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ただいま
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◇◆◇◆
────私は気がつくと、自室のベッドの上に居た。
どうやら、あのあと眠ってしまっていたらしい。
『さすがに色々限界だったもんな』と思いつつ、私は体を起こす。
すると、綺麗になった肌や様々な形状の薬が目に入った。
多分、寝ている間に体を拭いたり医者を呼んだりしてくれたのだろう。
「【光よ、我が身を清めたまえ】【光よ、我が身を癒したまえ】」
胸元に手を添えて、私は浄化魔法と治癒魔法を立て続けに行使した。
ここまでしなくても大丈夫だろうが、念のため。
『衛生面や体調面はどうしても、気になっちゃうからね』と考えながら、私はベッドから降りる。
その足で一階のリビングに足を運ぶと、寝ているアランさん達が居た。
きっと、私の捜索や救出で疲れ果てて力尽きたんだろうな。
よく見ると、全員目元に隈が出来ているし。
若干痩せたようにも感じる。
『私を助けようと必死だったんだな』と思い、少しばかり頬を緩める。
────と、ここでキースさんが目を覚ました。
「ん……?あれ?いつの間に寝て……あっ、ミレイちゃん」
こちらの存在に気づいたキースさんは、少し目を剥く。
その瞬間、アランさんとセオドアさんも起きた。
「ミレイ……?」
「目覚めたのか」
私のことを視界に入れるなり、アランさんとセオドアさんは僅かに肩の力を抜く。
『顔色は良さそうだな』と分析する彼らの前で、私はちょっと姿勢を正した。
「はい、おはようございます。寝ている間に色々してくれたようで、ありがとうございました。それから────」
一度言葉を切って、私は小さく笑う。
「────ただいまです」
今更ながら帰宅の挨拶をすると、アランさん達は少し驚いたような素振りを見せた。
が、直ぐにいつもの彼らに戻って────
「「「ああ、おかえり(ええ、おかえりなさい)」」」
────と、言ってくれた。
ただの挨拶。普通のやり取り。ありふれた日常の一コマ。
だからこそ、帰ってきたんだと本当の意味で思える。
ギュッと胸元を握り締め、私はようやく平和が戻ったことを実感する。
この上ない満足感と安心感を覚える私の前で、キースさんがソファから立ち上がった。
「それじゃあ、約束通り美味しいご飯をご馳走するッスね」
『楽しみにしていてください』と言い残し、キースさんはキッチンの方に引っ込む。
それから、二十分ほどして戻ってきた。
「今日はお鍋ッスよ~」
ダイニングテーブルの中央に大きな鍋を置き、キースさんは早く席に着くよう促してくる。
素直にそれぞれの定位置へ腰を下ろす私達の前で、彼は取り皿やカトラリーを用意した。
「セオドアくん、この鍋の温度を一定に保ってもらっていいッスか?」
「ああ」
この世界にカセットコンロみたいな便利器具はないらしく、セオドアさんが魔法で温度を調節する。
『こんなものか』と呟く彼を前に、キースさんはとりあえず鍋の具材を取り分けた。
かと思えば、自身もようやく席に着く。
「じゃあ、どうぞ召し上がれ」
その言葉を合図に、私達は食事を始めた。
「あふっ……!うまっ……!魚特有の塩気や苦味が、引き立っていていいな」
「野菜の甘さと汁のあっさりした味が、ちょうどいいバランスで調和している」
「ホッとする味ッスね~。体も温まるし~」
「本当、身に沁みます」
キラキラと目を輝かせるアランさん、少し目元を和らげるセオドアさん、頬を緩めるキースさん、一人ジーンとする私。
普段と変わらない食事風景が流れ、それぞれ会話やおかわりをしていった。
そして、ぼちぼち食後のお茶に差し掛かる。
はぁ~~~!もうお腹いっぱい。
数日ぶりの食事だから、ちょっと食べ過ぎちゃったかも────あれ?
ふと違和感を覚え、私はお腹に手を当てた。
その瞬間、キースさんがハッとしたようにこちらを向く。
「どうしたんスか?腹痛?すみません、僕なりに“胃に優しいご馳走”を選んだつもりなんスけど……」
『もっと胃に優しいやつにしておけば、良かったッスかね』と零し、キースさんは表情を曇らせた。
と同時に、私は違和感への答えを得る。
あぁ、なるほど。だから────こんなに食べても、全く問題なかったんだ。
普通、病み上がりに……それも、数日食事を抜いた上でお腹いっぱい食べれば体調を崩しそうなものなのに。
いくら治癒魔法で体が回復しているとはいえ、胃が空っぽの状態なのは変わらないから。
などと考えていると、キースさんが席を立ってこちらにやってくる。
「辛かったら、遠慮せず吐いて。なんなら、医者から嘔吐剤をもらってくるんで」
私の背中を優しく撫で、キースさんは心配そうに顔を覗き込んできた。
────と、ここでセオドアさんとアランさんも立ち上がる。
「魔法を使う余力は、あるか?なら、治癒魔法を掛けろ」
「こういうときって、体を温めた方がいいのか?毛布、いるか?」
冷静に最適解を導き出すセオドアさんと、オロオロするアランさん。
じっとこちらの様子を窺ってくる彼らの前で、私は小さく首を横に振る。
「いえ、大丈夫です。体調は至って、普通ですから」
「えっ?本当ッスか?」
反射的に聞き返してくるキースさんは、そっと眉尻を下げた。
痩せ我慢している可能性を危惧する彼に対し、私はこう答える。
「本当です。まあ、だからこそ違和感を覚えたんですけど。あんなに食べても大丈夫だったんだ、って」
「「「あぁ……」」」
『そういうことか』と納得し、キースさん達は肩の力を抜いた。
『紛らわしいことをしないでくれ』とボヤく彼らを前に、私は居住まいを正す。
「私の体調を気遣って、ご馳走を作ってくれたキースさんのおかげですね。ありがとうございます」
「いえいえ、満足してもらえて何よりッスよ」
『腕によりを掛けて作った甲斐が、あったッス』と言い、キースさんは嬉しそうに笑った。
その刹那、何者かに玄関の扉をノックされる。
「────ちょっと開けてちょうだい」
そうやって、扉越しに呼び掛けてくるのはジェシカさんだった。
『居るんでしょ』と述べる彼女を前に、私達は顔を見合わせる。
「昨日の夜ミレイの救出に成功したことは伝えたけど、まさかもう来るとは」
「少しは遠慮というものを知らないのか。私達はまだ色々とやることが、残っているんだぞ」
「まあまあ、ジェシカさんには今回の件でお世話になったし、少しくらい良いじゃないッスか」
「中に入れてあげてください。私もジェシカさんの様子が、気になるので」
私はキースさんの意見を後押しして、呆れ顔のアランさんとセオドアさんを宥めた。
『今回の件でお世話になった』ということは、きっとカーラさんの裏切りを知っている筈。
ジェシカさんのことだからかなり気に病んでいるだろうし、ちゃんと『貴方のせいじゃない』って言ってあげたい。私の口から。
『それで少しは肩の荷が降りるのでは』と思う中、アランさんとセオドアさんは肩を竦める。
「「ミレイ(お前)が、そう言うなら」」
今回は被害者である私の意向を優先し、アランさんとセオドアさんは折れてくれた。
すると、キースさんが玄関の方へ足を向ける。
「じゃあ、応対するッスね」
そう言うが早いか、キースさんは玄関まで行って扉を開けた。
『いらっしゃい』と声を掛ける彼の前で、ジェシカさんはアジトに足を踏み入れる。
「お邪魔するわね。ミレイちゃんのお見舞いに来たんだけど……って、起きている!?」
「はい、つい一時間ほど前に」
こちらを見て驚愕するジェシカさんを見つめ、私は軽く会釈した。
その瞬間、彼女は相好を崩す。
「そうなのね、本当に良かった……!」
茶色がかった瞳に安堵と歓喜を浮かべ、ジェシカさんはこちらに駆け寄ってきた。
そのままの勢いで私に抱きつき、ちょっと涙ぐむ。
「ウチのカーラが、本当にごめんなさいね……!私がもっと気をつけていれば、こんなことには……!」
「いいえ、ジェシカさんのせいではありません」
「でも……!」
「悪いのは、カーラさん自身ですよ。だから、もうあまり気に病まないでください」
ポンポンッとジェシカさんの背中を叩き、私は穏やかに微笑んだ。
と同時に、彼女は肩の力を抜く。
どこか思い詰めたような雰囲気も、薄くなった。
「ありがとう、ミレイちゃん!」
いつものように明るく笑って、ジェシカさんはさっきより強い力でギューッと抱き締めてくる。
────と、ここでアランさんが再度椅子に腰を下ろした。
「再会の抱擁はそこまでにして、座ろうぜ。立ち話もなんだろ?」
『こっちに来い』と手招きするアランさんに、私とジェシカさんは応じる。
キースさんとセオドアさんも、同じく着席した。
────その後、私達は他愛のない会話を交わす。
が、一段落したところで少し雰囲気が変わった。主に男性陣の。
「一応、聞いておきたいんだが────カーラという女は、どうなってもいいのか?」
────私は気がつくと、自室のベッドの上に居た。
どうやら、あのあと眠ってしまっていたらしい。
『さすがに色々限界だったもんな』と思いつつ、私は体を起こす。
すると、綺麗になった肌や様々な形状の薬が目に入った。
多分、寝ている間に体を拭いたり医者を呼んだりしてくれたのだろう。
「【光よ、我が身を清めたまえ】【光よ、我が身を癒したまえ】」
胸元に手を添えて、私は浄化魔法と治癒魔法を立て続けに行使した。
ここまでしなくても大丈夫だろうが、念のため。
『衛生面や体調面はどうしても、気になっちゃうからね』と考えながら、私はベッドから降りる。
その足で一階のリビングに足を運ぶと、寝ているアランさん達が居た。
きっと、私の捜索や救出で疲れ果てて力尽きたんだろうな。
よく見ると、全員目元に隈が出来ているし。
若干痩せたようにも感じる。
『私を助けようと必死だったんだな』と思い、少しばかり頬を緩める。
────と、ここでキースさんが目を覚ました。
「ん……?あれ?いつの間に寝て……あっ、ミレイちゃん」
こちらの存在に気づいたキースさんは、少し目を剥く。
その瞬間、アランさんとセオドアさんも起きた。
「ミレイ……?」
「目覚めたのか」
私のことを視界に入れるなり、アランさんとセオドアさんは僅かに肩の力を抜く。
『顔色は良さそうだな』と分析する彼らの前で、私はちょっと姿勢を正した。
「はい、おはようございます。寝ている間に色々してくれたようで、ありがとうございました。それから────」
一度言葉を切って、私は小さく笑う。
「────ただいまです」
今更ながら帰宅の挨拶をすると、アランさん達は少し驚いたような素振りを見せた。
が、直ぐにいつもの彼らに戻って────
「「「ああ、おかえり(ええ、おかえりなさい)」」」
────と、言ってくれた。
ただの挨拶。普通のやり取り。ありふれた日常の一コマ。
だからこそ、帰ってきたんだと本当の意味で思える。
ギュッと胸元を握り締め、私はようやく平和が戻ったことを実感する。
この上ない満足感と安心感を覚える私の前で、キースさんがソファから立ち上がった。
「それじゃあ、約束通り美味しいご飯をご馳走するッスね」
『楽しみにしていてください』と言い残し、キースさんはキッチンの方に引っ込む。
それから、二十分ほどして戻ってきた。
「今日はお鍋ッスよ~」
ダイニングテーブルの中央に大きな鍋を置き、キースさんは早く席に着くよう促してくる。
素直にそれぞれの定位置へ腰を下ろす私達の前で、彼は取り皿やカトラリーを用意した。
「セオドアくん、この鍋の温度を一定に保ってもらっていいッスか?」
「ああ」
この世界にカセットコンロみたいな便利器具はないらしく、セオドアさんが魔法で温度を調節する。
『こんなものか』と呟く彼を前に、キースさんはとりあえず鍋の具材を取り分けた。
かと思えば、自身もようやく席に着く。
「じゃあ、どうぞ召し上がれ」
その言葉を合図に、私達は食事を始めた。
「あふっ……!うまっ……!魚特有の塩気や苦味が、引き立っていていいな」
「野菜の甘さと汁のあっさりした味が、ちょうどいいバランスで調和している」
「ホッとする味ッスね~。体も温まるし~」
「本当、身に沁みます」
キラキラと目を輝かせるアランさん、少し目元を和らげるセオドアさん、頬を緩めるキースさん、一人ジーンとする私。
普段と変わらない食事風景が流れ、それぞれ会話やおかわりをしていった。
そして、ぼちぼち食後のお茶に差し掛かる。
はぁ~~~!もうお腹いっぱい。
数日ぶりの食事だから、ちょっと食べ過ぎちゃったかも────あれ?
ふと違和感を覚え、私はお腹に手を当てた。
その瞬間、キースさんがハッとしたようにこちらを向く。
「どうしたんスか?腹痛?すみません、僕なりに“胃に優しいご馳走”を選んだつもりなんスけど……」
『もっと胃に優しいやつにしておけば、良かったッスかね』と零し、キースさんは表情を曇らせた。
と同時に、私は違和感への答えを得る。
あぁ、なるほど。だから────こんなに食べても、全く問題なかったんだ。
普通、病み上がりに……それも、数日食事を抜いた上でお腹いっぱい食べれば体調を崩しそうなものなのに。
いくら治癒魔法で体が回復しているとはいえ、胃が空っぽの状態なのは変わらないから。
などと考えていると、キースさんが席を立ってこちらにやってくる。
「辛かったら、遠慮せず吐いて。なんなら、医者から嘔吐剤をもらってくるんで」
私の背中を優しく撫で、キースさんは心配そうに顔を覗き込んできた。
────と、ここでセオドアさんとアランさんも立ち上がる。
「魔法を使う余力は、あるか?なら、治癒魔法を掛けろ」
「こういうときって、体を温めた方がいいのか?毛布、いるか?」
冷静に最適解を導き出すセオドアさんと、オロオロするアランさん。
じっとこちらの様子を窺ってくる彼らの前で、私は小さく首を横に振る。
「いえ、大丈夫です。体調は至って、普通ですから」
「えっ?本当ッスか?」
反射的に聞き返してくるキースさんは、そっと眉尻を下げた。
痩せ我慢している可能性を危惧する彼に対し、私はこう答える。
「本当です。まあ、だからこそ違和感を覚えたんですけど。あんなに食べても大丈夫だったんだ、って」
「「「あぁ……」」」
『そういうことか』と納得し、キースさん達は肩の力を抜いた。
『紛らわしいことをしないでくれ』とボヤく彼らを前に、私は居住まいを正す。
「私の体調を気遣って、ご馳走を作ってくれたキースさんのおかげですね。ありがとうございます」
「いえいえ、満足してもらえて何よりッスよ」
『腕によりを掛けて作った甲斐が、あったッス』と言い、キースさんは嬉しそうに笑った。
その刹那、何者かに玄関の扉をノックされる。
「────ちょっと開けてちょうだい」
そうやって、扉越しに呼び掛けてくるのはジェシカさんだった。
『居るんでしょ』と述べる彼女を前に、私達は顔を見合わせる。
「昨日の夜ミレイの救出に成功したことは伝えたけど、まさかもう来るとは」
「少しは遠慮というものを知らないのか。私達はまだ色々とやることが、残っているんだぞ」
「まあまあ、ジェシカさんには今回の件でお世話になったし、少しくらい良いじゃないッスか」
「中に入れてあげてください。私もジェシカさんの様子が、気になるので」
私はキースさんの意見を後押しして、呆れ顔のアランさんとセオドアさんを宥めた。
『今回の件でお世話になった』ということは、きっとカーラさんの裏切りを知っている筈。
ジェシカさんのことだからかなり気に病んでいるだろうし、ちゃんと『貴方のせいじゃない』って言ってあげたい。私の口から。
『それで少しは肩の荷が降りるのでは』と思う中、アランさんとセオドアさんは肩を竦める。
「「ミレイ(お前)が、そう言うなら」」
今回は被害者である私の意向を優先し、アランさんとセオドアさんは折れてくれた。
すると、キースさんが玄関の方へ足を向ける。
「じゃあ、応対するッスね」
そう言うが早いか、キースさんは玄関まで行って扉を開けた。
『いらっしゃい』と声を掛ける彼の前で、ジェシカさんはアジトに足を踏み入れる。
「お邪魔するわね。ミレイちゃんのお見舞いに来たんだけど……って、起きている!?」
「はい、つい一時間ほど前に」
こちらを見て驚愕するジェシカさんを見つめ、私は軽く会釈した。
その瞬間、彼女は相好を崩す。
「そうなのね、本当に良かった……!」
茶色がかった瞳に安堵と歓喜を浮かべ、ジェシカさんはこちらに駆け寄ってきた。
そのままの勢いで私に抱きつき、ちょっと涙ぐむ。
「ウチのカーラが、本当にごめんなさいね……!私がもっと気をつけていれば、こんなことには……!」
「いいえ、ジェシカさんのせいではありません」
「でも……!」
「悪いのは、カーラさん自身ですよ。だから、もうあまり気に病まないでください」
ポンポンッとジェシカさんの背中を叩き、私は穏やかに微笑んだ。
と同時に、彼女は肩の力を抜く。
どこか思い詰めたような雰囲気も、薄くなった。
「ありがとう、ミレイちゃん!」
いつものように明るく笑って、ジェシカさんはさっきより強い力でギューッと抱き締めてくる。
────と、ここでアランさんが再度椅子に腰を下ろした。
「再会の抱擁はそこまでにして、座ろうぜ。立ち話もなんだろ?」
『こっちに来い』と手招きするアランさんに、私とジェシカさんは応じる。
キースさんとセオドアさんも、同じく着席した。
────その後、私達は他愛のない会話を交わす。
が、一段落したところで少し雰囲気が変わった。主に男性陣の。
「一応、聞いておきたいんだが────カーラという女は、どうなってもいいのか?」
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