断罪されし真の聖女は滅びを嘆く

あーもんど

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第一章

束の間の幸せ《ロゼッタ side》

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 ────偽聖女メイヴィスの公開処刑が決行された次の日。
私は大変晴れやかな気持ちで、慈善活動に勤しんでいた。

 平民向けの治癒院で働く私は、次期聖女として人々の傷を癒していく。
平民だと見下さず、丁寧に対応しているせいか、私の人気はまさにうなぎ登りだった。

 メイヴィスから聖女の座を奪ってからと言うもの、私の人生はまさに順風満帆!
これ以上ないってくらい、幸福で満ち溢れているわ!
やっぱり、メイヴィスを排除したのは正解だったわね!

 鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌な私は、ニコニコと笑みを振り撒いた。

「さあ、次の方どうぞ」

「は、はい!失礼します!」

 立て付けの悪い扉の向こうから田舎臭い青年が現れた。
両腕に包帯を巻き付けている彼は少し頬を赤くしながら、患者用の椅子に腰掛ける。
炭鉱の仕事でもしているのか、彼からは汗と土の臭いがした。

 顔はまあまあだけど、清潔感のない男は無理なのよねぇ……まあ、好感度を維持するためなら、いくらでも我慢するけど。

 現在、私のイメージは誰にでも平等に接し、平民の現況を憂う聖女様……という事になっている。
まあ、まだ就任式を行っていないため、正式な聖女ではないのだけれど……。
でも、私が聖女になるのはもはや決定事項。このイメージを保てば、反対者なんて出ないだろう。

「腕を怪我されたのね……かなり痛いでしょう?」

「い、いえ!全然大丈夫です!ちょっと腕の感覚がないだけなので!」

 いや、腕の感覚がないのは相当不味いでしょう……。
この男は、健康管理もまともに出来ないのかしら?

 と内心男性を馬鹿にしながらも、表情は崩さない。
あくまでも彼の怪我を心の底から、心配する優しい聖女を演じる。

「強がりはいけませんよ。さあ、腕をこちらに────|《ヒール》」

 差し出された腕にそっと触れると、私の魔力が彼の怪我を内側から癒していった。
王国一の治癒魔法の使い手と言われる私は、たった一度の詠唱で彼の怪我を治してしまう。
この癒しの力こそが、私の最大の武器。

 幸い、骨には異常がないようね。これなら、直ぐに動いても大丈夫そうだわ。

「わあ……!!す、凄いです!!怪我を一瞬で治してしまうなんて……!!さすがは真の・・聖女様ですね!」

「うふふっ。ありがとう。そう言って貰えて、とっても嬉しいわ」

 興奮した様子で目を輝かせる青年に、私はニッコリ笑いかけた。
すると、彼は照れ臭そうに頬を赤く染める。
そういう初心な反応が、何とも可愛らしかった。

 この子はよく分かっているわね。聖女に相応しいのはメイヴィスじゃなくて、この私。
あんなお飾り女と優秀な治癒魔法の使い手である私じゃ、天と地ほどの差がある。
だから─────私が取った行動は間違いじゃない。
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