怠惰な悪役貴族は変わらず怠惰に過ごしたい。死亡フラグを回避する為に【闇魔法】を極めてたら正ヒロインに好意を持たれたのだが。

つくも/九十九弐式

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第21話 初めての授業

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 フィオナの奴と夢の国『マジックランド』に行った翌日の事だった。

 朝を迎える。

「ぐおー……ぐおー……ぐおおおー……」

 俺は大鼾をかいて寝ていた。その日、疲れたのだ。全く、女と遊んで帰って来ただけの事ではあるが、それでもそれなりに疲れるのだ。やはり、気疲れするのだ。

 だから俺は大爆睡をして朝を迎えたのである。

「おーい。アーサー君。朝だよ。起きてー。ねー」

「……う、うん。お、俺を起こすな。美少女の幼馴染よ」

 声が聞こえてきた。俺は渋々、目を覚ます。

「僕はび、美少女の幼馴染じゃないんだけど」

 起き上がり、寝ぼけ眼で起こしてきた奴を見やる。そこには金髪をしたイケメン男子であるリオンの姿があった。俺とは違って随分と前に起きていたのであろう。髪型が整っていて、身だしなみ全般が整っている。
一部の隙も無い。

「……ちっ、なんだ。男か」

「その舌打ちはあまりに理不尽じゃないかな」

「朝起こしに来るのは美少女の幼馴染と相場が決まっているのだ。イケメンとはいえ、相手が男では朝からテンションダダ下がりというものだろう」

「その文句もあまりにも理不尽じゃないかなー。ルームメイトだから僕が男なのは仕方ないだろう。男同志でしかルームメイトになれないんだから」

「ちっ。貴様、実は女ではないだろうな?」

「な、なんで僕が女って事になるんだよ?」

「貴様みたいなイケメンが実は美少女だという設定はよくある設定なのだ。何らかの理由で男を偽らなければならないとかいう設定で!」

「なに、その設定。あまりに無理があるよ!」

 青少年の願望を否定するな。

「だったら胸でも触って確かめてみるかい?」

「いいのか……」

「うん。別にいいよ」

 俺は触った。

「おおっ……」

 な、なんて見事な胸板だ。実に筋肉質で。それは女性の柔らかな胸とは正反対の硬い鋼鉄のような胸板。当然、さらしを巻いて誤魔化しているなんて事もない。

「貴様、実は着痩せするタイプだな。華奢なようなスマートな体に見えて、見事に鍛え抜かれた体をしている」

「それはもう、勿論。鍛えてるからね」

「ちっ……だとするとやはり、同居していたルームメイトが実は美少女だったという、ベタな設定の可能性は完全に消滅したのか」

 俺はショックのあまり、項垂れた。

「残念ながら、その可能性はないよ。ご期待に沿えなくてすまない」

 リオンは謝って来た。別に、こいつに非はないだろう。だから謝る必要なんて特にないのだ。

「それより、そろそろ授業が始まるよ。だから急がないと。入学式に続いて、遅刻するわけにはいかないよ」

「あ、ああ。そうだな。その通りだ」

 こいつが起こしてくれて良かった。起こしてくれなかったらきっと遅刻するところだったろう。こうして俺は手早く身なりを整えて、授業を行う教室へと向かうのであった。

                ◇
 幸い、なのかどうかはわからないが、俺とリオンは同じクラスに振り分けられていた。それからフィオナの奴もだ。

 1—Cクラスである。学年には一学年に300人を超える生徒達が在籍しており、そのクラスは大体50人くらいでクラス分けされていた。だから大体Fクラスくらいまではある計算だ。

 後は別にクラス分けに成績の優劣などは特にないらしい。優秀な順とかは特に関係なく、そういう意図もないそうだ。

でなければ『悪役貴族』として名を馳せるこの俺様はともかくとして、第二王子にして完璧チートイケメン主人公であるリオンの奴がАクラスにならなければ実におかしな話であった。

 俺は事前に振り分けられていた席につく。今回も偶然、なのだろうか。入学式の時と同じように隣にはフィオナの姿があった。

「今回は遅刻しませんでしたね」

 フィオナは俺に微笑んでくる。

「ふん……あの気に食わんイケメンチート野郎のおかげだ」

「起こして貰ったのなら、素直にありがたがったらどうですか?」

「ありがたいと思っているから、『おかげだ』と言っているだろうが」

「『気に食わん』って一言余計過ぎません? 『イケメンチート野郎』っていうのも大層な物言いですけど……」

「うむ。それもその通りだが、そういう性格なのだ。あまり気にするでない」

「ふふっ。面白い方ですね。そろそろ先生がやってきますよ」

 俺はどんないかつい魔法使いのような男がやってくるかと思った。そう、俺のイメージでは白髪の300歳は生きていそうな老人だ。やはり魔法学園だからな。大きな杖とローブを着た。そしてもう片方の手で魔導書を持ったような。

 とにかく、そんな絵に描いたような典型的な思い描いていた。だが、現実はそんな予想を大きく裏切っていた。

 小さな身体をした女の子だった。背丈が小さい割に大きな胸をした少女だった。特徴的なのは小さな背丈とその背丈にそぐわない程不釣り合いな大きな胸。さらにはとんがったような両耳だった。

 この両耳はエルフの特徴なのである。というか、俺はこの胸のでかい割りに背の低い、幼いような見た目をした少女(?)に見覚えがあった。

 エスティア・ミレンドール。かつて俺がオルレアン家の屋敷で魔法の手解きを受けた魔法師の少女(?)である。

 というか、本当の年齢はいくつなのか。実はひいひい婆さんよりも年上かもしれない。女性に年齢を聞くのは怖い事なので、結局、教えを乞うていた時も聞けず終いだったのである。

「んっ」

 やばい。目があった。最後に魔法を教わったのは二年程前か。何か他に仕事が入ったからと言って、屋敷で魔法を教わるのはそれが最後になった。

 そういえば、王都の魔法学園で魔法を教える事になった、とも言っていたな。

 エスティアは俺を見止めるとにっこりと笑顔を浮かべて、手を振って来た。その仕草が何とも幼女のように見えて、とても魔法学園の講師をしている人間(というかエルフ?)のようには見えない。

「アーサーさん。講師の先生とお知り合いなんですか?」

「ん。あっ、ああ。そうだ。この魔法学園に入学する前に、魔法の手解きを受けていたんだ」

「へぇ……お知り合いだったんですか」

 フィオナは納得した様子であった。

「私の名はエスティア・ミレンドールと申します。皆さんにこれから三年間、この魔法学園で魔法を教える事になりました。皆様、どうか、よろしくお願いします」

 エスティアはにっこりとした可愛らしい笑みを浮かべた後、ぺこりと行儀よく頭を下げた。

「ちなみに私は冒険者として魔法師を務めておりました。その後は引退して、一般家庭で魔法を教えていた事もあります」

 一般家庭。とはいえ、魔法を教える魔法師を講師として雇えるのは金に余裕がある家庭だけだ。一般家庭とは言っても貴族か王族を限定すると言っても過言ではない。

 とはいえ、平民でもそれなりに裕福な家は存在するだろうから、例外というものは存在する。事業で成功した成金ならば貴族という地位こそなくとも、それなりに金自体は持っている事であろう。

 魔法を教える魔法師も慈善事業でやっているわけではないのだから、それなりに金を支払える家庭を優先するのは自然な事だと言えた。

「それではまずは皆さんにやって貰いたい事があります」

 エスティアは教壇に何かを置いた。それは丸い水晶のようなものだった。

「これは魔水晶と言います」

「「「魔水晶」」」

 皆の声がハモる。

「はい。これは皆さんの魔法の適性を知ってもらう為。こちらがその適正を知る為に必要な事なのです。皆さんがこの魔水晶により、どの属性の精霊と相性が良いのか。効率的に知って貰う。こちらも知る事ができる、そんな便利な魔道具(マジックアイテム)なのです」

 こうして、俺達は丸い水晶により自分の魔法適正を教えて貰う事からこの魔法学園での授業がスタートしたのであった。
 
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