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第二章
均衡を司りし杖で願ったこと②
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「ヴィンセント……!」
縋るような気持ちで彼の名前を呼び、私は少しばかり身を乗り出す。
と同時に、“均衡を司りし杖”が眩い光を放った。
かと思えば、先端の宝玉から半透明の手が伸び、天井へ触れる。
えっ?何でわざわざ、そんなところに接触を?転移に必要なプロセスなのかしら?
────と疑問を抱く中、ヴィンセントが“混沌を律する剣”を投げた。
恐らく、詠唱していては間に合わないと考えたのだろう。
なんせ、あちらはもう発動中だから。
こうなると、もう“均衡を司りし杖”に“混沌を律する剣”を接触させて止めるしかない。
『それでも、ギリギリ間に合うかどうかだけど……』と思案していると、“混沌を律する剣”が“均衡を司りし杖”にぶつかった。
その途端、先端の宝玉から伸びていた半透明の手は消え去り、光も収まる。
「何とか逃亡は防げたみたいね……!」
ホッと胸を撫で下ろし、私は僅かに表情を和らげた。
アイリスや祖父も同様に安堵した素振りを見せ、『良かった』と言い合う。
でも、ヴィンセントだけはどこか難しい顔をしていた。
「……何かおかしい」
口元に手を当ててそう呟き、ヴィンセントは“均衡を司りし杖”をじっと見つめる。
────と、ここで建物の軋む音が鳴り響いた。
「「「!?」」」
反射的に顔を上げる私達は、少しばかり表情を強ばらせる。
と同時に、天井へ亀裂が入った。
「不味い……!このままでは、崩れるぞ!」
思ったより大きい割れ目を前に、祖父は焦りを露わにする。
『早く避難しなければ……!』と呼び掛ける彼を前に────父は頬を緩めた。
「はははっ……お前ら全員……道連れだ」
痛みに顔を歪めながらも、父はこちらを嘲笑う。
ピンチなのは、彼だって同じなのに。
もう瀕死の状態だから達観しているのか、それともこうなることを事前に知っていたのか……あまり動揺してなかった。
「────やはり、これは貴方の仕業ですか」
そう言って、僅かに眉を顰めるのは他の誰でもないヴィンセントだった。
縋るような気持ちで彼の名前を呼び、私は少しばかり身を乗り出す。
と同時に、“均衡を司りし杖”が眩い光を放った。
かと思えば、先端の宝玉から半透明の手が伸び、天井へ触れる。
えっ?何でわざわざ、そんなところに接触を?転移に必要なプロセスなのかしら?
────と疑問を抱く中、ヴィンセントが“混沌を律する剣”を投げた。
恐らく、詠唱していては間に合わないと考えたのだろう。
なんせ、あちらはもう発動中だから。
こうなると、もう“均衡を司りし杖”に“混沌を律する剣”を接触させて止めるしかない。
『それでも、ギリギリ間に合うかどうかだけど……』と思案していると、“混沌を律する剣”が“均衡を司りし杖”にぶつかった。
その途端、先端の宝玉から伸びていた半透明の手は消え去り、光も収まる。
「何とか逃亡は防げたみたいね……!」
ホッと胸を撫で下ろし、私は僅かに表情を和らげた。
アイリスや祖父も同様に安堵した素振りを見せ、『良かった』と言い合う。
でも、ヴィンセントだけはどこか難しい顔をしていた。
「……何かおかしい」
口元に手を当ててそう呟き、ヴィンセントは“均衡を司りし杖”をじっと見つめる。
────と、ここで建物の軋む音が鳴り響いた。
「「「!?」」」
反射的に顔を上げる私達は、少しばかり表情を強ばらせる。
と同時に、天井へ亀裂が入った。
「不味い……!このままでは、崩れるぞ!」
思ったより大きい割れ目を前に、祖父は焦りを露わにする。
『早く避難しなければ……!』と呼び掛ける彼を前に────父は頬を緩めた。
「はははっ……お前ら全員……道連れだ」
痛みに顔を歪めながらも、父はこちらを嘲笑う。
ピンチなのは、彼だって同じなのに。
もう瀕死の状態だから達観しているのか、それともこうなることを事前に知っていたのか……あまり動揺してなかった。
「────やはり、これは貴方の仕業ですか」
そう言って、僅かに眉を顰めるのは他の誰でもないヴィンセントだった。
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