本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど

文字の大きさ
37 / 42

ただいま

しおりを挟む
◇◆◇◆

 ────私は気がつくと、自室のベッドの上に居た。
どうやら、あのあと眠ってしまっていたらしい。
『さすがに色々限界だったもんな』と思いつつ、私は体を起こす。
すると、綺麗になった肌や様々な形状の薬が目に入った。
多分、寝ている間に体を拭いたり医者を呼んだりしてくれたのだろう。

「【光よ、我が身を清めたまえ】【光よ、我が身を癒したまえ】」

 胸元に手を添えて、私は浄化魔法と治癒魔法を立て続けに行使した。
ここまでしなくても大丈夫だろうが、念のため。
『衛生面や体調面はどうしても、気になっちゃうからね』と考えながら、私はベッドから降りる。
その足で一階のリビングに足を運ぶと、寝ているアランさん達が居た。

 きっと、私の捜索や救出で疲れ果てて力尽きたんだろうな。
よく見ると、全員目元に隈が出来ているし。
若干痩せたようにも感じる。

 『私を助けようと必死だったんだな』と思い、少しばかり頬を緩める。
────と、ここでキースさんが目を覚ました。

「ん……?あれ?いつの間に寝て……あっ、ミレイちゃん」

 こちらの存在に気づいたキースさんは、少し目を剥く。
その瞬間、アランさんとセオドアさんも起きた。

「ミレイ……?」

「目覚めたのか」

 私のことを視界に入れるなり、アランさんとセオドアさんは僅かに肩の力を抜く。
『顔色は良さそうだな』と分析する彼らの前で、私はちょっと姿勢を正した。

「はい、おはようございます。寝ている間に色々してくれたようで、ありがとうございました。それから────」

 一度言葉を切って、私は小さく笑う。

「────ただいまです」

 今更ながら帰宅の挨拶をすると、アランさん達は少し驚いたような素振りを見せた。
が、直ぐにいつもの彼らに戻って────

「「「ああ、おかえり(ええ、おかえりなさい)」」」

 ────と、言ってくれた。

 ただの挨拶。普通のやり取り。ありふれた日常の一コマ。
だからこそ、帰ってきたんだと本当の意味で思える。

 ギュッと胸元を握り締め、私はようやく平和が戻ったことを実感する。
この上ない満足感と安心感を覚える私の前で、キースさんがソファから立ち上がった。

「それじゃあ、約束通り美味しいご飯をご馳走するッスね」

 『楽しみにしていてください』と言い残し、キースさんはキッチンの方に引っ込む。
それから、二十分ほどして戻ってきた。

「今日はお鍋ッスよ~」

 ダイニングテーブルの中央に大きな鍋を置き、キースさんは早く席に着くよう促してくる。
素直にそれぞれの定位置へ腰を下ろす私達の前で、彼は取り皿やカトラリーを用意した。

「セオドアくん、この鍋の温度を一定に保ってもらっていいッスか?」

「ああ」

 この世界にカセットコンロみたいな便利器具はないらしく、セオドアさんが魔法で温度を調節する。
『こんなものか』と呟く彼を前に、キースさんはとりあえず鍋の具材を取り分けた。
かと思えば、自身もようやく席に着く。

「じゃあ、どうぞ召し上がれ」

 その言葉を合図に、私達は食事を始めた。

「あふっ……!うまっ……!魚特有の塩気や苦味が、引き立っていていいな」

「野菜の甘さと汁のあっさりした味が、ちょうどいいバランスで調和している」

「ホッとする味ッスね~。体も温まるし~」

「本当、身に沁みます」

 キラキラと目を輝かせるアランさん、少し目元を和らげるセオドアさん、頬を緩めるキースさん、一人ジーンとする私。
普段と変わらない食事風景が流れ、それぞれ会話やおかわりをしていった。
そして、ぼちぼち食後のお茶に差し掛かる。

 はぁ~~~!もうお腹いっぱい・・・・・・
数日ぶりの食事・・・・・・・だから、ちょっと食べ過ぎちゃったかも────あれ?

 ふと違和感を覚え、私はお腹に手を当てた。
その瞬間、キースさんがハッとしたようにこちらを向く。

「どうしたんスか?腹痛?すみません、僕なりに“胃に優しいご馳走”を選んだつもりなんスけど……」

 『もっと胃に優しいやつにしておけば、良かったッスかね』と零し、キースさんは表情を曇らせた。
と同時に、私は違和感への答えを得る。

 あぁ、なるほど。だから────こんなに食べても、全く問題なかったんだ。
普通、病み上がりに……それも、数日食事を抜いた上でお腹いっぱい食べれば体調を崩しそうなものなのに。
いくら治癒魔法で体が回復しているとはいえ、胃が空っぽの状態なのは変わらないから。

 などと考えていると、キースさんが席を立ってこちらにやってくる。

「辛かったら、遠慮せず吐いて。なんなら、医者から嘔吐剤をもらってくるんで」

 私の背中を優しく撫で、キースさんは心配そうに顔を覗き込んできた。
────と、ここでセオドアさんとアランさんも立ち上がる。

「魔法を使う余力は、あるか?なら、治癒魔法を掛けろ」

「こういうときって、体を温めた方がいいのか?毛布、いるか?」

 冷静に最適解を導き出すセオドアさんと、オロオロするアランさん。
じっとこちらの様子を窺ってくる彼らの前で、私は小さく首を横に振る。

「いえ、大丈夫です。体調は至って、普通ですから」

「えっ?本当ッスか?」

 反射的に聞き返してくるキースさんは、そっと眉尻を下げた。
痩せ我慢している可能性を危惧する彼に対し、私はこう答える。

「本当です。まあ、だからこそ違和感を覚えたんですけど。あんなに食べても大丈夫だったんだ、って」

「「「あぁ……」」」

 『そういうことか』と納得し、キースさん達は肩の力を抜いた。
『紛らわしいことをしないでくれ』とボヤく彼らを前に、私は居住まいを正す。

「私の体調を気遣って、ご馳走ご飯を作ってくれたキースさんのおかげですね。ありがとうございます」

「いえいえ、満足してもらえて何よりッスよ」

 『腕によりを掛けて作った甲斐が、あったッス』と言い、キースさんは嬉しそうに笑った。
その刹那、何者かに玄関の扉をノックされる。

「────ちょっと開けてちょうだい」

 そうやって、扉越しに呼び掛けてくるのはジェシカさんだった。
『居るんでしょ』と述べる彼女を前に、私達は顔を見合わせる。

「昨日の夜ミレイの救出に成功したことは伝えたけど、まさかもう来るとは」

「少しは遠慮というものを知らないのか。私達はまだ色々とやることが、残っているんだぞ」

「まあまあ、ジェシカさんには今回の件でお世話になったし、少しくらい良いじゃないッスか」

「中に入れてあげてください。私もジェシカさんの様子が、気になるので」

 私はキースさんの意見を後押しして、呆れ顔のアランさんとセオドアさんを宥めた。

 『今回の件でお世話になった』ということは、きっとカーラさんの裏切りを知っている筈。
ジェシカさんのことだからかなり気に病んでいるだろうし、ちゃんと『貴方のせいじゃない』って言ってあげたい。私の口から。

 『それで少しは肩の荷が降りるのでは』と思う中、アランさんとセオドアさんは肩を竦める。

「「ミレイ(お前)が、そう言うなら」」

 今回は被害者である私の意向を優先し、アランさんとセオドアさんは折れてくれた。
すると、キースさんが玄関の方へ足を向ける。

「じゃあ、応対するッスね」

 そう言うが早いか、キースさんは玄関まで行って扉を開けた。
『いらっしゃい』と声を掛ける彼の前で、ジェシカさんはアジトに足を踏み入れる。

「お邪魔するわね。ミレイちゃんのお見舞いに来たんだけど……って、起きている!?」

「はい、つい一時間ほど前に」

 こちらを見て驚愕するジェシカさんを見つめ、私は軽く会釈した。
その瞬間、彼女は相好そうこうを崩す。

「そうなのね、本当に良かった……!」

 茶色がかった瞳に安堵と歓喜を浮かべ、ジェシカさんはこちらに駆け寄ってきた。
そのままの勢いで私に抱きつき、ちょっと涙ぐむ。

「ウチのカーラが、本当にごめんなさいね……!私がもっと気をつけていれば、こんなことには……!」

「いいえ、ジェシカさんのせいではありません」

「でも……!」

「悪いのは、カーラさん自身ですよ。だから、もうあまり気に病まないでください」

 ポンポンッとジェシカさんの背中を叩き、私は穏やかに微笑んだ。
と同時に、彼女は肩の力を抜く。
どこか思い詰めたような雰囲気も、薄くなった。

「ありがとう、ミレイちゃん!」

 いつものように明るく笑って、ジェシカさんはさっきより強い力でギューッと抱き締めてくる。
────と、ここでアランさんが再度椅子に腰を下ろした。

「再会の抱擁はそこまでにして、座ろうぜ。立ち話もなんだろ?」

 『こっちに来い』と手招きするアランさんに、私とジェシカさんは応じる。
キースさんとセオドアさんも、同じく着席した。
────その後、私達は他愛のない会話を交わす。
が、一段落したところで少し雰囲気が変わった。主に男性陣の。

「一応、聞いておきたいんだが────カーラという女は、どうなってもいいのか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...