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突如として国外追放された私は途方に暮れました。
「うーん……困りましたね」
これからどう生きればいいのでしょうか。あの義妹アリーシャのせいで、そして元婚約者のダニエルのせいで今後の人生プランが大きく変わってしまいました。
私の未来は白紙になったのです。まあいいです。白紙という事はこれからどんな色のクレヨンで塗ってもいいという事ではありません。
未来がバラ色とは限りませんが、どんな色で塗るのも自由です。そう、私は自由の身になったのです。
さて、これからどんな色のクレヨンで塗っていけばいいのか、そう、考えていた時でした。
近くに山がありました。
「あれは? ……」
近くに一台の馬車が走っています。豪華な馬車。それに血統のよさそうな白い馬に馬車を引かせています。
きっとあれは王族のものでしょう。中にはきっと素敵な王子様が乗っているに違いません。
馬車が私の前を素通りしようとしたその時でした。山が突如、土砂崩れを起こしました。
きっと雨で地盤がぬかるんでいたのでしょう。土砂が物凄い勢いで馬車を飲み込むべく襲い掛かっていきます。
ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
白い馬が悲鳴をあげます。馬主も驚いています。
「あ、危ない!」
私は聖女としての魔力を発動させます。聖なる結界で馬車を土砂崩れの危機から救ったのです。
「ふう……何とかなりました」
私は胸を撫でおろします。どうやら間一髪のところで馬車は無事で済みました。
「王子! ……無事でしたか?」
その時でした。馬車から一人の青年が降りてくるのです。
「え?」
馬車から降りてきたのは色白で金髪の私の理想を体現したような王子様でした。婚約者であるダニエルも美形ではありましたが、そのダニエルをもってしても比べ物にならないくらいの美形です。
「そうか……突如結界のようなものが僕達を守ってくれたように感じるんだが」
「それはもう、王子。あそこのお嬢様がやってくれたのです! あのお方はきっと聖女様でございましょう」
使用人が私を指します。
「失礼……聖女のお嬢様。お名前を教えてくれませんか? 私の名はエドワード。エドとお呼びください。隣国レガリアの王子です」
なんと、私が命を救った相手は隣国の王子様だったのです。なんという偶然でしょうか。
「やっぱり、王子様だったのですか……。私の名はアリエルと申します」
「そうですか。アリエル様。あなた様は命の恩人です。この御恩どう返せばいいか」
「いえ、気にしないでください。目の前の人の命を救う事など、聖女として当然の務めです。いえ、正確には私は聖女ではありませんでした。元聖女です。今の私は何者でもありません」
私は苦笑します。今の私は聖女ではなく元聖女。今は無職のようなものです。どこにも属していない、宙ぶらりんの存在。
「どういう事でしょうか? 元聖女? よろしければ、もっと詳しく説明してはくれませんか?」
「はい。特別この後の予定もありません。構いませんよ」
こうして私は聖女としての立場を追われ、国外追放されたことを説明した。
「なんと! そんな事があったのですか!」
エド王子は驚きます。
「ええ……突然の事で私も驚きました」
「よろしければアリエル様。我が王国に起こしになってくれませんか?」
「え? けど……」
「あなた様の力がきっと我が王国レガリアには必要なのです。それに、あなた様には命を救われました。ですので、この御恩を返したいのです」
「私の力が必要なのですか?」
「ええ……是非いらしてください。きっと国中があなたが来ることを歓迎してくれます」
彼は私に語り掛けてきます。迷う事などありませんでした。どのみち、私にはもう帰る国も家もないのです。
「わかりました。では、その王国まで向かいましょう」
「ありがとうございます。聖女アリシア様。どうか馬車に乗ってください。一緒に王国まで向かいましょう」
こうして私はエド王子と同じ馬車に乗りました。そして隣国、王国レガリアへと向かう事になったのです。
「うーん……困りましたね」
これからどう生きればいいのでしょうか。あの義妹アリーシャのせいで、そして元婚約者のダニエルのせいで今後の人生プランが大きく変わってしまいました。
私の未来は白紙になったのです。まあいいです。白紙という事はこれからどんな色のクレヨンで塗ってもいいという事ではありません。
未来がバラ色とは限りませんが、どんな色で塗るのも自由です。そう、私は自由の身になったのです。
さて、これからどんな色のクレヨンで塗っていけばいいのか、そう、考えていた時でした。
近くに山がありました。
「あれは? ……」
近くに一台の馬車が走っています。豪華な馬車。それに血統のよさそうな白い馬に馬車を引かせています。
きっとあれは王族のものでしょう。中にはきっと素敵な王子様が乗っているに違いません。
馬車が私の前を素通りしようとしたその時でした。山が突如、土砂崩れを起こしました。
きっと雨で地盤がぬかるんでいたのでしょう。土砂が物凄い勢いで馬車を飲み込むべく襲い掛かっていきます。
ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
白い馬が悲鳴をあげます。馬主も驚いています。
「あ、危ない!」
私は聖女としての魔力を発動させます。聖なる結界で馬車を土砂崩れの危機から救ったのです。
「ふう……何とかなりました」
私は胸を撫でおろします。どうやら間一髪のところで馬車は無事で済みました。
「王子! ……無事でしたか?」
その時でした。馬車から一人の青年が降りてくるのです。
「え?」
馬車から降りてきたのは色白で金髪の私の理想を体現したような王子様でした。婚約者であるダニエルも美形ではありましたが、そのダニエルをもってしても比べ物にならないくらいの美形です。
「そうか……突如結界のようなものが僕達を守ってくれたように感じるんだが」
「それはもう、王子。あそこのお嬢様がやってくれたのです! あのお方はきっと聖女様でございましょう」
使用人が私を指します。
「失礼……聖女のお嬢様。お名前を教えてくれませんか? 私の名はエドワード。エドとお呼びください。隣国レガリアの王子です」
なんと、私が命を救った相手は隣国の王子様だったのです。なんという偶然でしょうか。
「やっぱり、王子様だったのですか……。私の名はアリエルと申します」
「そうですか。アリエル様。あなた様は命の恩人です。この御恩どう返せばいいか」
「いえ、気にしないでください。目の前の人の命を救う事など、聖女として当然の務めです。いえ、正確には私は聖女ではありませんでした。元聖女です。今の私は何者でもありません」
私は苦笑します。今の私は聖女ではなく元聖女。今は無職のようなものです。どこにも属していない、宙ぶらりんの存在。
「どういう事でしょうか? 元聖女? よろしければ、もっと詳しく説明してはくれませんか?」
「はい。特別この後の予定もありません。構いませんよ」
こうして私は聖女としての立場を追われ、国外追放されたことを説明した。
「なんと! そんな事があったのですか!」
エド王子は驚きます。
「ええ……突然の事で私も驚きました」
「よろしければアリエル様。我が王国に起こしになってくれませんか?」
「え? けど……」
「あなた様の力がきっと我が王国レガリアには必要なのです。それに、あなた様には命を救われました。ですので、この御恩を返したいのです」
「私の力が必要なのですか?」
「ええ……是非いらしてください。きっと国中があなたが来ることを歓迎してくれます」
彼は私に語り掛けてきます。迷う事などありませんでした。どのみち、私にはもう帰る国も家もないのです。
「わかりました。では、その王国まで向かいましょう」
「ありがとうございます。聖女アリシア様。どうか馬車に乗ってください。一緒に王国まで向かいましょう」
こうして私はエド王子と同じ馬車に乗りました。そして隣国、王国レガリアへと向かう事になったのです。
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