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戦う理由
頂点ノ極
「さて、極の項の修行といこうか」
「具体的にどんな技なんだ?……名前だけじゃどこをどんな感じで強化するのかが全く分からなかったが」
「あー、どこ、と決められた場所を強化する技じゃない。だから具体的なイメージもあまり掴めない。言ったろ?背水の陣を取得するのに数年かかったって」
……それは前にも言われたような気もしたが。
「えっと……じ……じゃあ、とりあえずどんな技なんだ?」
「簡単に言えば、自分の身体に魔術で負荷をかけ、動体視力、筋力、脚力、その他戦闘力を一時的に倍増する技だ」
「なんかすごそう」
……まあ、俺も黒がそれを使って攻撃を避けたのしか見ていないから、こんな感想しか出てこなかった訳で。
「……だが、今までにないデメリットもある。負荷をかければかけるほど、戦闘力は倍増するが、負荷をかけ過ぎると身体がぶっ壊れる。ついでに魔力回路も、魔力器官も使い物にならなくなる」
「うっ……そお……」
「だからこそ戦闘において多用は厳禁だ。運が悪かったら自滅だからな」
「マジかよ」
「だが、上手くやれば、格上ともやり合える。ダークナイトとも渡り合えて……いや、あれは渡り合えたとは言えない……が、お前にはまだまだ秘めたる力があると俺は踏んでいる。やってみる価値はアリだろう」
「……んで、それってどんなイメージをすればいいんだ?」
「……俺の場合だと、自身の身体に重りを乗せるイメージだ。……だけど、お前の場合このイメージで使えるかどうか……いかんせん技自体が抽象的だから、イメージするのが難しいんだよなあ……」
「……どうすればいいんだよ……」
「とりあえず、この技はまず、精神を研ぎ澄まさなければ使えない。という事で」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「だからって滝業かよ」
連れてこられたのは、轟音鳴り響く水の園。
「心配するな、流されはしないから」
「ちげーよ! 音がうるさくて集中しづらいんだよ!」
「……いいや、逆にそれもいいかもしれない。滝の音だけを聞いていれば、自然と外界の音はシャットダウンされる。実戦で使う時に、滝の音を思い出してすぐに連想し、この技を使う事ができればかなり楽になってくるからな」
「なるほど……」
滝の下。
ここぞとばかりに置いてある岩に座り、瞑想する。
———が。
「痛っっっっっっい!! こんなんずっと頭に当たってたら禿げるわ!!」
上から降り続ける大粒……というより線と化した水の塊。……はっきり言おう、この俺でも痛いもんは痛い。
「大丈夫だ心配するな、禿げてもまた生えてくるから」
そういうことじゃない、と不機嫌そうに舌打ちするものの、水の音のみに集中する。
意識が外側から内側に向かって研ぎ澄まされる。
暗い、暗い、意識の中の闇の中。
心を落ち着かせ、一切の邪念を捨て去る。
……と言っても、そんな簡単にできるようなものでもなかった為、試行錯誤を重ねた末、俺はようやく邪念を捨て去る事ができた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
……まあ、完全に捨て去れるようになるまで3ヶ月を要したが。
———そんな、ある日。
外界の全てをシャットダウン。
かすかに読み取れる、動物の魔力すらも読み取らずに集中する。
———そうして。集中した先に。
———何も。聞こえなくなった。
その後に。意識が白く染まった。
先程まで、光も無く、ただただ真っ黒だった意識は、白く、白く、ただ1つの無駄な色のない、完璧な白に染まりきった。
寝てる……ようで、意識は完全に覚醒している。
朦朧としてもいない。生まれて初めてのヘンな感覚だった。
身体を揺さぶられる。
先程まで完全な白に染まりきっていた意識は、光が混じった黒に戻る。
続いて———黒の声が。
「おい、おい! 大丈夫か?!」
目を開く。
「……ああ、よかった……お前の気が完全に消えたもんだから……」
「俺の……魔気が……消えた?」
「……そうだ、それまで正常だったお前の気が、まるで死んだかのように突然プツっと途切れたんだ。だから来てみたんだが……もしかして、お前気絶も睡眠もしてなかったってのか?」
「えーと、ただ意識を前の一点だけに向けていると、音が聞こえ無くなって、その後に意識が完全な白に染まりきって……」
「……なるほど、素晴らしい。完全に集中しきったか」
「……つまり……この修行は……?」
「ああ、合格だ。次のステップに進むぞ」
「まさか、精神統一の修行に5ヶ月もかかるなんてな……」
……そう、この修行だけで、ここまで来るために俺は、5ヶ月もの時間を費やしたのである。
……だから、
「ほっ」
フッと。首を横に倒し、黒のパンチを避ける。
……え?
パンチ?
「何するんだよ黒、突然攻撃……を?……何で……当たってないんだ?」
「今の攻撃は殺気丸出しだったからな、もうお前の身体は集中するゾーンに入っていて敏感だ。僅かな殺気にも反応し、身体が反射的に避けてくれる」
「……それを、俺が?」
「そうだ、面白いだろう?」
面白い……かどうかは別として、自分でもこんな事できるようになったのが不思議で仕方がなかった。
「さて白、気合いを入れてみろ」
「へ?」
「背水の陣の要領で気合いと魔力の芯を身体に入れてみろ。もちろん、集中しながらな」
言われたとおりにする。
目を瞑り、意識を閉ざし、「白の世界」に入り込む。
「ふっ」
目を開けた時。
自身の身体を、白色の可視化された魔気が覆っていた。
全身の毛が逆立つ。力がみなぎり溢れるのを感じる……!
「これは……!」
「…………それだ……! それだそれだそれだ……!」
なんだかめちゃくちゃ嬉しそうな黒を横目に質問する。
「これが、極ノ項……なのか?」
「…………そうだ……背水の陣、極の項。その基本形態だ……!」
「基本形態……?」
「言ってなかったな、その基本形態に、脚の項、手の項を上乗せする。それが開放形態。究極の奥義だ……!」
「……そうか……ならば……ふんっ!」
背水の陣を上乗せする。……まあ、そのイメージだけだが。
先程まで身体を覆っていた白の魔力は、今度は青と水色に変色していた。
「…………できたな、白。それが、お前の新たなパワーだ。……しかし、たった数ヶ月でよくぞここまで……!」
全身から力を抜く。青水色の魔力は収縮し消滅する。
「……さて、白」
……なんだ、組み手でもするのか、と疑問げな顔で首を傾げる。
「お腹空いただろ? ご飯、食べるぞ」
「いやご飯かい」
「組み手は……最早必要ない。お前は俺より強い。間違いなくな」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「で、結局……ハムハム……お前はどうす……ンムッ……るんだ、白?」
「頼むから食べながら話すのはやめてくれ。……どうする……って言ったって、王都に行ってサナに会うくらいしか……なくないか?」
「……まあ、だろうな」
「……でも、もう少しだけ、ここにいてもいいか?……ここは一番落ち着く場所なんだ。特に、あの首の像の下で座るのが」
指を指したのは、苔むした人の首のような、自身の体よりも二回りほど大きい置物。
「随分と変な場所を気に入ったもんだなあ」
「ところで、あの首……の像って何なんだ?」
「さあ? 俺にも分からん。ただ、砂漠などでも同じものが多く散見されているから、古代遺跡と考える人も多いそうだ」
「つまり……ダンジョン??」
「中に魔族はいないし、中に入る方法もない。謎に満ちているが、あのままにしておくのが一番なんだよ」
「そうなんか……」
「そう言えば白、」
黒はツリーハウスの屋根を指差す。
「アレ、お前がやったんだろう?」
黒が指差したのは、一部の天井が崩落したツリーハウス。……そー言えば、俺が跳び上がってああなったんだな。
「あ……っ」
「弁償しろ、とは言わんが、金はやるから近隣の村で直す為の木材を買ってこい。
……大丈夫だ、地図もやるから迷う心配もなしだ」
「ああ、分かった、……で、今すぐ行くのか?」
「明日でもいいんだぞ? いいんだぞ?」
万年の笑みが怖すぎる。ので、
「……はいはい、今すぐ行くよ」
……結局、今すぐ行く事になりました。
「具体的にどんな技なんだ?……名前だけじゃどこをどんな感じで強化するのかが全く分からなかったが」
「あー、どこ、と決められた場所を強化する技じゃない。だから具体的なイメージもあまり掴めない。言ったろ?背水の陣を取得するのに数年かかったって」
……それは前にも言われたような気もしたが。
「えっと……じ……じゃあ、とりあえずどんな技なんだ?」
「簡単に言えば、自分の身体に魔術で負荷をかけ、動体視力、筋力、脚力、その他戦闘力を一時的に倍増する技だ」
「なんかすごそう」
……まあ、俺も黒がそれを使って攻撃を避けたのしか見ていないから、こんな感想しか出てこなかった訳で。
「……だが、今までにないデメリットもある。負荷をかければかけるほど、戦闘力は倍増するが、負荷をかけ過ぎると身体がぶっ壊れる。ついでに魔力回路も、魔力器官も使い物にならなくなる」
「うっ……そお……」
「だからこそ戦闘において多用は厳禁だ。運が悪かったら自滅だからな」
「マジかよ」
「だが、上手くやれば、格上ともやり合える。ダークナイトとも渡り合えて……いや、あれは渡り合えたとは言えない……が、お前にはまだまだ秘めたる力があると俺は踏んでいる。やってみる価値はアリだろう」
「……んで、それってどんなイメージをすればいいんだ?」
「……俺の場合だと、自身の身体に重りを乗せるイメージだ。……だけど、お前の場合このイメージで使えるかどうか……いかんせん技自体が抽象的だから、イメージするのが難しいんだよなあ……」
「……どうすればいいんだよ……」
「とりあえず、この技はまず、精神を研ぎ澄まさなければ使えない。という事で」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「だからって滝業かよ」
連れてこられたのは、轟音鳴り響く水の園。
「心配するな、流されはしないから」
「ちげーよ! 音がうるさくて集中しづらいんだよ!」
「……いいや、逆にそれもいいかもしれない。滝の音だけを聞いていれば、自然と外界の音はシャットダウンされる。実戦で使う時に、滝の音を思い出してすぐに連想し、この技を使う事ができればかなり楽になってくるからな」
「なるほど……」
滝の下。
ここぞとばかりに置いてある岩に座り、瞑想する。
———が。
「痛っっっっっっい!! こんなんずっと頭に当たってたら禿げるわ!!」
上から降り続ける大粒……というより線と化した水の塊。……はっきり言おう、この俺でも痛いもんは痛い。
「大丈夫だ心配するな、禿げてもまた生えてくるから」
そういうことじゃない、と不機嫌そうに舌打ちするものの、水の音のみに集中する。
意識が外側から内側に向かって研ぎ澄まされる。
暗い、暗い、意識の中の闇の中。
心を落ち着かせ、一切の邪念を捨て去る。
……と言っても、そんな簡単にできるようなものでもなかった為、試行錯誤を重ねた末、俺はようやく邪念を捨て去る事ができた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
……まあ、完全に捨て去れるようになるまで3ヶ月を要したが。
———そんな、ある日。
外界の全てをシャットダウン。
かすかに読み取れる、動物の魔力すらも読み取らずに集中する。
———そうして。集中した先に。
———何も。聞こえなくなった。
その後に。意識が白く染まった。
先程まで、光も無く、ただただ真っ黒だった意識は、白く、白く、ただ1つの無駄な色のない、完璧な白に染まりきった。
寝てる……ようで、意識は完全に覚醒している。
朦朧としてもいない。生まれて初めてのヘンな感覚だった。
身体を揺さぶられる。
先程まで完全な白に染まりきっていた意識は、光が混じった黒に戻る。
続いて———黒の声が。
「おい、おい! 大丈夫か?!」
目を開く。
「……ああ、よかった……お前の気が完全に消えたもんだから……」
「俺の……魔気が……消えた?」
「……そうだ、それまで正常だったお前の気が、まるで死んだかのように突然プツっと途切れたんだ。だから来てみたんだが……もしかして、お前気絶も睡眠もしてなかったってのか?」
「えーと、ただ意識を前の一点だけに向けていると、音が聞こえ無くなって、その後に意識が完全な白に染まりきって……」
「……なるほど、素晴らしい。完全に集中しきったか」
「……つまり……この修行は……?」
「ああ、合格だ。次のステップに進むぞ」
「まさか、精神統一の修行に5ヶ月もかかるなんてな……」
……そう、この修行だけで、ここまで来るために俺は、5ヶ月もの時間を費やしたのである。
……だから、
「ほっ」
フッと。首を横に倒し、黒のパンチを避ける。
……え?
パンチ?
「何するんだよ黒、突然攻撃……を?……何で……当たってないんだ?」
「今の攻撃は殺気丸出しだったからな、もうお前の身体は集中するゾーンに入っていて敏感だ。僅かな殺気にも反応し、身体が反射的に避けてくれる」
「……それを、俺が?」
「そうだ、面白いだろう?」
面白い……かどうかは別として、自分でもこんな事できるようになったのが不思議で仕方がなかった。
「さて白、気合いを入れてみろ」
「へ?」
「背水の陣の要領で気合いと魔力の芯を身体に入れてみろ。もちろん、集中しながらな」
言われたとおりにする。
目を瞑り、意識を閉ざし、「白の世界」に入り込む。
「ふっ」
目を開けた時。
自身の身体を、白色の可視化された魔気が覆っていた。
全身の毛が逆立つ。力がみなぎり溢れるのを感じる……!
「これは……!」
「…………それだ……! それだそれだそれだ……!」
なんだかめちゃくちゃ嬉しそうな黒を横目に質問する。
「これが、極ノ項……なのか?」
「…………そうだ……背水の陣、極の項。その基本形態だ……!」
「基本形態……?」
「言ってなかったな、その基本形態に、脚の項、手の項を上乗せする。それが開放形態。究極の奥義だ……!」
「……そうか……ならば……ふんっ!」
背水の陣を上乗せする。……まあ、そのイメージだけだが。
先程まで身体を覆っていた白の魔力は、今度は青と水色に変色していた。
「…………できたな、白。それが、お前の新たなパワーだ。……しかし、たった数ヶ月でよくぞここまで……!」
全身から力を抜く。青水色の魔力は収縮し消滅する。
「……さて、白」
……なんだ、組み手でもするのか、と疑問げな顔で首を傾げる。
「お腹空いただろ? ご飯、食べるぞ」
「いやご飯かい」
「組み手は……最早必要ない。お前は俺より強い。間違いなくな」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「で、結局……ハムハム……お前はどうす……ンムッ……るんだ、白?」
「頼むから食べながら話すのはやめてくれ。……どうする……って言ったって、王都に行ってサナに会うくらいしか……なくないか?」
「……まあ、だろうな」
「……でも、もう少しだけ、ここにいてもいいか?……ここは一番落ち着く場所なんだ。特に、あの首の像の下で座るのが」
指を指したのは、苔むした人の首のような、自身の体よりも二回りほど大きい置物。
「随分と変な場所を気に入ったもんだなあ」
「ところで、あの首……の像って何なんだ?」
「さあ? 俺にも分からん。ただ、砂漠などでも同じものが多く散見されているから、古代遺跡と考える人も多いそうだ」
「つまり……ダンジョン??」
「中に魔族はいないし、中に入る方法もない。謎に満ちているが、あのままにしておくのが一番なんだよ」
「そうなんか……」
「そう言えば白、」
黒はツリーハウスの屋根を指差す。
「アレ、お前がやったんだろう?」
黒が指差したのは、一部の天井が崩落したツリーハウス。……そー言えば、俺が跳び上がってああなったんだな。
「あ……っ」
「弁償しろ、とは言わんが、金はやるから近隣の村で直す為の木材を買ってこい。
……大丈夫だ、地図もやるから迷う心配もなしだ」
「ああ、分かった、……で、今すぐ行くのか?」
「明日でもいいんだぞ? いいんだぞ?」
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