私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

文字の大きさ
48 / 208
第一章

アイリスの覚悟③

しおりを挟む
 家宝紛失に一枚噛んでいるという話を思い返し、私は内心溜め息を零す。
『娘の私が言うのもなんだけど、とんだ疫病神ね』と肩を竦めながら。

「とりあえず立ち話もなんですし、部屋に行きましょう。私もアイリスもお祖父様と会えることを楽しみにしていましたから」

 『積もる話もあるだろうし』と考え、私は一階の応接室へ促す。
本来であれば、洋間へ通すべきなんだが……お年寄りに階段の昇り降りは辛いだろう、と配慮したのだ。
まあ、祖父の体格を見る限り要らぬ気遣いだったようだが。
『全然衰えている様子がない』と苦笑する中、祖父は少し驚いたように目を剥く。

「楽しみに……?本当か?儂は恨まれているとばかり、思っていたが……」

 『憎まれ口でも叩かれるのかと……』と零し、祖父は私とアイリスを交互に見やる。
戸惑いを露わにする彼の前で、私はスッと目を細めた。

「恨んではいません。もちろん、複雑な気持ちは多少ありますが。でも、それ以上に────ずっと会えなかった寂しさやようやく会えた感動の方が、大きいです」

 母からよく祖父の話を聞いていたため、私はあまり悪印象を抱いてなかった。
だから、何度か手紙を書いたり会いに行ったりしようとしたが……父に阻まれ、断念。
ただ、祖父の健康と幸福を祈ることしか出来なかった。

 実はクライン公爵家にきちんと嫁入りしたら、一度接触を図ろうと思っていたの。
なので、結果的にそれが前倒しとなって内心ちょっと嬉しかったり……まあ、再会の理由がお祖父様の労働力目当てというのは複雑だけど。

「そう、か……そうか。これまで儂の人生は一体、何だったんだろう?と……結局何も成し遂げることが出来なかった、と嘆いておったが、今分かった。儂の人生は────可愛い孫達の力となることだ。これだけは必ずや、成し遂げてみせる」

 『もう二度と失敗しない』と言い切り、祖父はこちらへ手を伸ばした。
かと思えば、私とアイリスの頭をワシャワシャと撫でる。

「恐らく短い付き合いになるだろうが、儂に出来ることがあれば何でも言え。己の命をかなぐり捨てでも、力になる」

 『どうせ、老い先短い身だしな』と笑い、祖父は応接室へ足を向けた。
もう何年も訪れていない場所とはいえ、かつての我が家だったからか道は分かるようだ。
『ほれ、早く来い』と急かす祖父に、私とアイリスは首を縦に振る。
そして、応接室に辿り着くと、各々好きな場所へ腰掛けた。

「さて、何を話すか」
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

処理中です...