91 / 126
本編
姉の決意③
しおりを挟む
「ありがとうございます。パーティーの開始時刻までには、戻りますね」
繋いでいた手をそっと離し、私は姉と共にこの場を離れた。
そして、空いている控え室へ向かうと、それぞれソファに腰を下ろす。
「それで、お話というのは?」
時間もないので早速本題を切り出し、私は背筋を伸ばした。
『もしや、フェリクス様のことで何か?』と思案する私を前に、姉は自身の胸元を握りしめる。
まるで、緊張を解すように。
「落ち着いて聞いてほしいんだけど、私────家を継ぐことにしたの」
「!?」
大きく目を見開いて固まる私は、衝撃のあまり声も出なかった。
だって、姉が……女性が爵位を引き継ぎ、当主になるというのは生半可な覚悟じゃ出来ないため。
『一応、前例は幾つかあるけど……』と思い返しつつ、ゆらゆらと瞳を揺らした。
────と、ここで姉が片手を突き出す。
「言いたいことは、分かっている。無茶だって、思っているんでしょう?」
「それは……まあ、そうですね」
変に誤魔化してつけ上がらせたら昔の二の舞になるため、私は素直に頷いた。
すると、姉は『やっぱりね』とでも言うように苦笑を漏らす。
「お父様やお母様も、同じ反応よ。優秀な婿養子を取った方が、色んな意味で安泰だって。でもね、それじゃあダメなの」
神妙な面持ちでこちらを見据え、姉は手を強く握り締めた。
かと思えば、そっと目を伏せる。
「私ね、レイチェルに自分の過ちを正されてからずっと考えていた。これから、どう生きるべきか……どう在るべきか」
緑の瞳に憂いを滲ませ、姉は少しばかり眉尻を下げた。
「恐らく、一番楽な生き方はもう人様の事情に首を突っ込まず、普通の貴族令嬢としてお淑やかに過ごすことだと思う。だけど────きっと、私は困っている人を見掛けたら放っておけない」
静観という選択肢を取れない自分の性に、姉はフッと笑みを漏らす。
と同時に、拳を自身の胸元へ当てた。
「だから、誰かを救うための力が欲しいの。現状、私一人で問題を解決するのは不可能だから。どれだけ慎重に状況を見極め、策を練っても」
『両親や使用人に迷惑を掛けてしまうと思う』と自分なりの見解を示し、姉は真剣な顔付きになる。
どことなく、凛とした雰囲気を漂わせながら。
「もちろん、険しい道のりになることは理解しているわ。でも、挑戦したい。それで、今度こそちゃんと誰かを救いたいの」
繋いでいた手をそっと離し、私は姉と共にこの場を離れた。
そして、空いている控え室へ向かうと、それぞれソファに腰を下ろす。
「それで、お話というのは?」
時間もないので早速本題を切り出し、私は背筋を伸ばした。
『もしや、フェリクス様のことで何か?』と思案する私を前に、姉は自身の胸元を握りしめる。
まるで、緊張を解すように。
「落ち着いて聞いてほしいんだけど、私────家を継ぐことにしたの」
「!?」
大きく目を見開いて固まる私は、衝撃のあまり声も出なかった。
だって、姉が……女性が爵位を引き継ぎ、当主になるというのは生半可な覚悟じゃ出来ないため。
『一応、前例は幾つかあるけど……』と思い返しつつ、ゆらゆらと瞳を揺らした。
────と、ここで姉が片手を突き出す。
「言いたいことは、分かっている。無茶だって、思っているんでしょう?」
「それは……まあ、そうですね」
変に誤魔化してつけ上がらせたら昔の二の舞になるため、私は素直に頷いた。
すると、姉は『やっぱりね』とでも言うように苦笑を漏らす。
「お父様やお母様も、同じ反応よ。優秀な婿養子を取った方が、色んな意味で安泰だって。でもね、それじゃあダメなの」
神妙な面持ちでこちらを見据え、姉は手を強く握り締めた。
かと思えば、そっと目を伏せる。
「私ね、レイチェルに自分の過ちを正されてからずっと考えていた。これから、どう生きるべきか……どう在るべきか」
緑の瞳に憂いを滲ませ、姉は少しばかり眉尻を下げた。
「恐らく、一番楽な生き方はもう人様の事情に首を突っ込まず、普通の貴族令嬢としてお淑やかに過ごすことだと思う。だけど────きっと、私は困っている人を見掛けたら放っておけない」
静観という選択肢を取れない自分の性に、姉はフッと笑みを漏らす。
と同時に、拳を自身の胸元へ当てた。
「だから、誰かを救うための力が欲しいの。現状、私一人で問題を解決するのは不可能だから。どれだけ慎重に状況を見極め、策を練っても」
『両親や使用人に迷惑を掛けてしまうと思う』と自分なりの見解を示し、姉は真剣な顔付きになる。
どことなく、凛とした雰囲気を漂わせながら。
「もちろん、険しい道のりになることは理解しているわ。でも、挑戦したい。それで、今度こそちゃんと誰かを救いたいの」
671
あなたにおすすめの小説
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
オッドアイの伯爵令嬢、姉の代わりに嫁ぐことになる~私の結婚相手は、青血閣下と言われている恐ろしい公爵様。でも実は、とっても優しいお方でした~
夏芽空
恋愛
両親から虐げられている伯爵令嬢のアリシア。
ある日、父から契約結婚をしろと言い渡される。
嫁ぎ先は、病死してしまった姉が嫁ぐ予定の公爵家だった。
早い話が、姉の代わりに嫁いでこい、とそういうことだ。
結婚相手のルシルは、人格に難があるともっぱらの噂。
他人に対してどこまでも厳しく、これまでに心を壊された人間が大勢いるとか。
赤い血が通っているとは思えない冷酷非道なその所業から、青血閣下、という悪名がついている。
そんな恐ろしい相手と契約結婚することになってしまったアリシア。
でも実際の彼は、聞いていた噂とは全然違う優しい人物だった。
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
突然、婚約解消を告げられたリューディア・コンラット。
彼女はこのリンゼイ国三大魔法公爵家のご令嬢。
彼女の婚約者はリンゼイ国第一王子のモーゼフ・デル・リンゼイ。
彼は眼鏡をかけているリューディアは不細工、という理由で彼女との婚約解消を口にした。
リューディアはそれを受け入れることしかできない。
それに眼鏡をかけているのだって、幼い頃に言われた言葉が原因だ。
余計に素顔を晒すことに恐怖を覚えたリューディアは、絶対に人前で眼鏡を外さないようにと心に決める。
モーゼフとの婚約解消をしたリューディアは、兄たちに背中を押され、今、新しい世界へと飛び出す。
だけど、眼鏡はけして外さない――。
愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる