41 / 256
ブレイバー
対峙
一方その頃。
数十秒前の鍛冶屋では。
鳴り響く爆音。
センに関しては耳を塞いでいたが、白は未だに集中していた。
……それも、白は今、神剣神威そのものと対峙していたからだ。
白の心の中にて。
********
一面真っ白な、どこが床だか分からない、感覚がおかしくなりそうな空間の中で。
神威の、その概念の中枢を成す核、具体的に言えばヘファイストスとオーディンの神核の複合神核……の擬人体と対峙していた。
「……私の名前は分かりますか」
分かりやすく少女の形で擬人化した神威に、
はっきり言って。
興奮していた。
何を言っているか分からないかもしれない。
刀に、それも今まで自分が持っていた刀に発情するなんて、よく考えなくともおかしかった。だが、間違いなくこの時の俺は興奮しきっていた。
いや、少女の形をとってくれたのはいいんだけども。
……それでも、その「全裸」の外見はやはり年頃の男の子には天敵だ。
……いくら大事な部分に「謎の光」が差し込んでいるとは言えど、な。
********
その頃。外はというと。
「……援軍か」
1人村へと赴く黒騎士。その目の前には。
「いたぞーっ! 黒騎士だーーっ!」
「大丈夫だ! みんなでかかれば敵はいない!」
などと口にする人界軍兵士及び勇者一同が。
それもそのはず、この時点では白たちがこの村に来てから2日、イデアが黒騎士と戦ってから丸1日経っていたからである。
魔王軍幹部が出て、なおかつ村が攻め落とされそうならば、やはり援軍も駆けつけるものだろう。
「ストーンロック!」
何人もの魔術師が岩魔術を使い、黒騎士の動きを完全に封じる。
岩石の隙間からその眼光を覗かせる黒騎士。……完全にその動きは封じられた。……封じたつもりが。
「無駄だ」
黒騎士の動きを封じていたはずの岩は、2秒後には砕けており、飛び散った岩の破片が一部の勇者に突き刺さる。
黒騎士は思い知らせていたのだ。
「格」の違いを。
無双、蹂躙、大虐殺。
これから黒騎士に殺されるとも知らず、一目散に黒騎士に向かっていく勇者たち。
……それを見る、木の上にて佇む魔法使いが1人。
バカだなあ、などとため息を吐きながら。
負けると分かっていても向かっていく勇者たちを軽蔑したように、されど見守るように見つめていた。
********
———白の世界にて。
「話を聞いていますか?」
「……あ、ああ、聞いてた……けど。お前の名前は、神威……だろ?」
「そうです……ああいや、正しくは自律型戦闘システム、オーディンですが」
「……何が、いや、何をすれば……いいんだ?」
「貴方が私を所有するに相応しい者か確かめさせてもらいます」
「……はい?」
……なぜ?
今更、この刀を持つに値するかを選定する……って事だろ?
「……何すんだよ、結局?」
「こういう事です」
瞬間。
目の前の全ての景色が反転する。
白から黒へ。黒から赤へ。赤から黄へ。
目まぐるしく変わる景色の中、神威擬人体が指差した景色に入り込む。
……入り込むとは言ったが、こちらは1歩として動いちゃいない。
その奥の景色が、そのままこちらにスライドしてきたような、そんな感じだった。
「……ここは?」
「貴方が、最初の罪を犯した場所です。貴方はここで、戦ってもらいます」
擬人体がそう口にした瞬間、さまざまな色の球が一箇所に集まり、そこに形作られたのは、
「……お前は……俺か?」
「……」
そこに形作られたのは、紛れもない、昔の俺、俺の子供の姿をした化け物だった。
子供の俺は手に刀を持っており、いつの間にか俺自身も刀を手にしていた。
「……誰だ、オマエ」
「僕? 僕はね……キミだよ。キミも気付いてるんだろ? 神威によって作られた、もう1人のキミ。それが僕」
「……殺せば……いいのか?」
思考は切り替わる。
「殺せば、いいと思ってる?」
「……それで終わるならな」
「……馬鹿だよね、キミは。すぐに殺して終わらせようとする」
「ならば俺は馬鹿でいいさ。俺にはやらなきゃならない事がある。その為に、死んでく……」
「そう言って、何人殺してきた?」
「……俺は生きなきゃならないんだ。だからその為に殺……」
「6386人」
「……なんだ、それは……!」
「キミの……数だよ。今まで、斬り殺してきた数さ」
「……だからなんだと……」
「キミは生きなきゃならないだの、やらなきゃならない事だの何だの言ってるうちに殺してきたんだよ? これだけの数の未来ある人々をさ」
「傷を抉って楽しいか……!」
「傷? そうか、キミにとっては傷なんだ。でも、殺している時のキミの顔は……実に愉快なものだったけどね」
「やめろ……!」
「キミは結局自制できなかった。自身の内から湧き出る殺したいという衝動、『呪い』、『吸血衝動』、『食人衝動』を」
「……だから、やめろ……!」
「結局キミは、贖罪だの何だの言っていたけど何にも分かっちゃいなかった。自分の事を。本当に贖罪をしたいと言うのなら、今すぐその首、かき切ってよ」
「は……?」
「キミの代わりに僕が戦うからさ。キミは変われなかった。チャンスをもらっておきながら、根本的な問題は何も変えようとしなかった!」
「……ぁ……」
「兄さんの死を悲しんでいたけど、殺したのはキミなんだよ?」
「……何……だって……?」
「キミが黒の家から出なければ、兄さんに会う事はなかった。兄さんに会わなければ、兄さんは魔王軍の手を借りる事も無かった」
「……嘘だ……」
「兄さんが魔王軍の手を借りなければ、兄さんが黒騎士に殺される事もなかった!!」
「嘘だ……嘘だ……!」
「殺したんだよ、大事な人を! キミは、自分の手で!」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!」
ユメ、なんだろう。
目を開ければすぐに覚めるユメで、現実にはなんの影響もない、ただのユメ。
……それでも、そのユメは、確実に俺の心を抉り取りに来ているようなものだった。
「……さて、もう終わりにしよう。いかにキミがどうしようもない人間か分かっただろ?……早く、その首をかき切ってよ」
「………………できない」
「……ハハッ! やっぱりそうだ。未練がましくこの世にしがみつき、何故だか分からないけど厳しいけれども生きていくと曰う! やっぱりそうだ、キミはそう、どうしようもないヤツじゃないとキミじゃない!!」
「……じゃあ、こうしよう」
子供の俺は指を鳴らす。次の瞬間、俺が初めて「解体」した女性が、元の姿のままその身体を晒す。
「さあ、バラしなよ! 食べなよ! キミの思うがままだ!」
……嘘つけ、何が思うがままだ、既に体は思い通りではない。
鼓動は速くなる一方。顔は引きつり、目を思いっきり見開き、「エサ」の姿をその目に捉える。
「そら見たことか、キミはやっぱり抗えない。食えばそれで終わりだよ! こんな長い長い悪夢は! 僕がキミの、現実での人格を乗っとるからね!」
身体は今すぐにも女性に飛びかかろうと力を込める。
だが、頭の中は違った。
……殺せば、終わるんだろ?
この首、かっ切れば、終わるんだろ?
……だったら、終わらせよう。
俺は……どうしようもない人間だ。
でも、変えようと思って変えられるような人間じゃない。
……だったら。もういっそのこと、「受け入れる」のみだ。
自分は弱い。自分はどうしようもない。
……だから?
それで構わない。どうしようもなくとも、変わろうとは思わない。
だから。こんな自分を受け入れつつ。全てを終わらせる決断をした。
「が……っ?! 何……で……僕を……」
かっ切った、かっ切ってやったさ。「子供の俺」の首を。
そして。
「ごぶ……っ!」
自分の首もかっ切った。
最後まで変われなかった。変わろうとは思った。変わろうとは言った。だけど変われなかった。だからこれは、そんな俺の、俺自身への儚い抵抗。
……最後まで変われなかった……とは言ったが。
……最後に自殺ができるなんて、よっぽど変われたんじゃないか、と必死に自分に言い聞かせた。
そうして、俺は後に、この決断を思い出すこととなる。
数十秒前の鍛冶屋では。
鳴り響く爆音。
センに関しては耳を塞いでいたが、白は未だに集中していた。
……それも、白は今、神剣神威そのものと対峙していたからだ。
白の心の中にて。
********
一面真っ白な、どこが床だか分からない、感覚がおかしくなりそうな空間の中で。
神威の、その概念の中枢を成す核、具体的に言えばヘファイストスとオーディンの神核の複合神核……の擬人体と対峙していた。
「……私の名前は分かりますか」
分かりやすく少女の形で擬人化した神威に、
はっきり言って。
興奮していた。
何を言っているか分からないかもしれない。
刀に、それも今まで自分が持っていた刀に発情するなんて、よく考えなくともおかしかった。だが、間違いなくこの時の俺は興奮しきっていた。
いや、少女の形をとってくれたのはいいんだけども。
……それでも、その「全裸」の外見はやはり年頃の男の子には天敵だ。
……いくら大事な部分に「謎の光」が差し込んでいるとは言えど、な。
********
その頃。外はというと。
「……援軍か」
1人村へと赴く黒騎士。その目の前には。
「いたぞーっ! 黒騎士だーーっ!」
「大丈夫だ! みんなでかかれば敵はいない!」
などと口にする人界軍兵士及び勇者一同が。
それもそのはず、この時点では白たちがこの村に来てから2日、イデアが黒騎士と戦ってから丸1日経っていたからである。
魔王軍幹部が出て、なおかつ村が攻め落とされそうならば、やはり援軍も駆けつけるものだろう。
「ストーンロック!」
何人もの魔術師が岩魔術を使い、黒騎士の動きを完全に封じる。
岩石の隙間からその眼光を覗かせる黒騎士。……完全にその動きは封じられた。……封じたつもりが。
「無駄だ」
黒騎士の動きを封じていたはずの岩は、2秒後には砕けており、飛び散った岩の破片が一部の勇者に突き刺さる。
黒騎士は思い知らせていたのだ。
「格」の違いを。
無双、蹂躙、大虐殺。
これから黒騎士に殺されるとも知らず、一目散に黒騎士に向かっていく勇者たち。
……それを見る、木の上にて佇む魔法使いが1人。
バカだなあ、などとため息を吐きながら。
負けると分かっていても向かっていく勇者たちを軽蔑したように、されど見守るように見つめていた。
********
———白の世界にて。
「話を聞いていますか?」
「……あ、ああ、聞いてた……けど。お前の名前は、神威……だろ?」
「そうです……ああいや、正しくは自律型戦闘システム、オーディンですが」
「……何が、いや、何をすれば……いいんだ?」
「貴方が私を所有するに相応しい者か確かめさせてもらいます」
「……はい?」
……なぜ?
今更、この刀を持つに値するかを選定する……って事だろ?
「……何すんだよ、結局?」
「こういう事です」
瞬間。
目の前の全ての景色が反転する。
白から黒へ。黒から赤へ。赤から黄へ。
目まぐるしく変わる景色の中、神威擬人体が指差した景色に入り込む。
……入り込むとは言ったが、こちらは1歩として動いちゃいない。
その奥の景色が、そのままこちらにスライドしてきたような、そんな感じだった。
「……ここは?」
「貴方が、最初の罪を犯した場所です。貴方はここで、戦ってもらいます」
擬人体がそう口にした瞬間、さまざまな色の球が一箇所に集まり、そこに形作られたのは、
「……お前は……俺か?」
「……」
そこに形作られたのは、紛れもない、昔の俺、俺の子供の姿をした化け物だった。
子供の俺は手に刀を持っており、いつの間にか俺自身も刀を手にしていた。
「……誰だ、オマエ」
「僕? 僕はね……キミだよ。キミも気付いてるんだろ? 神威によって作られた、もう1人のキミ。それが僕」
「……殺せば……いいのか?」
思考は切り替わる。
「殺せば、いいと思ってる?」
「……それで終わるならな」
「……馬鹿だよね、キミは。すぐに殺して終わらせようとする」
「ならば俺は馬鹿でいいさ。俺にはやらなきゃならない事がある。その為に、死んでく……」
「そう言って、何人殺してきた?」
「……俺は生きなきゃならないんだ。だからその為に殺……」
「6386人」
「……なんだ、それは……!」
「キミの……数だよ。今まで、斬り殺してきた数さ」
「……だからなんだと……」
「キミは生きなきゃならないだの、やらなきゃならない事だの何だの言ってるうちに殺してきたんだよ? これだけの数の未来ある人々をさ」
「傷を抉って楽しいか……!」
「傷? そうか、キミにとっては傷なんだ。でも、殺している時のキミの顔は……実に愉快なものだったけどね」
「やめろ……!」
「キミは結局自制できなかった。自身の内から湧き出る殺したいという衝動、『呪い』、『吸血衝動』、『食人衝動』を」
「……だから、やめろ……!」
「結局キミは、贖罪だの何だの言っていたけど何にも分かっちゃいなかった。自分の事を。本当に贖罪をしたいと言うのなら、今すぐその首、かき切ってよ」
「は……?」
「キミの代わりに僕が戦うからさ。キミは変われなかった。チャンスをもらっておきながら、根本的な問題は何も変えようとしなかった!」
「……ぁ……」
「兄さんの死を悲しんでいたけど、殺したのはキミなんだよ?」
「……何……だって……?」
「キミが黒の家から出なければ、兄さんに会う事はなかった。兄さんに会わなければ、兄さんは魔王軍の手を借りる事も無かった」
「……嘘だ……」
「兄さんが魔王軍の手を借りなければ、兄さんが黒騎士に殺される事もなかった!!」
「嘘だ……嘘だ……!」
「殺したんだよ、大事な人を! キミは、自分の手で!」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!」
ユメ、なんだろう。
目を開ければすぐに覚めるユメで、現実にはなんの影響もない、ただのユメ。
……それでも、そのユメは、確実に俺の心を抉り取りに来ているようなものだった。
「……さて、もう終わりにしよう。いかにキミがどうしようもない人間か分かっただろ?……早く、その首をかき切ってよ」
「………………できない」
「……ハハッ! やっぱりそうだ。未練がましくこの世にしがみつき、何故だか分からないけど厳しいけれども生きていくと曰う! やっぱりそうだ、キミはそう、どうしようもないヤツじゃないとキミじゃない!!」
「……じゃあ、こうしよう」
子供の俺は指を鳴らす。次の瞬間、俺が初めて「解体」した女性が、元の姿のままその身体を晒す。
「さあ、バラしなよ! 食べなよ! キミの思うがままだ!」
……嘘つけ、何が思うがままだ、既に体は思い通りではない。
鼓動は速くなる一方。顔は引きつり、目を思いっきり見開き、「エサ」の姿をその目に捉える。
「そら見たことか、キミはやっぱり抗えない。食えばそれで終わりだよ! こんな長い長い悪夢は! 僕がキミの、現実での人格を乗っとるからね!」
身体は今すぐにも女性に飛びかかろうと力を込める。
だが、頭の中は違った。
……殺せば、終わるんだろ?
この首、かっ切れば、終わるんだろ?
……だったら、終わらせよう。
俺は……どうしようもない人間だ。
でも、変えようと思って変えられるような人間じゃない。
……だったら。もういっそのこと、「受け入れる」のみだ。
自分は弱い。自分はどうしようもない。
……だから?
それで構わない。どうしようもなくとも、変わろうとは思わない。
だから。こんな自分を受け入れつつ。全てを終わらせる決断をした。
「が……っ?! 何……で……僕を……」
かっ切った、かっ切ってやったさ。「子供の俺」の首を。
そして。
「ごぶ……っ!」
自分の首もかっ切った。
最後まで変われなかった。変わろうとは思った。変わろうとは言った。だけど変われなかった。だからこれは、そんな俺の、俺自身への儚い抵抗。
……最後まで変われなかった……とは言ったが。
……最後に自殺ができるなんて、よっぽど変われたんじゃないか、と必死に自分に言い聞かせた。
そうして、俺は後に、この決断を思い出すこととなる。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。
孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。
その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。
そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。
同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。
春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。
昔から志穂が近くにいてくれるから……。
しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。
登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。
志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。
彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。
志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。
そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。
その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。