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第二章
教皇聖下の黒い杖《ヴィンセント side》②
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「ふふふっ……やはり、私の血統魔法の前ではみんな赤子同然ですね」
すっかりいい気になっている教皇聖下は、右へ左へ杖を振る。
それによって発生した風が、また我々を襲ってきた。
なので、なかなか距離を詰められない。
とはいえ、そこまで劣勢でもないかな。全員、一応無傷な訳だし。
何より、教皇聖下は力を見せびらかすことに夢中で魔力消費など考えていない。
この調子なら、直ぐに魔力切れになるだろう。
『攻めるなら、その時かな』と考え、僕はルパート殿下達にアイコンタクトを送る。
しばらく防御に集中して、と伝えるため。
『無茶して戦況を早めても、いいことはない』と思案する僕を他所に、教皇聖下はふと身動きを止めた。
かと思えば、杖を握り直す。
「さて、お遊びはこのくらいにして決着をつけましょうか」
先程までの攻撃は本気じゃなかったことを告げ、教皇聖下はこちらを真っ直ぐ見据えた。
反射的に身構える僕達を前に、彼はゆっくりと口を開く。
「“気体を司りし杖”────ボレアース、我が名はカイル・サム・シモンズ。そなたの仕えしニクスの血を引く者。もし、この声を聞いているのなら空気の振動を操り、風の流れを変え、自然を吹き飛ばすような力を分け与えたまえ。そなたにのみ許された権能を、権限を、権利を委ねたまえ。我が願うは」
そこで一度言葉を切り、教皇聖下はエメラルドの瞳に愉悦を滲ませた。
「こちらに牙を剥く者達から、空気を奪うことなり」
「「「!!」」」
詠唱内容から教皇聖下のしようとしていることを何となく察した僕達は、咄嗟に息を吸い込む。
と同時に、黒い杖が強い光を放って緩い風を巻き起こした。
もう発動した……かな?
片手で口元を覆いつつ、僕はチラリとルパート殿下に目を向ける。
すると、彼は小さく頷いて血統魔法の発動を示唆した。
こんなに早く状況を把握出来たということは……多分、呼吸出来ないか実際に試してみたんだろうな。
全く……そういう危険な行為は、本来皇族がするべきじゃないのに。
やれやれと内心肩を竦めながら、僕は教皇聖下へ視線を戻す。
その刹那、竜巻のような風が巻き起こる。教皇聖下を中心にして。
恐らく、結界代わりのつもりだろう。
呼吸出来ない状態にしたとはいえ、即刻戦闘不能になる訳じゃないから。
僕とルパート殿下なら力押しで教皇聖下を倒せそうだけど、優先すべきは血統魔法の無効化かな。
恐らく、術者を撃破しても効果は持続したままだろうから。
そのとき、封印解除に必要な“息”を失っていたら……確実に全滅する。
『現状、酸素は有限』ということを念頭に置き、僕は懐から“混沌を律する剣”を取り出した。
そして、ルパート殿下に投げ渡すと、彼は即座に自身の手首を切りつける。
封印解除に必要な血液を確保するために。
『少量で構わないんだけどな』と考える中、ルパート殿下は傷口に“混沌を律する剣”を押し付けた。
「一時解除を認める」
すっかりいい気になっている教皇聖下は、右へ左へ杖を振る。
それによって発生した風が、また我々を襲ってきた。
なので、なかなか距離を詰められない。
とはいえ、そこまで劣勢でもないかな。全員、一応無傷な訳だし。
何より、教皇聖下は力を見せびらかすことに夢中で魔力消費など考えていない。
この調子なら、直ぐに魔力切れになるだろう。
『攻めるなら、その時かな』と考え、僕はルパート殿下達にアイコンタクトを送る。
しばらく防御に集中して、と伝えるため。
『無茶して戦況を早めても、いいことはない』と思案する僕を他所に、教皇聖下はふと身動きを止めた。
かと思えば、杖を握り直す。
「さて、お遊びはこのくらいにして決着をつけましょうか」
先程までの攻撃は本気じゃなかったことを告げ、教皇聖下はこちらを真っ直ぐ見据えた。
反射的に身構える僕達を前に、彼はゆっくりと口を開く。
「“気体を司りし杖”────ボレアース、我が名はカイル・サム・シモンズ。そなたの仕えしニクスの血を引く者。もし、この声を聞いているのなら空気の振動を操り、風の流れを変え、自然を吹き飛ばすような力を分け与えたまえ。そなたにのみ許された権能を、権限を、権利を委ねたまえ。我が願うは」
そこで一度言葉を切り、教皇聖下はエメラルドの瞳に愉悦を滲ませた。
「こちらに牙を剥く者達から、空気を奪うことなり」
「「「!!」」」
詠唱内容から教皇聖下のしようとしていることを何となく察した僕達は、咄嗟に息を吸い込む。
と同時に、黒い杖が強い光を放って緩い風を巻き起こした。
もう発動した……かな?
片手で口元を覆いつつ、僕はチラリとルパート殿下に目を向ける。
すると、彼は小さく頷いて血統魔法の発動を示唆した。
こんなに早く状況を把握出来たということは……多分、呼吸出来ないか実際に試してみたんだろうな。
全く……そういう危険な行為は、本来皇族がするべきじゃないのに。
やれやれと内心肩を竦めながら、僕は教皇聖下へ視線を戻す。
その刹那、竜巻のような風が巻き起こる。教皇聖下を中心にして。
恐らく、結界代わりのつもりだろう。
呼吸出来ない状態にしたとはいえ、即刻戦闘不能になる訳じゃないから。
僕とルパート殿下なら力押しで教皇聖下を倒せそうだけど、優先すべきは血統魔法の無効化かな。
恐らく、術者を撃破しても効果は持続したままだろうから。
そのとき、封印解除に必要な“息”を失っていたら……確実に全滅する。
『現状、酸素は有限』ということを念頭に置き、僕は懐から“混沌を律する剣”を取り出した。
そして、ルパート殿下に投げ渡すと、彼は即座に自身の手首を切りつける。
封印解除に必要な血液を確保するために。
『少量で構わないんだけどな』と考える中、ルパート殿下は傷口に“混沌を律する剣”を押し付けた。
「一時解除を認める」
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