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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
「ディル・アインガ」
********
弱かった、弱かったさ。
華奢な身体でも、身の丈に似合わないほどのパイルバンカーを振り回す女の子より。
ひたすらオカマっぽくて、(色)男好きで、ハゲで……マッチョな、爆剣オタクのおっさんより。
ただただ冷静に物事に対処する、俺たちの隊長よりもさ。
そうだ、俺は誰よりも弱い。
身体だけじゃない、心だって……俺には誇れるものなどない。
そのくせ逃げ足と言い訳だけは一丁前で、なぜか心に「死にたくない」だとか言う、一見まともな芯を持って、俺は今まで生きてきた。
……じゃあ、その結果はどうなった?
俺が「死にたくない」などとぼやいたせいで、俺が眼前の敵に立ち向かわなかったせいで———。
既に、もう3人も死んでるじゃないか。
俺のせいで。
俺のせいで。
俺の、せいだ。
俺は……いない方がいいんだ。
俺がいただけで———周りの人を傷つけてしまう。
もう殺した。
俺が殺したんだ。
俺が惨めにも足掻いたせいで、俺が殺したんだ。
隊長は———さぞカッコいい死に方でもしたのだろうか。
その隊長に倣って、自らの命を顧みずにレイラとカーオを逃して。
それで、自分はそこらで野垂れ死んで、退場。
俺にできるか?
そんな事、今の俺にできるのか?
多分、無理だ。
俺自身が死にそうになった瞬間———どうせ俺は、また誰かを盾にする。
そうしてまた媚びへつらい、またみっともなくひざまずくのだ。
だから、行かない方がいいんだ。
戦わない方がいいんだ。
誰かと一緒なんて、いない方がいいんだ。
そもそもそれ自体が、俺にとっては罪だったんだ。
「…………無理、なんだ。………………俺は生きてていい人間じゃない、俺は強い人間じゃないんだ。
……隊長みたいに、自分が他人を傷つけてしまう事を恐れていても、それでもと手を取り合えるような人間になんて……きっと俺は、なれはしないんだ」
「…………じゃあ、逃げるんすか……せっかく隊長が作ってくれたチャンスを、傷付くかもって思ってても、それでも手を取るチャンスなんて……たった今、目の前にあるじゃないっすか……!!!!」
「…………もう、行ってくれ。………………無理なんだ、俺には」
「ならば、第3番隊は……今日で解散……っすよね」
「……」
「それでも……いいの……!」
「……………………………………ああ」
********
その会話が終わる事は、即ち彼らの全てが途切れる事を意味していたのだろう。
……この俺には関係のない話だった、ゴルゴダ機関の仲間内の話なのだから。
だからこそ、目の前にて少女がどれだけ憤慨していようと、かつての弟のように苦悩する少年がいようと、結局は彼らの問題なのだから、俺は絶対に———口を出すべきではなかったのだ。
この少年———ディルがついてこないと言うのなら、俺はそれでも構わない。
ただ……もし俺が、何か声をかけるとするならば。
********
「………………ディル、と言ったか」
静寂を突き破ったその声は、イデアのものだった。
「…………」
「貴様がどう生きようと、どう戦おうと貴様の勝手だ。…………だが」
「……後悔は、しないように生きろよ、少年」
「部外者さん……」
「……女、俺の名前は部外者じゃない。イデアだ。
イデア・セイバー、それが俺の名前だ」
「そっちだって女って言ったじゃないっすか……わたしの名前はレイラっすよ……」
『後悔をしないように生きろ』
自身が俯きながらも見送ったその背中に、その言葉が残響する。
後悔は……してないだろう。
……していない、はずだ。
これが正しい判断なのだから、そこに後悔する要素など何一つ……あるわけないんだ。
そんな…………後悔、なんて———。
「……ディル?……ディル、なのか……?」
聞き覚えのある声が、横にて歓喜に打ち震える。
……そこにいたのは、もう既に———いなくなってしまったと、そう勝手に思い込んでしまっていた……人だった。
刀を携え、和風の着物を見に纏った———白髪の少年。
「ツバサ、お前……生きていたのか……」
「それはこっちのセリフだ。……で、お前どうした?……カーオは? レイラと隊長は……どこ行った……?」
「レイラとカーオは一緒にいたさ……でも、でもイチゴ隊長は…………」
「…………おい、まさか……な、なあ、流石に嘘だろ?……それとも……俺の勘違い……だったりするかな、流石に隊長が死ぬなんて…………」
「そう、隊長は………………殺された」
自らの考察の答えを半笑いで述べるツバサを突き刺すように、その事実が襲いかかる。
「な……なん、で、どうしてそんな……」
「…………俺にも、分からない、けど…………レイラがそう、口にした」
「ちくしょう、一体全体、何がどうなってる?!……何が起きた、何で第3は、まとまって行動していないんだよ!!」
「人界軍、トランスフィールド諸国軍……そいつらと、ゴルゴダ機関のヤツらがやり合ってる……地上は地獄だ、東の空を見てみろ、見渡す限り———地の果てまで瓦礫だらけ、火の海と化した地獄だよ」
「レイラとカーオは……どこ行った」
「戦いに行ったさ、『エターナル』を阻止するために」
「何言ってんだ、ゴルゴダ機関はエターナルを完遂するためにある組織なんだろ?!」
「…………!……そう、だが、俺たち第3は……阻止の為に戦ってきた。……だからこそ、今がその最高のタイミングなんだ、だからアイツらは……謎の男と共に行っちまった」
「なら、お前が……ここにいる理由はなんだ。なんでお前は……ディルは、………………戦わないのか?」
「………………俺は、俺は逃げたんだ。死にたくないから、殺されるのが嫌だから。……もうレイラにもそれは言ったさ、そしたら……第3は今日で解散、だと……」
「そっ、か…………そうか、死にたく、ないからか…………」
「…………それに、俺がいたら……また誰かを盾にしちまう。…………クラッシャーだとかいう男と会った際———お前らが連れ去られた後、俺は———お前ら2人を、売ったんだ!」
「売った……?」
「ああ、そうさ、『お前らはどうなってもいいから俺だけは生かしてください』って、媚び諂いながら、土下座までして、必死に許しを乞いながら!」
「……」
「そんな……そんな俺に、戦う価値なんてあるか?!……あるわけ、ないだろう、どうせまた…………他人を足蹴にして、他人を盾にするだけなんだ、その役割がレイラやカーオに変わるだけなんだよ、だから……!」
「…………見損なったぜ、ディル」
弱かった、弱かったさ。
華奢な身体でも、身の丈に似合わないほどのパイルバンカーを振り回す女の子より。
ひたすらオカマっぽくて、(色)男好きで、ハゲで……マッチョな、爆剣オタクのおっさんより。
ただただ冷静に物事に対処する、俺たちの隊長よりもさ。
そうだ、俺は誰よりも弱い。
身体だけじゃない、心だって……俺には誇れるものなどない。
そのくせ逃げ足と言い訳だけは一丁前で、なぜか心に「死にたくない」だとか言う、一見まともな芯を持って、俺は今まで生きてきた。
……じゃあ、その結果はどうなった?
俺が「死にたくない」などとぼやいたせいで、俺が眼前の敵に立ち向かわなかったせいで———。
既に、もう3人も死んでるじゃないか。
俺のせいで。
俺のせいで。
俺の、せいだ。
俺は……いない方がいいんだ。
俺がいただけで———周りの人を傷つけてしまう。
もう殺した。
俺が殺したんだ。
俺が惨めにも足掻いたせいで、俺が殺したんだ。
隊長は———さぞカッコいい死に方でもしたのだろうか。
その隊長に倣って、自らの命を顧みずにレイラとカーオを逃して。
それで、自分はそこらで野垂れ死んで、退場。
俺にできるか?
そんな事、今の俺にできるのか?
多分、無理だ。
俺自身が死にそうになった瞬間———どうせ俺は、また誰かを盾にする。
そうしてまた媚びへつらい、またみっともなくひざまずくのだ。
だから、行かない方がいいんだ。
戦わない方がいいんだ。
誰かと一緒なんて、いない方がいいんだ。
そもそもそれ自体が、俺にとっては罪だったんだ。
「…………無理、なんだ。………………俺は生きてていい人間じゃない、俺は強い人間じゃないんだ。
……隊長みたいに、自分が他人を傷つけてしまう事を恐れていても、それでもと手を取り合えるような人間になんて……きっと俺は、なれはしないんだ」
「…………じゃあ、逃げるんすか……せっかく隊長が作ってくれたチャンスを、傷付くかもって思ってても、それでも手を取るチャンスなんて……たった今、目の前にあるじゃないっすか……!!!!」
「…………もう、行ってくれ。………………無理なんだ、俺には」
「ならば、第3番隊は……今日で解散……っすよね」
「……」
「それでも……いいの……!」
「……………………………………ああ」
********
その会話が終わる事は、即ち彼らの全てが途切れる事を意味していたのだろう。
……この俺には関係のない話だった、ゴルゴダ機関の仲間内の話なのだから。
だからこそ、目の前にて少女がどれだけ憤慨していようと、かつての弟のように苦悩する少年がいようと、結局は彼らの問題なのだから、俺は絶対に———口を出すべきではなかったのだ。
この少年———ディルがついてこないと言うのなら、俺はそれでも構わない。
ただ……もし俺が、何か声をかけるとするならば。
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「………………ディル、と言ったか」
静寂を突き破ったその声は、イデアのものだった。
「…………」
「貴様がどう生きようと、どう戦おうと貴様の勝手だ。…………だが」
「……後悔は、しないように生きろよ、少年」
「部外者さん……」
「……女、俺の名前は部外者じゃない。イデアだ。
イデア・セイバー、それが俺の名前だ」
「そっちだって女って言ったじゃないっすか……わたしの名前はレイラっすよ……」
『後悔をしないように生きろ』
自身が俯きながらも見送ったその背中に、その言葉が残響する。
後悔は……してないだろう。
……していない、はずだ。
これが正しい判断なのだから、そこに後悔する要素など何一つ……あるわけないんだ。
そんな…………後悔、なんて———。
「……ディル?……ディル、なのか……?」
聞き覚えのある声が、横にて歓喜に打ち震える。
……そこにいたのは、もう既に———いなくなってしまったと、そう勝手に思い込んでしまっていた……人だった。
刀を携え、和風の着物を見に纏った———白髪の少年。
「ツバサ、お前……生きていたのか……」
「それはこっちのセリフだ。……で、お前どうした?……カーオは? レイラと隊長は……どこ行った……?」
「レイラとカーオは一緒にいたさ……でも、でもイチゴ隊長は…………」
「…………おい、まさか……な、なあ、流石に嘘だろ?……それとも……俺の勘違い……だったりするかな、流石に隊長が死ぬなんて…………」
「そう、隊長は………………殺された」
自らの考察の答えを半笑いで述べるツバサを突き刺すように、その事実が襲いかかる。
「な……なん、で、どうしてそんな……」
「…………俺にも、分からない、けど…………レイラがそう、口にした」
「ちくしょう、一体全体、何がどうなってる?!……何が起きた、何で第3は、まとまって行動していないんだよ!!」
「人界軍、トランスフィールド諸国軍……そいつらと、ゴルゴダ機関のヤツらがやり合ってる……地上は地獄だ、東の空を見てみろ、見渡す限り———地の果てまで瓦礫だらけ、火の海と化した地獄だよ」
「レイラとカーオは……どこ行った」
「戦いに行ったさ、『エターナル』を阻止するために」
「何言ってんだ、ゴルゴダ機関はエターナルを完遂するためにある組織なんだろ?!」
「…………!……そう、だが、俺たち第3は……阻止の為に戦ってきた。……だからこそ、今がその最高のタイミングなんだ、だからアイツらは……謎の男と共に行っちまった」
「なら、お前が……ここにいる理由はなんだ。なんでお前は……ディルは、………………戦わないのか?」
「………………俺は、俺は逃げたんだ。死にたくないから、殺されるのが嫌だから。……もうレイラにもそれは言ったさ、そしたら……第3は今日で解散、だと……」
「そっ、か…………そうか、死にたく、ないからか…………」
「…………それに、俺がいたら……また誰かを盾にしちまう。…………クラッシャーだとかいう男と会った際———お前らが連れ去られた後、俺は———お前ら2人を、売ったんだ!」
「売った……?」
「ああ、そうさ、『お前らはどうなってもいいから俺だけは生かしてください』って、媚び諂いながら、土下座までして、必死に許しを乞いながら!」
「……」
「そんな……そんな俺に、戦う価値なんてあるか?!……あるわけ、ないだろう、どうせまた…………他人を足蹴にして、他人を盾にするだけなんだ、その役割がレイラやカーオに変わるだけなんだよ、だから……!」
「…………見損なったぜ、ディル」
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