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第二章
降伏勧告③
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「あ、あの……これは一体、どういうことでしょうか?」
そう言って、この場に姿を現したのは教皇聖下であるカイル・サム・シモンズだった。
状況についていけない様子の彼は、いそいそとこちらへ近づく。
でも、こちらの気迫に押されてか一定の距離を保っていた。
「我々には、このような仕打ちを受ける心当たりがありません。きっと、何か行き違いが……」
「────黙れ、外道が」
堪らず口を挟み、一歩前へ出るルパート殿下は僅かに表情を険しくした。
珍しく嫌悪感を表す彼の前で、教皇聖下はたじろぐ。
その後ろに控える神官や聖騎士も、ちょっと及び腰になった。
この場にどこか緊迫した空気が流れる中、ヴィンセントは書類をあちらに見せる。
「非常に残念ですが、行き違いという線はありません。あなた方が孤児を使って非人道的な実験を行っているのは、もう分かっていますから」
『証拠だって、あります』と強気に出るヴィンセントに、教皇聖下をはじめ悪事に加担したと思われる人間達は表情を強ばらせた。
まさか、バレているとは微塵も思わなかったらしい。
「そ、そんなことが……私は何も知りませんでした!きっと、一部の神官達の暴走でしょう!今すぐ、関係者を洗い出して身柄を引き渡すよう手配します!なので、どうか穏便に……!」
教皇聖下はあくまで『自分は無関係』という態度を取り、何とかこの場を切り抜けようとする。
こちらはもう全て把握している、というのに……。
「そうですか。ここまで来て、まだ白を切り通すおつもりなのですね」
ヴィンセントは冷めた目で教皇聖下を見つめ、一つ息を吐いた。
と同時に、剣を引き抜く。相手に見せつけるように、ゆっくりと。
「そちらがその気なら、こちらも遠慮しません────殿下、突撃の合図を」
隣に立つ紫髪の美青年を見上げ、ヴィンセントはスッと目を細めた。
すると、ルパート殿下は小さく頷いて前を向く。
鞘から、少し剣身を覗かせながら。
「皆の者、掛かれ」
そう言って、この場に姿を現したのは教皇聖下であるカイル・サム・シモンズだった。
状況についていけない様子の彼は、いそいそとこちらへ近づく。
でも、こちらの気迫に押されてか一定の距離を保っていた。
「我々には、このような仕打ちを受ける心当たりがありません。きっと、何か行き違いが……」
「────黙れ、外道が」
堪らず口を挟み、一歩前へ出るルパート殿下は僅かに表情を険しくした。
珍しく嫌悪感を表す彼の前で、教皇聖下はたじろぐ。
その後ろに控える神官や聖騎士も、ちょっと及び腰になった。
この場にどこか緊迫した空気が流れる中、ヴィンセントは書類をあちらに見せる。
「非常に残念ですが、行き違いという線はありません。あなた方が孤児を使って非人道的な実験を行っているのは、もう分かっていますから」
『証拠だって、あります』と強気に出るヴィンセントに、教皇聖下をはじめ悪事に加担したと思われる人間達は表情を強ばらせた。
まさか、バレているとは微塵も思わなかったらしい。
「そ、そんなことが……私は何も知りませんでした!きっと、一部の神官達の暴走でしょう!今すぐ、関係者を洗い出して身柄を引き渡すよう手配します!なので、どうか穏便に……!」
教皇聖下はあくまで『自分は無関係』という態度を取り、何とかこの場を切り抜けようとする。
こちらはもう全て把握している、というのに……。
「そうですか。ここまで来て、まだ白を切り通すおつもりなのですね」
ヴィンセントは冷めた目で教皇聖下を見つめ、一つ息を吐いた。
と同時に、剣を引き抜く。相手に見せつけるように、ゆっくりと。
「そちらがその気なら、こちらも遠慮しません────殿下、突撃の合図を」
隣に立つ紫髪の美青年を見上げ、ヴィンセントはスッと目を細めた。
すると、ルパート殿下は小さく頷いて前を向く。
鞘から、少し剣身を覗かせながら。
「皆の者、掛かれ」
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