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第1話 外れスキルを授かり追放
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スキル。
それは15歳の時に、誰にでも授けられる一つだけの才能(ギフト)の事である。
誰にでも授けられる才能(ギフト)ではあるが、与えられるスキルは千差万別であり、その後の運命を大きく変える事ができるものだった。
ある剣聖の家系に生まれた息子――グラン・ロズベルグ。彼の運命もまた、15歳のスキル継承の儀の際に大きく変わっていく事になる。
◇
俺——グラン・ロズベルグは15歳となり、スキル継承の儀を迎える事となる。そしてスキル継承の儀は神殿と言われる、神聖な場所で司祭により取り扱われる事となったのだ。
そしてそのスキル継承の儀には義弟であるヘイトもまた、参加していた。
「腕が鳴るな……兄貴」
「……ああ」
「とうとう、この日がやってきたな。グラン……そしてヘイトよ」
父であるクレイ・ロズベルグもまた俺達のスキル継承の儀に参加をしていた。どんなスキルを授かるかはその後の人生を決定する重要な出来事(イベント)だ。気になって見に来るのも無理がない話であった。
未届け人は父だけではない。多くの貴族の淑女(レディ)達も、俺達がどんなスキルを授かるのか、興味深々といった様子だった。
「グラン様とヘイト様は……一体、どんなスキルを授かるのかしら」
「きっと、すっごいスキルを授かるに気まってるわ……」
「私も玉の輿を狙っちゃおうかしら」
「ずるい! 抜け駆けは許さないわよ!」
貴族の娘達は歴史ある名家系に嫁ぐ事を名誉としている。その為、剣聖の家系であるロズベルグ家の息子達をの妻の座を狙っている者も多かった。
彼女達にとっても、彼等がどんなスキルを授かるのかは注目の出来事(イベント)だったのである。
「貴様達の運命を父が見届けようではないか……良いか。良いスキルを授かるのだぞ」
父――クレイはそう、俺達に言葉を伝えてきた。剣聖の家系に生まれた俺と――それから義弟であるヘイトにとって、どんなスキルを授かるのかは、一般の家庭に生まれ育った人間に比べて、より大きくその後の人生を左右する事になるのだ。
「「はい! お父様!」」
俺達は父の期待に応えようと意気込んでいた。だが、その後の出来事は俺と、周囲からの期待を裏切るような、散々な出来事だったのだ。
「それでは、スキル継承の儀を始めようではないか……」
そう、司祭は俺達に告げてくる。
「どちらが先にスキルを授かるのだ?」
「どうする? ヘイト」
「へっ……だったら俺から先に儀式を受けさせて貰うぜ。兄貴」
ヘイトはにやついた笑みを浮かべながら、司祭の前に立った。凄い自信だった。この大事な場面で笑みを浮かべる事ができるなんて。自分は必ず優れた儀式を授かるという、絶対の自信があるのであろう。
「それではヘイトよ。まずはそなたからスキルを授けようではないか」
司祭はそうヘイトに告げた。授ける……とは言ったものの。どんなスキルが授けられるかは大きな運命の力により、既に決定している。別に司祭が選択するわけではないのだ。俺達はただ、その運命の力——神の決定に従い、受け入れるより他になかった。
司祭の手に不思議な魔力が宿る。
「ふっ! はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
司祭はヘイトにスキルを授けた。
「ヘイト・ロズベルグよ! そなたに授けられたスキルは『剣神』であるぞ!」
「『剣神』だって!? どんなスキルなんですか!? 司祭様!」
「うむ! 数多の強力な剣技を習得する、珍しいスキルであるぞ! このスキルは当たりと言っていいスキルであるぞ! 良かったな! ヘイトよ!」
司祭の言葉にヘイトの顔は笑顔になる。
「やったぜ! 兄貴! 見たか!」
「良くやったぞ……ヘイトよ。血は繋がらずとも、流石は我が息子だ。貴様が良いスキルを授かった事、父は誇りに思うぞ」
クレイは喜びのあまり涙を流しそうになるが、何とか堪える。
「ヘイト様は凄いスキルを授かったのね!」
「良かった……これで名門であるロズベルグ家も安泰ね!」
「後はその妻の座を私達が射止めれば私達の未来も、お家の将来も安泰ね!」
観客(ギャラリー)である貴族の娘達は自分達の事のように喜んでいた。
「へっ……次は兄貴の番だな。良いスキルを授かれよ……兄貴」
「ああっ……わかってるよ」
俺は司祭の前に立つ。
「次はグラン様の番ね」
「ええ……グラン様はどんなスキルを授かるのかしら」
「楽しみだわ」
貴族の娘達は目を輝かせて、その光景を見守っていた。
「うむ! それでは次は汝にスキルを授けようではないか! グラン・ロズベルグよ!」
「は、はい! 司祭様! よろしくお願いします!」
俺は司祭に頭を下げ、頼み込んだ。
「うむ! では行くぞ! グランよ! 今からそなたにスキルを授けようではないか!」
ヘイトの時と同じように、司祭の両手に不思議な魔力が満ち溢れる。そして、その魔力が放たれた。
「ふっ! はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
司祭は俺にスキルを授けた。
「こ、これはっ! い、一体! どういう事だ!」
司祭は目の色を変えた。
「一体、グラン様はどんな凄いスキルを授かったのかしら!」
「楽しみだわ!」
「剣聖の息子ですもの! ヘイト様に負けない、すっごいスキルを授かったに決まっているわ!」
やがて来る残酷な運命を知らない、無知な貴族の娘達ははしゃいでいた。
「司祭様! どうなされたのですか! グランの奴は一体、どんなスキルを授かったのですか! グランは剣聖の家系に恥じない、素晴らしいスキルを授かったのですよね!」
不穏な空気を感じたクレイは血相を変えて司祭に詰め寄る。
「う……うむ。それが……なんと言えばいいのやら」
「司祭様! 正直におっしゃってください! グランの奴がどんなスキルを授かったのか! 我がロズベルグ家の命運をかけた一大事なのですぞ! 知らなければどうにもなりませぬ!」
「……そうだな。そうであれば嘘偽りなく真実を伝えようではないか。汝の息子、グランが授かったスキルは『建築(ビルド)』だ」
「グランが授かったスキルが『建築(ビルド)』ですと……そんな馬鹿な」
「一体……どういう事なの」
「グラン様が授かったスキルが『建築(ビルド)』スキルですって……」
『建築(ビルド)』スキル。そのスキルは非戦闘用のスキルであり、珍しくもなんともない、ありきたりなスキルだ。主に建物を作る時に役立つ、大工工事の際に使うような、鍛冶師のような裏方が授かるスキルなのである。
とても剣聖の家系に息子に望まれるようなスキルではなかった。俺が授かったスキルは間違いなく、外れスキルに分類される。
「そんな馬鹿な! 非戦闘用のスキルではありませんか! それではこのグランの奴は闘う事すらできないというのですか!」
「闘う事が不可能ではありませんが……戦闘向けのスキルではないのは確かです」
「そんな! 馬鹿な! 私の息子が闘う事もできないスキルを授かるなどと!」
理不尽な運命にクレイは嘆いた。そして憤った。やり場のない憤りの矛先は当然のように俺に向いてきたのだ。
「この役立たずがっ!」
「ぐぼっ!」
俺はクレイに殴られた。口の中を切ったからか、血の味がする。
「剣聖の家系に生まれながら、こんな役にも立たない外れスキルを授かりおって! 本日をもってグラン! 貴様は破門とする! ロズベルグ家は貴様の義弟であるヘイトに継がせる事とする!」
そして、地に伏した俺にクレイはそう、宣言してきたのだ。
「そ、そんな! 嘘ですよね! お父様! 血の繋がらないヘイトにロズベルグ家を継がせるなんて、そんな!」
「致し方ない……こういう非常時の為に私は養子を取ったのだからな。血がつながる息子ではあるが、優秀なスキルを授かったヘイトに継がせるより他にない……」
「なんだ……残念。グラン様はろくなスキルを授からなかったのね」
「玉の輿は無理になったのね……」
「グラン様……可哀想。あんな『建築(ビルド)』だなんて、あんな外れスキルを授かるなんて……」
貴族の娘達もまた、グランが外れスキルを授かった事を嘆いている。
「へっ……安心しろよ。兄貴、ロズベルグ家の跡はしっかりとこの俺、ヘイト様が引き継いでやるぜ!」
「……そんな、ヘイト。あんなに一緒に剣の稽古をしてきたじゃないか。それなのに、お前も俺の事を見捨てるのか!」
「呪うならてめーの運命を呪いな! この馬鹿兄貴が! 『建築(ビルド)』なんて闘えもしない外れスキルを授かったてめーの運命をよ! ロズベルグ家には闘えもしない無能は必要ねーんだよ! ぺっ!」
「うっ!」
あろう事か、ヘイトの奴は俺に唾を吐きかけてきた。あまりの扱いの酷さに、精神的苦痛を覚えた。
「……それでは、俺はこれからどうすればいいのですか?」
「貴様は北方の辺境にでも行くが良い! そしてそこを開拓し、一目につかないように暮らせ! 幸い貴様の授かったスキルは戦闘には向かないが……そういった役割には適している。辺境を開拓し、豊にすれば少しは世の中の役に立てるというもの」
俺はクレイにそう告げられる。
「そんな……あんななにもない辺境に行けというのですか……危険な場所でモンスターも沢山出るのに」
「いいからさっさと出て行け! グランよ! 貴様の顔など二度と見たくはないわ!」
「あばよ……無能兄貴。二度と顔を合わせる事はねーだろうけどな。くっくっく! あっはっはっはっは! せいぜい野垂れ死にしないように頑張れよ!」
「仕方ないわ! こうなったらクレイ様の妻の座を狙うのよ!」
「玉の輿の席が減ったのは残念だけど、こうなったら仕方ないわね!」
「ええっ! グラン様――いえ、グランの事なんてもうどうでもいいわ! 勘当されたんですもの! もうグランはロズベルグ家とは何の関係もない、ただの一般の人よ!」
義弟であるヘイトにも貴族の娘達にも散々に言われ、こうして俺はロズベルグ家を追い出された。
そして北の辺境に行かざるを得なかったのである。
◆◆◆
作者からのお願い。この作品はカクヨムコン7のハイファン部門にエントリーしています。残り期間が大変タイトになっている為、読者選考を通過をする為にブクマ評価、応援の程よろしくお願いします!
それは15歳の時に、誰にでも授けられる一つだけの才能(ギフト)の事である。
誰にでも授けられる才能(ギフト)ではあるが、与えられるスキルは千差万別であり、その後の運命を大きく変える事ができるものだった。
ある剣聖の家系に生まれた息子――グラン・ロズベルグ。彼の運命もまた、15歳のスキル継承の儀の際に大きく変わっていく事になる。
◇
俺——グラン・ロズベルグは15歳となり、スキル継承の儀を迎える事となる。そしてスキル継承の儀は神殿と言われる、神聖な場所で司祭により取り扱われる事となったのだ。
そしてそのスキル継承の儀には義弟であるヘイトもまた、参加していた。
「腕が鳴るな……兄貴」
「……ああ」
「とうとう、この日がやってきたな。グラン……そしてヘイトよ」
父であるクレイ・ロズベルグもまた俺達のスキル継承の儀に参加をしていた。どんなスキルを授かるかはその後の人生を決定する重要な出来事(イベント)だ。気になって見に来るのも無理がない話であった。
未届け人は父だけではない。多くの貴族の淑女(レディ)達も、俺達がどんなスキルを授かるのか、興味深々といった様子だった。
「グラン様とヘイト様は……一体、どんなスキルを授かるのかしら」
「きっと、すっごいスキルを授かるに気まってるわ……」
「私も玉の輿を狙っちゃおうかしら」
「ずるい! 抜け駆けは許さないわよ!」
貴族の娘達は歴史ある名家系に嫁ぐ事を名誉としている。その為、剣聖の家系であるロズベルグ家の息子達をの妻の座を狙っている者も多かった。
彼女達にとっても、彼等がどんなスキルを授かるのかは注目の出来事(イベント)だったのである。
「貴様達の運命を父が見届けようではないか……良いか。良いスキルを授かるのだぞ」
父――クレイはそう、俺達に言葉を伝えてきた。剣聖の家系に生まれた俺と――それから義弟であるヘイトにとって、どんなスキルを授かるのかは、一般の家庭に生まれ育った人間に比べて、より大きくその後の人生を左右する事になるのだ。
「「はい! お父様!」」
俺達は父の期待に応えようと意気込んでいた。だが、その後の出来事は俺と、周囲からの期待を裏切るような、散々な出来事だったのだ。
「それでは、スキル継承の儀を始めようではないか……」
そう、司祭は俺達に告げてくる。
「どちらが先にスキルを授かるのだ?」
「どうする? ヘイト」
「へっ……だったら俺から先に儀式を受けさせて貰うぜ。兄貴」
ヘイトはにやついた笑みを浮かべながら、司祭の前に立った。凄い自信だった。この大事な場面で笑みを浮かべる事ができるなんて。自分は必ず優れた儀式を授かるという、絶対の自信があるのであろう。
「それではヘイトよ。まずはそなたからスキルを授けようではないか」
司祭はそうヘイトに告げた。授ける……とは言ったものの。どんなスキルが授けられるかは大きな運命の力により、既に決定している。別に司祭が選択するわけではないのだ。俺達はただ、その運命の力——神の決定に従い、受け入れるより他になかった。
司祭の手に不思議な魔力が宿る。
「ふっ! はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
司祭はヘイトにスキルを授けた。
「ヘイト・ロズベルグよ! そなたに授けられたスキルは『剣神』であるぞ!」
「『剣神』だって!? どんなスキルなんですか!? 司祭様!」
「うむ! 数多の強力な剣技を習得する、珍しいスキルであるぞ! このスキルは当たりと言っていいスキルであるぞ! 良かったな! ヘイトよ!」
司祭の言葉にヘイトの顔は笑顔になる。
「やったぜ! 兄貴! 見たか!」
「良くやったぞ……ヘイトよ。血は繋がらずとも、流石は我が息子だ。貴様が良いスキルを授かった事、父は誇りに思うぞ」
クレイは喜びのあまり涙を流しそうになるが、何とか堪える。
「ヘイト様は凄いスキルを授かったのね!」
「良かった……これで名門であるロズベルグ家も安泰ね!」
「後はその妻の座を私達が射止めれば私達の未来も、お家の将来も安泰ね!」
観客(ギャラリー)である貴族の娘達は自分達の事のように喜んでいた。
「へっ……次は兄貴の番だな。良いスキルを授かれよ……兄貴」
「ああっ……わかってるよ」
俺は司祭の前に立つ。
「次はグラン様の番ね」
「ええ……グラン様はどんなスキルを授かるのかしら」
「楽しみだわ」
貴族の娘達は目を輝かせて、その光景を見守っていた。
「うむ! それでは次は汝にスキルを授けようではないか! グラン・ロズベルグよ!」
「は、はい! 司祭様! よろしくお願いします!」
俺は司祭に頭を下げ、頼み込んだ。
「うむ! では行くぞ! グランよ! 今からそなたにスキルを授けようではないか!」
ヘイトの時と同じように、司祭の両手に不思議な魔力が満ち溢れる。そして、その魔力が放たれた。
「ふっ! はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
司祭は俺にスキルを授けた。
「こ、これはっ! い、一体! どういう事だ!」
司祭は目の色を変えた。
「一体、グラン様はどんな凄いスキルを授かったのかしら!」
「楽しみだわ!」
「剣聖の息子ですもの! ヘイト様に負けない、すっごいスキルを授かったに決まっているわ!」
やがて来る残酷な運命を知らない、無知な貴族の娘達ははしゃいでいた。
「司祭様! どうなされたのですか! グランの奴は一体、どんなスキルを授かったのですか! グランは剣聖の家系に恥じない、素晴らしいスキルを授かったのですよね!」
不穏な空気を感じたクレイは血相を変えて司祭に詰め寄る。
「う……うむ。それが……なんと言えばいいのやら」
「司祭様! 正直におっしゃってください! グランの奴がどんなスキルを授かったのか! 我がロズベルグ家の命運をかけた一大事なのですぞ! 知らなければどうにもなりませぬ!」
「……そうだな。そうであれば嘘偽りなく真実を伝えようではないか。汝の息子、グランが授かったスキルは『建築(ビルド)』だ」
「グランが授かったスキルが『建築(ビルド)』ですと……そんな馬鹿な」
「一体……どういう事なの」
「グラン様が授かったスキルが『建築(ビルド)』スキルですって……」
『建築(ビルド)』スキル。そのスキルは非戦闘用のスキルであり、珍しくもなんともない、ありきたりなスキルだ。主に建物を作る時に役立つ、大工工事の際に使うような、鍛冶師のような裏方が授かるスキルなのである。
とても剣聖の家系に息子に望まれるようなスキルではなかった。俺が授かったスキルは間違いなく、外れスキルに分類される。
「そんな馬鹿な! 非戦闘用のスキルではありませんか! それではこのグランの奴は闘う事すらできないというのですか!」
「闘う事が不可能ではありませんが……戦闘向けのスキルではないのは確かです」
「そんな! 馬鹿な! 私の息子が闘う事もできないスキルを授かるなどと!」
理不尽な運命にクレイは嘆いた。そして憤った。やり場のない憤りの矛先は当然のように俺に向いてきたのだ。
「この役立たずがっ!」
「ぐぼっ!」
俺はクレイに殴られた。口の中を切ったからか、血の味がする。
「剣聖の家系に生まれながら、こんな役にも立たない外れスキルを授かりおって! 本日をもってグラン! 貴様は破門とする! ロズベルグ家は貴様の義弟であるヘイトに継がせる事とする!」
そして、地に伏した俺にクレイはそう、宣言してきたのだ。
「そ、そんな! 嘘ですよね! お父様! 血の繋がらないヘイトにロズベルグ家を継がせるなんて、そんな!」
「致し方ない……こういう非常時の為に私は養子を取ったのだからな。血がつながる息子ではあるが、優秀なスキルを授かったヘイトに継がせるより他にない……」
「なんだ……残念。グラン様はろくなスキルを授からなかったのね」
「玉の輿は無理になったのね……」
「グラン様……可哀想。あんな『建築(ビルド)』だなんて、あんな外れスキルを授かるなんて……」
貴族の娘達もまた、グランが外れスキルを授かった事を嘆いている。
「へっ……安心しろよ。兄貴、ロズベルグ家の跡はしっかりとこの俺、ヘイト様が引き継いでやるぜ!」
「……そんな、ヘイト。あんなに一緒に剣の稽古をしてきたじゃないか。それなのに、お前も俺の事を見捨てるのか!」
「呪うならてめーの運命を呪いな! この馬鹿兄貴が! 『建築(ビルド)』なんて闘えもしない外れスキルを授かったてめーの運命をよ! ロズベルグ家には闘えもしない無能は必要ねーんだよ! ぺっ!」
「うっ!」
あろう事か、ヘイトの奴は俺に唾を吐きかけてきた。あまりの扱いの酷さに、精神的苦痛を覚えた。
「……それでは、俺はこれからどうすればいいのですか?」
「貴様は北方の辺境にでも行くが良い! そしてそこを開拓し、一目につかないように暮らせ! 幸い貴様の授かったスキルは戦闘には向かないが……そういった役割には適している。辺境を開拓し、豊にすれば少しは世の中の役に立てるというもの」
俺はクレイにそう告げられる。
「そんな……あんななにもない辺境に行けというのですか……危険な場所でモンスターも沢山出るのに」
「いいからさっさと出て行け! グランよ! 貴様の顔など二度と見たくはないわ!」
「あばよ……無能兄貴。二度と顔を合わせる事はねーだろうけどな。くっくっく! あっはっはっはっは! せいぜい野垂れ死にしないように頑張れよ!」
「仕方ないわ! こうなったらクレイ様の妻の座を狙うのよ!」
「玉の輿の席が減ったのは残念だけど、こうなったら仕方ないわね!」
「ええっ! グラン様――いえ、グランの事なんてもうどうでもいいわ! 勘当されたんですもの! もうグランはロズベルグ家とは何の関係もない、ただの一般の人よ!」
義弟であるヘイトにも貴族の娘達にも散々に言われ、こうして俺はロズベルグ家を追い出された。
そして北の辺境に行かざるを得なかったのである。
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作者からのお願い。この作品はカクヨムコン7のハイファン部門にエントリーしています。残り期間が大変タイトになっている為、読者選考を通過をする為にブクマ評価、応援の程よろしくお願いします!
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