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第11話 それから大体、五年後の出来事
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「はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
俺がこの『アーサー・フィン・オルレアン』の意識の中で発現してから大体、五年の月日が流れようとしていた。俺は15歳になろうとしていた。そう、そろそろ予定では魔法学園『ユグドラシル』に入学する予定なのである。
オルレアン家の決まりにより、俺と姉であるアリシアは魔法学園に入学する予定になっているのだ。
あの目障りだった実の姉のアリシアは俺より二年先に魔法学園に入学している。つまり、あの目障りだった実の姉のアリシアは今、この屋敷にはいないのだ。
それがつまり、どういう事なのかというと、屋敷での生活が大分と快適なものになったという事だ。とはいえ、その快適な生活のまま、怠惰にダラダラと暮らしているわけにもいかない。
なぜなら、これからが本番なのである。これから俺は魔法学園に入学する事になる。つまりは、これからは俺は本格的な死亡ルートに突入していく、という事であった。
いわば、これまでの人生は基本的には一本道。何をしても基本的には死亡ENDを迎える事にはならない。だが、これからの人生は今までと同じようなわけにはいかない。
これからが本番というわけであった。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
俺は10歳の時、15歳の時に死亡ENDを迎えると知ってしまった時から、不本意ながらも鍛錬を欠かしていない。
そして、俺は早朝目を覚まし、今もまたトレーニングをしている。俺は片手で逆立ちをして、腕立て伏せをしているのだ。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! ひゃくじゅう、ひゃくじゅういち、ひゃくじゅうに」
俺は数えきれない程の数、片手での逆立ちをしていた。その数、実に200回。だが、これで終わりではない。
「よし。片手は終わりだ」
俺はもう片方の手もまた、先ほどまでと同じように片手での腕立て伏せを行うのであった。その数も先ほどと同じように200回である。
俺は剣術や魔法を学んできただけではない。こうして、数多の筋力トレーニングを積んで来た。その結果、俺の身体はムキムキのマッスルボディになったのだ。
今では完全にシックスパックである。これで仮に、肉弾戦で闘う事になったとしても俺に死角はなかった。
この5年で、俺は実に成長した。ただ背が伸びたわけではない。剣術の技量。魔法の技量。それらの能力や技術(スキル)は確実な向上を見せていた。そして、この筋肉である。体術や格闘技も習得し、もはや接近戦でも俺に隙など見当たらなかった。
この技術と肉体(フィジカル)の充実度。そして、魔法の才能を無駄に浪費しなかった俺ならば、もはや原作ゲームで用意されていた数多の死亡フラグを叩き割り、そして死亡ルートに入るのを阻止し、死亡ENDを回避してやったのだ。
「はっはっはっは! できるっ! できるぞっ! 今の俺なら、努力を怠らずに成長したこの俺様ならできるっ! もはや誰にも負ける気がしない。ぐっふっふ! あっはっはっはっはっはっはっは! あっはっはっはっはっはっはっは!」
俺は自室で一人、片手逆立ち腕立て伏せをしつつ、大笑いをしていた。勝利を確信していたのだ。いかんいかん。今はまだ笑う時ではない。勝利を確信するのは全ての死亡フラグを全て叩き潰して、全ての死亡ENDを回避した後の事でいい。
そして俺の勝利が確定した暁には、その時には死ぬ程、ダラダラとした怠惰で自堕落な生活を送ってやろう。俺はそう、心に強く誓ったのだ。
――と、その時の事であった。
コンコン。
ノックの音が聞こえてきた。メイドのものであろう。
「……なんだ?」
これから俺は馬車により、その件の魔法学園『ユグドラシル』に入学の為に向かう事になる。魔法学園はここら辺の地方から相当遠くにある王都フィンベルグにある。その為、馬車を使うとはいえ、かなりの長時間の移動になる事が予測された。
だが、出発の時刻はもっと後の事だ。まだまだ出発には時間の猶予があるはずなのだ。
「アーサー様。お父様とお母様がお呼びです」
「お父様とお母様が」
「ええ。別れを惜しみたいと」
言われてみればそれも当然か。子供と長い事離れ離れになるのだ。最後くらい、別れを惜しむ場を持ちたいと思うのも必然の事であろう。
「お父様とお母様は広間でお待ちです」
「わかった。準備をしてから向かうとしよう」
今、俺は朝の日課の筋トレをしている最中で上半身裸のままだったのだ。流石に服を着ずに両親との惜別の場に出るわけにもいかない。何よりこんな格好で学園にまで行くわけにもいかない。
こうしてまともに服を着た俺は両親との惜別の場へと向かうのであった。
◇
「アーサー、……あなたとこれから三年間会えないと思うと、私、本当に寂しいわ」
母はそう言って、涙を流す。
「な、何を言っているんだ。お母さん。もし、魔法大学院にまで進学したら、三年じゃ済まない。7年になるよ。7年もアーサーに会えなくなるんだよ」
父もそう言って、別れの涙を流す。
「何を言っておりますか。お父様、お母様。魔法学園には長期の休暇もあるのです。会おうと思えば、いくらでも帰ってくる事は可能です」
「そ、そうか……それもそうだな」
「だ、だと良いのだけれど」
問題なのはそこではない。俺が『アーサー・フィン・オルレアン』が魔法学園で死亡ENDを回避できなかった場合、それこそこの二人との今生の別れになってしまう可能性があるという事だ。
故に、俺は両親と再び会う為にその死亡ENDを何とか回避しなければならない。やがてやってくる『死亡フラグ』を叩き潰し、俺は再び両親と再開すると固く誓った。
俺達が別れを惜しんでいると、甲高い、馬の鳴き声が聞こえてきた。どうやら、予定より少し早いが迎えの馬車が来たようだ。
「それじゃあ、お父様。お母様。行ってきます」
「いってらっしゃいアーサー」
「気を付けるんだぞ。アーサー」
こうして俺は両親に見送られ、姉であるアリシアが在籍している魔法学園『ユグドラシル』へと向かったのである。
全てはやがてやってくる死亡ENDを回避し、幸せな生活。怠惰で自堕落な生活を送る為に。
俺がこの『アーサー・フィン・オルレアン』の意識の中で発現してから大体、五年の月日が流れようとしていた。俺は15歳になろうとしていた。そう、そろそろ予定では魔法学園『ユグドラシル』に入学する予定なのである。
オルレアン家の決まりにより、俺と姉であるアリシアは魔法学園に入学する予定になっているのだ。
あの目障りだった実の姉のアリシアは俺より二年先に魔法学園に入学している。つまり、あの目障りだった実の姉のアリシアは今、この屋敷にはいないのだ。
それがつまり、どういう事なのかというと、屋敷での生活が大分と快適なものになったという事だ。とはいえ、その快適な生活のまま、怠惰にダラダラと暮らしているわけにもいかない。
なぜなら、これからが本番なのである。これから俺は魔法学園に入学する事になる。つまりは、これからは俺は本格的な死亡ルートに突入していく、という事であった。
いわば、これまでの人生は基本的には一本道。何をしても基本的には死亡ENDを迎える事にはならない。だが、これからの人生は今までと同じようなわけにはいかない。
これからが本番というわけであった。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
俺は10歳の時、15歳の時に死亡ENDを迎えると知ってしまった時から、不本意ながらも鍛錬を欠かしていない。
そして、俺は早朝目を覚まし、今もまたトレーニングをしている。俺は片手で逆立ちをして、腕立て伏せをしているのだ。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! ひゃくじゅう、ひゃくじゅういち、ひゃくじゅうに」
俺は数えきれない程の数、片手での逆立ちをしていた。その数、実に200回。だが、これで終わりではない。
「よし。片手は終わりだ」
俺はもう片方の手もまた、先ほどまでと同じように片手での腕立て伏せを行うのであった。その数も先ほどと同じように200回である。
俺は剣術や魔法を学んできただけではない。こうして、数多の筋力トレーニングを積んで来た。その結果、俺の身体はムキムキのマッスルボディになったのだ。
今では完全にシックスパックである。これで仮に、肉弾戦で闘う事になったとしても俺に死角はなかった。
この5年で、俺は実に成長した。ただ背が伸びたわけではない。剣術の技量。魔法の技量。それらの能力や技術(スキル)は確実な向上を見せていた。そして、この筋肉である。体術や格闘技も習得し、もはや接近戦でも俺に隙など見当たらなかった。
この技術と肉体(フィジカル)の充実度。そして、魔法の才能を無駄に浪費しなかった俺ならば、もはや原作ゲームで用意されていた数多の死亡フラグを叩き割り、そして死亡ルートに入るのを阻止し、死亡ENDを回避してやったのだ。
「はっはっはっは! できるっ! できるぞっ! 今の俺なら、努力を怠らずに成長したこの俺様ならできるっ! もはや誰にも負ける気がしない。ぐっふっふ! あっはっはっはっはっはっはっは! あっはっはっはっはっはっはっは!」
俺は自室で一人、片手逆立ち腕立て伏せをしつつ、大笑いをしていた。勝利を確信していたのだ。いかんいかん。今はまだ笑う時ではない。勝利を確信するのは全ての死亡フラグを全て叩き潰して、全ての死亡ENDを回避した後の事でいい。
そして俺の勝利が確定した暁には、その時には死ぬ程、ダラダラとした怠惰で自堕落な生活を送ってやろう。俺はそう、心に強く誓ったのだ。
――と、その時の事であった。
コンコン。
ノックの音が聞こえてきた。メイドのものであろう。
「……なんだ?」
これから俺は馬車により、その件の魔法学園『ユグドラシル』に入学の為に向かう事になる。魔法学園はここら辺の地方から相当遠くにある王都フィンベルグにある。その為、馬車を使うとはいえ、かなりの長時間の移動になる事が予測された。
だが、出発の時刻はもっと後の事だ。まだまだ出発には時間の猶予があるはずなのだ。
「アーサー様。お父様とお母様がお呼びです」
「お父様とお母様が」
「ええ。別れを惜しみたいと」
言われてみればそれも当然か。子供と長い事離れ離れになるのだ。最後くらい、別れを惜しむ場を持ちたいと思うのも必然の事であろう。
「お父様とお母様は広間でお待ちです」
「わかった。準備をしてから向かうとしよう」
今、俺は朝の日課の筋トレをしている最中で上半身裸のままだったのだ。流石に服を着ずに両親との惜別の場に出るわけにもいかない。何よりこんな格好で学園にまで行くわけにもいかない。
こうしてまともに服を着た俺は両親との惜別の場へと向かうのであった。
◇
「アーサー、……あなたとこれから三年間会えないと思うと、私、本当に寂しいわ」
母はそう言って、涙を流す。
「な、何を言っているんだ。お母さん。もし、魔法大学院にまで進学したら、三年じゃ済まない。7年になるよ。7年もアーサーに会えなくなるんだよ」
父もそう言って、別れの涙を流す。
「何を言っておりますか。お父様、お母様。魔法学園には長期の休暇もあるのです。会おうと思えば、いくらでも帰ってくる事は可能です」
「そ、そうか……それもそうだな」
「だ、だと良いのだけれど」
問題なのはそこではない。俺が『アーサー・フィン・オルレアン』が魔法学園で死亡ENDを回避できなかった場合、それこそこの二人との今生の別れになってしまう可能性があるという事だ。
故に、俺は両親と再び会う為にその死亡ENDを何とか回避しなければならない。やがてやってくる『死亡フラグ』を叩き潰し、俺は再び両親と再開すると固く誓った。
俺達が別れを惜しんでいると、甲高い、馬の鳴き声が聞こえてきた。どうやら、予定より少し早いが迎えの馬車が来たようだ。
「それじゃあ、お父様。お母様。行ってきます」
「いってらっしゃいアーサー」
「気を付けるんだぞ。アーサー」
こうして俺は両親に見送られ、姉であるアリシアが在籍している魔法学園『ユグドラシル』へと向かったのである。
全てはやがてやってくる死亡ENDを回避し、幸せな生活。怠惰で自堕落な生活を送る為に。
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