私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第二章

父と祖父の最期《アイリス side》③

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「ぁ……ああ……わた、し……」

 絞り出すような声で言葉を紡ぎ、私はその場に蹲る。

「何も……何も出来なかった……ただ、二人のことを見ていて……だから……私……」

 あれほど、『もう家族を見捨てるような真似はしたくない』と言っていたのに……結局また自分だけ助かった事実に、身を震わせた。
目の前が真っ暗になるような感覚を覚える中、私はふと“均衡を司りし杖”を目にする。

「そうだ……家宝の力で、二人を生き返らせれば……」

 『まだ取り返しは、つくんじゃないか』という幻想に囚われ、私は“均衡を司りし杖”へ手を伸ばした。
────が、ルパート殿下に腕を掴まれ、阻止される。

「やめておけ。死者蘇生など、この場に居る全員の魔力を併せたとしても多分出来ない。二人分ともなれば、尚更な」

 『無駄死にしたいのか』とハッキリ言い、ルパート殿下は厳しい現実を突きつけてきた。
でも、私は決して手を引かず……“均衡を司りし杖”を求める。

「無茶なのは、理解しています……けど、私はもう家族を見捨てたくない……少しでも可能性があるなら、それに縋りたい……たとえ、自分の命をドブに捨てる羽目になったとしても」

 『無駄死にしてもいい』という意向を示し、私はただ一点だけを……“均衡を司りし杖”だけを見つめた。

「だから、もう手を離し……」

「────アイリス!」

 悲鳴に近い声色で私の名前を呼び、肩を掴んでくるのは他の誰でもない姉だった。
どこか怒ったような素振りを見せる彼女は、私のことを後ろに引っ張る。
『そちらへ行くな』と訴え掛けるかのように。

「貴方、お継母様に言われたことをもう忘れたの!?」

「!」

 ピクッと僅かに反応を示し、私は後ろを振り返った。
すると、今にも泣きそうな表情かおをしている姉が目に入る。

「お継母様はアイリスが生きて幸せになることを……明るい未来が訪れることを、祈っているのよ!?それなのに、貴方自ら未来を手放すの!?」

 あの手紙の内容を引き合いに出し、姉は『命を粗末にするんじゃない!』と叱りつけた。
その途端、私の中にある使命感や焦燥感は消えてなくなり……そっと手を下ろす。

 正直まだ冷静じゃないけど、ここで無茶を押し通しちゃいけないのは分かる。
きっと、誰のためにもならないから。
何より、お母様を悲しませたくない。

 今もどこかで見守ってくれているだろう母を思い浮かべ、私は肩から力を抜いた。

「……死者蘇生は諦めるわ。取り乱してしまって、ごめんなさい」

 出来るだけ落ち着いた口調で返事し、私は目を伏せる。
と同時に、大きく深呼吸した。
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