184 / 208
第二章
父と祖父の最期《アイリス side》③
しおりを挟む
「ぁ……ああ……わた、し……」
絞り出すような声で言葉を紡ぎ、私はその場に蹲る。
「何も……何も出来なかった……ただ、二人のことを見ていて……だから……私……」
あれほど、『もう家族を見捨てるような真似はしたくない』と言っていたのに……結局また自分だけ助かった事実に、身を震わせた。
目の前が真っ暗になるような感覚を覚える中、私はふと“均衡を司りし杖”を目にする。
「そうだ……家宝の力で、二人を生き返らせれば……」
『まだ取り返しは、つくんじゃないか』という幻想に囚われ、私は“均衡を司りし杖”へ手を伸ばした。
────が、ルパート殿下に腕を掴まれ、阻止される。
「やめておけ。死者蘇生など、この場に居る全員の魔力を併せたとしても多分出来ない。二人分ともなれば、尚更な」
『無駄死にしたいのか』とハッキリ言い、ルパート殿下は厳しい現実を突きつけてきた。
でも、私は決して手を引かず……“均衡を司りし杖”を求める。
「無茶なのは、理解しています……けど、私はもう家族を見捨てたくない……少しでも可能性があるなら、それに縋りたい……たとえ、自分の命をドブに捨てる羽目になったとしても」
『無駄死にしてもいい』という意向を示し、私はただ一点だけを……“均衡を司りし杖”だけを見つめた。
「だから、もう手を離し……」
「────アイリス!」
悲鳴に近い声色で私の名前を呼び、肩を掴んでくるのは他の誰でもない姉だった。
どこか怒ったような素振りを見せる彼女は、私のことを後ろに引っ張る。
『そちらへ行くな』と訴え掛けるかのように。
「貴方、お継母様に言われたことをもう忘れたの!?」
「!」
ピクッと僅かに反応を示し、私は後ろを振り返った。
すると、今にも泣きそうな表情をしている姉が目に入る。
「お継母様はアイリスが生きて幸せになることを……明るい未来が訪れることを、祈っているのよ!?それなのに、貴方自ら未来を手放すの!?」
あの手紙の内容を引き合いに出し、姉は『命を粗末にするんじゃない!』と叱りつけた。
その途端、私の中にある使命感や焦燥感は消えてなくなり……そっと手を下ろす。
正直まだ冷静じゃないけど、ここで無茶を押し通しちゃいけないのは分かる。
きっと、誰のためにもならないから。
何より、お母様を悲しませたくない。
今もどこかで見守ってくれているだろう母を思い浮かべ、私は肩から力を抜いた。
「……死者蘇生は諦めるわ。取り乱してしまって、ごめんなさい」
出来るだけ落ち着いた口調で返事し、私は目を伏せる。
と同時に、大きく深呼吸した。
絞り出すような声で言葉を紡ぎ、私はその場に蹲る。
「何も……何も出来なかった……ただ、二人のことを見ていて……だから……私……」
あれほど、『もう家族を見捨てるような真似はしたくない』と言っていたのに……結局また自分だけ助かった事実に、身を震わせた。
目の前が真っ暗になるような感覚を覚える中、私はふと“均衡を司りし杖”を目にする。
「そうだ……家宝の力で、二人を生き返らせれば……」
『まだ取り返しは、つくんじゃないか』という幻想に囚われ、私は“均衡を司りし杖”へ手を伸ばした。
────が、ルパート殿下に腕を掴まれ、阻止される。
「やめておけ。死者蘇生など、この場に居る全員の魔力を併せたとしても多分出来ない。二人分ともなれば、尚更な」
『無駄死にしたいのか』とハッキリ言い、ルパート殿下は厳しい現実を突きつけてきた。
でも、私は決して手を引かず……“均衡を司りし杖”を求める。
「無茶なのは、理解しています……けど、私はもう家族を見捨てたくない……少しでも可能性があるなら、それに縋りたい……たとえ、自分の命をドブに捨てる羽目になったとしても」
『無駄死にしてもいい』という意向を示し、私はただ一点だけを……“均衡を司りし杖”だけを見つめた。
「だから、もう手を離し……」
「────アイリス!」
悲鳴に近い声色で私の名前を呼び、肩を掴んでくるのは他の誰でもない姉だった。
どこか怒ったような素振りを見せる彼女は、私のことを後ろに引っ張る。
『そちらへ行くな』と訴え掛けるかのように。
「貴方、お継母様に言われたことをもう忘れたの!?」
「!」
ピクッと僅かに反応を示し、私は後ろを振り返った。
すると、今にも泣きそうな表情をしている姉が目に入る。
「お継母様はアイリスが生きて幸せになることを……明るい未来が訪れることを、祈っているのよ!?それなのに、貴方自ら未来を手放すの!?」
あの手紙の内容を引き合いに出し、姉は『命を粗末にするんじゃない!』と叱りつけた。
その途端、私の中にある使命感や焦燥感は消えてなくなり……そっと手を下ろす。
正直まだ冷静じゃないけど、ここで無茶を押し通しちゃいけないのは分かる。
きっと、誰のためにもならないから。
何より、お母様を悲しませたくない。
今もどこかで見守ってくれているだろう母を思い浮かべ、私は肩から力を抜いた。
「……死者蘇生は諦めるわ。取り乱してしまって、ごめんなさい」
出来るだけ落ち着いた口調で返事し、私は目を伏せる。
と同時に、大きく深呼吸した。
119
あなたにおすすめの小説
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる