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第40話 (ミレイア王女視点)闇堕ちした勇者と再会する
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(ミレイア王女視点)
「お父様!」
普段のドレスに着替えたミレイア王女は父である国王の元を訪れた。
「い、一体どうしたのですか! どうして魔王軍が我が王国に!」
ミレイア王女は叫んだ。
「う、うむ……魔王軍に恐ろしい手勢が加わったと聞き及んでおる。その手勢は優勢だったエルフの軍を退け、このエスティーゼ王国に攻め入ってきたのだ」
「な、なんですって!」
「敵の侵攻は早いと聞く! もう余り時間もない! すぐに逃げよう! ミレイア! この城には隠し通路があるのだ! その隠し通路から、城壁の外へ出る事ができる!」
国王はそう、平然とそう、言い放った。普通、こういった有事の時に国王は「最後まで残る、それが国王の務めだ」など、恰好の良い事を言うものではないだろうか。だが、それも毅然とした王の場合だった。この国王にそんな威厳などない。
それよりも自分の身の安全。命が最優先なのだ。
いかにも低俗な、それでいて実に人間らしい。この王国の国王はそういう人種だったのだ。
「そ、そうですね! 逃げましょう! お父様! さっさと! 国民など見捨てて!」
王女ミレイアも同意見の様子だった。流石に親子である。血の通った親子なのだから性格はよく似ているのであった。
「おいおい……酷いじゃないか。大切な国民を見捨てて、自分達だけ逃げ出すなんてさ」
どこからか声が聞こえてくる。その声は国王にとっても、ミレイア王女にとっても聞き覚えのある声であった。
「だ、誰ですの! あ、あなたは!」
目の前に現れたのは間違いなく勇者ハヤトであった。だが、雰囲気が違う。目が据わっているし、前にはなかった凄みがある。不気味な、夥しいオーラを放っていたのである。生物として、直感的に危険な存在であるという事を悟った。
そして隣にいる女。絶世の美女ではあるが、恐らくは魔族。強力な敵であると思って間違いはなさそうだ。普通の人間では到底敵わないような難敵に違いない。自分達でどうこうできる相手ではなかった。
「あ、あなたは! ま、まさか……我がエスティーゼ王国が召喚した、勇者ハヤト様ですの!」
「久しぶりだな……ミレイア王女。僕の事なんて、今後の人生で一生関わる事はないなんて思ってたんじゃないかな……くっくっく」
闇勇者ハヤトは不気味な笑みを浮かべる。
「き、貴様! 私の娘に何を!」
「どけ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「お父様!」
娘を守ろうとした国王は闇勇者ハヤトに蹴飛ばされた。
「安心しなよ……そんなに簡単には殺さない。お前達はじっくり、苦しみを与えて殺すって僕は決めているんだ」
「や、やっぱりですの……戦況を大きく一変させた魔王軍の戦力って、勇者様でしたの……」
「そうだよ。僕だよ。僕が魔王軍についたから、大きく戦況が変わったんだ」
「わ、私達をどうするつもりですの……ま、まさか、私達を殺すおつもりなのでしょうか?」
「そのまさか、だとしたらどうする?」
にやり、と闇勇者ハヤトは笑った。
「嫌! 死にたくない! な、なんでもしますから! 私を殺さないで!」
『私』を。『お父様』と言わないあたり、ミレイア王女の身勝手さが浮き彫りになっていた。それはまあ、親子ともどもではあるが……。国民を見捨て、真っ先に逃げ出そうとしていたのだから。
「わ、私、勇者様と結婚します! 結婚しますから殺さないで! あなたの物になります!」
「ダメだ……お前達が僕にした事を僕は許しはしない」
「靴……靴だって舐めます……ほらっ……犬のようにあなたに忠誠を誓います……だから、私の命だけはお助けください」
そう言って、ミレイア王女は本当に闇勇者ハヤトの靴を舐め始めた。
「ダメだ」
「きゃっ!」
闇勇者ハヤトはミレイア王女を蹴飛ばした。
「お前達には苦しみを与えてやる。これ以上はないと言う苦しみを。そして、死んだ方がマシだと思わせてやる。お前達の口から、殺して欲しいと懇願してくるまで、死ぬ以上の苦しみを与え続けてやる」
「や、やめてくれ! ど、どうか助けてくれ! この娘、ミレイアは貴様にやる! 煮るなり焼くなり好きにしてくれ! だからわしだけはどうか助けてくれ! 頼む! この通りだ!」
国王は闇勇者ハヤトに土下座をした。
「嫌! お父様はどうなってもいいですわ! だから、どうか私に苦痛を与えないでくださいませ! 私、痛いのも苦しいのも苦手なんですの! それで絶対殺さないで! お父様には何をしてもいいですから! この通りですわ!」
ミレイア王女も闇勇者の前に土下座した。
「くっくっく。お前達はやっぱり親子だな……よく似ているよ」
闇勇者ハヤトは嘲るような笑みを浮かべた。
「とりあえずは指の一本でも斬り落とそうか。安心していいよ。簡単には殺さない。死にそうになっても回復魔法(ヒーリング)で回復させるし、本当に死んでも蘇生魔法(レイズ)で生き返らせるから。『死にたい。殺してくれ』って本気で言うようになるまで、それを何度でも繰り返してやるよ」
「い、いやっ! いやっ! いやああああああああああああああああああああああ!」
ミレイア王女は悲鳴を上げた。
――しかし。
「そこまでです!」
声が響く。闇勇者ハヤトの前に思わぬ障害が現れたのだ。
三人の人物が闇勇者ハヤトの前に、再び姿を現すのであった。
「お父様!」
普段のドレスに着替えたミレイア王女は父である国王の元を訪れた。
「い、一体どうしたのですか! どうして魔王軍が我が王国に!」
ミレイア王女は叫んだ。
「う、うむ……魔王軍に恐ろしい手勢が加わったと聞き及んでおる。その手勢は優勢だったエルフの軍を退け、このエスティーゼ王国に攻め入ってきたのだ」
「な、なんですって!」
「敵の侵攻は早いと聞く! もう余り時間もない! すぐに逃げよう! ミレイア! この城には隠し通路があるのだ! その隠し通路から、城壁の外へ出る事ができる!」
国王はそう、平然とそう、言い放った。普通、こういった有事の時に国王は「最後まで残る、それが国王の務めだ」など、恰好の良い事を言うものではないだろうか。だが、それも毅然とした王の場合だった。この国王にそんな威厳などない。
それよりも自分の身の安全。命が最優先なのだ。
いかにも低俗な、それでいて実に人間らしい。この王国の国王はそういう人種だったのだ。
「そ、そうですね! 逃げましょう! お父様! さっさと! 国民など見捨てて!」
王女ミレイアも同意見の様子だった。流石に親子である。血の通った親子なのだから性格はよく似ているのであった。
「おいおい……酷いじゃないか。大切な国民を見捨てて、自分達だけ逃げ出すなんてさ」
どこからか声が聞こえてくる。その声は国王にとっても、ミレイア王女にとっても聞き覚えのある声であった。
「だ、誰ですの! あ、あなたは!」
目の前に現れたのは間違いなく勇者ハヤトであった。だが、雰囲気が違う。目が据わっているし、前にはなかった凄みがある。不気味な、夥しいオーラを放っていたのである。生物として、直感的に危険な存在であるという事を悟った。
そして隣にいる女。絶世の美女ではあるが、恐らくは魔族。強力な敵であると思って間違いはなさそうだ。普通の人間では到底敵わないような難敵に違いない。自分達でどうこうできる相手ではなかった。
「あ、あなたは! ま、まさか……我がエスティーゼ王国が召喚した、勇者ハヤト様ですの!」
「久しぶりだな……ミレイア王女。僕の事なんて、今後の人生で一生関わる事はないなんて思ってたんじゃないかな……くっくっく」
闇勇者ハヤトは不気味な笑みを浮かべる。
「き、貴様! 私の娘に何を!」
「どけ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「お父様!」
娘を守ろうとした国王は闇勇者ハヤトに蹴飛ばされた。
「安心しなよ……そんなに簡単には殺さない。お前達はじっくり、苦しみを与えて殺すって僕は決めているんだ」
「や、やっぱりですの……戦況を大きく一変させた魔王軍の戦力って、勇者様でしたの……」
「そうだよ。僕だよ。僕が魔王軍についたから、大きく戦況が変わったんだ」
「わ、私達をどうするつもりですの……ま、まさか、私達を殺すおつもりなのでしょうか?」
「そのまさか、だとしたらどうする?」
にやり、と闇勇者ハヤトは笑った。
「嫌! 死にたくない! な、なんでもしますから! 私を殺さないで!」
『私』を。『お父様』と言わないあたり、ミレイア王女の身勝手さが浮き彫りになっていた。それはまあ、親子ともどもではあるが……。国民を見捨て、真っ先に逃げ出そうとしていたのだから。
「わ、私、勇者様と結婚します! 結婚しますから殺さないで! あなたの物になります!」
「ダメだ……お前達が僕にした事を僕は許しはしない」
「靴……靴だって舐めます……ほらっ……犬のようにあなたに忠誠を誓います……だから、私の命だけはお助けください」
そう言って、ミレイア王女は本当に闇勇者ハヤトの靴を舐め始めた。
「ダメだ」
「きゃっ!」
闇勇者ハヤトはミレイア王女を蹴飛ばした。
「お前達には苦しみを与えてやる。これ以上はないと言う苦しみを。そして、死んだ方がマシだと思わせてやる。お前達の口から、殺して欲しいと懇願してくるまで、死ぬ以上の苦しみを与え続けてやる」
「や、やめてくれ! ど、どうか助けてくれ! この娘、ミレイアは貴様にやる! 煮るなり焼くなり好きにしてくれ! だからわしだけはどうか助けてくれ! 頼む! この通りだ!」
国王は闇勇者ハヤトに土下座をした。
「嫌! お父様はどうなってもいいですわ! だから、どうか私に苦痛を与えないでくださいませ! 私、痛いのも苦しいのも苦手なんですの! それで絶対殺さないで! お父様には何をしてもいいですから! この通りですわ!」
ミレイア王女も闇勇者の前に土下座した。
「くっくっく。お前達はやっぱり親子だな……よく似ているよ」
闇勇者ハヤトは嘲るような笑みを浮かべた。
「とりあえずは指の一本でも斬り落とそうか。安心していいよ。簡単には殺さない。死にそうになっても回復魔法(ヒーリング)で回復させるし、本当に死んでも蘇生魔法(レイズ)で生き返らせるから。『死にたい。殺してくれ』って本気で言うようになるまで、それを何度でも繰り返してやるよ」
「い、いやっ! いやっ! いやああああああああああああああああああああああ!」
ミレイア王女は悲鳴を上げた。
――しかし。
「そこまでです!」
声が響く。闇勇者ハヤトの前に思わぬ障害が現れたのだ。
三人の人物が闇勇者ハヤトの前に、再び姿を現すのであった。
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