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第一章

確信《ヴィンセント side》①

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 さて、どうするか……とりあえず様子見しかないけど、早めに原因を解明しないとダメだな。
セシリアのことになると、良くも悪くも我慢が利かないから……長い間、殺意と嫌悪感を隠し通せる自信がない。

今日限りの僕のイレギュラー杞憂で終われば、よし。もし、そうじゃないなら……徹底的に正さないと」

 ────と、宣言した翌日の昼頃。
執事から花嫁修業の進捗具合を聞いて、僕は嘆息していた。
だって、どう考えても公爵夫人の実務を教えられるような状況じゃないから。
基本の『き』すら知らないんじゃないか?と、疑うほどの酷さだ。

 領地経営はさておき、屋敷の管理すら出来そうにないレベルって……一体、どういうことだい?
だって、彼女は実家で嫌というほどその仕事をこなしてきたじゃないか。
確かにエーデル公爵家とクライン公爵家じゃ違う点も多いだろうが、基本的なことは同じ。
なのに、これって……。

 セシリアに考えてもらった予算配分の書類を眺め、僕は額を押さえる。
『明らかに数字が偏っている……』と零し、小さくかぶりを振った。

「それで、母上はなんと?」

 『セシリアなら、直ぐに実務を覚えられるだろう』ということで、花嫁修業は僕の母が中心となって行っている。
なので、この酷い予算案も母が目を通している筈なのだ。

「えっと……奥様は『セシリアちゃんったら、疲れているみたいね。しばらく花嫁修業はお休みにしましょう』と言って、早々に講義を切り上げました」

「つまり匙を投げた、と……」

 『さっさと見切りをつけたか』と苦笑する僕に、執事は何とも言えない表情を浮かべる。
母の性格上、また教鞭を執る可能性はかなり低いため嘘でも『そんなことはありませんよ』と言えないのだろう。

 母上に背を向けられたとなると、この結婚も難しくなるかもしれないね。
多分表立って反対はしてこないだろうけど、無言で圧は掛けてきそうだ。
さすが僕の生みの親とでも言うべきか、気に入らないものは徹底的に無視するか、潰すかの二択しか持ってないから。
『仕方なく受け入れる呑み込む』ということは、一切しない。

 『下手したら、僕ごと切り捨てられるかなぁ』と思案しつつ、執務机に手を置く。

「セシリアは今、どこに居る?」

「中庭でティータイムを……」

「呑気だねぇ……それとも、見放されたことに気づいていないのか。まあ、何にせよ好都合」

 ────彼女の正体・・を確かめるチャンスだ。

 とは言わずに、ニッコリ微笑む。
既に確信へ変わりつつある疑いを胸に秘め、僕は立ち上がった。

「じゃあ、僕も行くとしよう────でも、その前に」
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