私の理想の天使様

ROSE

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天使様は器用貧乏

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 父が酔った勢いでキャンディワゴンの上によじ登って転げ落ち、左腕の骨を折ってしまったのでローラの仕事が随分と増えた。
 祭り前の一番の稼ぎ時であるのに肝心の父が仕事が出来ないのだ。こんなにも馬鹿げた理由で。
 この緊急事態に稼ぎ時であるにも関わらず受けた分の予約以外は一切の新規を取らず、王宮に泊り込んで仕事をしている母も帰ってきた。
「ごめん、ローラ。型紙までは出来てるから、縫製、お願い」
 申し訳無さそうに言う父の言葉に一気に緊張が走った。
「……わ、私などがそのような……」
 ローラだって一応、一通りの技術はあるとは思っているが、父の代理が勤まるとは思えない。やはり経験の差があるし、当然違う人間だ。感性も違う。
 なによりローラの作業速度は遅い方なのだ。締切の近い仕事には向いていない。
「大丈夫、ローラはちょっとゆっくりだけど、仕事は丁寧だし。ああ、フェイのスカートは後回しでいいから。寧ろ、引き伸ばした方があいつ喜ぶだろうし」
「え?」
「ローラに会う口実が増えるって」
 父はそう言って笑う。そして、すぐに母に殴られた。
「あなたが、酔って馬鹿なことをするからローラの負担が増えるんじゃないの。大体あの馬鹿をローラに近づけるんじゃないって何度言ったら分かるの! 少女趣味の変態なのよ?」
 母は鬼の形相だ。
「いや、マリー、別にフェイは少女趣味ってわけじゃなくて……ただ単にかわいいものが好きなだけだよ」
 父の言葉に母は一層怒る。
「そりゃあ、私の娘だもの。ローラは可愛いわよ。でもね、あんたの周りにヘンな奴ばかり集まるから、ローラにもヘンなのしか寄って来なくなっちゃったじゃない! この子は、由緒ある貴族の家に嫁いで、何不自由ない暮らしをするのよ」
「じゃあ、レオナルドの後妻でいいじゃないか。国王の妻だ。何も不自由は無いよ。それに、フェイだって由緒ある貴族なんだよ? それに、凄い金持ちだ」
「馬鹿、歳を考えなさい、歳を。陛下はもう四十四よ? フェイだっていい歳してあんなちゃらちゃらした格好してるようじゃローラを渡せるものですか」
 母はカンカンに怒って、父をポカポカと叩く。
 ああ、こんなに叩かれても、妻が好きで堪らないと、だらけきった顔を見せる父に呆れる。あまりでれでれ叩かれていると顔の形が変わってしまいそうだ。
 これは私が頑張らなくちゃ。
 ローラはぎゅっと鋏を握り締めた。
「ローラ! 来てやったぞ!」
 さて、仕事に取り掛かろうと気合を入れた瞬間、きらきらとした笑みを浮かべた男装の麗人が呼んでもいないのに入ってくる。
 長い髪を片方だけ刈り込んだ攻めた髪型が随分と似合っている。なにより彼女はいつも堂々としている。さすが王族の風格というところだろうか。
 誰よりも自由で、相手の都合は全く考えてくれない。
「軍神様……今日は、デートでは?」
「ああ。ローラとデートする」
 彼女は当然と言わんばかりにローラの目の前にぐいぐいと顔を近づけてくる。
「あの……私、お仕事が……」
「そんなの後でいい。アンリは、今日はローラに祭り用の花飾りを買ってやる」
 それ、作ってるの私よと言いそうになった言葉を飲み込んで、ローラは鋏を机に置く。きらきらと幼子のように輝く碧い瞳を前に、あまり強いことは言えなくなってしまうのだ。
「あのね、軍神様、父が怪我をしてしまって、私がお仕事をしないと、我が家は来月食べていけなくなってしまうわ」
 別にそこまで生活に困ってはいないが、店の信用は落ち、仕事が入らなくなってしまうかもしれない。
 少し大袈裟に言った方が彼女には伝わるだろうと思ってそう告げると、彼女は驚いた顔をする。
「なに? それは大変だ。伯父上に言ってローラが苦労しないように食い物を届けさせよう」
「……あの、私、真っ当に仕事をすれば、大丈夫ですから」
「ああ、ローラはアンリが嫁に貰う。そうすれば、何も心配ないだろう?」
 ぐいぐいと、ローラの手をしっかり握り締める彼女に、驚くばかりで、何も言えなくなってしまう。人の話を聞かない人だ。それにとても真っ直ぐで純粋。
 彼女はローラが軍神と感じるほど、美しく、恐ろしい人だ。
 殺すことをなんとも思っていないのか、解剖が趣味だという。それに、女性なのに、戦場で生き残ってきた。
 剣の大会では何度も優勝している実力者だし、なによりも男性の装いを自然に着こなしてしまう。男性と対等に渡り合えるどころか、そこらの男性では届かないほど圧倒的なものを持っている。
 けれども、美しい女性だ。女性の装いをすれば、同じ空間に居る男性の視線を一人で集めてしまうようなお方だ。
「ローラ、アンリと結婚しろ。そうすれば、何も不自由は無いぞ」
 確かに彼女は王の姪であるのだから身分も地位も相当ある。仮に男性だとしたら、多くの女性が憧れる人だろう。
「……あの……軍神様? 軍神様は女性でしょう?」
 同性同士の結婚は認められていないはずだ。
「男か女かって、そんなに大事なこと? アンリは、アンリだ。それに、ローラはローラだろう? 愛さえあればなんとでもなる」
 まるで誘惑するようにローラの顎を撫でる彼女に両親が瞬きをする。
 母は叱りたいけれどそれが出来ないと手をぴくぴくと動かしているし、父はどこか面白そうに観察する。
 助けを求めようと二人を見ても、一言も発しない。
「大体伯父上は男と結婚したんだ。だったら、アンリがローラと結婚しても問題ないだろう」
 真面目な顔で言う彼女に、とうとう父が腹を抱えて笑い出した。
「はははっ……ローラ、彼女の伯父上の妻はフェイだよ……はははっ……フェイはほんっと、ロクなことしないな……まぁ、そんなフェイが好きなんだけどね」
 そう言う父の足を母が思いっきり踏む。
「イタッ。ちょっと、マリー……フェイはいいやつだよ、ちょっとヘンだけどさ」
「極悪人だとは言いませんけど、善人だとも思いませんよ」
 母はきっぱりとそう言って、それからマリーを見る。
「うちの娘を誘惑しないで下さい。この子は由緒ある貴族の家に嫁ぐのですから」
「アンリは侯爵だ。問題ないだろう」
 アンリは大きな羽飾りの付いた帽子を少しずらして被りなおす。
「ローラに、純白のヴェールを贈りたい」
「……軍神様……婚約者がいらっしゃるのでは?」
 直接会ったことはないが、何度か話には登場している。確かアレックスという男性だ。
「……居るけど……ローラも欲しい。ローラが居ると凄く落ち着くって言うか……癒される」
 彼女はそう言って、優しくローラの頬に触れる。
「最近、アレックスの様子がおかしいんだ。あまり会ってくれなくなったし……今日だって、一緒に出かけられなくなったって……だから、ローラを誘いに来た。ローラ、いっつもなんだかんだ言っても付き合ってくれるし。抱きしめると柔らかくてあったかいし……うん、また大きくなってる」
 当然のように胸を揉まれ、思わず悲鳴を上げる。
「よくこんなでかいメロン二つも抱えて裁縫なんて出来るな」
「……なっ……なっ……ぐ、軍神様ぁっ……ひ、酷いです……」
 大きな胸はローラだって気にしている。
 動くと揺れるし、邪魔だし……。軍神様のようなかっこいい装いをしたいのに、大きな胸ではどうも女性らしさの方が強調されてしまう。
 そう、ローラが男物の上着を着ても、恋人の上着を羽織って遊んでいるようにしか見えないのだ。
 それを気にしているというのに、軍神様はいつも無遠慮にローラの胸を揉む。気まぐれに。
 自分だってかなり立派なものを持っているくせに。
「勿体無い。もっと出せ。アンリの目の保養になる」
「絶対嫌です」
「あれ、ローラ……珍しいな。そんなに強気に言うなんて」
 アンリは驚いたようにローラを見て、それからくんくんと首筋の匂いを嗅ぐ。
「……ねぇ、浮気してない? なんか……男の匂いが染み付いてる気がするんだけど」
 ぎろりと睨まれ、少し、怯みそうになる。
 別に、アンリとは恋人でもないのだから浮気と言うのだろうかという疑問さえも口に出すことは出来ない。
「ってか……この匂い、伯父上にも染み込んでいたような……」
 アンリはそんなに鼻が発達しているのだろうか。少し怖いとさえ感じる。
 そんな時だ。突然窓が開いてびくりとする。
「やぁ、ローラ、少し、息抜きしない? お昼持ってきたよ」
 いつも以上にキラキラしたフェイが、大きなバスケットを抱えて窓から入ってきた。
「げ、玄関から入ってください……」
「あれ、冷たいなぁ……って、いででっ……マリー、頼むから髪の毛引っ張らないで。禿たらかっこ悪いじゃん」
 母にいきなり髪を引っ張られたフェイは涙目で抗議するが、内容がずれている気がする。
「娘の部屋に窓から入り込むなんて下心丸出し過ぎよ」
「いや、まさかマリーが居るとは思わなかったし……ちょっと、料理の出来る俺にときめいて欲しかったっていうか……今日は純粋に、ローラに俺の料理の腕を品定めしてもらおうと……いや、あわよくばハグくらいさせてほしいなとは思ったけど……」
 母が一歩近付くたびに、フェイは一歩後ろに下がる。
「……す、すいません。ほんの出来心です……結婚するまでは絶対手を出しませんからっ、せめて交際だけでも認めてくださいっ」
 その場で土下座したフェイに驚く。どうやら彼は心底母が怖いようだ。
「ヤダ……もう、かっこ悪い……だからマリーが居ない時に来ようと思ったのに……」
「お前……スカートを穿かなくなってから言いなさい。ったく、娘に悪影響だわ」
 母は深い溜息を吐く。
「でも、マリー、ローラはスカートを穿いた男性が好みなんだ。仕方ないだろう?」
 父は娘の趣味くらい理解しているよという表情で言うけれど、半分は面白がっているようにしか見えない。
「……それも、コイツの悪影響のせいだと思うけど? 大体ジョージィ、あんたがこんなの拾わなかったらローラはもうちょっとまともに育ったわよ!」
「マリー、ローラの感性を否定しないで。ローラはローラで、面白い作品を作るじゃないか。ちょっと、世間には受け入れられないけど」
 両親の言葉に傷つきそうになる。
 そりゃあローラの感性は世間ではあまり評価されない。技術だって両親にくらべればまだまだだ。
「俺は、ローラの感性が好きだ。あ、それいい。俺も欲しい」
 フェイはローラの髪飾りを見て言う。
「えっと、これは、あまり布で作ったので……」
「それでもいいから欲しい。言い値に色付けて買う」
「……天使様……もう、手一杯です」
 ローラは困り果てて言うと、フェイは瞬きを繰り返し、それから父を見た。
「ああ、そういうこと。ごめん。俺の責任もあるね。ジョージィが治るまで手伝うよ。どうせ、王都に居る間はレオに呼び出されなかったら暇だし。それに、俺、ミシンの使い方、結構巧いんだよ」
 フェイは得意気に言って父を見る。
「まぁ、昔はよく手伝ってもらったしね。けど、フェイは俺と一緒ね。ローラ、見られてると手元狂うからさ」
 俺に似て照れ屋なんだと父は言う。
「えー、俺、ローラと一緒がいい。い、いえ……誠心誠意頑張りますのでどうかお嬢さんとの交際を認めてくださいっ」
 母に睨まれ。頭を下げる姿には呆れてしまう。
「……天使様……その、お手伝いしていただけるのは嬉しいのですが……」
「俺が真面目に頑張って、技術あるとこ見せたら、結婚してくれる?」
「しません。貴族の方がお遊びですることでもありません」
 仕事には誇りを持っている。不純な動機で邪魔をされては困る。
「ローラ……偉いわ。ちゃんと断れるんじゃない。そうよ。これからの時代、女性が主権を握らなくてはいけません」
「お母様……あの、私、その……お仕事に集中したいので……その……一人にしてください。こんなに沢山は初めてなので、ちょっと頑張らないと」
 ローラはそう言ってみんな連れ出して欲しいと母に頼む。
「そうね、ジョージィがロクなことしないせいで、ローラに負担を掛けてしまうけど、お願いね。三日で三十着、まぁ、三人縫製出来る職人が居るからなんとかなりそうね。けど、ローラ、仕上げの刺繍は、私達二人で頑張らなきゃいけなさそうよ」
「はい。あの……先に、ハンカチを仕上げてしまいますね」
 ハンカチの刺繍ならすぐ終るだろうと思う。珍しく、五件も予約を受けてしまったのだ。
「ローラ、急いで終らせて頂戴。あなたはゆっくり仕事をした方が仕上がりもいいのは分かっているけれど、お客様の信頼が第一よ」
「はい、お客様のためにも中途半端なお品は絶対に作りません」
 ローラにだって職人の誇りが在る。
「……ちっ、ローラもアンリの相手をしてくれないのか。もうっ、いいっ、伯父上にのしかかって遊ぶ」
「……軍神様、陛下も……お怪我が……」
「酔って怪我をしたのは自業自得だ」
 アンリはそう言い放って、少し不満そうに出て行った。
「……俺、アンリにも怒られるやつ?」
「お前はもう少しみっちり怒られなさい」
 母はフェイにどこか冷たい。いや、冷たいというよりは彼に特別厳しいのかもしれない。
「真っ当な職に就きなさい」
「いや、俺、これでも一応ちゃんと領主様やってるから……今は、冬季休業。どうせ俺のとこ冬は寒くて暇なんだからいいじゃん。仕事は先に終らせてきたし」
「フェイ、根は真面目だからね。宿題とか休暇の初日に終らせてたでしょ」
 父は笑う。父はたぶん、休暇の終わりに母に怒鳴られながら必死に課題を終わらせようとしていた方だろう。
「なんかね、フェイって少しマリーに似てるんだよ」
「はぁ? こんなのと一緒にしないで」
「いや、妙に真面目なトコとかね。フェイは、ふざけてるみたいだけど、真面目にふざけてるからさ」
 父の言葉に首を傾げる。
 真面目にふざけるとはどういうことだろう。
「とにかく、これをローラにあまり近づけないで頂戴。大体、父親とそんなに歳の変らない男と結婚だなんて……」
 認めないと母は言う。ローラだって、結婚なんて考えていない。けれども、フェイと会わせてもらえないのは寂しい。
 いや、そんなことを考えてはダメだ。
 仕事を進めないと。
 ローラは刺繍枠を手に取る。次は百合だ。
 大きな百合の花を刺繍しなくてはいけない。
「ああ、ほら、マリー、あんまり怒鳴ったらローラが集中できないよ。フェイ、あっちで手伝ってくれ。流石に刺繍はお前には頼めないからね。でも、身頃を縫い合わせるくらいは出来るだろう?」
「いやいや、俺さ、袖付け出来るようになったって」
「あー、残念だけど、今年は袖が無い方が流行りなんだ。みんなさ、フェイと違って露出したいんだよ」
 父は笑いながらフェイを連れて行ってしまう。
 ぽつんと、一人部屋に残されると、急に静かになってしまって少し、寂しい。
 それでも、仕事は頑張らないと。
 ローラはそっと針を進める。
 母がついているとはいえ、いくつかはローラの手で完成させなくてはいけないだろう。
 本当に出来るだろうか。不安で、指先が震える。
 ああ、天使様に会いたい。彼が居ればこの震えが止まるとローラは既に知っている。
 彼はまさしく天使なのだ。ローラの不安を消し去ってくれる。
 彼が崇拝すべき存在であるとローラは知っている。
 だからこそ、彼の妻になることは出来ない。
 そう、思った瞬間、なぜか頬に涙が伝う。
 雫が、ハンカチを濡らしてしまった。
「ああ、いけない……」
 これは、お客様のお品なのに……仕事中に泣くなんて、なんて情けないのだろう。
 どんどん、悲しくなっていく。
 ローラは今、いけないことを考えている。
 これは、天の神を冒涜することだ。
 そう、思うと、いっそう悲しみは深くなった。
 きっと、ローラは魔道に落ちてしまう。
 悪い子は、魔族に連れ去られてしまうのだから。

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