手を伸ばし、2人の手が触れあった。城之内は頬を染める。
「あ…!」
「あ!なんかスマン」
「いえいえ。わたくしこそ気を使わせてしまって…」
これも城之内の計算通りである。わざと関都の方に消しゴムを転がし、関都が拾おうとするタイミングを狙って消しゴムを拾おうとしたのだ。関都と触れ合うために…。
そんな狡猾な真似もたびたび行いながら、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。
「もう2時半か」
「まぁ名残惜しいですわ~。もう少し延長できませんの?」
「3時から約束があるんだ」
「約束?」
「3時から慈美子とも勉強に付き合う約束をしているんだ」
「!!?」
城之内は予想外の一言に仰天した。なんと慈美子も関都と勉強の約束をしていたのだ!そう。慈美子の方が城之内よりも早く先手を打っていたのである。宣戦布告される前から。
関都は城之内の驚きには気が付かず話を続ける。
「これから慈美子と3時から9時までみっちり勉強だ。夕飯はご馳走してくれるそうだ」
(しかもわたくしより30分長いですわ!)
「お昼ご馳走様。美味しかったよ。じゃあ、お邪魔しました」
「え、ええ。それじゃあ、ごきげんようですわ…」
そう言うと、関都は慈美子の家に向かっていった。城之内は悔しそうである。今にも歯ぎしりが聞こえてきそうな顔で悔しがった。
関都と勉強する事で学習能率を上げ、慈美子より優位に立つ作戦であった。それだけなく、関都と2人きりで勉強した事を慈美子の自慢し、慈美子の気を散らせるという二重の作戦であった。
しかし、慈美子も関都と約束していた事でその作戦は脆くも崩れ去った。城之内の計画は完全に破綻した。
「ふん!まぁ良いですわ!わたくしにはまだ奥の手が残されてますわ!」
一方で関都は慈美子と勉強していた。2人は受験生のように集中していた。しかし、関都がふと慈美子に話しかけた。
「分からないところとかはないか?遠慮せずに訊いても良いんだぞ?教える事も逆に勉強になるし…」
「ええ。大丈夫よ!」
「お前、前の学校ではどのくらいの成績だったんだ?」
「毎回10位以内には入ってたわ!」
「へー」
あまりのリアクションの薄さに慈美子は驚いた。主席の関都にとっては驚くほどの事ではなかったのである。ノーリアクションの関都はさらに話を続けた。
「城之内にはあれこれ訊かれちゃってさー。まぁ教える事も勉強になるから良いんだが」
それを聞いた慈美子は関都に少しは訊いた方が良いのかなと思った。しかし、わざと分からない振りをしてかまととぶるのは不徳だと考え、思いとどまった。
「私は大体の事は分かるから訊く事はないわ。関都くんも何か訊くことがあったら、私に何でも訊いてね?」
「そうだな…実は誰にも聞けなかったんだが…慈美子は暗記物とかどうやって覚えているんだ?」
「暗記物?」
「僕はひたすら、教科書やホームワークを書き写して覚えているんだ。何度も何度も書き写して」
慈美子は関都に見せられたノートに驚いた。何度も何度も同じ文章が繰り返し書かれているのだ。まるで魅上照のデスノートのようにびっしりである。
「なんて効率の悪い覚え方なの!?」
「やっぱりかー。やっぱりなー。頭の悪い覚え方なのかー」
関都の成績は努力の賜物だった。関都は天才ではなく秀才なのである。効率の悪い覚え方ながらも勉強を重ね、それで主席を維持していたのだ。関都は世紀の大秀才だ。
成績主席だった関都は、教えてもらいたくても、誰かに教えてもらうという事ができなかったのだ。誰かに聞かれる事はよくあっても、自分から聞くことはできない。嫌味に思われてしまうかも知れないからだ。そんな関都が初めて人に勉強を教わろうと思ったのである。
「覚えるコツは綺麗なノート作りよ!綺麗に纏める事で、記憶に残りやすくするの!」
慈美子は関都にノートを見せた。カラフルな文字にイラスト付きで綺麗に纏めてある。こうする事で記憶に残りやすくするのだ。その纏め方は分かりやすく、可愛いらしい。女の子らしく、パンダや猫のイラストなども描かれている。また、可愛らしいシールやスタンプなども使われていた。しかし、ごちゃごちゃせず見やすい。必要があれば教科書や資料集の図やイラストをコピーして貼り付けられたりもしていた。
「なるほど…こういうような勉強方法もあるのか…」
関都は大いに感心した。いつも教える側だった関都が初めて人から教わる事を知るのであった。
慈美子は関都にノートのまとめ方のコツを丁寧に教えた。そうこうして関都とのテスト勉強は終わった。
そして、ついにテストの日!
関都も慈美子もテスト開始ぎりぎりまで自作ノートにかじりついた。一方で城之内は余裕綽々である。こうしてテストが始まった。
(ああ!ここ関都くんと勉強したところだわ!)
慈美子はスラスラとテスト問題を解いた。そして最終問題まで難なく解き、テストの見直しをしていた。そしてふと頭を挙げると、城之内がスマフォを操作しているのに気が付いた。おそらくカンニングである。城之内はこっそりやっているつもりだったが慈美子からは丸見えだった。
(カンニングするなんて!なんて卑怯なの!?)
そう思いながらも、慈美子はテストを受け続けた。
こうして魔のテスト期間は終幕を迎えた。
そして、まちにまった成績発表の日。成績上位30名は校内掲示板に張り出されて発表されている。関都・城之内・慈美子は掲示板の前に立ちすくんでいる。
予想外の結末が城之内と慈美子を待っていた。一方、関都は予想通りの表情である。
「僕、1位!」
「わたくしも、同率1位ですわ…」
「同じく同率1位…」
なんと関都・慈美子・城之内は全員同率1位だったのである。つまり、勝負は引き分けに終わったのだ!
関都は2人に祝福の声を掛けた。
「お前たちが1位になったのもひょっとしたら僕と勉強したおかげか?ははは!冗談さ!やったな2人とも!」
関都は2人を肩を組むように抱きしめた。慈美子と城之内は複雑そうな表情である。しかし、今は関都に抱きしめられている事を喜ぶのだった。
慈美子もその関門に向けて、休み時間中に教室の自分の席でテスト勉強を始めようとしていた。そんな中、いつものように城之内が慈美子の邪魔をしにやってきた。
「ほほほほほ!地味子さん!精が出ますわねえ!」
「ちょっと!邪魔しないでくれる?」
「あらあら…。随分ですわねえ!」
「何か用なの?」
城之内は自信に満ち溢れた顔で、慈美子に宣戦布告する。まるで軍国主義の独裁者のような表情である。
「ほほほ!わたくしと勝負致しません?」
「勝負?」
「そうですわ!期末テストの合計点が高かった方の勝ち!ですの!」
「別にいいけれど…」
城之内はその言葉を聞いて腹黒そうにニヤリと笑った。慈美子はその不気味な笑みに冷や汗をかいた。
「勿論!ただ勝負するだけでは面白くありませんわ!関都さんを賭けて勝負致しません?」
「な、な、な、なんですって!!!?」
慈美子は叫ぶように驚きの声を上げた。その大声にクラスが振り向く。慈美子はしまったと恥ずかしそうな顔をする。
「シー…!」
城之内は人差し指を口に当て、慈美子を注意した。慈美子は恥ずかしくなり、熱でも出したかのように顔が真っ赤になった。
他の皆が慈美子から目を離すと、城之内は話の続きを始めた。
「勝った方が関都さんを手に入れる…って事でよろしいかしら?」
「よろしくないわよ!そもそも関都くんは私とあなたの事なんてどうとも思ってないわよ!」
「!」
城之内は図星を付かれて、顔に青筋ができていた。しかし、城之内はいたって強気である。この勝負を取りやめる気はないのだ。
「…よろしいですわ。では、こうしましょう。負けた方は関都さんから手を引く…って事でよろしいかしら?負けたら、関都さんとは必要最小限以外は一切口を利かず、関都さんと遊ぶ事も、勿論付き合う事も告白する事も禁止ですわ!」
「えぇ…」
城之内の提案に慈美子はドン引きした。関都を賭けの対象にしようとするのが信じられなかったのだ。しかし、城之内は慈美子を挑発した。
「もしかして勝つ自信がありませんの?」
「そんな事はないけれど…関都くんをそんな賭けに利用するなんて…」
「そんな事を言って…怖気づきましたの?戦う前から負けを認めるんですのね?」
「いいえ!分かったわ!分かったわよ!約束すればいいんでしょ!?その代わり、あなたもきっちり約束を守ってよ!あなたが負けたら金輪際関都くんに近づかないで!」
「ええ。勿論ですわ!」
慈美子は勝負には乗り気ではなかったが、城之内が関都に付きまとうのを止めてくれるなら、勝負に乗るのもありかなと思った。関都ある所に城之内ありと言わんばかりに、関都に粘着している城之内に内心嫉妬していたのだ。
それだけではない。慈美子は城之内に勝つ自信があった。転校前の学校では、慈美子はトップクラスの成績を収めていたのである。そのため、テストには自信があったのだ。
しかし、油断はならない。
「こうしちゃ居られないわ!今以上に勉強しなきゃ!」
こうして、慈美子は休み時間もずっと勉強に励んだ。これも城之内の狙いである。城之内は慈美子が居ないのを良い事に関都を独り占めしていた。
城之内も人一倍勉強しなければならないはずである。しかし、休み時間は余裕の表情で関都と談笑していた。
「関都さん。今度の土曜日と日曜日わたくしとテスト勉強致しません?」
「土曜日も日曜日も3時から用事があるんだ。2時半までの間で良いなら付き合うよ?」
(やったわあああ!!!やりあましたわあああ!!!)
「ええ、では朝の9時から2時半までわたくしの部屋でじっくり勉強致しましょう!」
「うん!」
「お昼はごちそう致しますわ!」
こうして、関都と城之内は勉強会の約束をした。勿論2人っきりで。
そうして、いよいよ約束の土曜日がやってきた。関都は城之内家のチャイムを鳴らす。
ピーンポーン!
「こんにちは~!おじゃましま~す!」
「お帰りなさいませ!あらやだ!わたくしたら言い間違いましたわ!いらっしゃいませ!」
勿論わざとである。城之内は関都を大歓迎した。関都と勉強をする事にしたのは関都が好きだからだけではない。関都は、テストでいつも首席なのである。そんな関都と勉強する事は効率的に学習できて一石二鳥なのだ。
「さっそく、お勉強しましょう!」
城之内のその言葉を皮切りに、2人は優雅にテスト勉強をした。すると、城之内が消しゴムを落とした。消しゴムは関都の手元に転がって行った。
関都が拾おうとすると、同時に城之内も消しゴムに手を伸ばし、2人の手が触れあった。城之内は頬を染める。
「あ…!」
「あ!なんかスマン」
「いえいえ。わたくしこそ気を使わせてしまって…」
これも城之内の計算通りである。わざと関都の方に消しゴムを転がし、関都が拾おうとするタイミングを狙って消しゴムを拾おうとしたのだ。関都と触れ合うために…。
そんな狡猾な真似もたびたび行いながら、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。
「もう2時半か」
「まぁ名残惜しいですわ~。もう少し延長できませんの?」
「3時から約束があるんだ」
「約束?」
「3時から慈美子とも勉強に付き合う約束をしているんだ」
「!!?」
城之内は予想外の一言に仰天した。なんと慈美子も関都と勉強の約束をしていたのだ!そう。慈美子の方が城之内よりも早く先手を打っていたのである。宣戦布告される前から。
関都は城之内の驚きには気が付かず話を続ける。
「これから慈美子と3時から9時までみっちり勉強だ。夕飯はご馳走してくれるそうだ」
(しかもわたくしより30分長いですわ!)
「お昼ご馳走様。美味しかったよ。じゃあ、お邪魔しました」
「え、ええ。それじゃあ、ごきげんようですわ…」
そう言うと、関都は慈美子の家に向かっていった。城之内は悔しそうである。今にも歯ぎしりが聞こえてきそうな顔で悔しがった。
関都と勉強する事で学習能率を上げ、慈美子より優位に立つ作戦であった。それだけなく、関都と2人きりで勉強した事を慈美子の自慢し、慈美子の気を散らせるという二重の作戦であった。
しかし、慈美子も関都と約束していた事でその作戦は脆くも崩れ去った。城之内の計画は完全に破綻した。
「ふん!まぁ良いですわ!わたくしにはまだ奥の手が残されてますわ!」
一方で関都は慈美子と勉強していた。2人は受験生のように集中していた。しかし、関都がふと慈美子に話しかけた。
「分からないところとかはないか?遠慮せずに訊いても良いんだぞ?教える事も逆に勉強になるし…」
「ええ。大丈夫よ!」
「お前、前の学校ではどのくらいの成績だったんだ?」
「毎回10位以内には入ってたわ!」
「へー」
あまりのリアクションの薄さに慈美子は驚いた。主席の関都にとっては驚くほどの事ではなかったのである。ノーリアクションの関都はさらに話を続けた。
「城之内にはあれこれ訊かれちゃってさー。まぁ教える事も勉強になるから良いんだが」
それを聞いた慈美子は関都に少しは訊いた方が良いのかなと思った。しかし、わざと分からない振りをしてかまととぶるのは不徳だと考え、思いとどまった。
「私は大体の事は分かるから訊く事はないわ。関都くんも何か訊くことがあったら、私に何でも訊いてね?」
「そうだな…実は誰にも聞けなかったんだが…慈美子は暗記物とかどうやって覚えているんだ?」
「暗記物?」
「僕はひたすら、教科書やホームワークを書き写して覚えているんだ。何度も何度も書き写して」
慈美子は関都に見せられたノートに驚いた。何度も何度も同じ文章が繰り返し書かれているのだ。まるで魅上照のデスノートのようにびっしりである。
「なんて効率の悪い覚え方なの!?」
「やっぱりかー。やっぱりなー。頭の悪い覚え方なのかー」
関都の成績は努力の賜物だった。関都は天才ではなく秀才なのである。効率の悪い覚え方ながらも勉強を重ね、それで主席を維持していたのだ。関都は世紀の大秀才だ。
成績主席だった関都は、教えてもらいたくても、誰かに教えてもらうという事ができなかったのだ。誰かに聞かれる事はよくあっても、自分から聞くことはできない。嫌味に思われてしまうかも知れないからだ。そんな関都が初めて人に勉強を教わろうと思ったのである。
「覚えるコツは綺麗なノート作りよ!綺麗に纏める事で、記憶に残りやすくするの!」
慈美子は関都にノートを見せた。カラフルな文字にイラスト付きで綺麗に纏めてある。こうする事で記憶に残りやすくするのだ。その纏め方は分かりやすく、可愛いらしい。女の子らしく、パンダや猫のイラストなども描かれている。また、可愛らしいシールやスタンプなども使われていた。しかし、ごちゃごちゃせず見やすい。必要があれば教科書や資料集の図やイラストをコピーして貼り付けられたりもしていた。
「なるほど…こういうような勉強方法もあるのか…」
関都は大いに感心した。いつも教える側だった関都が初めて人から教わる事を知るのであった。
慈美子は関都にノートのまとめ方のコツを丁寧に教えた。そうこうして関都とのテスト勉強は終わった。
そして、ついにテストの日!
関都も慈美子もテスト開始ぎりぎりまで自作ノートにかじりついた。一方で城之内は余裕綽々である。こうしてテストが始まった。
(ああ!ここ関都くんと勉強したところだわ!)
慈美子はスラスラとテスト問題を解いた。そして最終問題まで難なく解き、テストの見直しをしていた。そしてふと頭を挙げると、城之内がスマフォを操作しているのに気が付いた。おそらくカンニングである。城之内はこっそりやっているつもりだったが慈美子からは丸見えだった。
(カンニングするなんて!なんて卑怯なの!?)
そう思いながらも、慈美子はテストを受け続けた。
こうして魔のテスト期間は終幕を迎えた。
そして、まちにまった成績発表の日。成績上位30名は校内掲示板に張り出されて発表されている。関都・城之内・慈美子は掲示板の前に立ちすくんでいる。
予想外の結末が城之内と慈美子を待っていた。一方、関都は予想通りの表情である。
「僕、1位!」
「わたくしも、同率1位ですわ…」
「同じく同率1位…」
なんと関都・慈美子・城之内は全員同率1位だったのである。つまり、勝負は引き分けに終わったのだ!
関都は2人に祝福の声を掛けた。
「お前たちが1位になったのもひょっとしたら僕と勉強したおかげか?ははは!冗談さ!やったな2人とも!」
関都は2人を肩を組むように抱きしめた。慈美子と城之内は複雑そうな表情である。しかし、今は関都に抱きしめられている事を喜ぶのだった。
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