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本編
幸せな時間
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春の木漏れ日が心地いいある日。
私────ジュリア・ロバーツ公爵夫人は夫のニコラス公爵と共にゆったりとした時間を過ごしていた。
読書を嗜む夫の隣で、私はハンカチに刺繍を施す。
特に会話はないけれど、気まずさなどは感じない。
私は刺繍する手を止め、チラッと夫を盗み見た。
透明感のある銀色の長髪、宝石のサファイアを連想させる青い瞳。
シュッとしたシャープな輪郭に、作り物のように整った顔立ち。肌は陶器のように白く、程よく引き締まったしなやかな筋肉は彼が男だと主張していた。
やっぱり、何度見ても綺麗な人……。
こんな人が私の旦那様なんて……今でも信じられないわ。
ロバーツ公爵家現当主であるニコラスはその外見の良さと天才的な頭脳から、多くの令嬢に思いを寄せられていた。
だが、どんなに美しい女性に言い寄られようと、彼は氷のように冷たい無表情で無視するだけ……『氷の貴公子』と呼ばれるようになった所以はこれだ。
でも、幼なじみの私には甘くて……いつも笑顔で接してくれる。
ここまであからさまに大切にされれば、嫌でもニコラスの気持ちに気づく訳で……私は貴族社会では珍しい恋愛結婚を遂げたのだ。
「────どうしたんだい?僕の顔なんて、じっと見つめて」
ニコラスの顔を凝視し過ぎたせいか、彼は『お返しだ』と言わんばかりに私の顔を覗き込んできた。
『氷の貴公子』という通り名に似合わない、柔らかい表情で私を見つめている。
見慣れているとはいえ、至近距離で見つめられると、ちょっと照れるわね。
私は少し仰け反るように、彼から距離をとった。
「な、何でもないわ。ただ、ニコラスの顔が綺麗で見惚れていただけよ」
「僕の顔が綺麗……?ははっ。そんな事ないよ。僕からすれば、ジュリアの方がずっと綺麗で美しく見える」
「そ、それこそ有り得ないわ……!」
爽やかな笑顔で私の外見を褒める彼に、私は慌てて首を振った。
私は黒髪紫眼の地味な女だもの。銀髪碧眼の美青年である、ニコラスには遠く及ばないわ。
不細工とまではいかないでしょうけど、男性受けしない顔であることは間違いない。
「ジュリアはもっと自分に自信を持つべきだよ。君は月の女神のように美しいんだから。僕は夜空のように美しい黒髪も、アメジストのように綺麗なラベンダーの瞳も好きだよ」
ニコラスは私の髪を一房すくい上げ、それに接吻づける。
色気のある動作に、私は思わず頬を赤らめた。
「そんなことを言ってくれるのはニコラスだけよ……」
「むしろ、僕だけでいいんだよ。僕以外がジュリアを褒めようものなら、そいつに何をするか分からないからね」
意味深なセリフを吐く銀髪碧眼の美青年は蕩けるような笑みを零し、私の頬にキスを落とす。
結婚してから、もう二年も経つというのに、私達は新婚のようにラブラブだった。
年々ニコラスの溺愛が勢いを増している気がするのは私の気のせいかしら……?特に最近は私にベッタリだし……。
仕事以外の時間は全て私に費やしていると言っても過言ではないわ。
留まることを知らないニコラスの愛情に半ば呆れながらも、心地いいと感じている私だったが、そんな日常を脅かす存在が直ぐそこまで来ていた。
それは────。
「────奥様、旦那様、お取り込み中のところ失礼します。奥様の妹君である、ソフィア・フローレンス侯爵令嬢様がおいでです」
ノック音の後に扉の向こうから、来客を知らせる執事の声が聞こえた。
『ソフィア・フローレンス』という名前に、私は思わず体を強ばらせる。
何故なら、私の妹であるソフィアは────とんでもない男好きだから。
私────ジュリア・ロバーツ公爵夫人は夫のニコラス公爵と共にゆったりとした時間を過ごしていた。
読書を嗜む夫の隣で、私はハンカチに刺繍を施す。
特に会話はないけれど、気まずさなどは感じない。
私は刺繍する手を止め、チラッと夫を盗み見た。
透明感のある銀色の長髪、宝石のサファイアを連想させる青い瞳。
シュッとしたシャープな輪郭に、作り物のように整った顔立ち。肌は陶器のように白く、程よく引き締まったしなやかな筋肉は彼が男だと主張していた。
やっぱり、何度見ても綺麗な人……。
こんな人が私の旦那様なんて……今でも信じられないわ。
ロバーツ公爵家現当主であるニコラスはその外見の良さと天才的な頭脳から、多くの令嬢に思いを寄せられていた。
だが、どんなに美しい女性に言い寄られようと、彼は氷のように冷たい無表情で無視するだけ……『氷の貴公子』と呼ばれるようになった所以はこれだ。
でも、幼なじみの私には甘くて……いつも笑顔で接してくれる。
ここまであからさまに大切にされれば、嫌でもニコラスの気持ちに気づく訳で……私は貴族社会では珍しい恋愛結婚を遂げたのだ。
「────どうしたんだい?僕の顔なんて、じっと見つめて」
ニコラスの顔を凝視し過ぎたせいか、彼は『お返しだ』と言わんばかりに私の顔を覗き込んできた。
『氷の貴公子』という通り名に似合わない、柔らかい表情で私を見つめている。
見慣れているとはいえ、至近距離で見つめられると、ちょっと照れるわね。
私は少し仰け反るように、彼から距離をとった。
「な、何でもないわ。ただ、ニコラスの顔が綺麗で見惚れていただけよ」
「僕の顔が綺麗……?ははっ。そんな事ないよ。僕からすれば、ジュリアの方がずっと綺麗で美しく見える」
「そ、それこそ有り得ないわ……!」
爽やかな笑顔で私の外見を褒める彼に、私は慌てて首を振った。
私は黒髪紫眼の地味な女だもの。銀髪碧眼の美青年である、ニコラスには遠く及ばないわ。
不細工とまではいかないでしょうけど、男性受けしない顔であることは間違いない。
「ジュリアはもっと自分に自信を持つべきだよ。君は月の女神のように美しいんだから。僕は夜空のように美しい黒髪も、アメジストのように綺麗なラベンダーの瞳も好きだよ」
ニコラスは私の髪を一房すくい上げ、それに接吻づける。
色気のある動作に、私は思わず頬を赤らめた。
「そんなことを言ってくれるのはニコラスだけよ……」
「むしろ、僕だけでいいんだよ。僕以外がジュリアを褒めようものなら、そいつに何をするか分からないからね」
意味深なセリフを吐く銀髪碧眼の美青年は蕩けるような笑みを零し、私の頬にキスを落とす。
結婚してから、もう二年も経つというのに、私達は新婚のようにラブラブだった。
年々ニコラスの溺愛が勢いを増している気がするのは私の気のせいかしら……?特に最近は私にベッタリだし……。
仕事以外の時間は全て私に費やしていると言っても過言ではないわ。
留まることを知らないニコラスの愛情に半ば呆れながらも、心地いいと感じている私だったが、そんな日常を脅かす存在が直ぐそこまで来ていた。
それは────。
「────奥様、旦那様、お取り込み中のところ失礼します。奥様の妹君である、ソフィア・フローレンス侯爵令嬢様がおいでです」
ノック音の後に扉の向こうから、来客を知らせる執事の声が聞こえた。
『ソフィア・フローレンス』という名前に、私は思わず体を強ばらせる。
何故なら、私の妹であるソフィアは────とんでもない男好きだから。
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