外れスキル【建築】持ちの俺は実家を追放される。辺境で家作りをしていただけなのに、魔王城よりもすごい最強の帝国が出来上がってた

つくも/九十九弐式

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第25話 リディアのスキルで大砲を作る

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日を跨ぐ。

「……さてと」

 俺達はついに、大砲を作る事になったのだ。

「……やっと私の出番ですね」

 リディアは小さな胸を反らして、偉そうな態度を取る。身体が小さいので子供が大人ぶっているような、そんな違和感を覚えた。

「アダマンタイトの塊と火竜(レッドドラゴン)の鱗を出してください」

「ああ……わかった」

 俺はアイテムポーチから『アダマンタイトの塊』と『火竜(レッドドラゴン)の鱗』を取り出す。

 そして、リディアはそれを目の前にして、精神を統一させる。瞳を閉じ、しばらく経った。重苦しい気配がその場を包み込む。そして、リディアの瞳が大きく見開かれるのだ。

「スキル発動『神域の鍛冶』!」

 初めて彼女がそのスキルを発動させる瞬間を目の当たりにしていた。このスキルを保有していた事で、彼女は魔王軍に追われていたのだ。それほど貴重で有用な価値のあるスキルだという事である。

 俺達はそのスキルが発動するところを拝見させて貰った。

 カンカン! トンキンカンカン! カンカン! トンキンカンカン! カンカン! トンキンカンカン! カンカン! トンキンカンカン! カンカン! トンキンカンカン! カンカン! トンキンカンカン! カンカン! トンキンカンカン!

 リディアは物凄い、手際の良さ、そしてスピードで鍛冶をしていくのであった。瞬く間に、大砲が出来ていく。そして彼女は砲弾も作り出した。

「ふう……できました」

 彼女は額に流れた汗をぬぐった。

 物の数分で彼女は『大砲』と『砲弾』を作り出したのだ。ちなみに大砲は一つに対して、砲弾は100発程作れた。火竜の鱗一個につき、砲弾一個の計算だ。これだけ砲弾があれば弾切れになる心配はあまりない事だろう。

「早いな……ドワーフの鍛冶というのはこんなに早いものなのか」

「普通のドワーフの『鍛冶』スキルだとこうまで早くはできませんし……大砲を作り出す事はできません。普通のドワーフに作れるのは武器や防具、そして装飾品くらいなものです。大砲は兵器と言っていいものですから、『神域の鍛冶』のスキルを持った私しか作れないと言っても過言ではありません」

 リディアは胸を張った。相変わらず子供が偉ぶっているように見えて、無性に可愛く思えた。

「どうですか!? すごいでしょう」

「ああ、凄いなリディア」

 俺はリディアの頭を撫でた。ちょうど撫でやすい高さに彼女の頭はあったからだ。彼女の身長は子供と大差ないのだ。

「ちょ、ちょっと、グラン様! 頭を撫でないでください! 私は子供ではないんですよ! 成人した、立派な淑女(レディ)なんです!」

 リディアは顔を真っ赤にしていう。

「すまない……ちょうど撫でやすいところに頭があったからつい」

「ふん……子ども扱いしないでくださいよ」

 リディアは拗ねていた。子供扱いされることが多いから、彼女にとっての――いや、ドワーフ族全体にとってのコンプレックスなのかもしれない。だが、穴倉に潜むような生活をしている彼等にとっては身体が小さいというのは長所にもなりえた。

 身を潜めたり、狭い所に入っていくには体が小さいほうが何かと都合がいいからだ。その点は巨人族などとは正反対の進化をしていると言える。

 小さくなる事が生存に対して利する事もあれば、大きくなる事が利する事もある。そこら辺はもう、生存戦略の違いであると言えた。

「試しに、大砲を撃ってみましょうか。不具合などがあるかもわかりませんし……弾は一つなくなりますが、この数なら一個くらい構わないと思います」

「そうだな……そうしようか」

 俺達は大砲の試し撃ちを試みる。

「あれを狙いましょう」

「あれって」

 リディアが指さした先には何もなかった。正確に言えば遠くに遠い山が見えたのだが……まさかあれを狙うというのか。飛距離にして数十キロ程はある事だろう。

「……届くのか? あんな遠くの山に」

「届くようには設計されているはずです……計算上は届くはずです。多分……」

「多分って……」

 リディアの言葉にリノアは苦笑した。

「それでは砲弾を装填してください、グラン様」

「ああ、わかった……」

 身体の小さいリディアには到底持てないだろう。それほどに砲弾は大きかったのだ。俺はやっとの事で大砲に砲弾を装填する。

 そしてリディアは砲弾が装填された事を確認すると、大砲のトリガーを引くのであった。

「ファイア(発射)!」

 ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

 リディアの掛け声と共に、大砲から砲弾が放たれた。そして、砲弾は飛んでいき、遥か遠くにある山の頂上付近に着弾したのである。そして大爆発を起こした。山の頂上が大きく欠けたのである。

「どうですか!? なかなかのモノでしょう!?」

 リディアは胸を張り、えっへんと偉そうなポーズを取る。

「凄い威力です……あんなものを食らってしまえば一たまりもありません」

「……ああ、凄い威力だ。確かにこんな兵器があったら心強いな」

 大砲と言う、兵器があれば戦闘になどならないだろう。こんなものがあれば戦闘ではなく、ただの殲滅戦になってしまう。それほどの脅威をこの『大砲』という兵器は秘めていた。

「ですが、この大砲にも注意は必要です。あまり近距離では撃つことはできません。強力すぎるが故に、自分達にも被害が及ぶ可能性があるのです。懐に忍び込まれたら弱いという事です。そこが弱点のひとつ。そしてもう一つは連射ができない事です。砲弾を装填するという作業がいる為、一発撃った後、隙ができてしまいます。その隙を狙われる可能性があるというのがもう一つの弱点であると言えます」

 リディアはそう、『大砲』の説明を付け加えた。

「そうか……こんな強力な『大砲』にも弱点があるんだな」

「弱点を踏まえつつ、運用すれば強力な事は間違いがありません。ただ強力な力は危険を孕んでいます。その旨を往々にして忘れないように」

 リディアはそう語った。何にせよ、俺達の生活を守る、強力な武器が手に入ったのは間違いなかった。この『大砲』があればきっと魔王軍相手だって蹴散らせるはずだ。今度、魔王軍が襲い掛かって来ても、追い払う事ができる。間違いなく。例え相手がどんなに大軍を率いて襲ってきたとしてもだ。

 ――そして、その大砲の出番が間もなくやってくるのであった。魔王軍が人間の国——俺の母国であるアークライトに進軍している事になったからである。魔王軍の魔の手はついに人の国にまで伸びる事になったのだ。

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