あやかし花屋の花売り少女

あーもんど

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第一章

その十

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 告白は痺れを切らしたろくろっ首に背中を押される形でしてしまったが、プロポーズはきちんと自分からしたい。
 そんな想いから一つ目のプロポーズ計画は始まったのだ。
 男なら、やはり女に促されてプロポーズするより、自分からプロポーズしたいものだろう。
 店の奥に姿を消してしまった少女が戻ってくるまで懐かしい記憶を呼び起こしていた一つ目はろくろっ首への想いを強める。
 結婚なんて人間社会が生み出したシステムをあやかしの我々が使うなど可笑しいことかもしれないが、どうしてもろく子さんにプロポーズがしたかったんだ...。
 結婚をしたかったと言うよりかはプロポーズがしたかった一つ目。
 その理由はやはり昔の告白事件によるものである。
 『振られたら、どうしよう』という気持ちに駈られ、なかなか告白する勇気が出なかった我を見兼ねて渇を入れてくれたろく子さん....。
 長いときを生きてきた一つ目にとって、それが唯一の後悔だった。
 だから、人間社会では結婚するためにプロポーズをする習慣があると聞き、一つ目は大分前からこの計画を練っていたのだ。
 プロポーズというものはサプライズに近いものだと聞いたため、ろくろっ首には何も知らせていない。
 ただ今日は久々に一緒に出掛けようとデートに誘っただけだった。
 指輪も準備したし、あとは花束さえ用意できれば準備は万端だ...。
 約束の時間まで、もうあまり時間はない。
 ここで少女が変な花束でも差し出してきたら、どうしよう....と一つ目は不安になる。
 この店で花束が買えなければ、もう花束は諦めるしかないな...。
 他の店に行けるほどの時間は残されていない。
 一つ目は店内にある掛け時計と店の奥を交互に見つめながら、少女が戻ってくるのをひたすら待ち続けた。
 店の奥には光源がないのか、暗くて何も見えない。
 ひっそりとしているそこは不気味に感じた。
 物音も聞こえないし....かのんちゃんは一体店の奥で何をしているんだ?
 早くしないと約束の時間に遅れてしまう、と一つ目は焦り始めた。
 言うまでもないが、しっかり者のろくろっ首は時間に厳しい。
 一分でも遅刻は許さない完璧主義者である。
 今日はろく子さんにプロポーズする特別な日でもある....!だから、遅刻なんてしたくないのだ!
 ヘタレで何もかもダメダメな一つ目だが、今日だけは....プロポーズが成功するまでは完璧な自分を演じたかった。
 約束の時間まで後30分というところで一つ目は痺れを切らす。
 もうこれ以上は待てぬ....!!かのんちゃんには悪いが、今日はもうお暇させてもらおう!

「かのんちゃ....」

「完成よ。これが今、私が貴方に出来る精一杯...。チューリップとハナミズキのスペシャルブーケよ」

 店の奥から、それはそれは大きなブーケを持って現れた少女は顔が花で隠れていた。
 一つ目はそんな少女の状態よりも何よりも先に彼女が丹精込めて作り上げた花束に目を奪われる。
 チューリップとハナミズキは何もかも全て違う花だ。
 唯一同じところと言えば、開花時期くらいだろう。
 立派な茎から花を綻ばせるチューリップと心強い枝からうっそりと顔を覗かせるハナミズキ。
 花弁の形も咲き方も全く違う....なのにどうしてだろうか....こんなにも綺麗だ。
 チューリップの方を少し多めに使用し、何十本もあるチューリップの間からハナミズキがひょこっと顔を出しているそれは大変可愛らしい。
 異なる二つが互いが互いを引き立て合い、最高の花束へと進化したそれはプロポーズに持ち寄る花束には申し分なかった。

「ごめん、遅くなって....裏庭からハナミズキを採ってたら、思ったより時間が掛かった...」

「い、いや、大丈夫だ!それより、この花束の値段は!?幾らだ!?」

 一つ目はズボンのポケットから兎柄の大変可愛らしい財布を取り出し、少女へ花束の値段を問うた。
 こんなにも可愛らしい花束なのだ。かなり良い値がつく筈だ。
 だが!我はこのときのために貯めてきた金がある!
 指輪を買うのにほとんど使い果たしてしまったが、花束の一つや二つくらい....。
 少女は無表情のまま自作した花束を見下ろすと、花の本数を数え始めた。

「....値段は5871円。ハナミズキはうちの裏庭から採ったものだから安くしといたけど、ラッピング代が意外と高かったみたいね」

 ご、5871円だと!?
 花束って意外と高いのだな....。
 一つ目は財布を開き、中を覗き込んで絶句した。
 こ、これ....足りるか?
 一つ目の財布には野口さん四枚、500円玉三枚、100円玉三枚、10円玉六枚の合計5860円しかなかった。
 じゅ、11円足りないだとぉ!?
 な、なんて.....なんてっ!中途半端な数字なんだぁ!!
 この一つ目の心の声を聞けば、誰もがこう突っ込むだろう...『いや、そこはどうでも良いだろ』と。
 まあ、それはさておき。
 まさかのここで予算オーバーという由々しき事態が発生した。
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