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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
必殺技
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………翌朝。
ようやく意識が目覚めた……と思っていたら、俺は上空にいた。
……何が、どうなっているのやら。
どうやら、何者かの背中におんぶされてる……ようだ、一体となった背中の感触が、ひしひしと伝わってくる。
「アテ……ナ? 一体全体、こりゃどーいう……」
そう、俺をおんぶしていた人影……よく見てみると……いやよく見なくとも、それはアテナであり。
さも当然の如く宙を浮いているアテナに驚愕しつつも、俺はこの状況に対して困惑していた。
……サナは? コックは? イデアは……?
そう、今日はゴルゴダ機関に……乗り込むとは言っていたが、今はどんな状況だ……?
などと考え伏していた時に、ようやくアテナは口を開いてくれた。
「アテナ、と、しろ……は、航空強襲隊……しろが、いつまでも起きなかったせい」
「航空……強襲、隊……?」
あまりにも物騒すぎるネーミングに、少しばかり腹を抱えそうにもなったが。
「そ……そうか、俺が寝てたせいで俺たち2人はこの部隊に所属するハメになったのか……すまん」
「だい……じょうぶ………元々、アテナ、1人だけ……だったから」
そうして、見据えた先———、直下には。
オリュンポスにしては珍しい、古びた建物の廃墟が広がっていた。
「月天使徒殲滅制圧用最終兵器機構、解放。…………狂い咲け、ゼロ・セブン」
…………だの、アテナが呟いた瞬間。
俺たちの眼前を、超高密度の神力の塊、月と同じ色をした———それでいて、太陽を思わせるような熱気を放つソレは、アテナの指示1つで、地上まで墜落した。
息を呑む間も無く。迫り来る轟音と衝撃に、耐えられるような心の準備をする暇もなく。
ただひたすらに、俺はその破壊的な衝撃を、甘んじて受け入れることしかできなかった。
「のおわあああああっ?!」
「…………焼却、完了」
「いやいやいや?! これ焼却じゃなくて滅却だろ、何やってんだお前は?!」
「一番手っ取り早い……方法、だったから」
直下には、溶け出した地面と炎に包まれた地獄が。
「…………これじゃあ攻めるもんもできやしないだろ?!」
「……攻めれるし、中の人、たちも……生きてる」
「お……おおいおいおい、もうやめろ、もうやめろよ? 流石にあんなのポンポン撃たれたら、こっちの身が持たなくなるからな……」
「……もとより、2回目以降は……なかった。……この力は……『お父様』を、止める……ために、使う、から」
神罰の下った地上に、機神とその付き人は舞い降りる。
完全に地上は破壊されており、アルファポイントまで繋がる穴なぞとっくに崩落した…………と思っていた。
が、奇跡的にも…………違うな、必然的にも、その鉄の階段は未だ溶けずに残っていた。
「……な、なあアテナ。俺たちはここから攻めに行って……いいんだよな?」
「構わない……って、サナ、が……言ってた」
……そこの入り口も、今まで俺たちが通っていたアルファポイントへの道同様、妙に薄暗く、鉄の軋む音がよく響く廊下だったが。
今回は、ひとつだけ……そこに違う点があった。
「……は」
その通路の先に立っていたのは。
……例の、学校にて俺たちを一度襲った……赤髪の女であった。
そもそも、俺にはコイツが誰なのか、記憶が戻った今でも見当がつかないのだが。
「そこをどけ……つっても、退きそうには……ないな」
溢れ出る殺意に、身がすくむ。
この女はどうあっても、俺を殺すつもりだと理解した瞬間。
「…………任務にとって邪魔だから……死んで?」
……と、殺害予告。
無邪気に笑うその笑顔が、さらにその悪寒を加速させる。
「アテナ……離れてろよ、コイツは何かやばいぜ……!」
「アテナ様には悪いけど……付き人には、死んでもらう……からっ!!」
瞬間、その最大級の激突が始まった。
先手を打ったのはあちらの女。一瞬にして投げつけられた十数本の爆剣を、全てこの刀でいなすが……
爆風に視界が包まれ、完全に見えなくなった頃。
何かあちらの方で、鈍い……金属音が……する。
それも、何個も組み合わさった歯車の回路が動き始めた時のような、妙に物騒な音が…………!!!!
「……っ……!」
その爆煙の中より出でたのは、灰色のパイルバンカー。
その杭が、俺の心をも串刺しにしようと迫る。
「……ねえ、お願いだから、死んでくれない……? あたしはもう失敗できないの、だから……今すぐ、死んでっ!!」
瞬間、パイルバンカーがまた重低音を上げ変形し始める。
その巨大な中身より現れたのは、あまりにも鋭く、あまりにも鋭利な返しのついた、大鎌だった。
「……なんなんだよ、何なんだ一体、お前は誰だ、俺に何の用があって、ここに来た……!」
「そんな簡単な話も分からないわけ……? お前はここを攻める、あたしはそれを止める、そしてお前を殺す。ただそれだけ……!!」
激憤の大鎌は振り下ろされ、風がそれに擦れる音が真横にて生じる。
「……そもそも、この前の迎撃作戦の時のアレは、お前の機体だったって言うのか……?!」
「その通り……その通りよ、私の人生はあなたのその刀で歪んだの!……だから、だからだからその精算をお前はするべきつってんのよおっ!」
どこまでも深く、飲み込まれそうな暗闇の中で、その大鎌だけは血のように紅く、光り輝いていた。
……まるで、これが神罰だ……とでも言わんばかりに。
「オマエのっ、その刀のせいで……そんなゴミのせいで、あたしはこうなった……だから、だからお願いだから本当に死んで、死んで、死んでっ!!!!」
声の抑揚が掴めない、狂っているのか……コイツ!
瞬間、俺の斜め後ろにその生態魔力反応は現れる。
もう遅い、など分かっていたが、すかさず刀をもって、なんとか大鎌を受け止める、が。
「ねえ、お願い、死んでちょうだい! あたしはお前の……その心臓が欲しいの……!!」
「……死んでも、やるかよっ!!」
そのまま、大鎌と拮抗していた刀を抜きさり、一瞬にして背を屈め、なんとかの回避行動をとろう……とするが、敵がその、1度引き下がった時のチャンスを見逃すはずもなく。
———がしかし、俺もその動きには対応しつつあった。
「…………極ノ項……重複、脚ノ項」
一瞬にして13回も振られたその大鎌の動きを、全て完全に見切り避け続ける。
一瞬で振ろうとされるからこそ、そこに僅かにして迫力のある予備動作が生まれ、それを意識して避けるだけで簡単に避けれる攻撃……だったが、ずっとこのままじゃ、もちろんラチがあかない……!!
身体から熱気が放出される。
たった一瞬の間に消費した魔力の残滓が、水蒸気と化し宙を舞う。
……この後もどうせ連戦なんだろうな、と、脳が一瞬怠けようとした瞬間に、俺の決着までの導火線は点火された。
「…………俺が今から繰り出す技。……それは、『必殺技』だ。……何が言いたいか、分かるか?」
「知らない。知らないけど、お前はあたしが殺すから……!」
「そうか、ならばいかせてもらうぜ。……勝負は、『必殺技』にて、一瞬でカタをつけなければならないからな……っ!!」
右腕に持つ神威が、その刀身を黄金に輝かせる。
確実にこの一撃でカタをつけると、その意味合いを込めた技。
———カタをつけるだけだ、殺しはしない。あくまで重傷を負わせ、戦闘不能に持ち込むまでだ。
そのための『不殺』の刀。
……がしかし、相手の心情なぞ関係ない。相手の境遇なぞ関係ない。
そんなものを、そんな一切を今まで斬り捨て続けてきた俺だからこそ放てる、最大級の一閃。
「決める……!!」
コエを挙げる間も無く。
……俺は言ったはずだ、『必殺技』だと。
確実にその臓腑を貫く、『必殺技』だと。
「……ぁ…………ふ……!」
鈍く煌めく残刀にこびりつく血を振り落とし、その勝負の決着はついた。
俺にはコイツが誰だか分からないし、コイツのことは全くもって知りはしない……が、俺の邪魔をするというのなら、死んでもらうしか道はなかった。
……俺は、先程の一閃で、確実にコイツを戦闘不能にしたとそう、思っていた。
ようやく意識が目覚めた……と思っていたら、俺は上空にいた。
……何が、どうなっているのやら。
どうやら、何者かの背中におんぶされてる……ようだ、一体となった背中の感触が、ひしひしと伝わってくる。
「アテ……ナ? 一体全体、こりゃどーいう……」
そう、俺をおんぶしていた人影……よく見てみると……いやよく見なくとも、それはアテナであり。
さも当然の如く宙を浮いているアテナに驚愕しつつも、俺はこの状況に対して困惑していた。
……サナは? コックは? イデアは……?
そう、今日はゴルゴダ機関に……乗り込むとは言っていたが、今はどんな状況だ……?
などと考え伏していた時に、ようやくアテナは口を開いてくれた。
「アテナ、と、しろ……は、航空強襲隊……しろが、いつまでも起きなかったせい」
「航空……強襲、隊……?」
あまりにも物騒すぎるネーミングに、少しばかり腹を抱えそうにもなったが。
「そ……そうか、俺が寝てたせいで俺たち2人はこの部隊に所属するハメになったのか……すまん」
「だい……じょうぶ………元々、アテナ、1人だけ……だったから」
そうして、見据えた先———、直下には。
オリュンポスにしては珍しい、古びた建物の廃墟が広がっていた。
「月天使徒殲滅制圧用最終兵器機構、解放。…………狂い咲け、ゼロ・セブン」
…………だの、アテナが呟いた瞬間。
俺たちの眼前を、超高密度の神力の塊、月と同じ色をした———それでいて、太陽を思わせるような熱気を放つソレは、アテナの指示1つで、地上まで墜落した。
息を呑む間も無く。迫り来る轟音と衝撃に、耐えられるような心の準備をする暇もなく。
ただひたすらに、俺はその破壊的な衝撃を、甘んじて受け入れることしかできなかった。
「のおわあああああっ?!」
「…………焼却、完了」
「いやいやいや?! これ焼却じゃなくて滅却だろ、何やってんだお前は?!」
「一番手っ取り早い……方法、だったから」
直下には、溶け出した地面と炎に包まれた地獄が。
「…………これじゃあ攻めるもんもできやしないだろ?!」
「……攻めれるし、中の人、たちも……生きてる」
「お……おおいおいおい、もうやめろ、もうやめろよ? 流石にあんなのポンポン撃たれたら、こっちの身が持たなくなるからな……」
「……もとより、2回目以降は……なかった。……この力は……『お父様』を、止める……ために、使う、から」
神罰の下った地上に、機神とその付き人は舞い降りる。
完全に地上は破壊されており、アルファポイントまで繋がる穴なぞとっくに崩落した…………と思っていた。
が、奇跡的にも…………違うな、必然的にも、その鉄の階段は未だ溶けずに残っていた。
「……な、なあアテナ。俺たちはここから攻めに行って……いいんだよな?」
「構わない……って、サナ、が……言ってた」
……そこの入り口も、今まで俺たちが通っていたアルファポイントへの道同様、妙に薄暗く、鉄の軋む音がよく響く廊下だったが。
今回は、ひとつだけ……そこに違う点があった。
「……は」
その通路の先に立っていたのは。
……例の、学校にて俺たちを一度襲った……赤髪の女であった。
そもそも、俺にはコイツが誰なのか、記憶が戻った今でも見当がつかないのだが。
「そこをどけ……つっても、退きそうには……ないな」
溢れ出る殺意に、身がすくむ。
この女はどうあっても、俺を殺すつもりだと理解した瞬間。
「…………任務にとって邪魔だから……死んで?」
……と、殺害予告。
無邪気に笑うその笑顔が、さらにその悪寒を加速させる。
「アテナ……離れてろよ、コイツは何かやばいぜ……!」
「アテナ様には悪いけど……付き人には、死んでもらう……からっ!!」
瞬間、その最大級の激突が始まった。
先手を打ったのはあちらの女。一瞬にして投げつけられた十数本の爆剣を、全てこの刀でいなすが……
爆風に視界が包まれ、完全に見えなくなった頃。
何かあちらの方で、鈍い……金属音が……する。
それも、何個も組み合わさった歯車の回路が動き始めた時のような、妙に物騒な音が…………!!!!
「……っ……!」
その爆煙の中より出でたのは、灰色のパイルバンカー。
その杭が、俺の心をも串刺しにしようと迫る。
「……ねえ、お願いだから、死んでくれない……? あたしはもう失敗できないの、だから……今すぐ、死んでっ!!」
瞬間、パイルバンカーがまた重低音を上げ変形し始める。
その巨大な中身より現れたのは、あまりにも鋭く、あまりにも鋭利な返しのついた、大鎌だった。
「……なんなんだよ、何なんだ一体、お前は誰だ、俺に何の用があって、ここに来た……!」
「そんな簡単な話も分からないわけ……? お前はここを攻める、あたしはそれを止める、そしてお前を殺す。ただそれだけ……!!」
激憤の大鎌は振り下ろされ、風がそれに擦れる音が真横にて生じる。
「……そもそも、この前の迎撃作戦の時のアレは、お前の機体だったって言うのか……?!」
「その通り……その通りよ、私の人生はあなたのその刀で歪んだの!……だから、だからだからその精算をお前はするべきつってんのよおっ!」
どこまでも深く、飲み込まれそうな暗闇の中で、その大鎌だけは血のように紅く、光り輝いていた。
……まるで、これが神罰だ……とでも言わんばかりに。
「オマエのっ、その刀のせいで……そんなゴミのせいで、あたしはこうなった……だから、だからお願いだから本当に死んで、死んで、死んでっ!!!!」
声の抑揚が掴めない、狂っているのか……コイツ!
瞬間、俺の斜め後ろにその生態魔力反応は現れる。
もう遅い、など分かっていたが、すかさず刀をもって、なんとか大鎌を受け止める、が。
「ねえ、お願い、死んでちょうだい! あたしはお前の……その心臓が欲しいの……!!」
「……死んでも、やるかよっ!!」
そのまま、大鎌と拮抗していた刀を抜きさり、一瞬にして背を屈め、なんとかの回避行動をとろう……とするが、敵がその、1度引き下がった時のチャンスを見逃すはずもなく。
———がしかし、俺もその動きには対応しつつあった。
「…………極ノ項……重複、脚ノ項」
一瞬にして13回も振られたその大鎌の動きを、全て完全に見切り避け続ける。
一瞬で振ろうとされるからこそ、そこに僅かにして迫力のある予備動作が生まれ、それを意識して避けるだけで簡単に避けれる攻撃……だったが、ずっとこのままじゃ、もちろんラチがあかない……!!
身体から熱気が放出される。
たった一瞬の間に消費した魔力の残滓が、水蒸気と化し宙を舞う。
……この後もどうせ連戦なんだろうな、と、脳が一瞬怠けようとした瞬間に、俺の決着までの導火線は点火された。
「…………俺が今から繰り出す技。……それは、『必殺技』だ。……何が言いたいか、分かるか?」
「知らない。知らないけど、お前はあたしが殺すから……!」
「そうか、ならばいかせてもらうぜ。……勝負は、『必殺技』にて、一瞬でカタをつけなければならないからな……っ!!」
右腕に持つ神威が、その刀身を黄金に輝かせる。
確実にこの一撃でカタをつけると、その意味合いを込めた技。
———カタをつけるだけだ、殺しはしない。あくまで重傷を負わせ、戦闘不能に持ち込むまでだ。
そのための『不殺』の刀。
……がしかし、相手の心情なぞ関係ない。相手の境遇なぞ関係ない。
そんなものを、そんな一切を今まで斬り捨て続けてきた俺だからこそ放てる、最大級の一閃。
「決める……!!」
コエを挙げる間も無く。
……俺は言ったはずだ、『必殺技』だと。
確実にその臓腑を貫く、『必殺技』だと。
「……ぁ…………ふ……!」
鈍く煌めく残刀にこびりつく血を振り落とし、その勝負の決着はついた。
俺にはコイツが誰だか分からないし、コイツのことは全くもって知りはしない……が、俺の邪魔をするというのなら、死んでもらうしか道はなかった。
……俺は、先程の一閃で、確実にコイツを戦闘不能にしたとそう、思っていた。
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