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次の日。
僕は寝不足の状態で学校に向かった。
学校に行きたい気分ではなかった。できるなら休みたかった。でも真凛ちゃんの期待を裏切った僕に休む権利はないように思えたので休まなかった。
教室に入る。小泉さんが席に座っている。
「清水くん。おはよう」
「おはよう」
「なんか調子悪そうね」
「寝不足なんだ」
「そうなんだ。じゃあ授業中ゆっくりと眠ったほうがいいわ」
「授業中眠るのはダメでしょ」
「寝不足の状態で授業を受けてても身にならないわよ」
「そうかな?」
「そうよ。だから眠りなさい。私が子守唄歌ってあげるから」
「授業中、子守唄歌ってたら先生に怒られるよ」
「そうね。だったら私の子守唄歌なしで眠りなさい。そうしてくれれば私は先生に怒られずにすむわ」
「・・・善処するよ」
「うん」
僕はうなずく。でも僕は眠らなかった。僕が寝ている間も真凛ちゃんは悩みに苛まれていると思うと悠長に眠ることなどできなかった。
放課後になり、まっすぐ自宅に帰る。自室に入り、カバンを机の上に置いたとき、ノックの音が聞こえてきた。
「どうぞ」
妹が入ってきた。元気のない顔をしている。
「お兄ちゃん、真凛ちゃん、元気ないの。他の人がいつも通りに見えると思う。でも私には元気がないってわかったの。無理にいつも通りを演じているってわかったの」
「・・・」
「真凛ちゃん、私に何も言わないの。いつもなら言ってくれるのに言ってくれないの。あのときみたいに言ってくれないの」
あのとき・・・真凛ちゃんがいじめられていたときのことを思い出す。真凛ちゃんはいじられているのにもかかわらず誰にも相談せずに我慢していた。いじめに1人で耐えていた。いつも通りの態度で我慢し続けていた。僕にも妹にも話さずに・・・
「また真凛ちゃんいじめられてるのかな?1人で我慢しているのかな?」妹は心配顔で言う。
「たぶん違うと思うよ」
「どうしてそう思うの?」
「それは・・・いじめられていることを隠せば周りの人を悲しませることを知っているからだよ。だからいじめられてないと思う」
「じゃあ、真凛ちゃんはどうして無理をしてるの?」
「それは・・・」
胸の小ささに悩んでいるなんて言えない。真凛は僕を信頼して悩みを打ち明けてくれたのだ。妹に話すことはその信頼を裏切ることになる。
「わからないよ」
そう答えるしかなかった。
「私、心配だよ。真凛ちゃん、すごく無理することがあるから」
妹は泣きそうな表情になる。
そんな妹を見ていると胸が痛む。
「大丈夫だよ。きっと」
「そうかな?」
「うん。本当に辛かったら話してくれるよ。だって美沙希は真凛ちゃんの友達なんだから。きっと話してくれるよ」
「・・・そうだよね。きっと話してくれるよね」
「うん」
僕は笑顔でうなずいた。
その夜も僕はなかなか寝付けなかった。
朝まで寝られないかもしれないと思っていたが、いつの間にか眠ることができた。
その短い眠りの中で僕は夢を見た。悪夢だった。
夢には真凛ちゃんが登場した。場所は学校の屋上。鉄柵の向こう側に真凛ちゃんがいた。一歩踏み出せば地上の落下してしまう危険な場所に真凛ちゃんはいた。
真凛ちゃんは僕のすぐ目の前にいる。僕は真凛ちゃんに声をかけようとする。でも声がでない。体も動かない。何もできない。
真凛ちゃんはじっと僕のことを見ている。涙を流しながら何も言わずに見ている。やがて真凛ちゃんは何も言わないまま屋上から落下していった。
そこで僕は目を覚ます。心臓が早鐘を打っている。
夢の内容をはっきりと覚えている。
真凛ちゃんはいじられているとき自殺する直前まで追い詰められていた。あと少し発見が遅かったら間違えなく自殺していた。真凛ちゃんは悩みを1人で抱え込む癖があるのだ。
そんな真凛ちゃんが今、悩んでいる。胸の小ささに悩んでいる。胸が小さいせいで好きな男に嫌われるかもしれないと悩んでいる。その悩みは自殺を考えるほどに深いのかもしれない。
そう思うと焦燥感を覚える。真凛ちゃんの胸を揉んでもいい気がする。それで真凛ちゃんの悩みが解消するならいいじゃないかと思える。
でも恋人でもない真凛ちゃんの胸を揉むことには抵抗を感じる。僕は真凛ちゃんのことが好きだ。でもそれは恋愛感情ではない。恋愛感情がないのに真凛ちゃんの胸を揉むのは著しくモラルに反する気がした。
小泉さんの顔が浮かんだ。もし僕が真凛ちゃんの胸を揉んだら、きっと小泉さんは僕を軽蔑するだろう。
僕は小泉さんに軽蔑されたくなかった。
小泉さんは僕を信じて友達になってくれたのだ。その信頼を裏切りたくなかった。
僕はどうすればいいんだ?
そして僕は眠れないまま朝を迎えた。
僕は寝不足の状態で学校に向かった。
学校に行きたい気分ではなかった。できるなら休みたかった。でも真凛ちゃんの期待を裏切った僕に休む権利はないように思えたので休まなかった。
教室に入る。小泉さんが席に座っている。
「清水くん。おはよう」
「おはよう」
「なんか調子悪そうね」
「寝不足なんだ」
「そうなんだ。じゃあ授業中ゆっくりと眠ったほうがいいわ」
「授業中眠るのはダメでしょ」
「寝不足の状態で授業を受けてても身にならないわよ」
「そうかな?」
「そうよ。だから眠りなさい。私が子守唄歌ってあげるから」
「授業中、子守唄歌ってたら先生に怒られるよ」
「そうね。だったら私の子守唄歌なしで眠りなさい。そうしてくれれば私は先生に怒られずにすむわ」
「・・・善処するよ」
「うん」
僕はうなずく。でも僕は眠らなかった。僕が寝ている間も真凛ちゃんは悩みに苛まれていると思うと悠長に眠ることなどできなかった。
放課後になり、まっすぐ自宅に帰る。自室に入り、カバンを机の上に置いたとき、ノックの音が聞こえてきた。
「どうぞ」
妹が入ってきた。元気のない顔をしている。
「お兄ちゃん、真凛ちゃん、元気ないの。他の人がいつも通りに見えると思う。でも私には元気がないってわかったの。無理にいつも通りを演じているってわかったの」
「・・・」
「真凛ちゃん、私に何も言わないの。いつもなら言ってくれるのに言ってくれないの。あのときみたいに言ってくれないの」
あのとき・・・真凛ちゃんがいじめられていたときのことを思い出す。真凛ちゃんはいじられているのにもかかわらず誰にも相談せずに我慢していた。いじめに1人で耐えていた。いつも通りの態度で我慢し続けていた。僕にも妹にも話さずに・・・
「また真凛ちゃんいじめられてるのかな?1人で我慢しているのかな?」妹は心配顔で言う。
「たぶん違うと思うよ」
「どうしてそう思うの?」
「それは・・・いじめられていることを隠せば周りの人を悲しませることを知っているからだよ。だからいじめられてないと思う」
「じゃあ、真凛ちゃんはどうして無理をしてるの?」
「それは・・・」
胸の小ささに悩んでいるなんて言えない。真凛は僕を信頼して悩みを打ち明けてくれたのだ。妹に話すことはその信頼を裏切ることになる。
「わからないよ」
そう答えるしかなかった。
「私、心配だよ。真凛ちゃん、すごく無理することがあるから」
妹は泣きそうな表情になる。
そんな妹を見ていると胸が痛む。
「大丈夫だよ。きっと」
「そうかな?」
「うん。本当に辛かったら話してくれるよ。だって美沙希は真凛ちゃんの友達なんだから。きっと話してくれるよ」
「・・・そうだよね。きっと話してくれるよね」
「うん」
僕は笑顔でうなずいた。
その夜も僕はなかなか寝付けなかった。
朝まで寝られないかもしれないと思っていたが、いつの間にか眠ることができた。
その短い眠りの中で僕は夢を見た。悪夢だった。
夢には真凛ちゃんが登場した。場所は学校の屋上。鉄柵の向こう側に真凛ちゃんがいた。一歩踏み出せば地上の落下してしまう危険な場所に真凛ちゃんはいた。
真凛ちゃんは僕のすぐ目の前にいる。僕は真凛ちゃんに声をかけようとする。でも声がでない。体も動かない。何もできない。
真凛ちゃんはじっと僕のことを見ている。涙を流しながら何も言わずに見ている。やがて真凛ちゃんは何も言わないまま屋上から落下していった。
そこで僕は目を覚ます。心臓が早鐘を打っている。
夢の内容をはっきりと覚えている。
真凛ちゃんはいじられているとき自殺する直前まで追い詰められていた。あと少し発見が遅かったら間違えなく自殺していた。真凛ちゃんは悩みを1人で抱え込む癖があるのだ。
そんな真凛ちゃんが今、悩んでいる。胸の小ささに悩んでいる。胸が小さいせいで好きな男に嫌われるかもしれないと悩んでいる。その悩みは自殺を考えるほどに深いのかもしれない。
そう思うと焦燥感を覚える。真凛ちゃんの胸を揉んでもいい気がする。それで真凛ちゃんの悩みが解消するならいいじゃないかと思える。
でも恋人でもない真凛ちゃんの胸を揉むことには抵抗を感じる。僕は真凛ちゃんのことが好きだ。でもそれは恋愛感情ではない。恋愛感情がないのに真凛ちゃんの胸を揉むのは著しくモラルに反する気がした。
小泉さんの顔が浮かんだ。もし僕が真凛ちゃんの胸を揉んだら、きっと小泉さんは僕を軽蔑するだろう。
僕は小泉さんに軽蔑されたくなかった。
小泉さんは僕を信じて友達になってくれたのだ。その信頼を裏切りたくなかった。
僕はどうすればいいんだ?
そして僕は眠れないまま朝を迎えた。
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