駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

最後のチャンス《デニス side》②

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「はっ……?」

 困惑のあまり固まる私に、兄は酷く冷めた目を向けた。

「私は君がこの国をより良くするために、動いているのかと思っていた。だから、これまで多少のことには目を瞑ってきた。これも君なりの正義だ、と自分に言い聞かせて。それなのに、行動理念が私に勝つことだなんて……」

 『頭が痛い』とでも言うように目頭を押さえ、兄は何とも言えない表情を浮かべる。

「いや、きっかけは別に何でもいいんだ。ただ、あくまで目標は私に勝つことで国を豊かにすることじゃないのなら……自分勝手な事情に他人を巻き込んだというのなら、私はデニスを心底軽蔑するよ」

 いつになく語気を強め、兄は少しばかり眉を顰めた。
その瞬間────私の中で、何かが弾ける。
と同時に、勢いよく身を起こした。

「兄上に何が分かる……!?」

 怒りに震える手を握り締め、私はボロボロと涙を流す。
荒波のように押し寄せてくる激情を、堪え切れなくて。

「次男というだけで軽んじられ、二番手に甘んじるよう強要され、一生脇役として生きていくしかない私が自分の存在価値を示すには貴方に勝つしかないんだ!そうしないと、誰も私自身を見てくれない……!」

 兄上のオマケ扱いであることを指摘し、私は自身の胸元に手を当てた。

「だから、自分勝手でも何でも皇帝になると決めたんだ!」

 長男というだけで恵まれてきたこの人には、分からないであろう嘆きや苦しみ……その全てを吐き出して、私はちょっと咳き込む。
大声を出し過ぎたせいか、喉を痛めてしまって。
『やっと、手首の痛みが収まってきたのに……』と考えていると、不意に────背中を撫でられた。
ポンポンッと、あやすみたいに。

「そうか……デニスの根底にある想いは、それだったんだね」

 兄は優しく……でも、しっかりとこちらの言い分を受け止め、そっと眉尻を下げる。
先程まで、凄く冷たかったのに。

「すまない、デニス。君の葛藤に気づけなくて」

 『もっと気に掛けてやるべきだった』と反省し、兄は辛そうな表情を浮かべた。
まるで、自分を責めるみたいに。
『何で兄上が、そんな……』と驚いて固まる私を前に、彼はそっと目を伏せる。

「でも、やはりデニスの私情で周りを振り回すのはいけないよ。ラニット公爵家は、特に」
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