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本編
それも今日まで④
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「なので、皇室にはフェリクスの厳正なる処分とデニス皇子殿下に対する報復行為の黙認をお願いしたい」
『それを本件の落とし所とする』と示し、夫はロルフから受け取った書類をシャノン皇太子殿下へ差し出した。
恐らく、誓約書か何かだろう。今、話した条件に合意する旨の。
「先に言っておきますが、これが私の精一杯の譲歩です」
遠回しに『交渉はするな』と告げ、夫は腕を組む。
と同時に、義弟が身を乗り出した。
「いや、待ってよ!僕にデニス皇子殿下の分まで罪を被れ、って言っているの!?事が事だから罰を受けるのはしょうがないけど、これは明らかにおかしいでしょ……!」
『不公平だ!』と騒ぎ立てる義弟に、夫はチラリと視線を向けた。
「デニス皇子殿下の分まで、罰を与えるつもりはない。あくまで、貴様個人の罪のみ裁く予定だ。だから、もう騒ぐな」
『大人しくしておけ』と言い、夫は少しばかり威圧感を放つ。
思わず怯む義弟を前に、彼はシャノン皇太子殿下の方へ向き直った。
「それで、殿下のお返事は?」
合意するか否か問う夫に、シャノン皇太子殿下はニッコリ笑う。
「もちろん、その条件を呑むよ。こちらとしては、損のない……むしろ、有り難い取り引きだからね」
迷わず書類を手にするシャノン皇太子殿下は、ペンを構えた。
緑の瞳に、安堵と……僅かな憂いを滲ませながら。
「ただ、一つだけ。これはデニスの兄という立場からのお願いなんだけど────」
そこで一度言葉を切ると、シャノン皇太子殿下は少しばかり眉尻を下げた。
「────くれぐれもお手柔らかに、ね。あれでも、私の可愛い弟だから」
『手加減してあげて』と述べるシャノン皇太子殿下に、夫は渋い顔をする。
が、横目で義弟の姿を捉えるなり態度を軟化させた。
「まあ、善処します」
「ああ、ありがとう」
うんと目を細めて微笑み、シャノン皇太子殿下は署名欄にサインする。
そして、出来上がった書類をロルフに手渡すと、ソファから立ち上がった。
「それじゃあ、私は失礼するよ。裁判の準備やら、なんやらあるからね」
『令息も一緒に連れていくね』と言い、シャノン皇太子殿下は義弟の腕を軽く引く。
案外素直に起立する義弟を前に、彼は応接室を後にした。
『それを本件の落とし所とする』と示し、夫はロルフから受け取った書類をシャノン皇太子殿下へ差し出した。
恐らく、誓約書か何かだろう。今、話した条件に合意する旨の。
「先に言っておきますが、これが私の精一杯の譲歩です」
遠回しに『交渉はするな』と告げ、夫は腕を組む。
と同時に、義弟が身を乗り出した。
「いや、待ってよ!僕にデニス皇子殿下の分まで罪を被れ、って言っているの!?事が事だから罰を受けるのはしょうがないけど、これは明らかにおかしいでしょ……!」
『不公平だ!』と騒ぎ立てる義弟に、夫はチラリと視線を向けた。
「デニス皇子殿下の分まで、罰を与えるつもりはない。あくまで、貴様個人の罪のみ裁く予定だ。だから、もう騒ぐな」
『大人しくしておけ』と言い、夫は少しばかり威圧感を放つ。
思わず怯む義弟を前に、彼はシャノン皇太子殿下の方へ向き直った。
「それで、殿下のお返事は?」
合意するか否か問う夫に、シャノン皇太子殿下はニッコリ笑う。
「もちろん、その条件を呑むよ。こちらとしては、損のない……むしろ、有り難い取り引きだからね」
迷わず書類を手にするシャノン皇太子殿下は、ペンを構えた。
緑の瞳に、安堵と……僅かな憂いを滲ませながら。
「ただ、一つだけ。これはデニスの兄という立場からのお願いなんだけど────」
そこで一度言葉を切ると、シャノン皇太子殿下は少しばかり眉尻を下げた。
「────くれぐれもお手柔らかに、ね。あれでも、私の可愛い弟だから」
『手加減してあげて』と述べるシャノン皇太子殿下に、夫は渋い顔をする。
が、横目で義弟の姿を捉えるなり態度を軟化させた。
「まあ、善処します」
「ああ、ありがとう」
うんと目を細めて微笑み、シャノン皇太子殿下は署名欄にサインする。
そして、出来上がった書類をロルフに手渡すと、ソファから立ち上がった。
「それじゃあ、私は失礼するよ。裁判の準備やら、なんやらあるからね」
『令息も一緒に連れていくね』と言い、シャノン皇太子殿下は義弟の腕を軽く引く。
案外素直に起立する義弟を前に、彼は応接室を後にした。
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