私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第一章

アイリスの覚悟②

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◇◆◇◆

 ────エーデル公爵家に戻ってきてから、一週間ほど経過した頃。
ヴィンセントの情報通り、私達の祖父フランシス・ジェフ・エーデルが帝都を訪れた。
ヴィンセントの采配か、ロジャー皇帝陛下の気遣いか滞在場所は我が家に指定され、今まさに顔を合わせている。

 お祖父様って、結構お歳を召されている筈なのに若々しいわね。
それになんというか……大きい。日頃から、鍛えているのかしら?

 白髪紫眼の美丈夫を前に、私は一瞬呆気に取られるものの、直ぐさまお辞儀する。
お互い初対面だから、最低限の礼儀は通そうと思って。

「お初にお目に掛かります。エーデル公爵家の長女セシリア・リゼ・エーデルです。こちらは妹であり、現在当主代理を務めているアイリス・レーナ・エーデル。ゆくゆくはエーデル公爵家の正式な当主となり、家門を引っ張っていく子です」

「よろしくお願いします、お祖父様」

 ここ一週間で身につけた礼儀作法を見事発揮し、アイリスは優雅に頭を下げた。
まだ動きは若干ぎこちないものの、手の位置や顎の角度などはきちんと合っている。
ギリギリ合格点と言ったところだろうか。

「儂も一応、自己紹介しておくか。一応、現公爵の父親……っと、ローガンはもう貴族籍から抜かれて当主じゃなくなったんだったな」

 意外と耳が早い祖父は、やれやれとかぶりを振る。
『歳はとりたくないものだ』とボヤきながら髭を撫で、軽く咳払いした。

「では、改めてフランシス・ジェフ・エーデルだ。よろしく頼む」

 そう言うが早いか、祖父は我々と同じように頭を下げる。
『かつて当主だったから』と威張ることも、『罪を犯した者だから』と変に謙ることもなく、ただこちらの意向に合わせてくれた形だ。
今までこのように向き合ってくれる大人は少なかったからか、私もアイリスも少し驚く。
────と、ここで祖父は懐から手紙を取り出した。

「そちらの事情は事前に送ってもらった手紙で、把握している。元を正せば私の不始末のせいだから、出来る限り力になろう。ただ、十数年のブランクがある上、最近の情勢には少し疎い。全てを完璧にこなすのは、難しいと思われる」

 厳しい顔つきでそう語る祖父に、私は直ぐさまこう答える。

「もちろん、全て任せきりにするつもりはありません。私もいくつか仕事を請け負うつもりです」

「それは助かる」

「いえ、そんな……むしろ、助けていただいているのはこちらの方で……」

 本来であれば、我々の世代でどうにかしなければならないこと。
祖父は責任を感じているようだが、その禊は既に果たされている。
現役引退と僻地に隔離という形で。
だから、新たに何かを背負ったり罪の意識に苛まれたりする必要はないのだ。

 それにヴィンセントの話が正しければ、そもそもの原因はお父様にあるそうだし……。
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