47 / 208
第一章
アイリスの覚悟②
しおりを挟む
◇◆◇◆
────エーデル公爵家に戻ってきてから、一週間ほど経過した頃。
ヴィンセントの情報通り、私達の祖父フランシス・ジェフ・エーデルが帝都を訪れた。
ヴィンセントの采配か、ロジャー皇帝陛下の気遣いか滞在場所は我が家に指定され、今まさに顔を合わせている。
お祖父様って、結構お歳を召されている筈なのに若々しいわね。
それになんというか……大きい。日頃から、鍛えているのかしら?
白髪紫眼の美丈夫を前に、私は一瞬呆気に取られるものの、直ぐさまお辞儀する。
お互い初対面だから、最低限の礼儀は通そうと思って。
「お初にお目に掛かります。エーデル公爵家の長女セシリア・リゼ・エーデルです。こちらは妹であり、現在当主代理を務めているアイリス・レーナ・エーデル。ゆくゆくはエーデル公爵家の正式な当主となり、家門を引っ張っていく子です」
「よろしくお願いします、お祖父様」
ここ一週間で身につけた礼儀作法を見事発揮し、アイリスは優雅に頭を下げた。
まだ動きは若干ぎこちないものの、手の位置や顎の角度などはきちんと合っている。
ギリギリ合格点と言ったところだろうか。
「儂も一応、自己紹介しておくか。一応、現公爵の父親……っと、ローガンはもう貴族籍から抜かれて当主じゃなくなったんだったな」
意外と耳が早い祖父は、やれやれと頭を振る。
『歳はとりたくないものだ』とボヤきながら髭を撫で、軽く咳払いした。
「では、改めてフランシス・ジェフ・エーデルだ。よろしく頼む」
そう言うが早いか、祖父は我々と同じように頭を下げる。
『かつて当主だったから』と威張ることも、『罪を犯した者だから』と変に謙ることもなく、ただこちらの意向に合わせてくれた形だ。
今までこのように向き合ってくれる大人は少なかったからか、私もアイリスも少し驚く。
────と、ここで祖父は懐から手紙を取り出した。
「そちらの事情は事前に送ってもらった手紙で、把握している。元を正せば私の不始末のせいだから、出来る限り力になろう。ただ、十数年のブランクがある上、最近の情勢には少し疎い。全てを完璧にこなすのは、難しいと思われる」
厳しい顔つきでそう語る祖父に、私は直ぐさまこう答える。
「もちろん、全て任せきりにするつもりはありません。私もいくつか仕事を請け負うつもりです」
「それは助かる」
「いえ、そんな……むしろ、助けていただいているのはこちらの方で……」
本来であれば、我々の世代でどうにかしなければならないこと。
祖父は責任を感じているようだが、その禊は既に果たされている。
現役引退と僻地に隔離という形で。
だから、新たに何かを背負ったり罪の意識に苛まれたりする必要はないのだ。
それにヴィンセントの話が正しければ、そもそもの原因はお父様にあるそうだし……。
────エーデル公爵家に戻ってきてから、一週間ほど経過した頃。
ヴィンセントの情報通り、私達の祖父フランシス・ジェフ・エーデルが帝都を訪れた。
ヴィンセントの采配か、ロジャー皇帝陛下の気遣いか滞在場所は我が家に指定され、今まさに顔を合わせている。
お祖父様って、結構お歳を召されている筈なのに若々しいわね。
それになんというか……大きい。日頃から、鍛えているのかしら?
白髪紫眼の美丈夫を前に、私は一瞬呆気に取られるものの、直ぐさまお辞儀する。
お互い初対面だから、最低限の礼儀は通そうと思って。
「お初にお目に掛かります。エーデル公爵家の長女セシリア・リゼ・エーデルです。こちらは妹であり、現在当主代理を務めているアイリス・レーナ・エーデル。ゆくゆくはエーデル公爵家の正式な当主となり、家門を引っ張っていく子です」
「よろしくお願いします、お祖父様」
ここ一週間で身につけた礼儀作法を見事発揮し、アイリスは優雅に頭を下げた。
まだ動きは若干ぎこちないものの、手の位置や顎の角度などはきちんと合っている。
ギリギリ合格点と言ったところだろうか。
「儂も一応、自己紹介しておくか。一応、現公爵の父親……っと、ローガンはもう貴族籍から抜かれて当主じゃなくなったんだったな」
意外と耳が早い祖父は、やれやれと頭を振る。
『歳はとりたくないものだ』とボヤきながら髭を撫で、軽く咳払いした。
「では、改めてフランシス・ジェフ・エーデルだ。よろしく頼む」
そう言うが早いか、祖父は我々と同じように頭を下げる。
『かつて当主だったから』と威張ることも、『罪を犯した者だから』と変に謙ることもなく、ただこちらの意向に合わせてくれた形だ。
今までこのように向き合ってくれる大人は少なかったからか、私もアイリスも少し驚く。
────と、ここで祖父は懐から手紙を取り出した。
「そちらの事情は事前に送ってもらった手紙で、把握している。元を正せば私の不始末のせいだから、出来る限り力になろう。ただ、十数年のブランクがある上、最近の情勢には少し疎い。全てを完璧にこなすのは、難しいと思われる」
厳しい顔つきでそう語る祖父に、私は直ぐさまこう答える。
「もちろん、全て任せきりにするつもりはありません。私もいくつか仕事を請け負うつもりです」
「それは助かる」
「いえ、そんな……むしろ、助けていただいているのはこちらの方で……」
本来であれば、我々の世代でどうにかしなければならないこと。
祖父は責任を感じているようだが、その禊は既に果たされている。
現役引退と僻地に隔離という形で。
だから、新たに何かを背負ったり罪の意識に苛まれたりする必要はないのだ。
それにヴィンセントの話が正しければ、そもそもの原因はお父様にあるそうだし……。
124
あなたにおすすめの小説
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる