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第28話 エルフ城で国王と面会する

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「セシリア様。ご無事でしたか。良かったです」

 エルフ城にいる門番に呼び止められた。

「……そちらの方々は?」

 門番は怪訝そうな視線を送ってくる。無理もない。エルフは基本的には排他的な種族だ。ここに来るまでもそのような視線を送られてきた。やはり人間である俺を連れて歩いてきたセシリアに違和感を覚えざるを得ないのであろう。

「私の命を救ってくれた恩人達です。独断ではありますが、ここまで連れてきました」

「そうですか……そうでしたら構わないのですが。とはいえ、国王陛下のご意向には従わなければなりません、お二人にエルフ国の滞在が許可されなければ……」

 門番は口を閉ざす。

 俺達はエルフ国から叩き出されるという事であろう。

「わかっております。とりあえずはエルフ王とお会いして、面会の許可を頂いてきます」

 セシリアは俺達を見やる。

「お二人とも、しばらくここでお待ちください。まずは私一人でエルフ王に会ってきますので」

「わかりました……じゃあ、ここでお待ちしています」

「……はい。では行ってきます」

 こうしてセシリアは俺達を置いてエルフ城へ入っていったのだ。

               ◇
「暇ですね……」

「そうだな……」

 俺達は手持ち無沙汰だった。とにかく暇だったのだ。どうにか、この暇な時間を潰したかった。

「なぁ、エステル」

「はい、なんでしょうか?」

「あっちむいてほいをしよう」

「『あっちむいてほい』? そ、それは一体?」

「俺達の世界にある娯楽だよ……っていうか、この世界はじゃんけんとかあるのか?」

「じゃんけん?」

 やはり異世界には『じゃんけん』自体が存在していないらしい。まずその説明から必要だった。とはいえ至極単純なので簡単に理解できるとは思うが……。

「えー、と。この拳を握りしめるのが『グー』で、開いたのが『パー』ハサミに見立てた手が『チョキ』っていうんだ」

「へぇ……『グー』と『パー』と『チョキ』ですか」

「それで、『グー』は『チョキ』に勝って、『チョキ』は『パー』に勝つ、それで『パー』は『グー』に勝つ、っていう三すくみの関係になるんだ。『グー』は石だからハサミの『チョキ』に勝つ。『チョキ』はハサミだから、紙の『パー』に勝てるんだ。それで『パー』は紙で包み込めるから石である『グー』に勝てるみたいなイメージだな」

「なんでしょうか? その紙なのに石に勝てるとは……道理がなっていないように感じるのですが」

 石がハサミに勝てる

「いいんだ、ただのイメージだから。要するにそういう方式で成り立っていると理解だけしてくれればいい」

「はぁ……そうですか。それで、その『じゃんけん』で勝った方と負けた方は何をするんですか?」

「勝った方は左右上下を指さすんだ」

「指を指す? それで負けた方は?」

「こうやって首を左右上下に振り向かせるんだ」

「首を振り向かせる?」

「そうそう。それで勝った方の指と同じ方を向いたら負け。もし違ってたらまた最初の『じゃんけん』に戻るんだ」

「それで、その勝負で負けたらどうなるのです?」

「別に何にもならない」

 罰ゲームを賭ける事もあるにはあるのだが、そういう取り決めがなければ別に何にもならない。

「何にもならない。だったら何の為にやるのですか?」

「ただの暇つぶしだよ。今みたいな状況にはうってつけたんだ。単に勝ったら嬉しいし、負けたら悔しい。それだけの事なんだよ」

「はぁ……」

「とにかくやってみよう。『じゃんけん』『ぽん』!」

「その『ポン』とは?」

「タイミングをはかる為のかけごえだよ」

「はぁ……掛け声ですか」

「もう一度行くぞ。『じゃんけん』」

「「『ぽん』」」

 俺達は『じゃんけん』をした。

  俺が『グー』を出し、エステルの『チョキ』に勝った。

「あっちむいて、ほいっ!」

 くいっ。

 俺の指の方をエステルが向いた。

 俺が勝ちだった。

「よし、俺の勝ちだ」

「負けました」

「それじゃあ、次に行くぞ。『じゃんけん』『ぽん』!」

 こうして俺達はあっちむいてほいをして時間を潰していた。

 ――そして、しばらくして、セシリアが戻ってきたのである。

「何をしているのです?」

 セシリアは怪訝そうにこちらを見てきた。

「その……俺の生まれ故郷の遊びをだな。ただの暇つぶしだ」

「そうですか……暇つぶしを」

「それよりも、どうだったんだ? エルフ王には会えそうなのか?」

 最悪、合う事すら叶わずに門前払いという可能性もあり得る事であった。

「安心してください。面会の許可は得られました。エルフ王はあなた達と会う事を望んでいます」

「……そうか。それは良かった」

「それでは向かいましょうか。我らの王。エルフ王がお二人をお待ちです」

 こうして、俺達はエルフ王と面会する事になったのだ。
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