28 / 43
第28話 エルフ城で国王と面会する
しおりを挟む
「セシリア様。ご無事でしたか。良かったです」
エルフ城にいる門番に呼び止められた。
「……そちらの方々は?」
門番は怪訝そうな視線を送ってくる。無理もない。エルフは基本的には排他的な種族だ。ここに来るまでもそのような視線を送られてきた。やはり人間である俺を連れて歩いてきたセシリアに違和感を覚えざるを得ないのであろう。
「私の命を救ってくれた恩人達です。独断ではありますが、ここまで連れてきました」
「そうですか……そうでしたら構わないのですが。とはいえ、国王陛下のご意向には従わなければなりません、お二人にエルフ国の滞在が許可されなければ……」
門番は口を閉ざす。
俺達はエルフ国から叩き出されるという事であろう。
「わかっております。とりあえずはエルフ王とお会いして、面会の許可を頂いてきます」
セシリアは俺達を見やる。
「お二人とも、しばらくここでお待ちください。まずは私一人でエルフ王に会ってきますので」
「わかりました……じゃあ、ここでお待ちしています」
「……はい。では行ってきます」
こうしてセシリアは俺達を置いてエルフ城へ入っていったのだ。
◇
「暇ですね……」
「そうだな……」
俺達は手持ち無沙汰だった。とにかく暇だったのだ。どうにか、この暇な時間を潰したかった。
「なぁ、エステル」
「はい、なんでしょうか?」
「あっちむいてほいをしよう」
「『あっちむいてほい』? そ、それは一体?」
「俺達の世界にある娯楽だよ……っていうか、この世界はじゃんけんとかあるのか?」
「じゃんけん?」
やはり異世界には『じゃんけん』自体が存在していないらしい。まずその説明から必要だった。とはいえ至極単純なので簡単に理解できるとは思うが……。
「えー、と。この拳を握りしめるのが『グー』で、開いたのが『パー』ハサミに見立てた手が『チョキ』っていうんだ」
「へぇ……『グー』と『パー』と『チョキ』ですか」
「それで、『グー』は『チョキ』に勝って、『チョキ』は『パー』に勝つ、それで『パー』は『グー』に勝つ、っていう三すくみの関係になるんだ。『グー』は石だからハサミの『チョキ』に勝つ。『チョキ』はハサミだから、紙の『パー』に勝てるんだ。それで『パー』は紙で包み込めるから石である『グー』に勝てるみたいなイメージだな」
「なんでしょうか? その紙なのに石に勝てるとは……道理がなっていないように感じるのですが」
石がハサミに勝てる
「いいんだ、ただのイメージだから。要するにそういう方式で成り立っていると理解だけしてくれればいい」
「はぁ……そうですか。それで、その『じゃんけん』で勝った方と負けた方は何をするんですか?」
「勝った方は左右上下を指さすんだ」
「指を指す? それで負けた方は?」
「こうやって首を左右上下に振り向かせるんだ」
「首を振り向かせる?」
「そうそう。それで勝った方の指と同じ方を向いたら負け。もし違ってたらまた最初の『じゃんけん』に戻るんだ」
「それで、その勝負で負けたらどうなるのです?」
「別に何にもならない」
罰ゲームを賭ける事もあるにはあるのだが、そういう取り決めがなければ別に何にもならない。
「何にもならない。だったら何の為にやるのですか?」
「ただの暇つぶしだよ。今みたいな状況にはうってつけたんだ。単に勝ったら嬉しいし、負けたら悔しい。それだけの事なんだよ」
「はぁ……」
「とにかくやってみよう。『じゃんけん』『ぽん』!」
「その『ポン』とは?」
「タイミングをはかる為のかけごえだよ」
「はぁ……掛け声ですか」
「もう一度行くぞ。『じゃんけん』」
「「『ぽん』」」
俺達は『じゃんけん』をした。
俺が『グー』を出し、エステルの『チョキ』に勝った。
「あっちむいて、ほいっ!」
くいっ。
俺の指の方をエステルが向いた。
俺が勝ちだった。
「よし、俺の勝ちだ」
「負けました」
「それじゃあ、次に行くぞ。『じゃんけん』『ぽん』!」
こうして俺達はあっちむいてほいをして時間を潰していた。
――そして、しばらくして、セシリアが戻ってきたのである。
「何をしているのです?」
セシリアは怪訝そうにこちらを見てきた。
「その……俺の生まれ故郷の遊びをだな。ただの暇つぶしだ」
「そうですか……暇つぶしを」
「それよりも、どうだったんだ? エルフ王には会えそうなのか?」
最悪、合う事すら叶わずに門前払いという可能性もあり得る事であった。
「安心してください。面会の許可は得られました。エルフ王はあなた達と会う事を望んでいます」
「……そうか。それは良かった」
「それでは向かいましょうか。我らの王。エルフ王がお二人をお待ちです」
こうして、俺達はエルフ王と面会する事になったのだ。
エルフ城にいる門番に呼び止められた。
「……そちらの方々は?」
門番は怪訝そうな視線を送ってくる。無理もない。エルフは基本的には排他的な種族だ。ここに来るまでもそのような視線を送られてきた。やはり人間である俺を連れて歩いてきたセシリアに違和感を覚えざるを得ないのであろう。
「私の命を救ってくれた恩人達です。独断ではありますが、ここまで連れてきました」
「そうですか……そうでしたら構わないのですが。とはいえ、国王陛下のご意向には従わなければなりません、お二人にエルフ国の滞在が許可されなければ……」
門番は口を閉ざす。
俺達はエルフ国から叩き出されるという事であろう。
「わかっております。とりあえずはエルフ王とお会いして、面会の許可を頂いてきます」
セシリアは俺達を見やる。
「お二人とも、しばらくここでお待ちください。まずは私一人でエルフ王に会ってきますので」
「わかりました……じゃあ、ここでお待ちしています」
「……はい。では行ってきます」
こうしてセシリアは俺達を置いてエルフ城へ入っていったのだ。
◇
「暇ですね……」
「そうだな……」
俺達は手持ち無沙汰だった。とにかく暇だったのだ。どうにか、この暇な時間を潰したかった。
「なぁ、エステル」
「はい、なんでしょうか?」
「あっちむいてほいをしよう」
「『あっちむいてほい』? そ、それは一体?」
「俺達の世界にある娯楽だよ……っていうか、この世界はじゃんけんとかあるのか?」
「じゃんけん?」
やはり異世界には『じゃんけん』自体が存在していないらしい。まずその説明から必要だった。とはいえ至極単純なので簡単に理解できるとは思うが……。
「えー、と。この拳を握りしめるのが『グー』で、開いたのが『パー』ハサミに見立てた手が『チョキ』っていうんだ」
「へぇ……『グー』と『パー』と『チョキ』ですか」
「それで、『グー』は『チョキ』に勝って、『チョキ』は『パー』に勝つ、それで『パー』は『グー』に勝つ、っていう三すくみの関係になるんだ。『グー』は石だからハサミの『チョキ』に勝つ。『チョキ』はハサミだから、紙の『パー』に勝てるんだ。それで『パー』は紙で包み込めるから石である『グー』に勝てるみたいなイメージだな」
「なんでしょうか? その紙なのに石に勝てるとは……道理がなっていないように感じるのですが」
石がハサミに勝てる
「いいんだ、ただのイメージだから。要するにそういう方式で成り立っていると理解だけしてくれればいい」
「はぁ……そうですか。それで、その『じゃんけん』で勝った方と負けた方は何をするんですか?」
「勝った方は左右上下を指さすんだ」
「指を指す? それで負けた方は?」
「こうやって首を左右上下に振り向かせるんだ」
「首を振り向かせる?」
「そうそう。それで勝った方の指と同じ方を向いたら負け。もし違ってたらまた最初の『じゃんけん』に戻るんだ」
「それで、その勝負で負けたらどうなるのです?」
「別に何にもならない」
罰ゲームを賭ける事もあるにはあるのだが、そういう取り決めがなければ別に何にもならない。
「何にもならない。だったら何の為にやるのですか?」
「ただの暇つぶしだよ。今みたいな状況にはうってつけたんだ。単に勝ったら嬉しいし、負けたら悔しい。それだけの事なんだよ」
「はぁ……」
「とにかくやってみよう。『じゃんけん』『ぽん』!」
「その『ポン』とは?」
「タイミングをはかる為のかけごえだよ」
「はぁ……掛け声ですか」
「もう一度行くぞ。『じゃんけん』」
「「『ぽん』」」
俺達は『じゃんけん』をした。
俺が『グー』を出し、エステルの『チョキ』に勝った。
「あっちむいて、ほいっ!」
くいっ。
俺の指の方をエステルが向いた。
俺が勝ちだった。
「よし、俺の勝ちだ」
「負けました」
「それじゃあ、次に行くぞ。『じゃんけん』『ぽん』!」
こうして俺達はあっちむいてほいをして時間を潰していた。
――そして、しばらくして、セシリアが戻ってきたのである。
「何をしているのです?」
セシリアは怪訝そうにこちらを見てきた。
「その……俺の生まれ故郷の遊びをだな。ただの暇つぶしだ」
「そうですか……暇つぶしを」
「それよりも、どうだったんだ? エルフ王には会えそうなのか?」
最悪、合う事すら叶わずに門前払いという可能性もあり得る事であった。
「安心してください。面会の許可は得られました。エルフ王はあなた達と会う事を望んでいます」
「……そうか。それは良かった」
「それでは向かいましょうか。我らの王。エルフ王がお二人をお待ちです」
こうして、俺達はエルフ王と面会する事になったのだ。
30
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる