可愛いだけの義妹に聖女の地位と婚約者を奪われました～元婚約者が土下座で復縁を迫ってきますが、今更元には戻れません～

１話

「アリエル！　君との婚約を破棄させて貰う！」

　私――アリエルは王宮で聖女として務めてきました。しかし、突如婚約者である皇太子ダニエル様に婚約破棄されてしまうのです。

「な、なぜですか！　ダニエル様！　いきなり婚約を破棄なんてそんな！」

　私は長年王国ハルモニアに聖女として務め、そしてその活躍を認められ、皇太子と婚約する事になったのでした。しかし、私は当然皇太子に婚約を破棄されてしまいます。

「理由はだな――」

　その時。物陰から可愛らしい少女が現れました。彼女は私の義妹のアリーシャです。アリーシャは確かに可愛らしい少女です。正直私より可愛らしいかもしれません。男性がほだされてしまうのも無理はないでしょう。

　ダニエル様も同じです。すっかりアリーシャの虜となっていました。その目には既に私の事が映っていない様子でした。

　アリーシャは私に対して躊躇う事なく、ダニエル様に寄り添うのです。

「お義姉様……見てわかりませんこと？　ダニエル様と私はこのような仲でございますの。お義姉様が入り込む心の隙間は僅かにもございませんのよ」

　義妹アリーシャ・ローズベリーは私の義理の妹です。妹は血縁があるという事で養子の私よりも甘やかされて育てられました。さらにはその可愛らしい見た目、立ち振る舞いから何の苦労もなく育ってきたのです。

対する私は聖女として厳しい修行をしてきました。当然のように女の子らしい生活は一切してきませんでした。

そんな中で初めて恋心を抱いたのが王宮で聖女として働いていた時に出会ったダニエル様でした。

やっとの事で結ばれたと思ったのに、可愛いだけで何の苦労もしていない義妹に奪われるのかと思うと。

私は激しい落胆を覚えたのです。

「そういうわけでアリエル。君との婚約は解消させて貰うよ。それと王宮からも出て行ってくれないか？　君も色々と居づらいだろう？　これは君のためを思って言ってるんだよ」

　皇太子ダニエルはそう言ってきます。ですが私には単に目障りだから消えて欲しいと思っているようにしか感じられませんでした。

私のためだと言っているのは所詮は言い訳だとしか感じられません。自己保身のための綺麗ごとです。

「わかりました。ダニエル様との婚約破棄の件、謹んでお受けします」

「そうか。短い間だったが、ありがとう。聖女としての仕事もご苦労であったな」

　しかし。私は不安でした。可愛いだけの義妹に果たして聖女としての代わりが務まるのか。どうか。

　ですが私はもうお役御免なようです。邪魔者は速やかにこの場を去る以外にありませんでした。