あやかし花屋の花売り少女

あーもんど

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第二章

その十五

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 烏天狗は悲しくも愛おしい想い出の記憶を辿り、『はぁ....』と溜め息をつく。
 夏樹はきっと俺のことを恨んでるだろうな...。

「恨んでなきゃ....可笑しいよな」

 今さら謝るつもりなんてない。言い訳もしない。
 ただ────もう一度会いたい。
 もう一度だけ会って話がしたい。
 それだけで良いんだ....。
 数百年経った今でも変わらず、お前を愛してる...夏樹。
 決して色褪せることのない記憶を脳の奥に大切に仕舞い込み、店の方へ姿を消した少女のことを追い掛ける。
 一人になりたくないから、と10歳にも満たない少女に縋る自分が酷く滑稽に思えた。
 自前の可愛らしいエプロンを身に付けたまま店の方へ出た烏天狗は少女を見つけるなり、側へ歩み寄った。

「何してんだ?」

「花のお世話よ」

 花の世話?
 と首を傾げる烏天狗の横で少女は既に茎を手折られた余命僅かのお花に霧吹きを吹き掛けた。
 こうすることで花のみずみずしさを保つことが出来るのだ。
 花を売ることだけが花屋の仕事ではない。
 売り物である花のコンディションを整えるのも花屋の仕事であった。
 茎や葉っぱを中心に霧吹きをシュッシュッと吹き掛ける少女は烏天狗が隣に居ようと気にする様子はない。
 単にどうでも良いだけだが、烏天狗にとってはそれが嬉しかった。
 邪魔だと軽くあしらわれる可能性を危惧していたため、嬉しさが更に増す。

「お、俺にもなんか手伝わせろ!」

 黙々と作業を進める少女に手伝いを申し出たのは良いが、言い方が完璧にアウトである。
 手伝うことは良いことだが、命令口調は相手の気分を害する可能性があった。
 少女は流し目で目線だけを烏天狗へ向けると淡々と言葉を並べる。

「じゃあ、店にある全ての花の調子を見てくれる?枯れかかってる花や元気のない花を見つけたら、教えてちょうだい」

「分かった!俺に任せとけ!」

 ドーンと胸を叩く烏天狗は得意気にない胸を反らした。
 少女は得意気に胸を反らす烏天狗を一瞥し、再び霧吹き作業に取り掛かる。
 無論、無表情のまま。
 必要以上にコミュニケーションを取ろうとしない少女に物足りなさを感じつつも、夏樹と比べてはならないと己に言い聞かせ烏天狗も指示された作業に取り掛かった。
 枯れかかってる花や元気のない花、ねぇ...。
 パッと見、そんな花どこにも無さそうだけどな。
 花だらけの店内をぐるっと見回し、溜め息をつく。
 にしても....凄い量だな。
 至るところに花が置かれた店内に烏天狗は苦笑を漏らした。
 きちんと種類分けがされているため汚いとは思わないが、狭い場所にギュッと詰め込められた花たちは少し窮屈そうだ。
 これだけの量の花を一本一本見て回るのは骨が折れそうだな。
 烏天狗は一番右端にあるクルクマというピンク色の花から順番に見て回ることにした。
 花、か....そういや、あいつの纏う着物はいつも四季折々の花が描かれたド派手なデザインばっかりだったな...。
 なんて昔のことを懐かしみながら、烏天狗は本格的に作業を始めた。
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