高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん

文字の大きさ
9 / 37

娘と一緒にお風呂に入っちゃった!?

しおりを挟む
 遠江が出て行った後、俺は綺麗にケーキを食べ尽くして、その後風呂に入っていた。本来ならば女である彼方が先に入るようなものだと思ったのだが、本人が後がいいと言ったので先に入らせてもらったわけだ。
「ふぃー」
 湯船に浸かりながら疲労を乗せた息を漏らす。
 やはり冬は風呂に限る。俺は結構な風呂好きだ。月に一度は家にある風呂をあえて使わず戦闘に行くこともある。
 それにしても今日は色々なことがあった。無論その原因は彼方にある。
 あいつは本当に未来からきたのか、やはり俺はそれに関しては半信半疑だった。
 決定的な根拠がないからだ。根拠があれば信じざる負えないだろうが、生憎とあいつには根拠がない。
 あの言葉が根拠になると考えるかもしれないが、あんな言葉所詮は子供の遊びのようなもの。たまたま聞いていたという線だって充分にありえる。
 つまり決定的な根拠にはならない。
「あー、もう。わけわかんねえ」
 手で顔を覆いながら呻いていると、中折れドアの向こう側から言葉が放たれた。
「入りますねー」
「おー」
 何気なく返事をした後、俺は中折れドアの向こう側から聞こえた声と言葉を思い出して、ぎょっと目を剥いた。
「!?」
 俺が中折れドアに視線を向けると同時のタイミングで、中折れドアが開けられた。
 多分、俺は期待していた。娘と言い張ってはいるが、彼方はいい年頃の女。タオルくらい身につけているのだろうと。
 結果。
 期待空振り。完全無欠の真っ裸の彼方がそこにいた。
 雪を思い立たせるその純白の肌に、服越しではあまり目立たなかった引き締まったくびれにしなやかなライン。
 おそらく、こんな状況になれば誰しもが彼方に視線が釘付けとなるだろう。もちろん、父親であってもだ。
「うーん、やっぱり寒い日にはお風呂が一番ですね。私大好きなんですよ、お風呂って。特に冬場は!」
「そんな感想を述べる前にさっさと出ろ! お前後でいいって言ってたじゃねえか!」
「はい、だからパパが入った後に入りましたよ? 何か嘘を言いましたか?」
「なぁ――っ!?」
 日本語とは難しい。表現の仕方でここまで事実が変わるとは思いもしなかった。
「じゃあいい! 俺が出る!」
「いいんですか?」
 何か含みのある言い方をする彼方に俺は訝しげに聞いた。
「何がだよ」
「今立ったら見えちゃいますよ? だってパパ、一人で入れると思い込んでいましたからタオルなんてものは持ってきてないでしょう? そもそもお風呂好きなら、湯船に浸かる際にはタオルなんて使わない。マナーですからね。……なら、私と同じくらいお風呂好きであるパパはタオルなんて持ち込んでませんよね?」
「なぜわかったしー!?」
 全部読まれてる、だと!? こいつエスパーかなんかか!?
「さぁ、パパ。どうするんですか? 立って見せるんですか? 貧相なそれを」
「ひ、貧相じゃねぇ! 多分!」
 貧相じゃない確証はない。
「というか会話の内容が凄いんだが……お前言ってて恥ずかしくないのか?」
 彼方は泡立てたシャンプーで髪を洗いながら、少し照れたように言った。
「……ちょっとだけ」
「恥ずかしいのかよ。つーかだったら今の状況も恥ずかしいんじゃねえのか? 俺に全身をじろじろ見られるなんて、羞恥の極みだろ」
「大丈夫ですよ。見なくともわかります」
 全てを見透かしているかのように、彼方は口ずさんだ。
「パパはヘタレですから多分私の裸体は見てません」
「…………」
 図星でした。現に今俺は彼方から目を逸らしている。
「ま、正直に言ってしまえば恥ずかしいですね。そりゃもう彼方山が噴火してしまうくらいに。でもですね、私はこういうシチュレーションを望んでいたんです」
「ヒロインが主人公の風呂に入ってくるラブコメの王道シチュレーションを?」
「違います」
 彼方は頬を可愛らしく膨らませてから言った。
「親子でお風呂に入るということです。それも、父と娘で」
「……悪いけど」
「知っていますよ。パパに実感がないのは。パパ目線から見れば私は単なる怪しい女の子。でもすみません、わがままに付き合ってください。私から見れば、これは親子水入らずのお風呂なんです」
「…………はぁ」
 どうにも彼方が嘘を言っているようには聞こえない。ただ、自身の願いを吐露した。そういう風にしか聞こえなかった。俺の耳には。どうやら耳鼻科に行く日が近くなるかもしれない。
「勝手にしろ」
 どうやら俺には精神外科も必要みたいだ。
 ほんと、何言ってんだろうな、俺は。
「はい、では失礼しますね」
 と、言って。
 あろうことか彼方は湯船に浸かり出した。
 そう――俺の入っている湯船へと、だ。
 驚きのあまり、俺はぱくぱくを口を動かして声にならない声を上げる。それに対し彼方は呑気にも風呂の感想を述べた。
「ふぃ~。癒されますねぇ」
「お、お前っ――何で入って……っ」
 あまりに狼狽しているせいか、滑舌が悪く言葉が上手く紡げなかった。
 目前に、同年代の少女の背中がある。とてもすべすべとしてそうで、ああこんなにも白いんだなと童貞の俺はしみじみと思った。
「え? だってさっき勝手にしろって」
「それでも一緒に風呂に入る奴がいるか! せめてもの声をかけてから入れよ! 常識だろうが!」
「私は常識なんて気にしない女なんですよ」
「お前が大人になったら間違いなくハブられるんだろうな」
 そもそも常識を気にしない女なんてハブられるどころか相手にすらされないだろう。
「……ところでパパってかなりの外道ですよね」
「いきなり何だ、人を馬鹿にして。つーか外道じゃねえし」
「外道ですよ」
 くすりと彼方は笑ってから言葉を並べた。
「さっきの話のことです。パパはママのお父さん、つまりは私にとってはお爺ちゃんのことを他人と言ってました。でも違いますよね? 夜食材を持ってきてくれて、一緒にご飯やデザートを食べたママのお父さんが赤の他人であるはずがありません」
「ま、確かにな。少なくとも俺は遠江家とは赤の他人じゃねえ。間違いなく、だ」
 そもそもあいつと俺は幼馴染。まず赤の他人というのはありえない。
「じゃあ何で赤の他人だなんて言ったんですか、そりゃ温厚なママでも怒りますよ」
 遠江が温厚という話はひとまずは追及せず、俺は彼方から発せられた質問に答えることにした。
「事情があるんだよ。少しばかり深い事情がな」
「……そう、ですか」
 これは驚いた。てっきり彼方はこのことについて追及してくるのかとばかり思っていたが、そうではなかった。ただ顔を俯かせて短くそう返事を零すだけ。案外場の空気が読める子であるらしいと俺は心の中でそう思った。
「んー、熱くていいお湯でしゅね。のぼせちゃいそうでひゅ」
「……ん?」
 何やら彼方の滑舌がおかしい気がするのは俺の思い違いだろうか。
 思い違いか、そう結論付けた俺は視線を前に向け、そこで彼方の頭がふらふらっとしていることに気づいた。見れば背中も頬もどこもかしもが真っ赤だ。
 そして、次の瞬間。
「ふひゅー」
 とすん。
 彼方が気の抜けた声を漏らすと同時、重さを感じさせないほど軽い頭が俺の胸に落ちてきた。
「の、のぼせましたぁ……」
「はやっ!?」
 まだ入ってから五分程度しか経っていないというのにすでにもうのぼせたらしい。目が少し虚ろだ。
「おい、待て。一人で立てるか、おい!」
「む、無理……でぅ。パパ、介抱してくだしゃいよぉ。それとも欲望でも解放しましゅか?」
「駄目だこいつ……頭まで狂い始めてる……。そもそもこいつ風呂好きな癖してのぼせるのこんなに早いのかよ……」
 よくそれで風呂が好きになれたものだ。まぁもしかすると風呂好きという設定は嘘なのかもしれないが。
「どうする、どうすればいい。今見てるのは背中かだけだからまだしも、もしも前まで見てしまったら……」
 多分、俺の理性は崩壊してしまう。
「娘に、よくじょーしてもいいんですよ?」
「黙れこの淫乱!」
 今の彼方はただのビッチにしか見えなかった。何こいつ、のぼせると泥酔状態みたいになんの? 特異体質なの?
「クソッ、長時間風呂ん中に入れてても状況は悪化するだけか。……どっちみち、やるしかねえのか。これで病院行きとかになったらマジで面倒くせえからな」
 一度大きく息を吸い込んで、
「はぁーっ」
 思い切り吸い込んだ息を吐き出す。
 さて、正念場だ。
 ゆっくりと彼方の腰回りに手を回す。すべすべとした感触が手に伝わって思わず喉を鳴らす。
「んっ――」
 こういう時に何か喘ぐような声を出すのはほんと勘弁してほしい。心が揺らぐ。
「よしっ」
 目を閉じて軽い彼方の体をお姫様抱っこする。思っていたよりも軽かったその体に驚愕を覚えつつ、真っ暗な視界の中何とか風呂場を出た。
 この時何度かぶつかったのは内緒だ。
 居間に入るや否や一番スペースを取っているテーブルや椅子を端に寄せ、空いたスペースに彼方を寝転がせた。そして彼方の裸体を見ないように気をつけながら通常よりも長いサイズのタオルを上から被せてやる。最後に押し入れから薄地の毛布を取り出してタオルの上に敷いた。
「人生で初めてこんな作業したぞ、俺」
 一人ごちた後、俺は自分が裸なのを思い出して脱衣所に向かったのであった。
しおりを挟む
感想 181

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

処理中です...