外れスキル【建築】持ちの俺は実家を追放される。辺境で家作りをしていただけなのに、魔王城よりもすごい最強の帝国が出来上がってた

つくも/九十九弐式

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第3話 北の辺境

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 森でティアと出会い、仲間になった後、俺達は森を歩き続けた。そして長い時間を経て、ついに森を抜けたのである。

「ここが北の辺境か……」

 そしてついに俺達は北の辺境に辿り着いた。

「見事に何もない……荒れ果てた場所ですね」

 酷い場所だった。草木が一本も生えていない、荒れ果てた大地。ここが魔界の大地だと言われたとしても別に驚かないだろう。

 植物もなければまともな動物もいない。食糧を得るのにも苦労する事だろう。この北の辺境はロズベルグ家の私有地でもある為、開拓する事を命じられたが……こんな荒れ果てた何もない大地など、そもそも論として誰も必要がない。

 資産価値がない為、売値もつかないだろう。わかってはいた事だが、厄介払いを俺はされたというわけだ。
 
 ろくなスキルを授からなかった為、その後の人生の事など何も考えていなかったのだろう。我が父ながら、あまりに冷血が過ぎた。血も涙もないとはこの事だ。俺が野たれ死のうが、周りに迷惑をかけなければ関係ないのである。

 結局は名家であるロズベルグ家の面子を守りたいだけだった。親子の絆よりも面子を優先する。そういう父親だ。血縁よりも当たりスキルを手に入れたヘイトを跡継ぎにした事が何よりもの証拠である。

 ――そうは言っても愚痴っても仕方がない。俺はこの北の辺境を開拓し、生きていくより他にないのだ。

「まず何をされるのですか? グラン様」

 そう、リノアが聞いてくる。エルフの姫であるリノアに様つけされるのも違和感があったが……まあいい。今はそんな事どうでも良かったのだ。

「これからこの環境で暮らしていくうちで最重要なものはいくつかある……」

 人間が生きていく上で。勿論、エルフや獣人も含む。絶対必要なものがある。物事には優先順位というものが存在した。
絶対必要なもの>あれば便利なもの。である。絶対必要なものとは、例えるなら衣食住である。このうちでも、衣類の優先度は若干低い。特に優先されるのは住居と食糧である。この二つが整えば、とりあえずは生きていく事はできる。退屈な生活かもしれないが、それでも生きていくという大前提の目的は果たす事ができるのだ。

 その衣食住を達成した後に、あれば便利なものを整える余裕が生まれてくるのだ。

「とりあえずは住居が必要だ。人間もエルフも、住むところがないと生きていけないからな……屋根もない荒れ果てた大地で寝るのはリノアも嫌だろう?」

 野宿なんてまっぴらごめんだった。いつモンスターが襲ってくるかもわからない、北の辺境で野宿なんてするのはあまりに危険すぎる。それにこの辺りは天候がすぐに変わる。大雨や突風が吹き荒れる、過酷な大地だ。今は晴れているかもしれないが、天気が悪くなったらとても安心して寝る事はできない。

 ろくに眠れなくなったら、体力や気力を回復する事ができないのだ。そのうちに間違いなく倒れてしまう事だろう。

「確かに……それは嫌ですね。モンスターに襲われて、食べられてしまうかと思うと、怖くて眠る事もできませんし。雨風も凌げません」

「そうだ。だから最優先するべきは住居なんだ」

 俺はリノアにそう告げる。食糧も重要ではあるが、とりあえずのところ僅かではあるが備蓄がある。しばらくは問題ないはずだ。凡そ一週間分。二人で分ければ三日程だが。そのうちに簡素ではあっても、何とか住居を用意する必要性があった。

「住居ですか……ですが、どうやって」

「何とか木材を探そう……荒れ果てた北の辺境でも、探せば木材くらいあるかもしれない」

 材料さえ見つかれば、俺の【建築(ビルド)】スキルで建築工事を行う事ができる。いくら俺のスキルが建築工事に適していたとしても、無の状態から材料を作り出す事はできない。材料がなければまともな住居を建てる事は困難なのだ。
 
 世の中には何でも、出来る事と出来ない事が存在するのだった。

「ええ……そうですね」

「二人して探そう。木材を」

「はい! そうしましょう!」

 こうして、二人して木材を探す事にした。

 ◇

 ……しばらくしての事だった。

「グラン様! はぁ……はぁ……はぁ」

「ん?」

 ティファが慌てて駆け寄ってきた。

「あっちの方に、大きな樹木を見つけました!」

「本当か! リノア!」

「ええっ! あの大きさでしたら、家を建てるのに十分な大きさだったと思います!」

「すぐに向かおう!」

「はい!」

 俺達は樹木のところへ向かった。

 ◇

「はぁ……はぁ……はぁ」

「あれです! グラン様!」

 しばらく走ると、大きな樹木が見えた。確かに、あれだったのならば家を作れるだけの木材を取り出せそうな程の大きさであった。

「本当だ……リノアの言う通りだ。あの樹木だったら、それなりの木材が手に入るぞ」

「はい! そうですね!」

「お手柄だ、リノア!」

 俺達は樹木が見つかった事を、ただただ無邪気に喜んでいた。——だが、俺達は忘れていたのだ。ここが北の辺境の大地である事を。当然のように、そんな生ぬるい環境でないという事を、喜びのあまり、失念していたのである。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「な、なんだ! 地震か!」

 突如として、大地が揺れ始めた。地震かと思ったが、どうやら違うようだ。

「み、見てください! グラン様! 樹木が動いています!」

「な、なにっ! なんだとっ!」

 樹木が振り返る。その樹木にはまるで人のような、顔があったのだ。そして枝木がまるで手足のように動き始めているではないか。
 ニヤリと樹木が笑みを浮かべた。明らかに普通の樹木ではなかった。

「これはただの樹木ではない! モンスターだ!」

 俺達の前に樹木型のモンスターである【ウッドマン】が姿を現したのだ。

 キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 ウッドマンは突如として奇声を上げた。

 こうして、唐突にウッドマンとの戦闘が始まったのである。


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