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本編
誓い②
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確かに太っ腹の方ではあったけど、こんな風に無制限で何でも与えるタイプじゃなかった。
ある程度、線引きしてこちらに我慢や理解を求めるよう務めている。
それなのに、一体何故?
不審感や違和感を抱きつつ、私は横髪を耳に掛けようとする。
が、今日はハーフアップにしているため出来なかった。
『あら……』と心の中で呟く私は、おもむろに手を下ろす。
いつも髪を下ろしているから、ついやってしまった……ハーフアップなんて、春の祝賀会以来だし。
ラニット公爵夫人として初めて参加したパーティーを振り返り、私はふと顔を上げた。
そういえば────あの日は旦那様にプレゼントされたドレスを着ていたな、と思い出して。
『謝罪』という名目で贈られたことも一緒に甦り、私はハッとした。
「もしかして────また謝罪の一環で、プレゼントを?」
ほぼ無意識に思ったことを口走ってしまい、私は『あっ、不味い』と少し焦る。
が、夫は顔色一つ変えずにこちらを見つめるだけだった。
特段、気分を害している様子はない。
でも……だからこそ、異常だった。
図星、みたいね。もし、違うなら直ぐに訂正する筈だから。
『少なくとも、否定はする筈』と考え、私は額に手を当てて苦悩する。
だって、今回の謝罪理由は間違いなく────自分の家族の問題に巻き込んだことだから。
結婚式の件と違って、これは夫に非などない。
どちらかと言えば、被害者という立場。
それなのに、謝られるのはなんか違う。
だから、
「フェリクス様の件のお詫びということであれば、プレゼントは要りません」
手のひらを前に突き出し、私は拒絶の意志を露わにした。
金の瞳に、確固たる思いを滲ませて。
「ラニット公爵家に嫁入りした時点で、私もここの人間ですから。家の問題に頭を悩ませたり、力を尽くしたりするのは当然のことです」
『謝られるようなことじゃない』と主張し、私は少しばかり身を乗り出す。
自身の胸元に、手を添えながら。
「それに、夫婦は苦楽を分かち合うものでしょう?」
『何故、こうも他人行儀なのか』と不満を表し、私はそっと眉尻を下げる。
最近、少しずつ距離が縮まってきたのにいきなり突き放されたような衝撃を覚えて。
『自惚れていたのだろうか』と自問する中、夫は
「……私は誓いの言葉に同意しなかった」
と、結婚式の件を引き合いに出した。
『私達は苦楽を分かち合うような夫婦じゃない』と否定するように。
「っ……」
強く奥歯を噛み締める私は、言い表せようもないほど強い痛みを感じる。
と同時に────夫への愛情と恋心を自覚した。
いや、本当はもっと早く気づいていたのかもしれない。
でも、それを認めてしまったら今の関係が崩れる気がして怖かったのだ。
何より、一番近くに居るのにずっと片想いなんて辛すぎる。
まあ、結局もっと酷い状態になってしまったが。
『本当、目も当てられないわね』と思案しつつ、私は小さく深呼吸する。
ショックを受けるあまり、号泣……なんてことにならないように。
何とか乱れる心を鎮める中、夫は不意に立ち上がった。
「だから────」
ある程度、線引きしてこちらに我慢や理解を求めるよう務めている。
それなのに、一体何故?
不審感や違和感を抱きつつ、私は横髪を耳に掛けようとする。
が、今日はハーフアップにしているため出来なかった。
『あら……』と心の中で呟く私は、おもむろに手を下ろす。
いつも髪を下ろしているから、ついやってしまった……ハーフアップなんて、春の祝賀会以来だし。
ラニット公爵夫人として初めて参加したパーティーを振り返り、私はふと顔を上げた。
そういえば────あの日は旦那様にプレゼントされたドレスを着ていたな、と思い出して。
『謝罪』という名目で贈られたことも一緒に甦り、私はハッとした。
「もしかして────また謝罪の一環で、プレゼントを?」
ほぼ無意識に思ったことを口走ってしまい、私は『あっ、不味い』と少し焦る。
が、夫は顔色一つ変えずにこちらを見つめるだけだった。
特段、気分を害している様子はない。
でも……だからこそ、異常だった。
図星、みたいね。もし、違うなら直ぐに訂正する筈だから。
『少なくとも、否定はする筈』と考え、私は額に手を当てて苦悩する。
だって、今回の謝罪理由は間違いなく────自分の家族の問題に巻き込んだことだから。
結婚式の件と違って、これは夫に非などない。
どちらかと言えば、被害者という立場。
それなのに、謝られるのはなんか違う。
だから、
「フェリクス様の件のお詫びということであれば、プレゼントは要りません」
手のひらを前に突き出し、私は拒絶の意志を露わにした。
金の瞳に、確固たる思いを滲ませて。
「ラニット公爵家に嫁入りした時点で、私もここの人間ですから。家の問題に頭を悩ませたり、力を尽くしたりするのは当然のことです」
『謝られるようなことじゃない』と主張し、私は少しばかり身を乗り出す。
自身の胸元に、手を添えながら。
「それに、夫婦は苦楽を分かち合うものでしょう?」
『何故、こうも他人行儀なのか』と不満を表し、私はそっと眉尻を下げる。
最近、少しずつ距離が縮まってきたのにいきなり突き放されたような衝撃を覚えて。
『自惚れていたのだろうか』と自問する中、夫は
「……私は誓いの言葉に同意しなかった」
と、結婚式の件を引き合いに出した。
『私達は苦楽を分かち合うような夫婦じゃない』と否定するように。
「っ……」
強く奥歯を噛み締める私は、言い表せようもないほど強い痛みを感じる。
と同時に────夫への愛情と恋心を自覚した。
いや、本当はもっと早く気づいていたのかもしれない。
でも、それを認めてしまったら今の関係が崩れる気がして怖かったのだ。
何より、一番近くに居るのにずっと片想いなんて辛すぎる。
まあ、結局もっと酷い状態になってしまったが。
『本当、目も当てられないわね』と思案しつつ、私は小さく深呼吸する。
ショックを受けるあまり、号泣……なんてことにならないように。
何とか乱れる心を鎮める中、夫は不意に立ち上がった。
「だから────」
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