高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん

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矛盾するパパ…!?

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 釈放、久々のシャバの空気はとても美味しい。
 昇降口から出るや否や俺はそんなどうだっていいことを考えていた。生徒指導室に監禁されてから五時間程度、プリントやら何やらと出された課題を済ましていたらいつしか時間帯は五時を回っていた。
 ちなみに澤口はまだ指導室。まぁ当たり前か。攻撃してきたのはあいつからだし、クラスメイトからの証言で澤口が悪いと言われてしまっていたので罰はあいつの方が重くなっていた。
 俺の場合はやはり最後の胸倉掴みが駄目だったらしい。だがしかし散々澤口から罵倒をされたため、流石に仕方がないんじゃないかという結論に至った結果、指導はこれだけに済んだ。
 ほんとあいつ何がしたかったんだろうな。一種の嫉妬か? うーん、思春期の男子の思考回路は難しい。まぁ俺の思考回路が異常なだけなのかもしれないが。
「お?」
 校門に一つの影が見えた。すぐにわかった。彼方だ。
 俺は苦笑して、彼方の方向に足を向けた。気づいたのか、彼方もパッと顔を明るくして、にこっと微笑んだ。
「…………」
 歩を進ませる。彼方の隣を通り過ぎる。校門を潜り抜ける。
 さて、遊びにでも行くか。
「って待ってください!」
 叫びながら俺の手を掴む彼方。誤解されるかもしれないからやめてほしい。ま、周囲に人なんていないから大丈夫だが。
「え? 何?」
「何でナチュラルにスルーするんですか! 私にこっとしましたよね? パパちゃんとそれ確認してましたよね!? だってのにどうしてスルーするんですか!」
「スルーする。ダジャレか?」
「質問に答えてください」
 真顔で言われた。怖い。
「いや、だってだるいし。絶対昼のこと聞かれそうだし、詮索されそうだし」
「詮索してはいけないのですか?」
「ああ、めんどい。じゃあな」
 肩越しに手を振って俺はその場から数歩歩いた。
「ちょっと待ってくださいよ」
 文句を言いながらちゃっかりと後ろからついてくる彼方。俺に自由というものはないのだろうか。
「どこに行くんですか。家からは違う道ですよね?」
「ゲームセンターだよ。暇だからな、少し寄る」
「五時ですよ?」
「うちの夕飯は遅いんだ。八時に食べればいいから六時半から七時の間に帰っていれば十分飯は食える」
「じゃあ私もついていきますね?」
「いや、やめろよ。言っただろ? お前と俺が一緒にいたらデメリットしか生まないって」
「いえいえ、今この瞬間なら大丈夫ですよ」
 なぜか彼方は自信満々の顔で、ない胸を張りながらその根拠を述べた。
「今日の新聞にはパパの善行が書かれていました。皆さんはこう思います、あれあいつって結構いい奴なんじゃね、と。前からパパを見ていた人たちは早速声をかけます。事実、今日の昼休憩にはパパのことが気になっていた女子生徒数名がやってきていました」
 ふふ、と彼方は嫌な笑い方をしながらなぜか、眼鏡をくいっと上げる動作をする。眼鏡ないのにね。
「つまり、今の私は他人から見れば昔からパパのことを気になっていた女子生徒Aにしか見えないのです!」
「でもさ、お前転校生だろ? 俺のことなんて知らねえじゃん」
「ふあぁっ!? 衝撃の事実!」
「馬鹿だろ、お前馬鹿だろ」
「どちらかと言えば阿呆です」
「違いがわからん……」
 前々から薄々感じていたことだが、この際はっきりと言っておこう。
 間違いない。こいつは、変人だ。
「あ、じゃープリクラ撮りましょうプリクラ」
「プリクラ? プリクラつったらあれか? たかだか数枚の写真を撮るだけで数百円の金を貪ってくるぼったくり機のことか?」
「……いつかプリクラ好きに刺されますよその発言」
 彼方の忠告を一応聞きながら俺は財布を取り出した。札は五枚は入っているから心配する必要はないか。
「で、どうするんです、プリクラは」
「嫌だと言ったら」
「今回はワースト何位のものを近所に言いふらされたいですか?」
「わかった、交渉成立だ彼方」
 弱み握られてる人間ってほんと弱い。
 気がついたら、この島で最も賑わっている通りにまでやってきていた。周囲を見渡す。
「っと、確かここら辺に。――お? あったあった」
「どうかしたんですか?」
「野暮用だ。彼方はそこのベンチに座っててくれ。五分くらいで帰ってくる」
 そう告げて俺は通りの中でも人があまりいないある店に入った。そこの店主と交渉を済まして、早五分程度。目的は達成されたため、ベンチに戻った。
「あ、帰ってきました。何してたんですか?」
「ん。まぁどうだっていいことなんだが」
 ほれ、と俺は先ほど出来上がった一つのスペアキーを彼方の放り投げた。彼方は危うさがあったが何とかそれを受け取りつつ、質問した。
「これは?」
「家の鍵だ。とっとけ」
「え? でも……私はあれですよ? パパから見たら完全不審者な女ですよ? そんな女に自分の家の鍵を渡すなんて、馬鹿ですか?」
 ああ、そうだな。確かに俺から見たらお前は完全な不審者だし、そんな奴に自分の家の鍵を渡した俺は馬鹿だ。
 だが、なぜか。彼方は放っておけなかった。
「考えてもみてください。私は貴方の家に物を盗みにきたという線もあるのですよ? 他にも色々と、怪しいことをするかもしれません。ですからこれは――」
 何か言おうとした彼方の声をわざと声を少し大きくして遮る。
「生憎と、俺の家に盗むようなもんなんてねえからな。どうだっていいんだよそんなこと。それに、それ作るのに五百円かかってんだからな、お前が使わなきゃもったいねえだろうが」
 傾く夕日を見据えながら、俺はそのまま告げた。
「そもそも、そんなことを言う奴がものなんて盗むわけがねえだろうが」
 すると、彼方は顔を俯かせた。一体どういう表情をしているのか、見当がつかなかった。
 そして、五秒ほど経った後、彼方は声を漏らした。
「ふふっ……」
「んだよ、急に笑いやがって」
 若干引いていると、彼方はその俺の服の裾を掴むと、小さく、本当に耳を傾けなきゃいけないほどの声で、こう囁いたのだった。
「ほんと、優しいんですから、パパは。矛盾し過ぎです……」
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