文字の大きさ
大
中
小
74 / 256
激震!勇魔最終戦争…!
最終決戦Ⅰ〜再現:終末戦争〜
*◇*◇*◇*◇
大穴。その死体が核を成した『終末』は、呪いの塊として顕現していた。
呪いの塊———と言うより、『暗黒』という概念そのものが、巨大な形を成したかのようだった。
「コレ、何なんだよ……! むにゅっとして、斬った時の感触が気持ち悪い……っ!」
「そいつは……それ1つ1つが、腐れきったいつかの誰かの魂だ。絶対に素手で触れるなよ」
「分かっているが……いつ終わるんだよコレ?!」
「おい白、来るぞ、魔王軍幹部だ」
はい……?
なぜ今になって、全員死したはずの魔王軍幹部が……?
———まさか、魔王の言っていた……「幹部の呪い」……?
魔王の兄……誰かは分からないが、そいつが仕込んだ……災厄だというわけか……!
「まあ実際には、幹部じゃなくその成れの果てだがな……だが、コイツらを食い止める事には意味がある……!」
「ちくしょう、折角魔王を倒したってのに、なんで俺がここまで……!」
もはやがむしゃらだった。
……がしかし、魔王軍のヤツらと戦う時のように考えなくていいだけマシか———いやマシじゃねえわ普通にキツい。
大体魔王との戦いの後なんだ、少しくらい休ませてくれたっていいじゃないか……!
「はあ、はあっ……! ダメだ、めっちゃ疲れる……まだか、増援とか……ないのか?!」
「まだだ……大体、俺に聞かなくとも……分かるだろっ!」
……が。
「白、お前後ろ……!」
迫っていたのは、そう、あの時のインフェルノドラゴン……の死体だった。
「黒っ!」
だが、あのままでは確実に触れられており、どう足掻いても、今ので俺は死んでいた。……はずだった。
*◇*◇*◇*◇
その頃、王都は騒然としていた。
前代未聞の暗黒に、全ての人間が混乱していた。
……しかし、その最中でも、皆は希望を捨ててはいなかった。
「少しだけ、少しだけでいいので、魔力を分けてください……!」
サナとコックには秘策があった。
それは、人類全ての魔力を込めた超大規模魔法。
コックには、例の大戦の、終末と謳われた世界の終わりを見届けた記憶があった。
……もっとも、記憶は既にほとんど残されておらず、ほとんど感覚に近い感じだったが。
それは、それまで負け犬とされてきた人間が、大戦の最後に放った最強の魔法。
かの島を、かの軍神を抉り取ってみせた、最後の悪あがき。
その魔法の名前は『メテオ・エクスプロージョン』。
……『エクスプロージョン』こそが人類の最強の攻撃手段と呼ばれる所以にもなっているこの魔法だが。
その時は、奇跡が起きた。
誰も倒せぬまま、終わりを迎えると思われていた軍神『アレス』を、その男は打ち倒してみせた。
その男は今のマスターにどこか似ていて、そして同じ『神技』を所有していた。……要するに、その後マスターに受け継がれたのだろう。
だからこその、あの神話の再現。
あちらが呪いの「カミ」だと言うのなら。
こちらは人間の「神話」———終末戦争の再現をぶつけるのみだ……!
その為には膨大な、膨大すぎる魔力と、人類の中に刻まれる大戦時の「神話」の概念をかき集めなければならない。
だからこそ、これは奇跡だ。
全世界を巻き込んだ最終決戦。
「敵」は、かの軍神の骸、そしてマスターと、その男の共通する「神技」。
ここまで条件が揃っているのなら、十分だ。
あの時の、戦争終結の景色を、そっくりそのまま再現できるはずだ、ここまで共通している条件が揃っているのなら。
サナは杖を虚空へと掲げる。魔力は杖に収束し、一時の太陽が生まれた。
「……コック、みんなから集めてきたわよ……最後の魔力……これから、どうすればいいワケ?」
「では、転移しますのでお捕まりください」
「…………待ってくれ」
聞こえてきたその声は、間違いなく。
「我も……連れてゆけ……我も一目見なくては。世界を守る為に戦う、勇者の姿を……!」
あろうことか。
戦場に1番出るべきではない存在の人界王、ユダレイ・タッカーダル四世であった。
「……承知しました、人界王。……ですが、決して無理はなさらずに、お願いします」
「期待しておるぞ、最強の魔法使いよ」
*◇*◇*◇*◇
世界の中心、暗黒の大穴にて。
そうだ、俺はここで終わるはずだった。
黒が、身を犠牲にして俺を庇うまでは。
「黒、お前……!」
もう既に、遅かった、何もかも。
「絶対に触れるな」どうやらそれは本当らしく。
黒の顔は、どこまでも生気のない表情に満ちていた。
「は…………っ……ぐ……それでも、ここで終わる訳には……!」
『そうだ、それでいいんだ白。
過去の屍など踏み越えろ。
俺のような、空っぽの人間なんざ、踏み越えてしまえ。
……そして、お前が掴め。自分なりの、幸せを———!』
「ぐ……ぐぐっ……! 負ける訳には……いかないってのにぃぃぃぃいっ!」
「呪い」は縦横無尽に押し寄せてくる。
質量だけをぶつける屍の山。
どう足掻いても、避ける方法など思いつかなかった。
それでも、それでも諦める訳にはいかない。
「そうだ……奇跡は……奇跡は起きるはずだ……必ず……! 黒があそこまでしてくれたんだ、絶対に、負ける訳にはいかない……! 黒の死に、いじけている暇なんてないんだっ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
その頃、半壊した魔王城にて、世界最高峰の魔術師は高らかに叫ぶ。
魔王城。
魔力によって形作られた、究極の概念武装が配置されていた城である。
……がゆえに、それを維持する為の魔力は未だ城に残されたままであった。
そして唱える。
「魔力回路……接続……城内残存魔力集結、補充完了……転移魔術準備……! みんなから分け与えられたこの想い、無駄にする訳には……いかないでしょ……!」
「私以外の転移準備は完了です。サナ様、あと……人界王、様。……勝ってくださいね、絶対に……!」
「……ええ、ここまで、手助けありがとう、コック。…………行って……きます」
「行ってらっしゃいませ、そして掴んでください、最高の勝利を……!」
そう告げたコックの、最後に見た表情は、よく澄んだ青空のように清々しい笑顔だった。
********
マスターは以前、おっしゃいました。
「もう誰も傷つかない、優しい世界」を作る、と。
……いえ、正確には口には出していないのですが。
……それでも、他の誰もが馬鹿にしようと、他の誰もがコケにしようと、私だけは信じています。
マスターなら、必ずその願いを叶え、笑顔で帰ってくる、と。
……もう、私の約束はそれでいいのです。
マスター、あなたが帰ってきて、そしてあなたが笑顔になるだけで、私も自然と笑顔になるでしょうから。
「……だからこそ、この戦いは……勝ってください……ね……!」
半壊の城にて、少女のように天使は啜り泣く。
———未だかつてない、最大の戦いの無事を祈って。
大穴。その死体が核を成した『終末』は、呪いの塊として顕現していた。
呪いの塊———と言うより、『暗黒』という概念そのものが、巨大な形を成したかのようだった。
「コレ、何なんだよ……! むにゅっとして、斬った時の感触が気持ち悪い……っ!」
「そいつは……それ1つ1つが、腐れきったいつかの誰かの魂だ。絶対に素手で触れるなよ」
「分かっているが……いつ終わるんだよコレ?!」
「おい白、来るぞ、魔王軍幹部だ」
はい……?
なぜ今になって、全員死したはずの魔王軍幹部が……?
———まさか、魔王の言っていた……「幹部の呪い」……?
魔王の兄……誰かは分からないが、そいつが仕込んだ……災厄だというわけか……!
「まあ実際には、幹部じゃなくその成れの果てだがな……だが、コイツらを食い止める事には意味がある……!」
「ちくしょう、折角魔王を倒したってのに、なんで俺がここまで……!」
もはやがむしゃらだった。
……がしかし、魔王軍のヤツらと戦う時のように考えなくていいだけマシか———いやマシじゃねえわ普通にキツい。
大体魔王との戦いの後なんだ、少しくらい休ませてくれたっていいじゃないか……!
「はあ、はあっ……! ダメだ、めっちゃ疲れる……まだか、増援とか……ないのか?!」
「まだだ……大体、俺に聞かなくとも……分かるだろっ!」
……が。
「白、お前後ろ……!」
迫っていたのは、そう、あの時のインフェルノドラゴン……の死体だった。
「黒っ!」
だが、あのままでは確実に触れられており、どう足掻いても、今ので俺は死んでいた。……はずだった。
*◇*◇*◇*◇
その頃、王都は騒然としていた。
前代未聞の暗黒に、全ての人間が混乱していた。
……しかし、その最中でも、皆は希望を捨ててはいなかった。
「少しだけ、少しだけでいいので、魔力を分けてください……!」
サナとコックには秘策があった。
それは、人類全ての魔力を込めた超大規模魔法。
コックには、例の大戦の、終末と謳われた世界の終わりを見届けた記憶があった。
……もっとも、記憶は既にほとんど残されておらず、ほとんど感覚に近い感じだったが。
それは、それまで負け犬とされてきた人間が、大戦の最後に放った最強の魔法。
かの島を、かの軍神を抉り取ってみせた、最後の悪あがき。
その魔法の名前は『メテオ・エクスプロージョン』。
……『エクスプロージョン』こそが人類の最強の攻撃手段と呼ばれる所以にもなっているこの魔法だが。
その時は、奇跡が起きた。
誰も倒せぬまま、終わりを迎えると思われていた軍神『アレス』を、その男は打ち倒してみせた。
その男は今のマスターにどこか似ていて、そして同じ『神技』を所有していた。……要するに、その後マスターに受け継がれたのだろう。
だからこその、あの神話の再現。
あちらが呪いの「カミ」だと言うのなら。
こちらは人間の「神話」———終末戦争の再現をぶつけるのみだ……!
その為には膨大な、膨大すぎる魔力と、人類の中に刻まれる大戦時の「神話」の概念をかき集めなければならない。
だからこそ、これは奇跡だ。
全世界を巻き込んだ最終決戦。
「敵」は、かの軍神の骸、そしてマスターと、その男の共通する「神技」。
ここまで条件が揃っているのなら、十分だ。
あの時の、戦争終結の景色を、そっくりそのまま再現できるはずだ、ここまで共通している条件が揃っているのなら。
サナは杖を虚空へと掲げる。魔力は杖に収束し、一時の太陽が生まれた。
「……コック、みんなから集めてきたわよ……最後の魔力……これから、どうすればいいワケ?」
「では、転移しますのでお捕まりください」
「…………待ってくれ」
聞こえてきたその声は、間違いなく。
「我も……連れてゆけ……我も一目見なくては。世界を守る為に戦う、勇者の姿を……!」
あろうことか。
戦場に1番出るべきではない存在の人界王、ユダレイ・タッカーダル四世であった。
「……承知しました、人界王。……ですが、決して無理はなさらずに、お願いします」
「期待しておるぞ、最強の魔法使いよ」
*◇*◇*◇*◇
世界の中心、暗黒の大穴にて。
そうだ、俺はここで終わるはずだった。
黒が、身を犠牲にして俺を庇うまでは。
「黒、お前……!」
もう既に、遅かった、何もかも。
「絶対に触れるな」どうやらそれは本当らしく。
黒の顔は、どこまでも生気のない表情に満ちていた。
「は…………っ……ぐ……それでも、ここで終わる訳には……!」
『そうだ、それでいいんだ白。
過去の屍など踏み越えろ。
俺のような、空っぽの人間なんざ、踏み越えてしまえ。
……そして、お前が掴め。自分なりの、幸せを———!』
「ぐ……ぐぐっ……! 負ける訳には……いかないってのにぃぃぃぃいっ!」
「呪い」は縦横無尽に押し寄せてくる。
質量だけをぶつける屍の山。
どう足掻いても、避ける方法など思いつかなかった。
それでも、それでも諦める訳にはいかない。
「そうだ……奇跡は……奇跡は起きるはずだ……必ず……! 黒があそこまでしてくれたんだ、絶対に、負ける訳にはいかない……! 黒の死に、いじけている暇なんてないんだっ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
その頃、半壊した魔王城にて、世界最高峰の魔術師は高らかに叫ぶ。
魔王城。
魔力によって形作られた、究極の概念武装が配置されていた城である。
……がゆえに、それを維持する為の魔力は未だ城に残されたままであった。
そして唱える。
「魔力回路……接続……城内残存魔力集結、補充完了……転移魔術準備……! みんなから分け与えられたこの想い、無駄にする訳には……いかないでしょ……!」
「私以外の転移準備は完了です。サナ様、あと……人界王、様。……勝ってくださいね、絶対に……!」
「……ええ、ここまで、手助けありがとう、コック。…………行って……きます」
「行ってらっしゃいませ、そして掴んでください、最高の勝利を……!」
そう告げたコックの、最後に見た表情は、よく澄んだ青空のように清々しい笑顔だった。
********
マスターは以前、おっしゃいました。
「もう誰も傷つかない、優しい世界」を作る、と。
……いえ、正確には口には出していないのですが。
……それでも、他の誰もが馬鹿にしようと、他の誰もがコケにしようと、私だけは信じています。
マスターなら、必ずその願いを叶え、笑顔で帰ってくる、と。
……もう、私の約束はそれでいいのです。
マスター、あなたが帰ってきて、そしてあなたが笑顔になるだけで、私も自然と笑顔になるでしょうから。
「……だからこそ、この戦いは……勝ってください……ね……!」
半壊の城にて、少女のように天使は啜り泣く。
———未だかつてない、最大の戦いの無事を祈って。
感想 203
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
世の中は意外と魔術で何とかなる
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
『嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います』
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。Sランクモンスターが美少女に擬態して迫ってくる! どうするオッサン!?
巻き込まれただけの高校生、冒険者になる
クラスメイトに疎まれ、馬鹿にされ、蔑まれる男子高校生。
少し頭のネジが外れた彼だが、少ない友人や、家族の事だけは大切にしている、至って普通の高校生。
そんな彼がいつも通りの日常を送っていると、唐突に地面に穴が開き迷宮に落とされてしまう。
そこで出会った仲間と共に外を目指すが、数々の困難に出会い苦戦を強いられる事となる。
これは平凡な高校生が色々な悩みを抱えながら異世界を歩き、家族との再会を望む成長の物語。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
『「命の恩人を見つけたから、お前との婚約を破棄する!」――お嬢様を捨てた領主様、その“ミストロンの奇跡”は私ですが?』
「命の恩人を見つけた。だから、お前との婚約を破棄する!」
領主から突然婚約破棄を告げられた令嬢。
彼が新たな婚約者に選んだのは、10年前に魔物の群れから自分を救ったという“ミストロンの奇跡”の女性だった。
だが、その女性は本当に奇跡の英雄なのか。
そして、婚約破棄された令嬢を幼いころから育ててきた地味なメイド・エナメルには、誰も知らない過去があった。
やがて大量の魔物が都市へ襲来したとき、偽物の奇跡と、本当の奇跡の正体が明らかになる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの一作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
婚約破棄されたので泣こうと思ったら、隣の王子が爆笑していました
婚約者に大勢の前で婚約破棄され、涙を流そうとした公爵令嬢リリアーナ。
ところが、その場にいた隣国の第二王子はなぜか大爆笑。
「その婚約者、昨日も別の令嬢に愛を誓ってたよ?」
その一言から、元婚約者の嘘は次々と暴かれ、自滅の連続!
泣くはずだった婚約破棄は、笑いと溺愛にあふれた人生逆転劇の幕開けだった。
恋人より先に、夫婦になった。
少子化対策の一環として創設された、全国唯一の実験校「国立未来共生学園」。
新入生たちは最新AIによって将来、最も幸せな家庭を築ける相手とペアを組み、3年間の模擬夫婦生活を送ることになる。学年トップクラスの優等生・神崎悠真の相手は、全国レベルのスポーツ少女・天海美羽。正反対の二人は衝突を繰り返しながらも、少しずつ互いを理解していく――。
これは、恋より先に「夫婦」を学ぶ二人の青春ラブストーリー。