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1:アイゼン王国編(チュートリアル)
ハッピーエンド(ゲルダ)
しおりを挟むあの女も転生者だったなんて!
道理で嫌がらせをしてこなかったわけだ。死ぬエンドを避けて必死に逃げていたってわけじゃない!
なんて嫌らしい、イヤな女!
「ゲルダ、顔色が良くないね」
ボニファツ王子がわたしを抱き寄せて言った。
ハイデマリーを王宮から追い出した後、わたしは王子と一緒に自分の部屋に下がった。もうすっかり住み慣れた王宮でのわたしの部屋だけど、ここはまだ客間だ。
正式に婚約者として認められたから、今夜からは王太子妃の部屋に移ることになってる。結婚式は準備があるから少し先だけど、実質的には王太子妃として扱われるってこと。
今までずっと、ハイデマリーが邪魔だった。
「ボニファツ様、わたし、こ、怖くて、……っ」
わたしはボニファツ王子の胸に飛び込み、背中を丸くして小さくなった。華奢で可憐なわたしを抱きしめた王子の熱い吐息が耳にかかる。
「ハイデマリーは極寒の地に行った。もう帰ってくることはないよ」
「でも……でもっ……」
あの女がまだ生きているってことが絶対にイヤなのよ!
とは、さすがに王子には言いにくいから心の中でだけ叫んだ。
エンディングでハイデマリーは死ぬ。死に方はゲルダが誰と結ばれるかで変わるけど、死ぬことだけは間違いない。生きてるのがおかしい。
あの女も転生していたとしても、ヒロインはわたしだ。悪役令嬢は添え物、引き立て役なんだから、ちゃんと動いて貰わないと。ハッピーエンドに生き残っている悪役令嬢なんて、ひどい出来損ない。
「かわいそうなゲルダ。今まで酷い目に遭わされてきたんだね。でももう大丈夫だよ。君は王太子妃になるんだ。あの女は君に手出しなんかできない。私が必ず守るよ」
「ボニファツさまぁ……」
わたしはぎゅっと、恋人にしがみついて泣き真似を続けた。ボニファツ王子が耳にキスしてくるのを受け入れる。
二十歳前の男の子なんて、女の匂いで理性がふっとぶものらしい。さすがに王子様だけあって乱暴なことはされたことはないけど、胸やお尻に触りたがってるのはわかる。
もう妻も同然という状況になったら、多少はって思うよね。
いいよ。
だってわたしはヒロインで、王子はヒーローだし。
わたしはこの人と幸せになるの。
将来は王様になるかっこいい王子様。たくさんのお金、敬ってくれる人たち。とびきりの贅沢をしたいわけじゃないけど、何不自由ない暮らしは送れるよね。
政治とかそういうのは王様の仕事だからしっかり頑張って稼いでほしい。わたしはそばでニコニコしていてあげる。
わたしはハッピーエンドのお姫様。みんなが羨んで、眩しそうに見つめてくるの。
神殿で愛を誓った後、わたしたちは白い豪華なドレスで王都をパレードするんだ。特別につくられる王家の凱旋馬車に王子とわたしが乗り込むの。
花びらが舞い散って、みんなが口々にお祝いの言葉を叫ぶわ。
おめでとうございます、ゲルダ様! ボニファツ様! ってね。
わたしたちは輝くような笑顔で手を振って応えてあげる。
みんな幸せ。
それがボニファツ王子とヒロイン・ゲルダのハッピーエンドだ。
だから悪役令嬢なんて本当に邪魔なの。
ちゃんと死んで貰わなくちゃ。
すぐにお父様にお願いしよう。早馬を出したら間に合うかしら。
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