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第一章
心配《レーヴェン side》
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客室でメイヴィスと別れた僕は、溜まりに溜まった仕事を片付けるべく、執務室へ移動した。
落ち着いた雰囲気の室内で、僕は黙々と仕事をこなしていく。
僕の仕事は、主に下界から送られてきた魂の仕分けだ。
神の教えに背き、悪行の限りを尽くした魂は地獄へ、何らかの理由で汚染された魂は浄化の間へ、善とも悪とも言い切れない極普通の魂は転生の間へ送っている。
また、極稀に見る善人の魂は天使候補として天界に残し、人手不足なところに天使見習いとして出す手筈になっていた。
まあ、早い話、僕の裁量次第で死んだ魂の行く末が変わるって感じかな。
決断力と判断力を問われる仕事に思いを馳せ、僕は魂の詰め込まれた袋に手を入れる。そして、適当に魂を一つ取り出した。
若干濁った状態の魂を確認していると、誰かに部屋の扉をノックされる。
『どうぞ』と声を掛ければ、扉の向こうからカシエルが現れた。
「お疲れ様です、レーヴェン様。命令通り、メイヴィス様を部屋まで送り届けてきました」
「ご苦労様。メイヴィスの様子はどうだった?」
「特に変わったところは、ありませんでしたよ。部屋の内装には、ちょっと驚いていましたけど。豪華すぎるって」
先程の出来事を振り返るカシエルは、『喜んでもらえて、良かったですね』と笑う。
そのまま通常業務へ戻ろうとする彼を前に、僕は作業の手を止めた。
「そっちは僕の方で片付けるから、一つ頼まれてくれる?」
「別にいいですけど……緊急の案件ですか?」
テーブルの上に積み重なった資料から視線を逸らし、カシエルは不思議そうに首を傾げる。
命令ではなく“お願い”という形を取ったからか、『急に改まってどうしたのだろう?』と驚いていた。
パチパチと瞬きを繰り返すカシエルの前で、僕は悩ましげに眉を顰める。
「実はちょっとメイヴィスの様子が気になってね……ほら、死因を聞いた時、おかしな反応を示しただろう?だから────生前のメイヴィスを知る人物を探し出して欲しいんだ」
一度保留にした話を本人のいないところで持ち出すなんて、言語道断だ。
でも、どうしてもメイヴィスの反応が……絶望にも似たあの表情が気になった。
最低なことをしている自覚はある。卑怯だと罵られるのも重々承知だ。
それでも────愛する花嫁の不安そうな姿を見過ごす訳には、いかなかった。
死んだ時の恐怖を思い出して、沈黙しただけなら、それでいい。天界で……いや、僕の傍でゆっくりと心の傷を癒していけばいいから。
でも、もしもそうじゃないなら……こちらも対応を考えなければならない。
もちろん、『メイヴィスに対して』ではなく、『死亡した原因の者や物に対して』だが……。
たとえ、どんなにくだらない原因だったとしても、メイヴィスを責めることは絶対に有り得ない。だって、彼女は僕の花嫁なのだから。
『僕はお嫁さんをとことん甘やかしたいタイプなんだ』と心の中で宣言し、ゆるりと口角を上げる。
愛しい花嫁の姿を思い出す中、カシエルはサッと跪いた。
「了解しました。必ずや、レーヴェン様の期待に応えてみせます」
僕と同じようにメイヴィスの反応に違和感を抱いていたのか、カシエルは迷わず了承する。
恭しく頭を垂れる配下に、僕は『よろしく頼むよ』と念を押して、作業に戻った。
落ち着いた雰囲気の室内で、僕は黙々と仕事をこなしていく。
僕の仕事は、主に下界から送られてきた魂の仕分けだ。
神の教えに背き、悪行の限りを尽くした魂は地獄へ、何らかの理由で汚染された魂は浄化の間へ、善とも悪とも言い切れない極普通の魂は転生の間へ送っている。
また、極稀に見る善人の魂は天使候補として天界に残し、人手不足なところに天使見習いとして出す手筈になっていた。
まあ、早い話、僕の裁量次第で死んだ魂の行く末が変わるって感じかな。
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若干濁った状態の魂を確認していると、誰かに部屋の扉をノックされる。
『どうぞ』と声を掛ければ、扉の向こうからカシエルが現れた。
「お疲れ様です、レーヴェン様。命令通り、メイヴィス様を部屋まで送り届けてきました」
「ご苦労様。メイヴィスの様子はどうだった?」
「特に変わったところは、ありませんでしたよ。部屋の内装には、ちょっと驚いていましたけど。豪華すぎるって」
先程の出来事を振り返るカシエルは、『喜んでもらえて、良かったですね』と笑う。
そのまま通常業務へ戻ろうとする彼を前に、僕は作業の手を止めた。
「そっちは僕の方で片付けるから、一つ頼まれてくれる?」
「別にいいですけど……緊急の案件ですか?」
テーブルの上に積み重なった資料から視線を逸らし、カシエルは不思議そうに首を傾げる。
命令ではなく“お願い”という形を取ったからか、『急に改まってどうしたのだろう?』と驚いていた。
パチパチと瞬きを繰り返すカシエルの前で、僕は悩ましげに眉を顰める。
「実はちょっとメイヴィスの様子が気になってね……ほら、死因を聞いた時、おかしな反応を示しただろう?だから────生前のメイヴィスを知る人物を探し出して欲しいんだ」
一度保留にした話を本人のいないところで持ち出すなんて、言語道断だ。
でも、どうしてもメイヴィスの反応が……絶望にも似たあの表情が気になった。
最低なことをしている自覚はある。卑怯だと罵られるのも重々承知だ。
それでも────愛する花嫁の不安そうな姿を見過ごす訳には、いかなかった。
死んだ時の恐怖を思い出して、沈黙しただけなら、それでいい。天界で……いや、僕の傍でゆっくりと心の傷を癒していけばいいから。
でも、もしもそうじゃないなら……こちらも対応を考えなければならない。
もちろん、『メイヴィスに対して』ではなく、『死亡した原因の者や物に対して』だが……。
たとえ、どんなにくだらない原因だったとしても、メイヴィスを責めることは絶対に有り得ない。だって、彼女は僕の花嫁なのだから。
『僕はお嫁さんをとことん甘やかしたいタイプなんだ』と心の中で宣言し、ゆるりと口角を上げる。
愛しい花嫁の姿を思い出す中、カシエルはサッと跪いた。
「了解しました。必ずや、レーヴェン様の期待に応えてみせます」
僕と同じようにメイヴィスの反応に違和感を抱いていたのか、カシエルは迷わず了承する。
恭しく頭を垂れる配下に、僕は『よろしく頼むよ』と念を押して、作業に戻った。
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