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スパルタ
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「ここからは、ひたすら実践を行う。魔力が尽きたら、マナポーションを飲め。直ぐに回復する」
紫色の液体が入った小瓶を指で突き、セオドアさんは視線を上げる。
────その後は、もう凄かった。
魔法行使→魔力切れ→マナポーションで回復、の繰り返し。
おかげで魔法の熟練度はかなり上がったが、凄く疲れた。
「なんか、今日やけにスパルタじゃないですか?」
日が暮れるまで講義をすることなんてこれまでなかったため、私は不思議に思う。
『もういい加減、魔法をマスターしろってこと?』と頭を捻る中、キースさんが口を開いた。
「それは多分────もうすぐ、遠征があるからッスよ」
「遠征、ですか?」
「ええ。実は隣街の近辺に大型の魔物が現れて、討伐を依頼されたんスよ。BランクやCランクの冒険者じゃ、歯が立たないらしくて」
『それで、隣街の僕達にまで要請が』と話し、キースさんは首の裏に手を回す。
「下手したら、数ヶ月ここを離れることになるんである程度自衛出来るようになってほしかったんじゃないかと」
いざってとき傍に居られないかもしれない可能性を指摘し、キースさんはそっと眉尻を下げた。
『そういう事態にならないのが、一番なんスけど』と述べる彼を前に、私はふとセオドアさんの方を見る。
「つまり、心配してくれたんですね」
「そのような言い方をするな、鳥肌が立つ」
「では、『タブレットを』という主語を付け足しておきます」
「……」
何とも言えない表情を浮かべ、セオドアさんは額に手を当てた。
「はぁ……とりあえず、そういう訳だから私が遠征に行っても魔法の特訓は続けろ」
「はい、先生」
魔法自体は別に嫌いじゃない……むしろ好きなので、間髪容れずに頷いた。
『毎日、一回は魔法を使うようにしよう』と心に決める中、キースさんが不意に手を叩く。
「あっ、そうだ。ミレイちゃん、料理は出来るッスか?出来ないなら、簡単なやつを教えるッスよ」
『遠征の間、食事は自分で用意してもらうしかないんで』と言い、キースさんはこちらの返答を待つ。
料理……料理かぁ。正直、面倒臭いって気持ちが大きいなぁ。
極論食べられれば何でもいい派のため、断る方に比重が傾いた。
「お気持ちは有り難いですが、外食するので料理は……」
「いや、教えてもらえ。お前の場合、外食だと食事を抜く日が出てくるだろ。移動する手間などを惜しんで」
『その分、読書に当てようとする筈だ』と語るセオドアさんは、完全に私のことを理解していた。
ここに来てから、何度か本を読むために昼食を摂らなかったせいだろうか。
「遠征中に倒れられても、私達は助けられないんだから大人しくキースの言うことを聞いておけ」
「はい」
ここまで言われては納得するしかなくて、首を縦に振った。
すると、キースさんがソファから立ち上がる。
「じゃあ、早速練習しよう」
『ちょうど、そろそろ夕食の時間だし』と言い、キースさんはキッチンの方へ足を向ける。
そのままさっさと歩き出す彼を前に、私はおもむろに席を立った。
◇◆◇◆
────キースさんに料理を習った数日後。
ついに不死鳥が遠征へ行く日となり、私は見送りのため玄関先に来ていた。
いつもより荷物の多い三人の前で、私は『いつになったら、出掛けるのだろう』と考える。
だって、
「いいか?もし、襲われたら聖なる光で目眩して全力疾走だぞ?」
「外出は極力、控えろ。お前はボロを出しやすいからな」
「毎日、しっかり食べるんスよ?レシピは覚えているッスよね?」
三人とも、かれこれ三十分くらい懇々と注意点を言い聞かせてくるから。
心配してくれるのは有り難いけど、もういい加減出立してほしい。
『というか、私信用なさすぎない?』と思案しながら、両手を上げる。
「分かりました。分かりましたから。それより、時間は大丈夫なんですか?」
『遅刻するんじゃないか』と懸念を零す私に、三人はピクッと反応を示した。
「まあ……ギリギリ?」
「多少遅れても問題はないが、そろそろ行くか」
「人の命が懸かっているッスからね」
直ぐさま気持ちを切り替え、三人は表情を引き締める。
「じゃあ、行ってくる」
「私達が出ていったら、きちんと戸締りをしろ」
「留守は任せたッスよ」
思い思いの言葉を投げ掛け、三人はこちらに背を向けた。
アジトの外へ行く彼らの前で、私は背筋を伸ばす。
「アランさん、セオドアさん、キースさん、お気をつけて」
一応危険の伴う案件なので、私はそんな言葉を掛けた。
────間もなくして、玄関の扉が閉まる。
さて、二度寝でもしようかな。
普段はまだ寝ている時間帯のため、迷わず自室のベッドに向かった。
そして、爆睡。
「不味い……寝すぎた」
『もうとっくに昼を過ぎている……』と思いつつ、私はのそのそと起き上がる。
とりあえず、昼食にしよう……初日から、キースさんの言葉を無視する訳にはいかない。
『毎日、しっかり食べる』という注意点を思い返し、私はキッチンに直行した。
そこで簡単な……本当に簡単な料理を作り、食べる。
スクランブルエッグと、ジャムを塗っただけのパン……ほぼ何もしてないに等しいよね。
一応、キースさんはもうちょっと手の込んだ料理を教えようとしてくれたんだけど、私のレベルが低すぎてこうなった。
遠征まで、あんまり時間もなかったし。
『それに、これでも充分美味しいから』と目を細め、私はパンを頬張った。
「ただ、キースさんは『毎日、こんな料理なんて』と嘆いて自分だけこっちに残ろうか本気で悩んでいたなぁ」
なんだかお母さんみたいな性格の彼を思い出し、私は小さく肩を竦める。
と同時に、遅めの昼食を終えた。
そこからは後片付けと読書を行い、まったり過ごす。
さすがにいつもの時間に夕食はキツかったので、夜の十時くらいにした。
────その結果、毎日徐々に食事や起床の時間がズレ込み、一ヶ月経つ頃にはほぼ昼夜逆転に。
「見事に生活リズム、崩れたなぁ」
紫色の液体が入った小瓶を指で突き、セオドアさんは視線を上げる。
────その後は、もう凄かった。
魔法行使→魔力切れ→マナポーションで回復、の繰り返し。
おかげで魔法の熟練度はかなり上がったが、凄く疲れた。
「なんか、今日やけにスパルタじゃないですか?」
日が暮れるまで講義をすることなんてこれまでなかったため、私は不思議に思う。
『もういい加減、魔法をマスターしろってこと?』と頭を捻る中、キースさんが口を開いた。
「それは多分────もうすぐ、遠征があるからッスよ」
「遠征、ですか?」
「ええ。実は隣街の近辺に大型の魔物が現れて、討伐を依頼されたんスよ。BランクやCランクの冒険者じゃ、歯が立たないらしくて」
『それで、隣街の僕達にまで要請が』と話し、キースさんは首の裏に手を回す。
「下手したら、数ヶ月ここを離れることになるんである程度自衛出来るようになってほしかったんじゃないかと」
いざってとき傍に居られないかもしれない可能性を指摘し、キースさんはそっと眉尻を下げた。
『そういう事態にならないのが、一番なんスけど』と述べる彼を前に、私はふとセオドアさんの方を見る。
「つまり、心配してくれたんですね」
「そのような言い方をするな、鳥肌が立つ」
「では、『タブレットを』という主語を付け足しておきます」
「……」
何とも言えない表情を浮かべ、セオドアさんは額に手を当てた。
「はぁ……とりあえず、そういう訳だから私が遠征に行っても魔法の特訓は続けろ」
「はい、先生」
魔法自体は別に嫌いじゃない……むしろ好きなので、間髪容れずに頷いた。
『毎日、一回は魔法を使うようにしよう』と心に決める中、キースさんが不意に手を叩く。
「あっ、そうだ。ミレイちゃん、料理は出来るッスか?出来ないなら、簡単なやつを教えるッスよ」
『遠征の間、食事は自分で用意してもらうしかないんで』と言い、キースさんはこちらの返答を待つ。
料理……料理かぁ。正直、面倒臭いって気持ちが大きいなぁ。
極論食べられれば何でもいい派のため、断る方に比重が傾いた。
「お気持ちは有り難いですが、外食するので料理は……」
「いや、教えてもらえ。お前の場合、外食だと食事を抜く日が出てくるだろ。移動する手間などを惜しんで」
『その分、読書に当てようとする筈だ』と語るセオドアさんは、完全に私のことを理解していた。
ここに来てから、何度か本を読むために昼食を摂らなかったせいだろうか。
「遠征中に倒れられても、私達は助けられないんだから大人しくキースの言うことを聞いておけ」
「はい」
ここまで言われては納得するしかなくて、首を縦に振った。
すると、キースさんがソファから立ち上がる。
「じゃあ、早速練習しよう」
『ちょうど、そろそろ夕食の時間だし』と言い、キースさんはキッチンの方へ足を向ける。
そのままさっさと歩き出す彼を前に、私はおもむろに席を立った。
◇◆◇◆
────キースさんに料理を習った数日後。
ついに不死鳥が遠征へ行く日となり、私は見送りのため玄関先に来ていた。
いつもより荷物の多い三人の前で、私は『いつになったら、出掛けるのだろう』と考える。
だって、
「いいか?もし、襲われたら聖なる光で目眩して全力疾走だぞ?」
「外出は極力、控えろ。お前はボロを出しやすいからな」
「毎日、しっかり食べるんスよ?レシピは覚えているッスよね?」
三人とも、かれこれ三十分くらい懇々と注意点を言い聞かせてくるから。
心配してくれるのは有り難いけど、もういい加減出立してほしい。
『というか、私信用なさすぎない?』と思案しながら、両手を上げる。
「分かりました。分かりましたから。それより、時間は大丈夫なんですか?」
『遅刻するんじゃないか』と懸念を零す私に、三人はピクッと反応を示した。
「まあ……ギリギリ?」
「多少遅れても問題はないが、そろそろ行くか」
「人の命が懸かっているッスからね」
直ぐさま気持ちを切り替え、三人は表情を引き締める。
「じゃあ、行ってくる」
「私達が出ていったら、きちんと戸締りをしろ」
「留守は任せたッスよ」
思い思いの言葉を投げ掛け、三人はこちらに背を向けた。
アジトの外へ行く彼らの前で、私は背筋を伸ばす。
「アランさん、セオドアさん、キースさん、お気をつけて」
一応危険の伴う案件なので、私はそんな言葉を掛けた。
────間もなくして、玄関の扉が閉まる。
さて、二度寝でもしようかな。
普段はまだ寝ている時間帯のため、迷わず自室のベッドに向かった。
そして、爆睡。
「不味い……寝すぎた」
『もうとっくに昼を過ぎている……』と思いつつ、私はのそのそと起き上がる。
とりあえず、昼食にしよう……初日から、キースさんの言葉を無視する訳にはいかない。
『毎日、しっかり食べる』という注意点を思い返し、私はキッチンに直行した。
そこで簡単な……本当に簡単な料理を作り、食べる。
スクランブルエッグと、ジャムを塗っただけのパン……ほぼ何もしてないに等しいよね。
一応、キースさんはもうちょっと手の込んだ料理を教えようとしてくれたんだけど、私のレベルが低すぎてこうなった。
遠征まで、あんまり時間もなかったし。
『それに、これでも充分美味しいから』と目を細め、私はパンを頬張った。
「ただ、キースさんは『毎日、こんな料理なんて』と嘆いて自分だけこっちに残ろうか本気で悩んでいたなぁ」
なんだかお母さんみたいな性格の彼を思い出し、私は小さく肩を竦める。
と同時に、遅めの昼食を終えた。
そこからは後片付けと読書を行い、まったり過ごす。
さすがにいつもの時間に夕食はキツかったので、夜の十時くらいにした。
────その結果、毎日徐々に食事や起床の時間がズレ込み、一ヶ月経つ頃にはほぼ昼夜逆転に。
「見事に生活リズム、崩れたなぁ」
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