8 / 208
第一章
アイリスの教育②
しおりを挟む
「分かればいい」
それだけ言い残し、父はさっさと部屋から出て行った。
と同時に、使用人達がこちらへ駆け寄ってくる。
『大丈夫ですか……!?』と心配する彼らに、私は笑顔を向け小さく頷いた。
────その翌日。
私は父と継母の居ない時間を狙って、アイリスの部屋へ繰り出した。
父にはああ言ったものの、やはり教養は身につけるべきだと思って。
こっそり、アイリスに教えようと考えたのだ。
父にバレないよう動くとなると、家庭教師は雇えない。
だから、私自ら教えなければならなかった。
『仕事との両立は難しいけど、頑張らないと』と奮起しつつ、私はアイリスの元を訪ねる。
まずは簡単な挨拶を交わし、来客用のソファに腰掛けた。
侍女の用意した紅茶とお菓子を前に、『ちょうどいいからテーブルマナーから教えよう』と思い立つ。
「あのね、アイリス。ティーカップを持つ時はこうやって……」
「え~!?お姉様ってば、また私に勉強させるつもり!?」
「いや、これは貴方のためでもあって……」
「嫌よ、私!やりたくない!」
プイッと顔を背け、アイリスは足でテーブルを蹴る。
本人はただプラプラ足を揺らしているだけのようだが、かなりお行儀が悪かった。
まだ六歳の子供だからあまりガミガミ言いたくはないけど、社交界でこんな真似をしたら周りにどう思われるか分からない。
ここは姉として、しっかり指導しないと。
父や継母はさておき、ある意味被害者の一人とも言えるアイリスのことはそこまで嫌いじゃないため、どうにか矯正出来ないか考える。
『どうやったら伝わるかな?』と知恵を絞っていると、アイリスはチラリとこちらを見た。
かと思えば、プクッと頬を膨らませる。
どうやら、説得を諦めていないことが伝わってしまったらしい。
「お父様は『やらなくてもいい』って、言ったもん!」
「ええ、そうね。でも、習っておいて損はないと思うわ。そうだ、こっそり練習してお父様達に披露すればきっと褒めてくれるわよ?」
「お父様もお母様は私が何をしたって、褒めてくれるわ!」
「それは……そうかもしれないけど、でも自分の力で何かを成し遂げた時の達成感は凄いわよ?」
『自信にも繋がるし』と言葉を重ねるものの……アイリスは全く意に介さない。
今までずっと甘やかされてきたからか、何かのために頑張るとか我慢するとか、そういうことが理解出来ないようだ。
『だから、何?』と言わんばかりの態度を取るアイリスに、私はほとほと困り果てる。
それだけ言い残し、父はさっさと部屋から出て行った。
と同時に、使用人達がこちらへ駆け寄ってくる。
『大丈夫ですか……!?』と心配する彼らに、私は笑顔を向け小さく頷いた。
────その翌日。
私は父と継母の居ない時間を狙って、アイリスの部屋へ繰り出した。
父にはああ言ったものの、やはり教養は身につけるべきだと思って。
こっそり、アイリスに教えようと考えたのだ。
父にバレないよう動くとなると、家庭教師は雇えない。
だから、私自ら教えなければならなかった。
『仕事との両立は難しいけど、頑張らないと』と奮起しつつ、私はアイリスの元を訪ねる。
まずは簡単な挨拶を交わし、来客用のソファに腰掛けた。
侍女の用意した紅茶とお菓子を前に、『ちょうどいいからテーブルマナーから教えよう』と思い立つ。
「あのね、アイリス。ティーカップを持つ時はこうやって……」
「え~!?お姉様ってば、また私に勉強させるつもり!?」
「いや、これは貴方のためでもあって……」
「嫌よ、私!やりたくない!」
プイッと顔を背け、アイリスは足でテーブルを蹴る。
本人はただプラプラ足を揺らしているだけのようだが、かなりお行儀が悪かった。
まだ六歳の子供だからあまりガミガミ言いたくはないけど、社交界でこんな真似をしたら周りにどう思われるか分からない。
ここは姉として、しっかり指導しないと。
父や継母はさておき、ある意味被害者の一人とも言えるアイリスのことはそこまで嫌いじゃないため、どうにか矯正出来ないか考える。
『どうやったら伝わるかな?』と知恵を絞っていると、アイリスはチラリとこちらを見た。
かと思えば、プクッと頬を膨らませる。
どうやら、説得を諦めていないことが伝わってしまったらしい。
「お父様は『やらなくてもいい』って、言ったもん!」
「ええ、そうね。でも、習っておいて損はないと思うわ。そうだ、こっそり練習してお父様達に披露すればきっと褒めてくれるわよ?」
「お父様もお母様は私が何をしたって、褒めてくれるわ!」
「それは……そうかもしれないけど、でも自分の力で何かを成し遂げた時の達成感は凄いわよ?」
『自信にも繋がるし』と言葉を重ねるものの……アイリスは全く意に介さない。
今までずっと甘やかされてきたからか、何かのために頑張るとか我慢するとか、そういうことが理解出来ないようだ。
『だから、何?』と言わんばかりの態度を取るアイリスに、私はほとほと困り果てる。
66
あなたにおすすめの小説
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる