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第8話【勇者SIDE】 剣聖の少女に疑念を持たれる
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荒れ果てた荒野に、僕と剣聖の少女——エステルはいた。
「さあ、ひとまずは君の力を見せてくれ! 『剣聖』エステルよっ!」
今の僕はなぜか、調子が悪い。勇者に秘められた特別な力(スキル)を発揮できないようだった。
その為、とりあえずは『剣聖』であるエステルの腕前を拝見させて貰う事にした。
クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
荒野に、モンスターの叫び声が響き渡る。
「な、なんだっ! こいつはっ!」
僕達の目の前に、巨大な狼型のモンスターが姿を現した。
「ご存じないのですか? 勇者様。このモンスターはビッグ・ブラッドウルフと言う、大型種のモンスターなのです……」
「そうか……異世界には不慣れなものでな。無知なのも致し方ないだろう。ともかく、さあ! ともかく見せてくれ! 『剣聖』エステルよ! 君の力を存分にっ!」
「は、はい。わかりました」
エステルは剣を構える。輝かしい光を放つ聖剣を。
「では、参ります!」
エステルはビッグ・ブラッドウルフに斬りかかった。その動きは凄まじく速く、目にも止まらぬとはまさしくこの事であった。
エステルとモンスターが交錯する。
まるで何事もないかのようであった。静寂が世界を支配する。
次の瞬間。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
あの巨大で強そうだったモンスター、ビッグ・ブラッドウルフが断末魔を上げて果てたのだ。
「す、すごい……あんな巨大なモンスターを一撃でなんて……」
「別に凄くなんてありません。この程度、当然の事です」
エステルは涼しい顔で言ってのける。異世界人にとっては普通の事かもしれないが、僕にとっては物凄い光景にしか見えなかった。ただの謙遜で言っているだけの事かもしれないが……。
エステルは強い。間違いなく、使える。僕はなぜだか、不調で女神から貰った特別な力(スキル)を使えない状態にあった。
だが、僕にはこの生まれ持った優秀な頭脳があるのだ。この女を利用し、僕が力を取り戻すまでに役立って貰おう。
僕が力を取り戻すまでの繋ぎとして、彼女を利用しようと思ったのだ。
「当然の事なものか。君の力は素晴らしい。『剣聖』の名に恥じない程にね……どうか、勇者である僕の為に、その力を存分に振るってくれたまえ。期待しているよ、エステル」
「は、はぁ……そうですか。お力になれそうで良かったです」
こうして二人は冒険の旅を続けるのであった。
◇
「い、いけっ! いくんだっ! エステル! 君のその剛剣で敵をねじ伏せる、いや、斬り伏せるんだ!」
僕達の目の前には、またもや巨大なモンスターが姿を現す。一つ目の怪人。何でも、サイクロップスと言う名のモンスターらしい。
「は、はい! 勇者様っ!」
僕はまるで、ポ〇モントレーナーのように、彼女に指示をしているだけであった。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
彼女の凄まじい剣がサイクロップスにクリーンヒットした。サイクロップスは度々あった。
この時ばかりではない、幾多にも及ぶ戦闘を僕は彼女にまかせっきりであった。それで何とかなってきていたのである。
そんな冒険の日々がしばらく続いていた。僕にとってはとても楽であったが、それでもやはり彼女は不満を抱いていたようだ。不安というよりは疑念か……決して闘いもしない僕に、彼女は違和感を覚えていたようだ。
「あの……勇者様」
「ど、どうしたんだ? エステルよ」
「なんだか……私ばかり闘っているような気がするのです」
「そ、そうか……負担をかけさせていたか。す、すまないな。エステル」
「い、いえ。疲れたとか……そういう事ではないのです。HP(体力)を失っても、ポーションを飲みさえすれば回復するのですから……」
彼女は僕を見据えた。鋭い眼差しで。
「勇者様、正直に言ってください。私はまるで、勇者様が戦闘を避けているように見えるのです」
ギクッ……。
図星を突かれた僕は、思わず、表情を歪ませてしまう。僕の美しい顔が台無しだ……、これじゃあ。僕は極めて平静な様子を取り繕う。
「そんな事はないよ、エステル。僕は君の実力を見て見たくて……。言わば君を試していたんだよ。僕が闘いを避けているなんて、そんな事はないんだよ」
「今まで幾度となく、実力は見せているではないですか。これ以上試す必要がどこにあると言うのでしょう?」
「……そ、それは確かに」
「勇者様。何か闘えない理由でもあるのですか?」
「……そ、それはだな……、その……」
「闘えないわけではなく、単に私の実力を試したかったというのなら……」
彼女は鞘から剣を抜き放った。
「私と手合わせをしてもらえませんか? 勇者様。今度は私が勇者様の実力を試させて欲しいのです」
「うっ……ううっ……」
彼女は冷徹な目で僕を見据えてきた。これ以上の誤魔化しは受け付けない、そんな強い意志を汲み取る事が出来た。
もはや、僕に立つ瀬は何もなかった。
こうなったら破れかぶれであった。僕は僕に秘められた、勇者の特別な力(スキル)が覚醒するのを、天に祈る以外になかったのだ。もしかしたら、追いつめられるのが条件として、僕の秘められた力は覚醒するのかもしれない。
こうして、勇者である僕と剣聖エステルとの闘いが始まったのである。
「さあ、ひとまずは君の力を見せてくれ! 『剣聖』エステルよっ!」
今の僕はなぜか、調子が悪い。勇者に秘められた特別な力(スキル)を発揮できないようだった。
その為、とりあえずは『剣聖』であるエステルの腕前を拝見させて貰う事にした。
クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
荒野に、モンスターの叫び声が響き渡る。
「な、なんだっ! こいつはっ!」
僕達の目の前に、巨大な狼型のモンスターが姿を現した。
「ご存じないのですか? 勇者様。このモンスターはビッグ・ブラッドウルフと言う、大型種のモンスターなのです……」
「そうか……異世界には不慣れなものでな。無知なのも致し方ないだろう。ともかく、さあ! ともかく見せてくれ! 『剣聖』エステルよ! 君の力を存分にっ!」
「は、はい。わかりました」
エステルは剣を構える。輝かしい光を放つ聖剣を。
「では、参ります!」
エステルはビッグ・ブラッドウルフに斬りかかった。その動きは凄まじく速く、目にも止まらぬとはまさしくこの事であった。
エステルとモンスターが交錯する。
まるで何事もないかのようであった。静寂が世界を支配する。
次の瞬間。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
あの巨大で強そうだったモンスター、ビッグ・ブラッドウルフが断末魔を上げて果てたのだ。
「す、すごい……あんな巨大なモンスターを一撃でなんて……」
「別に凄くなんてありません。この程度、当然の事です」
エステルは涼しい顔で言ってのける。異世界人にとっては普通の事かもしれないが、僕にとっては物凄い光景にしか見えなかった。ただの謙遜で言っているだけの事かもしれないが……。
エステルは強い。間違いなく、使える。僕はなぜだか、不調で女神から貰った特別な力(スキル)を使えない状態にあった。
だが、僕にはこの生まれ持った優秀な頭脳があるのだ。この女を利用し、僕が力を取り戻すまでに役立って貰おう。
僕が力を取り戻すまでの繋ぎとして、彼女を利用しようと思ったのだ。
「当然の事なものか。君の力は素晴らしい。『剣聖』の名に恥じない程にね……どうか、勇者である僕の為に、その力を存分に振るってくれたまえ。期待しているよ、エステル」
「は、はぁ……そうですか。お力になれそうで良かったです」
こうして二人は冒険の旅を続けるのであった。
◇
「い、いけっ! いくんだっ! エステル! 君のその剛剣で敵をねじ伏せる、いや、斬り伏せるんだ!」
僕達の目の前には、またもや巨大なモンスターが姿を現す。一つ目の怪人。何でも、サイクロップスと言う名のモンスターらしい。
「は、はい! 勇者様っ!」
僕はまるで、ポ〇モントレーナーのように、彼女に指示をしているだけであった。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
彼女の凄まじい剣がサイクロップスにクリーンヒットした。サイクロップスは度々あった。
この時ばかりではない、幾多にも及ぶ戦闘を僕は彼女にまかせっきりであった。それで何とかなってきていたのである。
そんな冒険の日々がしばらく続いていた。僕にとってはとても楽であったが、それでもやはり彼女は不満を抱いていたようだ。不安というよりは疑念か……決して闘いもしない僕に、彼女は違和感を覚えていたようだ。
「あの……勇者様」
「ど、どうしたんだ? エステルよ」
「なんだか……私ばかり闘っているような気がするのです」
「そ、そうか……負担をかけさせていたか。す、すまないな。エステル」
「い、いえ。疲れたとか……そういう事ではないのです。HP(体力)を失っても、ポーションを飲みさえすれば回復するのですから……」
彼女は僕を見据えた。鋭い眼差しで。
「勇者様、正直に言ってください。私はまるで、勇者様が戦闘を避けているように見えるのです」
ギクッ……。
図星を突かれた僕は、思わず、表情を歪ませてしまう。僕の美しい顔が台無しだ……、これじゃあ。僕は極めて平静な様子を取り繕う。
「そんな事はないよ、エステル。僕は君の実力を見て見たくて……。言わば君を試していたんだよ。僕が闘いを避けているなんて、そんな事はないんだよ」
「今まで幾度となく、実力は見せているではないですか。これ以上試す必要がどこにあると言うのでしょう?」
「……そ、それは確かに」
「勇者様。何か闘えない理由でもあるのですか?」
「……そ、それはだな……、その……」
「闘えないわけではなく、単に私の実力を試したかったというのなら……」
彼女は鞘から剣を抜き放った。
「私と手合わせをしてもらえませんか? 勇者様。今度は私が勇者様の実力を試させて欲しいのです」
「うっ……ううっ……」
彼女は冷徹な目で僕を見据えてきた。これ以上の誤魔化しは受け付けない、そんな強い意志を汲み取る事が出来た。
もはや、僕に立つ瀬は何もなかった。
こうなったら破れかぶれであった。僕は僕に秘められた、勇者の特別な力(スキル)が覚醒するのを、天に祈る以外になかったのだ。もしかしたら、追いつめられるのが条件として、僕の秘められた力は覚醒するのかもしれない。
こうして、勇者である僕と剣聖エステルとの闘いが始まったのである。
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