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激震!勇魔最終戦争…!
最終決戦Ⅰ〜再現:終末戦争〜
*◇*◇*◇*◇
大穴。その死体が核を成した『終末』は、呪いの塊として顕現していた。
呪いの塊———と言うより、『暗黒』という概念そのものが、巨大な形を成したかのようだった。
「コレ、何なんだよ……! むにゅっとして、斬った時の感触が気持ち悪い……っ!」
「そいつは……それ1つ1つが、腐れきったいつかの誰かの魂だ。絶対に素手で触れるなよ」
「分かっているが……いつ終わるんだよコレ?!」
「おい白、来るぞ、魔王軍幹部だ」
はい……?
なぜ今になって、全員死したはずの魔王軍幹部が……?
———まさか、魔王の言っていた……「幹部の呪い」……?
魔王の兄……誰かは分からないが、そいつが仕込んだ……災厄だというわけか……!
「まあ実際には、幹部じゃなくその成れの果てだがな……だが、コイツらを食い止める事には意味がある……!」
「ちくしょう、折角魔王を倒したってのに、なんで俺がここまで……!」
もはやがむしゃらだった。
……がしかし、魔王軍のヤツらと戦う時のように考えなくていいだけマシか———いやマシじゃねえわ普通にキツい。
大体魔王との戦いの後なんだ、少しくらい休ませてくれたっていいじゃないか……!
「はあ、はあっ……! ダメだ、めっちゃ疲れる……まだか、増援とか……ないのか?!」
「まだだ……大体、俺に聞かなくとも……分かるだろっ!」
……が。
「白、お前後ろ……!」
迫っていたのは、そう、あの時のインフェルノドラゴン……の死体だった。
「黒っ!」
だが、あのままでは確実に触れられており、どう足掻いても、今ので俺は死んでいた。……はずだった。
*◇*◇*◇*◇
その頃、王都は騒然としていた。
前代未聞の暗黒に、全ての人間が混乱していた。
……しかし、その最中でも、皆は希望を捨ててはいなかった。
「少しだけ、少しだけでいいので、魔力を分けてください……!」
サナとコックには秘策があった。
それは、人類全ての魔力を込めた超大規模魔法。
コックには、例の大戦の、終末と謳われた世界の終わりを見届けた記憶があった。
……もっとも、記憶は既にほとんど残されておらず、ほとんど感覚に近い感じだったが。
それは、それまで負け犬とされてきた人間が、大戦の最後に放った最強の魔法。
かの島を、かの軍神を抉り取ってみせた、最後の悪あがき。
その魔法の名前は『メテオ・エクスプロージョン』。
……『エクスプロージョン』こそが人類の最強の攻撃手段と呼ばれる所以にもなっているこの魔法だが。
その時は、奇跡が起きた。
誰も倒せぬまま、終わりを迎えると思われていた軍神『アレス』を、その男は打ち倒してみせた。
その男は今のマスターにどこか似ていて、そして同じ『神技』を所有していた。……要するに、その後マスターに受け継がれたのだろう。
だからこその、あの神話の再現。
あちらが呪いの「カミ」だと言うのなら。
こちらは人間の「神話」———終末戦争の再現をぶつけるのみだ……!
その為には膨大な、膨大すぎる魔力と、人類の中に刻まれる大戦時の「神話」の概念をかき集めなければならない。
だからこそ、これは奇跡だ。
全世界を巻き込んだ最終決戦。
「敵」は、かの軍神の骸、そしてマスターと、その男の共通する「神技」。
ここまで条件が揃っているのなら、十分だ。
あの時の、戦争終結の景色を、そっくりそのまま再現できるはずだ、ここまで共通している条件が揃っているのなら。
サナは杖を虚空へと掲げる。魔力は杖に収束し、一時の太陽が生まれた。
「……コック、みんなから集めてきたわよ……最後の魔力……これから、どうすればいいワケ?」
「では、転移しますのでお捕まりください」
「…………待ってくれ」
聞こえてきたその声は、間違いなく。
「我も……連れてゆけ……我も一目見なくては。世界を守る為に戦う、勇者の姿を……!」
あろうことか。
戦場に1番出るべきではない存在の人界王、ユダレイ・タッカーダル四世であった。
「……承知しました、人界王。……ですが、決して無理はなさらずに、お願いします」
「期待しておるぞ、最強の魔法使いよ」
*◇*◇*◇*◇
世界の中心、暗黒の大穴にて。
そうだ、俺はここで終わるはずだった。
黒が、身を犠牲にして俺を庇うまでは。
「黒、お前……!」
もう既に、遅かった、何もかも。
「絶対に触れるな」どうやらそれは本当らしく。
黒の顔は、どこまでも生気のない表情に満ちていた。
「は…………っ……ぐ……それでも、ここで終わる訳には……!」
『そうだ、それでいいんだ白。
過去の屍など踏み越えろ。
俺のような、空っぽの人間なんざ、踏み越えてしまえ。
……そして、お前が掴め。自分なりの、幸せを———!』
「ぐ……ぐぐっ……! 負ける訳には……いかないってのにぃぃぃぃいっ!」
「呪い」は縦横無尽に押し寄せてくる。
質量だけをぶつける屍の山。
どう足掻いても、避ける方法など思いつかなかった。
それでも、それでも諦める訳にはいかない。
「そうだ……奇跡は……奇跡は起きるはずだ……必ず……! 黒があそこまでしてくれたんだ、絶対に、負ける訳にはいかない……! 黒の死に、いじけている暇なんてないんだっ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
その頃、半壊した魔王城にて、世界最高峰の魔術師は高らかに叫ぶ。
魔王城。
魔力によって形作られた、究極の概念武装が配置されていた城である。
……がゆえに、それを維持する為の魔力は未だ城に残されたままであった。
そして唱える。
「魔力回路……接続……城内残存魔力集結、補充完了……転移魔術準備……! みんなから分け与えられたこの想い、無駄にする訳には……いかないでしょ……!」
「私以外の転移準備は完了です。サナ様、あと……人界王、様。……勝ってくださいね、絶対に……!」
「……ええ、ここまで、手助けありがとう、コック。…………行って……きます」
「行ってらっしゃいませ、そして掴んでください、最高の勝利を……!」
そう告げたコックの、最後に見た表情は、よく澄んだ青空のように清々しい笑顔だった。
********
マスターは以前、おっしゃいました。
「もう誰も傷つかない、優しい世界」を作る、と。
……いえ、正確には口には出していないのですが。
……それでも、他の誰もが馬鹿にしようと、他の誰もがコケにしようと、私だけは信じています。
マスターなら、必ずその願いを叶え、笑顔で帰ってくる、と。
……もう、私の約束はそれでいいのです。
マスター、あなたが帰ってきて、そしてあなたが笑顔になるだけで、私も自然と笑顔になるでしょうから。
「……だからこそ、この戦いは……勝ってください……ね……!」
半壊の城にて、少女のように天使は啜り泣く。
———未だかつてない、最大の戦いの無事を祈って。
大穴。その死体が核を成した『終末』は、呪いの塊として顕現していた。
呪いの塊———と言うより、『暗黒』という概念そのものが、巨大な形を成したかのようだった。
「コレ、何なんだよ……! むにゅっとして、斬った時の感触が気持ち悪い……っ!」
「そいつは……それ1つ1つが、腐れきったいつかの誰かの魂だ。絶対に素手で触れるなよ」
「分かっているが……いつ終わるんだよコレ?!」
「おい白、来るぞ、魔王軍幹部だ」
はい……?
なぜ今になって、全員死したはずの魔王軍幹部が……?
———まさか、魔王の言っていた……「幹部の呪い」……?
魔王の兄……誰かは分からないが、そいつが仕込んだ……災厄だというわけか……!
「まあ実際には、幹部じゃなくその成れの果てだがな……だが、コイツらを食い止める事には意味がある……!」
「ちくしょう、折角魔王を倒したってのに、なんで俺がここまで……!」
もはやがむしゃらだった。
……がしかし、魔王軍のヤツらと戦う時のように考えなくていいだけマシか———いやマシじゃねえわ普通にキツい。
大体魔王との戦いの後なんだ、少しくらい休ませてくれたっていいじゃないか……!
「はあ、はあっ……! ダメだ、めっちゃ疲れる……まだか、増援とか……ないのか?!」
「まだだ……大体、俺に聞かなくとも……分かるだろっ!」
……が。
「白、お前後ろ……!」
迫っていたのは、そう、あの時のインフェルノドラゴン……の死体だった。
「黒っ!」
だが、あのままでは確実に触れられており、どう足掻いても、今ので俺は死んでいた。……はずだった。
*◇*◇*◇*◇
その頃、王都は騒然としていた。
前代未聞の暗黒に、全ての人間が混乱していた。
……しかし、その最中でも、皆は希望を捨ててはいなかった。
「少しだけ、少しだけでいいので、魔力を分けてください……!」
サナとコックには秘策があった。
それは、人類全ての魔力を込めた超大規模魔法。
コックには、例の大戦の、終末と謳われた世界の終わりを見届けた記憶があった。
……もっとも、記憶は既にほとんど残されておらず、ほとんど感覚に近い感じだったが。
それは、それまで負け犬とされてきた人間が、大戦の最後に放った最強の魔法。
かの島を、かの軍神を抉り取ってみせた、最後の悪あがき。
その魔法の名前は『メテオ・エクスプロージョン』。
……『エクスプロージョン』こそが人類の最強の攻撃手段と呼ばれる所以にもなっているこの魔法だが。
その時は、奇跡が起きた。
誰も倒せぬまま、終わりを迎えると思われていた軍神『アレス』を、その男は打ち倒してみせた。
その男は今のマスターにどこか似ていて、そして同じ『神技』を所有していた。……要するに、その後マスターに受け継がれたのだろう。
だからこその、あの神話の再現。
あちらが呪いの「カミ」だと言うのなら。
こちらは人間の「神話」———終末戦争の再現をぶつけるのみだ……!
その為には膨大な、膨大すぎる魔力と、人類の中に刻まれる大戦時の「神話」の概念をかき集めなければならない。
だからこそ、これは奇跡だ。
全世界を巻き込んだ最終決戦。
「敵」は、かの軍神の骸、そしてマスターと、その男の共通する「神技」。
ここまで条件が揃っているのなら、十分だ。
あの時の、戦争終結の景色を、そっくりそのまま再現できるはずだ、ここまで共通している条件が揃っているのなら。
サナは杖を虚空へと掲げる。魔力は杖に収束し、一時の太陽が生まれた。
「……コック、みんなから集めてきたわよ……最後の魔力……これから、どうすればいいワケ?」
「では、転移しますのでお捕まりください」
「…………待ってくれ」
聞こえてきたその声は、間違いなく。
「我も……連れてゆけ……我も一目見なくては。世界を守る為に戦う、勇者の姿を……!」
あろうことか。
戦場に1番出るべきではない存在の人界王、ユダレイ・タッカーダル四世であった。
「……承知しました、人界王。……ですが、決して無理はなさらずに、お願いします」
「期待しておるぞ、最強の魔法使いよ」
*◇*◇*◇*◇
世界の中心、暗黒の大穴にて。
そうだ、俺はここで終わるはずだった。
黒が、身を犠牲にして俺を庇うまでは。
「黒、お前……!」
もう既に、遅かった、何もかも。
「絶対に触れるな」どうやらそれは本当らしく。
黒の顔は、どこまでも生気のない表情に満ちていた。
「は…………っ……ぐ……それでも、ここで終わる訳には……!」
『そうだ、それでいいんだ白。
過去の屍など踏み越えろ。
俺のような、空っぽの人間なんざ、踏み越えてしまえ。
……そして、お前が掴め。自分なりの、幸せを———!』
「ぐ……ぐぐっ……! 負ける訳には……いかないってのにぃぃぃぃいっ!」
「呪い」は縦横無尽に押し寄せてくる。
質量だけをぶつける屍の山。
どう足掻いても、避ける方法など思いつかなかった。
それでも、それでも諦める訳にはいかない。
「そうだ……奇跡は……奇跡は起きるはずだ……必ず……! 黒があそこまでしてくれたんだ、絶対に、負ける訳にはいかない……! 黒の死に、いじけている暇なんてないんだっ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
その頃、半壊した魔王城にて、世界最高峰の魔術師は高らかに叫ぶ。
魔王城。
魔力によって形作られた、究極の概念武装が配置されていた城である。
……がゆえに、それを維持する為の魔力は未だ城に残されたままであった。
そして唱える。
「魔力回路……接続……城内残存魔力集結、補充完了……転移魔術準備……! みんなから分け与えられたこの想い、無駄にする訳には……いかないでしょ……!」
「私以外の転移準備は完了です。サナ様、あと……人界王、様。……勝ってくださいね、絶対に……!」
「……ええ、ここまで、手助けありがとう、コック。…………行って……きます」
「行ってらっしゃいませ、そして掴んでください、最高の勝利を……!」
そう告げたコックの、最後に見た表情は、よく澄んだ青空のように清々しい笑顔だった。
********
マスターは以前、おっしゃいました。
「もう誰も傷つかない、優しい世界」を作る、と。
……いえ、正確には口には出していないのですが。
……それでも、他の誰もが馬鹿にしようと、他の誰もがコケにしようと、私だけは信じています。
マスターなら、必ずその願いを叶え、笑顔で帰ってくる、と。
……もう、私の約束はそれでいいのです。
マスター、あなたが帰ってきて、そしてあなたが笑顔になるだけで、私も自然と笑顔になるでしょうから。
「……だからこそ、この戦いは……勝ってください……ね……!」
半壊の城にて、少女のように天使は啜り泣く。
———未だかつてない、最大の戦いの無事を祈って。
感想 203
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