外れスキル【建築】持ちの俺は実家を追放される。辺境で家作りをしていただけなのに、魔王城よりもすごい最強の帝国が出来上がってた

つくも/九十九弐式

文字の大きさ
5 / 36

第5話 木の家を作る

しおりを挟む
「ここにしようか……」

 俺達は拠点とする土地を選定した。まあ、ぶっちゃけた話どこでも良かったんだが……。何せ荒れ果てた大地である北の辺境。どこの土地も似たり寄ったりで大差がなかった。だから結局は適当に決めたのだ。

 俺はアイテムポーチから建築資材となる木材×10を取り出し、適当に床に置いた。

「……グラン様、私も何かお手伝いを」

「何もしなくていいよ……そこで見ていてくれ、リノア」

「は、はい……そうですか。そうおっしゃるのでしたら黙って見ております」

 リノアは俺を見守る事にした。

 俺は【建築(ビルド)】スキルを発動した。

「ビルドカッター」

 俺はビルドカッターを作り出す。ビルドカッターは鋭いのこぎりのような刃物である。この刃物で、木材を加工する事が出来るのだ。

 俺はそのビルドカッターで木材を瞬く間に加工していく。俺の頭の中には既に、住まいの設計図が出来ているのだ。

「す、すごいです! あれほどの木材があっと言う間に……」

 リノアは俺の手際の良さに面を食らっていた。

 簡単な基礎工事の跡、俺はビルドハンマーを利用し、瞬く間に家を作り上げていった。

 キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!
  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!

 俺の木工事の音が一日中鳴り響いた。近隣に住居があれば文句(クレーム)でうるさかっただろうが、ここは北の辺境である。俺達以外に誰もいないのが幸いだった。好き勝手に工事が出来るというものだった。

 ものの見事に、丸一日もかければ小さな家が完成したのだ。

「完成だ」

「こんなに一瞬で家を作れるものなのですか……グラン様の授かったスキルは素晴らしいものですね……」

 リノアは感嘆としていた。

「……素晴らしいかどうかは置いておいて、役に立つスキルだとは自分では思うよ……けどダメさ。俺の実家のロズベルグ家は剣聖の家系だったんだから。闘えるかどうか、闘って強いかどうかってだけが重要な評価項目なのさ。その評価項目に俺の授かったスキルは適していなかったんだ」

「ですが、私は感じるんです。グラン様の授かったスキルはこの世界に必要なものなのだと……そして、グラン様がそのスキルを授かった事には大きな価値があるのだという事を……」

「そうだといいんだけどな……今は世界の事なんか考えている暇はない。今考えなきゃいけないのは自分達がどうやって生き残っていくかだ。そして、とりあえずは雨露凌げそうになったのは一歩前進したって事で喜ばしい事だ」

「はい! そうですね! これで野宿をしなくてもいいかと思うと、大変心強くて喜ばしいです」

「そうだな……内装はろくにできていないけど、すぐにベッド作るから」

 木材の量的に、大きな家は作れなかった。プライバシーも何もない。小さな家。犬小屋よりも多少大きいくらいの家だった。

 一部屋しかない、簡素過ぎる間取り。だけど俺達にはそれでも十分だったのだ。野宿よりは随分とマシだった。

「とりあえず、中に入ってみるか」

「はい! 楽しみです!」

 俺達は出来上がった家——『木の家(ウッドホーム)』の中に入った。これが俺の【建築(ビルド)】スキルで築き上げた、最初の住居だった。

 ◇

「うわー……ちゃんとしたお家になっています」

 中を見たリノアは感心していた。

 窓があり……そして床と天井がちゃんとある。だけどそれだけだ。先ほど言ったように、一部屋だけの簡素な間取りだ。それでも一人で住む分には十分だろう。下水道の処理など出来ていない為、排泄などは外でしなくてはならないし、台所などもない為、料理もできないが……。

 それにしてもエルフは排泄などするのか? もしかしたらしないのかもしれない。淑女(レディ)に対して、排泄の質問をするのは流石に憚られた。

「……けどまずいよな」

「何がですか?」

「……その……リノアはエルフとはいえ、女の子じゃないか……それで俺は男なんだ。男女は普通は同衾しないもんなんだよ」

「グラン様は私に対して、何か邪な考えを持っているのですか?」

「持ってはない……断じて。そういうわけではないけど、倫理的に良くないだろう」

「倫理観よりも自分達の生活基盤の方が大事ではありませんか? ちゃんと寝ないと、翌日に差し支えますよ。グラン様にはもっと頑張っていただかなければならないのです……そうしなければ私達の生活が立ち行かなくなってしまいます。違いますか?」

「それもその通りだ……」

「でしたら一緒に寝ましょう。グラン様だけ野宿させて、私だけ屋内で寝る事など出来るはずもありません」

「……そうか。リノアの言う通りだ。待っていてくれ、すぐにベッドを作るから」

 俺は余った木材を利用し、木製ベッドを作り出す。布団も何もない為、非常に硬いがそれでも地面の上に寝るよりは上等だろう。

 こうして俺達は一緒に眠る事になったのだ。家を建てるのに一日を使った為、時刻は既に夜になっていた。日が落ちている。もはや俺達にやれる事などない。

 ◇

「ぐー……すかー……ぴー……むにゃむにゃ……グラン様、もう食べれません……お腹いっぱいです……こんなに食べさせてくれて、私、幸せです……むにゃむにゃ」

 床についたリノアは眠り始めた。よっぽど疲れているという事もあるが、男の俺の隣で平然と眠れるとは、一体どういう神経をしているんだ。もしかして種族が異なると言葉は通じても異性とは見れないのかもしれない。

 心が通じていたとしても雄犬を異性としては見られないだろう。そんな感じなのだろう。

「全く……呑気に寝て」
 
 深く溜息を吐いた。俺もリノアの隣で横になった。

 眠れない……隣に女性がいるから気になってしまうというのもある。それからもう一つ……。

 ぐー……。
 
 腹が鳴った。食糧の備蓄が減っているのだ。あまり食べれていない。お腹が減っているから眠れないのだ。

「明日からは食糧を探さないとなぁ……」

 雨露凌げる住居を確保した俺達の次なる目的は食糧の確保だった。

 こうして、眠れない夜が過ぎていくのであった。 




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...