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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
エグゼキューティブ
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翌朝。起きた、と思ったら、既に家の中であり。
そこには。
「おは、よう」
ニトイもちゃんといて。
「んお、おはよう」
その状況を、全くと言っていいほど飲み込めてない俺がいた。
自身の左腕と、ニトイの服にはべっとりと赤い血が付いているが、自身とニトイ共に目立った外傷はなく。
どこからどう見ても、誰がどう見ても不思議な状況下。
「ニトイ……お前……大丈夫、だったか……?」
「だいじょう……ぶっ……!」
親指を立ててサムズアップ。うーん、ニトイにはイマイチ似合わない。
……だけど。
「……よ、よかった、生きててくれて……それで……!」
なぜ。
なぜ、俺は泣いている……?
どうでもいい、どうでもよかったはすだ、こんな女。
なのに、なぜ?
なんで俺は、安堵してるんだ……?
コイツが、ニトイがいる事に……!
「運命の人、だから」
耳元を覆い尽くす甘美な声。
激しくなる胸の高鳴り。
荒くなる呼吸。
心拍数は上昇し、発情する。
もはや何とも形容しがたい心境の中にて。
その心を埋め尽くしたのは、ニトイと、
「おっはようツバサ! さて、今日も元気に……」
……ディルにこの状況を見られた羞恥心、だった。
「……あー、お取り込み中……悪かったな、ニトイちゃんに関してはちゃんと着替えてから……こいよ?
つーかお前ら、どんなハードSMプレイしてたんだ……? 血まみれになるとか、相当ハードなプレイを———」
「ぉお前は一旦黙れええええっ!!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
んで、ディルとニトイと共に、今日もゴルゴダ機関に出勤(?)するのだが。
とりあえずディルが何も聞かなかったことにした事に安堵しながらも、重い鉄の扉をこじ開ける。
……その先には、普通ありえないはずの異様な状況が広がっていた。
「シスターが……カレンが……いない?!」
「ちょっと待ったディル、カレンさんがいないのって……そんなに驚くべきこと……か?」
「あ、ああ、カレンはここに住み込みで働いてんだ、一応ゴルゴダ機関じゃないカレンの表の顔はシスター、この地下施設の真上にある教会のシスターをやっている……んだが———、
この時間にカレンがここにいなかった事なんて……今まであった事がないはずで……?」
……なるほど、つまり、俺の、せいか。
昨日、俺がニトイを守れなかったから。
ここを訪ねてしまったから、だからカレンさんはここにはいないのか。
昨日のは夢じゃなかった。
情けない俺が引き起こした、現実だ。
どう、すればいいんだ、俺のせいだと、そうディルに伝えるか……?
…………言うしか、ないか。
「なあ、ディル、ちょっと話、聞いてくれないか……?」
「あ、おう、一体何だって……」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「……そう、か、お前の、せい……とは思えないが、明らかにそれが引き金になっているのは確か……だろうな」
「なあ、お前は、ディルは、何も知らないのか?! この、このニトイについて……!」
何だよ、一体何なんだ。
一体何が、俺の周りで起こっているってんだよ……!
「本人に聞くのが一番早いかもな、なあニトイちゃん、昨日は何があったか分かるかい?」
「きのう……ゆーかい、されて、目が覚めたら……おねーさんの、胸の中……で、もっかい目が覚めたら……いえに、いた」
「お姉さん……って、まさか……」
「カレン……やっぱり助けに行ったのか、1人で……!」
「……だけど、じゃあ何でここにいないんだ? 誘拐犯に何かされたのなら、俺とニトイは家に帰り着けてはいないはずだ、一体何が……?」
「…………カレンの捜索は……私たちエグゼキューティブが行う……お前たちは……ロスト討伐を優先」
考え込んでいた俺たちに横から話しかけたのは、3番隊の隊長、イチゴだった。
「のわっ、隊長、おはざます! つーかエグゼキューティブって……随分と珍しい名前が出てきたもんだなぁ」
「おはようございます、イチゴ隊長」
「…………イチゴで呼ばれるの、恥ずかしい、から……やめて」
「すいません」
意外だった、本人はその名前をコンプレックスと見ていたか……?
「……おはざますって何だ?」
「挨拶だ」
ディルから返ってきた答えは、とても上官にするようなそれではなかった。
「ツバサ、おはざます」
「真似しなくていいからな、ニトイ……?」
その後、結局3番隊控え室に来たのだが。
「エグゼキューティブ」やはり俺にはその言葉が引っかかってならなかった。
……それと、まあまあ恐れていた事が起きてしまった。そう、ニトイと3番隊メンバーの鉢合わせなる、最悪のリスクを孕んだことが起きてしまった。
———が。
「か、かわ、いい……女の子、私と同じ! 隊長みたいに、熟れた『女性』じゃなく、あっしと同じ……女の子っすよ!」
……それはそれで隊長に失礼じゃないかと思いながら、何も怪しいところはなさそうでよかった。
というか、隊長はどっちかと言えばほんのり幼なげな感じするだろ?!?!
「あらやだ、女の子だけど……意外とかわいい顔し・て・る・か・も♡」
「……ニトイ……こわい……」
まあ……いっか…………
「……やっちまった……」
「え?! この子、もしかしてツバサさんの連れなんすか? 愛でていいすか?! 愛でて!」
「あーはいはい、お好きにどーぞ……」
反応を見る限り、ニトイがゴルゴダ機関全てから狙われているとは考えにくい。
とあらば。
……おそらく、エグゼキューティブ。
その組織……のような何かに、おそらくニトイは狙われている……のか?
……だとしたら、いや、おかしい。
ならばなぜ、隊長はニトイを見ても何も言わず、まるで興味がなさそうな素振りをとっていた?
……分からない、俺たちを襲い、狙ってきたあの修道服の女は、一体全体誰なんだ……?
「かわいい……かわいい!! ほっぺた、ふにふにでかわいい……!!」
「ういうい……ううう……あええええ」
ニトイの頬を、これでもかとこねくり回すレイラを横目に、俺はディルに一番聞きたかったことを質問する。
「……なあディル。エグゼキューティブって……何なんだ?」
「……あー、ゴルゴダ機関、その最高評議会だな。
あんまし名前も出てきやしないし、人知れず暗躍する秘密組織の中のトップシークレット。まあヤバいところだよ」
「トップシークレットでも名前はバレてんじゃねえか…………神の一柱……とかもいたりするのか?」
「何言ってんだ、ほとんどの構成メンバーが機神らだよ、今じゃ片手で数えられるしか生き残っちゃいないが」
『……任務……そろそろ……開始、です』
放送にて響いたのは、紛れもなくイチゴ隊長の声だった。
時間は……もうこんな時間か。
……って、ニトイはどうするんだ……? ここに置いていく、ってのも……
「……ニトイ、も、つれて……いって……?」
……その上目遣いは、ズルいだろ。
そうだよな、昨日みたいなこともあるんだ、一緒にいるんだし、ロストに飲み込まれることもないだろう。
……終始、レイラの視線が気になるが。
そこには。
「おは、よう」
ニトイもちゃんといて。
「んお、おはよう」
その状況を、全くと言っていいほど飲み込めてない俺がいた。
自身の左腕と、ニトイの服にはべっとりと赤い血が付いているが、自身とニトイ共に目立った外傷はなく。
どこからどう見ても、誰がどう見ても不思議な状況下。
「ニトイ……お前……大丈夫、だったか……?」
「だいじょう……ぶっ……!」
親指を立ててサムズアップ。うーん、ニトイにはイマイチ似合わない。
……だけど。
「……よ、よかった、生きててくれて……それで……!」
なぜ。
なぜ、俺は泣いている……?
どうでもいい、どうでもよかったはすだ、こんな女。
なのに、なぜ?
なんで俺は、安堵してるんだ……?
コイツが、ニトイがいる事に……!
「運命の人、だから」
耳元を覆い尽くす甘美な声。
激しくなる胸の高鳴り。
荒くなる呼吸。
心拍数は上昇し、発情する。
もはや何とも形容しがたい心境の中にて。
その心を埋め尽くしたのは、ニトイと、
「おっはようツバサ! さて、今日も元気に……」
……ディルにこの状況を見られた羞恥心、だった。
「……あー、お取り込み中……悪かったな、ニトイちゃんに関してはちゃんと着替えてから……こいよ?
つーかお前ら、どんなハードSMプレイしてたんだ……? 血まみれになるとか、相当ハードなプレイを———」
「ぉお前は一旦黙れええええっ!!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
んで、ディルとニトイと共に、今日もゴルゴダ機関に出勤(?)するのだが。
とりあえずディルが何も聞かなかったことにした事に安堵しながらも、重い鉄の扉をこじ開ける。
……その先には、普通ありえないはずの異様な状況が広がっていた。
「シスターが……カレンが……いない?!」
「ちょっと待ったディル、カレンさんがいないのって……そんなに驚くべきこと……か?」
「あ、ああ、カレンはここに住み込みで働いてんだ、一応ゴルゴダ機関じゃないカレンの表の顔はシスター、この地下施設の真上にある教会のシスターをやっている……んだが———、
この時間にカレンがここにいなかった事なんて……今まであった事がないはずで……?」
……なるほど、つまり、俺の、せいか。
昨日、俺がニトイを守れなかったから。
ここを訪ねてしまったから、だからカレンさんはここにはいないのか。
昨日のは夢じゃなかった。
情けない俺が引き起こした、現実だ。
どう、すればいいんだ、俺のせいだと、そうディルに伝えるか……?
…………言うしか、ないか。
「なあ、ディル、ちょっと話、聞いてくれないか……?」
「あ、おう、一体何だって……」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「……そう、か、お前の、せい……とは思えないが、明らかにそれが引き金になっているのは確か……だろうな」
「なあ、お前は、ディルは、何も知らないのか?! この、このニトイについて……!」
何だよ、一体何なんだ。
一体何が、俺の周りで起こっているってんだよ……!
「本人に聞くのが一番早いかもな、なあニトイちゃん、昨日は何があったか分かるかい?」
「きのう……ゆーかい、されて、目が覚めたら……おねーさんの、胸の中……で、もっかい目が覚めたら……いえに、いた」
「お姉さん……って、まさか……」
「カレン……やっぱり助けに行ったのか、1人で……!」
「……だけど、じゃあ何でここにいないんだ? 誘拐犯に何かされたのなら、俺とニトイは家に帰り着けてはいないはずだ、一体何が……?」
「…………カレンの捜索は……私たちエグゼキューティブが行う……お前たちは……ロスト討伐を優先」
考え込んでいた俺たちに横から話しかけたのは、3番隊の隊長、イチゴだった。
「のわっ、隊長、おはざます! つーかエグゼキューティブって……随分と珍しい名前が出てきたもんだなぁ」
「おはようございます、イチゴ隊長」
「…………イチゴで呼ばれるの、恥ずかしい、から……やめて」
「すいません」
意外だった、本人はその名前をコンプレックスと見ていたか……?
「……おはざますって何だ?」
「挨拶だ」
ディルから返ってきた答えは、とても上官にするようなそれではなかった。
「ツバサ、おはざます」
「真似しなくていいからな、ニトイ……?」
その後、結局3番隊控え室に来たのだが。
「エグゼキューティブ」やはり俺にはその言葉が引っかかってならなかった。
……それと、まあまあ恐れていた事が起きてしまった。そう、ニトイと3番隊メンバーの鉢合わせなる、最悪のリスクを孕んだことが起きてしまった。
———が。
「か、かわ、いい……女の子、私と同じ! 隊長みたいに、熟れた『女性』じゃなく、あっしと同じ……女の子っすよ!」
……それはそれで隊長に失礼じゃないかと思いながら、何も怪しいところはなさそうでよかった。
というか、隊長はどっちかと言えばほんのり幼なげな感じするだろ?!?!
「あらやだ、女の子だけど……意外とかわいい顔し・て・る・か・も♡」
「……ニトイ……こわい……」
まあ……いっか…………
「……やっちまった……」
「え?! この子、もしかしてツバサさんの連れなんすか? 愛でていいすか?! 愛でて!」
「あーはいはい、お好きにどーぞ……」
反応を見る限り、ニトイがゴルゴダ機関全てから狙われているとは考えにくい。
とあらば。
……おそらく、エグゼキューティブ。
その組織……のような何かに、おそらくニトイは狙われている……のか?
……だとしたら、いや、おかしい。
ならばなぜ、隊長はニトイを見ても何も言わず、まるで興味がなさそうな素振りをとっていた?
……分からない、俺たちを襲い、狙ってきたあの修道服の女は、一体全体誰なんだ……?
「かわいい……かわいい!! ほっぺた、ふにふにでかわいい……!!」
「ういうい……ううう……あええええ」
ニトイの頬を、これでもかとこねくり回すレイラを横目に、俺はディルに一番聞きたかったことを質問する。
「……なあディル。エグゼキューティブって……何なんだ?」
「……あー、ゴルゴダ機関、その最高評議会だな。
あんまし名前も出てきやしないし、人知れず暗躍する秘密組織の中のトップシークレット。まあヤバいところだよ」
「トップシークレットでも名前はバレてんじゃねえか…………神の一柱……とかもいたりするのか?」
「何言ってんだ、ほとんどの構成メンバーが機神らだよ、今じゃ片手で数えられるしか生き残っちゃいないが」
『……任務……そろそろ……開始、です』
放送にて響いたのは、紛れもなくイチゴ隊長の声だった。
時間は……もうこんな時間か。
……って、ニトイはどうするんだ……? ここに置いていく、ってのも……
「……ニトイ、も、つれて……いって……?」
……その上目遣いは、ズルいだろ。
そうだよな、昨日みたいなこともあるんだ、一緒にいるんだし、ロストに飲み込まれることもないだろう。
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