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証拠集め
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「一応、聞いておきたいんだが────カーラという女は、どうなってもいいのか?」
セオドアさんが口火を切り、直球で質問を投げ掛けた。
これはなかなか酷なものを……でも、確認しておかなきゃいけない部分ではあるね。
ジェシカさんの意見を丸々無視して、進めるのもどうかと思うし。
『私の救出に手を貸してくれたなら、尚更』と思案する中、ジェシカさんは迷わず答える。
「構わないわ。少なくとも、私はあの子を庇う気なんてない」
「あの女が処刑されることになっても、か?」
『このままだと間違いなく、そうなるぞ』と念を押すセオドアさんに対し、ジェシカさんは真剣な表情を浮かべた。
「ええ。私利私欲のためにミレイちゃんを……お客様を売った時点で、もうあの子はウチの人間でも何でもないから」
商売人としての矜恃を踏みにじったカーラさんに、ジェシカさんは静かに……でも、確実に怒っていた。
いつになく冷たい目をしている彼女の前で、男性陣はどこか満足そうに頷く。
「そうか。なら、いい」
「これで心置きなく、全力でカーラを叩き潰せるな」
「説得に時間を割かなくて、済みそうッス」
あっ、カーラさんを懲らしめることに変わりはないんだ。
譲歩も妥協もない清々しさに、私は改めて三人の怒りを……どれだけ心配していたのか、を知った。
それにしても、処刑か。
異世界人の私にとっては、現実味のない話だな。
だから、特に何も思わない。
漫画や小説の心優しい主人公なら、『いや、それはさすがにやり過ぎだ』って感じるんだろうけど。
などと考えていると、ジェシカさんが不意に顔を上げる。
「さてと、私はそろそろ店に戻るわね」
『まだまだ仕事が、あるの』と語り、ジェシカさんは席を立った。
なので、私達も立ち上がって彼女のことを見送る。
きっと、相当時間を切り詰めてここに来てくれたんだろうな。
お店の状況……もとい嬉しい悲鳴を思い浮かべ、私はジェシカさんの背中を眺めた。
その刹那、配達員のお兄さんが姿を現す。
「ちょうど良かった。ミレイさん宛にお手紙です」
そう言って、配達員のお兄さんは手紙を差し出してきた。
私はソレを受け取り、差出人を確認する。
「────ノワール大公家から?」
『何で私に?』と少し驚き、目を瞬かせた。
すると、セオドアさんがこちらを向く。
「恐らく、救出の件だろう」
「救出の件って、もしかしてノワール大公家も協力してくれたんですか?」
「ああ」
「なるほど、それで」
ようやく納得し、私は『後でお礼の手紙を書かないとな』と考える。
一先ずダイニングテーブルの方に戻り、私は手紙を読んだ。
要約すると、『無事で良かった』みたいな内容かな。
あと、私の体調を心配する文章がズラリと。
『返信には、“すこぶる元気です”とも書かなきゃ』と思いながら、私はスッと目を細める。
改めて、今回の件では色んな人に助けられた。
本当に有り難いな。
────と、勝手に終幕の雰囲気を流すものの……今回の件はまだ終わってなかった。
その事実を痛感したのは、数週間後のこと。
「案の定とでと言うべきか、神殿のことは裁けなかったな」
アジトのリビングにて、セオドアさんは眉間に皺を寄せる。
『薄々そうなる気はしていたが』と呟き、ソファの上で足を組んだ。
と同時に、キースさんとアランさんが口を開く。
「証拠が出てこなかったッスからね~」
「最悪、ベネット男爵を切り捨てればいいように動いていたっぽいしな」
それぞれソファの肘掛けに寄り掛かったり背もたれに身を預けたりして、苦笑を漏らした。
誰もが手詰まりだと感じる中、アランさんが頭を搔く。
「もう一回、実行犯のカーラ達やベネット男爵に当たってみるか?」
「なら、急いだ方がいいッスね。実行犯の人達はもうじき斬首刑で、ベネット男爵は爵位剥奪の上国外追放なんで」
時間がないことを仄めかすキースさんに、セオドアさんはチラリと視線を向けた。
「いや、あいつらの尋問はもういい。あれ以上、何も知らないのは明白だからな」
『時間の無駄だ』と一蹴し、セオドアさんは人差し指で自身の腕を叩く。
その横で、アランさんは首裏に手を回した。
「じゃあ、どうするんだ?」
「……神殿が尻尾を出すまで、待つしかない」
「はぁ?そんな悠長にしていて、いいのか?」
「良くはない。今回の一件で、『不死鳥はミレイのためなら、全力で動く』と判明してしまったからな。神殿は今後もこいつを狙ってくるだろう」
私の方を見て、セオドアさんは難しい顔をする。
「また何か策を講じられる前に潰しておくのが、理想だ。だが、現状を考えると消極的な手を取らざるを得ない」
どうしても後手に回ってしまうことを口にし、セオドアさんは更に眉間の皺を深くした。
それにつられるように、アランさんやキースさんも悶々とした表情を浮かべる。
「あの~」
私は片手を上げて、三人の話し合いに加わる。
『なんだ?』とでも言うようにこちらを向く彼らの前で、私は手に持っていたものを掲げた。
「────タブレットを使って、証拠集めするのはダメなんですか?」
「「「!」」」
ピクッと僅かに反応を示し、アランさん達は瞳を揺らした。
「い……いやいやいやいや!タブレットで証拠集めは、無理だろ。どんなに重要な書類を読めても、その現物が手に入らなきゃ意味がないんだからさ」
「待て、愚か者。少しでも情報が欲しいこちらとしては、重要な書類を読めるだけで充分だ。何より、タブレットは未来の文書も閲覧出来る……つまり、神殿の動きを読んで先回り出来るんだ」
「そうなれば、一気に僕達の方が有利になるッスね。ミレイちゃんの防衛面はもちろん、証拠集めもしやすくなるんで。まあ、その場合今回とはまた別の悪事の証拠になるッスけど。でも、神殿を潰す上で役に立つのは間違いないッス」
反発するアランさん、冷静にタブレットの有用性を説くセオドアさん、賛成の方向に傾くキースさん。
この場に居る全員がタブレットをじっと見つめる中、アランさんが腕を組む。
「なるほど、確かに便利で心強いな。けど、こういうことにタブレットを使うのはあまり良くないって、いっつも言ってなかったか?」
懸念を零すアランさんに対し、セオドアさんとキースさんは小さく肩を竦める。
「今回は恐らく、問題ないだろう」
「派手な大立ち回りをする訳では、ないッスからね」
「あくまで、裏で密かに証拠を集めるつもりだ」
「それに、現場へタブレットを持っていくことはまずないでしょうし、そうそうバレることはないと思うッスよ」
『心配するようなことは、起きない筈』と主張するセオドアさんとキースさんに、アランさんは大きく頷く。
「そういうことなら、俺も賛成だ」
「では、満場一致で可決ということでこちらどうぞ」
『お納めください』と言って、私はタブレットを差し出す。
すると、セオドアさんが代表して受け取った。
────それからというものタブレットで徹底的に神殿の情報を洗い出し、裏拠点から証拠を回収したり一足早く悪事の現場に赴いて出来事を記録したりする。
セオドアさん達が。
私は狙われている立場ということもあり、ずっと待機だった。
正直暇でしょうがないけど、『誘拐事件のショックもまだ癒えてないだろ』って気を遣われたらね。大人しくしているしか、ない。
アジトのダイニングテーブルでお茶を飲みつつ、私は小さく息を吐く。
その刹那、リビングのソファにて作業していたセオドアさんが顔を上げた。
「あと少しで全部終わるから、我慢しろ」
もう神殿を潰す目処が立っているのか、セオドアさんは強気な姿勢を見せる。
なので、私はただ静かに『はい』と頷いた。
セオドアさんが口火を切り、直球で質問を投げ掛けた。
これはなかなか酷なものを……でも、確認しておかなきゃいけない部分ではあるね。
ジェシカさんの意見を丸々無視して、進めるのもどうかと思うし。
『私の救出に手を貸してくれたなら、尚更』と思案する中、ジェシカさんは迷わず答える。
「構わないわ。少なくとも、私はあの子を庇う気なんてない」
「あの女が処刑されることになっても、か?」
『このままだと間違いなく、そうなるぞ』と念を押すセオドアさんに対し、ジェシカさんは真剣な表情を浮かべた。
「ええ。私利私欲のためにミレイちゃんを……お客様を売った時点で、もうあの子はウチの人間でも何でもないから」
商売人としての矜恃を踏みにじったカーラさんに、ジェシカさんは静かに……でも、確実に怒っていた。
いつになく冷たい目をしている彼女の前で、男性陣はどこか満足そうに頷く。
「そうか。なら、いい」
「これで心置きなく、全力でカーラを叩き潰せるな」
「説得に時間を割かなくて、済みそうッス」
あっ、カーラさんを懲らしめることに変わりはないんだ。
譲歩も妥協もない清々しさに、私は改めて三人の怒りを……どれだけ心配していたのか、を知った。
それにしても、処刑か。
異世界人の私にとっては、現実味のない話だな。
だから、特に何も思わない。
漫画や小説の心優しい主人公なら、『いや、それはさすがにやり過ぎだ』って感じるんだろうけど。
などと考えていると、ジェシカさんが不意に顔を上げる。
「さてと、私はそろそろ店に戻るわね」
『まだまだ仕事が、あるの』と語り、ジェシカさんは席を立った。
なので、私達も立ち上がって彼女のことを見送る。
きっと、相当時間を切り詰めてここに来てくれたんだろうな。
お店の状況……もとい嬉しい悲鳴を思い浮かべ、私はジェシカさんの背中を眺めた。
その刹那、配達員のお兄さんが姿を現す。
「ちょうど良かった。ミレイさん宛にお手紙です」
そう言って、配達員のお兄さんは手紙を差し出してきた。
私はソレを受け取り、差出人を確認する。
「────ノワール大公家から?」
『何で私に?』と少し驚き、目を瞬かせた。
すると、セオドアさんがこちらを向く。
「恐らく、救出の件だろう」
「救出の件って、もしかしてノワール大公家も協力してくれたんですか?」
「ああ」
「なるほど、それで」
ようやく納得し、私は『後でお礼の手紙を書かないとな』と考える。
一先ずダイニングテーブルの方に戻り、私は手紙を読んだ。
要約すると、『無事で良かった』みたいな内容かな。
あと、私の体調を心配する文章がズラリと。
『返信には、“すこぶる元気です”とも書かなきゃ』と思いながら、私はスッと目を細める。
改めて、今回の件では色んな人に助けられた。
本当に有り難いな。
────と、勝手に終幕の雰囲気を流すものの……今回の件はまだ終わってなかった。
その事実を痛感したのは、数週間後のこと。
「案の定とでと言うべきか、神殿のことは裁けなかったな」
アジトのリビングにて、セオドアさんは眉間に皺を寄せる。
『薄々そうなる気はしていたが』と呟き、ソファの上で足を組んだ。
と同時に、キースさんとアランさんが口を開く。
「証拠が出てこなかったッスからね~」
「最悪、ベネット男爵を切り捨てればいいように動いていたっぽいしな」
それぞれソファの肘掛けに寄り掛かったり背もたれに身を預けたりして、苦笑を漏らした。
誰もが手詰まりだと感じる中、アランさんが頭を搔く。
「もう一回、実行犯のカーラ達やベネット男爵に当たってみるか?」
「なら、急いだ方がいいッスね。実行犯の人達はもうじき斬首刑で、ベネット男爵は爵位剥奪の上国外追放なんで」
時間がないことを仄めかすキースさんに、セオドアさんはチラリと視線を向けた。
「いや、あいつらの尋問はもういい。あれ以上、何も知らないのは明白だからな」
『時間の無駄だ』と一蹴し、セオドアさんは人差し指で自身の腕を叩く。
その横で、アランさんは首裏に手を回した。
「じゃあ、どうするんだ?」
「……神殿が尻尾を出すまで、待つしかない」
「はぁ?そんな悠長にしていて、いいのか?」
「良くはない。今回の一件で、『不死鳥はミレイのためなら、全力で動く』と判明してしまったからな。神殿は今後もこいつを狙ってくるだろう」
私の方を見て、セオドアさんは難しい顔をする。
「また何か策を講じられる前に潰しておくのが、理想だ。だが、現状を考えると消極的な手を取らざるを得ない」
どうしても後手に回ってしまうことを口にし、セオドアさんは更に眉間の皺を深くした。
それにつられるように、アランさんやキースさんも悶々とした表情を浮かべる。
「あの~」
私は片手を上げて、三人の話し合いに加わる。
『なんだ?』とでも言うようにこちらを向く彼らの前で、私は手に持っていたものを掲げた。
「────タブレットを使って、証拠集めするのはダメなんですか?」
「「「!」」」
ピクッと僅かに反応を示し、アランさん達は瞳を揺らした。
「い……いやいやいやいや!タブレットで証拠集めは、無理だろ。どんなに重要な書類を読めても、その現物が手に入らなきゃ意味がないんだからさ」
「待て、愚か者。少しでも情報が欲しいこちらとしては、重要な書類を読めるだけで充分だ。何より、タブレットは未来の文書も閲覧出来る……つまり、神殿の動きを読んで先回り出来るんだ」
「そうなれば、一気に僕達の方が有利になるッスね。ミレイちゃんの防衛面はもちろん、証拠集めもしやすくなるんで。まあ、その場合今回とはまた別の悪事の証拠になるッスけど。でも、神殿を潰す上で役に立つのは間違いないッス」
反発するアランさん、冷静にタブレットの有用性を説くセオドアさん、賛成の方向に傾くキースさん。
この場に居る全員がタブレットをじっと見つめる中、アランさんが腕を組む。
「なるほど、確かに便利で心強いな。けど、こういうことにタブレットを使うのはあまり良くないって、いっつも言ってなかったか?」
懸念を零すアランさんに対し、セオドアさんとキースさんは小さく肩を竦める。
「今回は恐らく、問題ないだろう」
「派手な大立ち回りをする訳では、ないッスからね」
「あくまで、裏で密かに証拠を集めるつもりだ」
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『心配するようなことは、起きない筈』と主張するセオドアさんとキースさんに、アランさんは大きく頷く。
「そういうことなら、俺も賛成だ」
「では、満場一致で可決ということでこちらどうぞ」
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すると、セオドアさんが代表して受け取った。
────それからというものタブレットで徹底的に神殿の情報を洗い出し、裏拠点から証拠を回収したり一足早く悪事の現場に赴いて出来事を記録したりする。
セオドアさん達が。
私は狙われている立場ということもあり、ずっと待機だった。
正直暇でしょうがないけど、『誘拐事件のショックもまだ癒えてないだろ』って気を遣われたらね。大人しくしているしか、ない。
アジトのダイニングテーブルでお茶を飲みつつ、私は小さく息を吐く。
その刹那、リビングのソファにて作業していたセオドアさんが顔を上げた。
「あと少しで全部終わるから、我慢しろ」
もう神殿を潰す目処が立っているのか、セオドアさんは強気な姿勢を見せる。
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