文字の大きさ
大
中
小
169 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-セン: 迷いと焦燥
「———ふっ」
気が付いたら、気が動転していた。
文字通りだ、そのまま腹から崩れ落ちる。
「我が身体は———神技が何一つ使えぬ。……ゴルゴダ機関の隊長だと言うのに、だ。……それでもなおと、強さを追求した結果の道だとも」
……何を言っているのかが聞こえない、分からない。
興奮状態も切れてきた、思考は冷静に巻き戻り、薄れゆく景色を見つめなお意識を強く保つ。
「最後は我が手にて逝かせてやる、その方が幸いであろう」
ようやくはっきりと聞こえた。
「……っ、誰がお前の手なんぞに……ぎっ……ああああああああっ!!!!」
既に空気に晒された腹部の肌に、1本の爆剣が突き刺される。
そうだ、確実に入っている、確実に僕の腹の中にて、腸と共に爆剣が脈動しているのだ。
冷たい———わけないだろう、だがしかし痛みよりも呆然とした感情の方が前に押し出されてしまった。
ここまで身近に迫ったことはなかったのだ、ただそれはあまりにも唐突すぎた。
今から自分は確実に『死ぬんだ』という最悪の恐怖が、まるで夢から覚めた時のように突き出された時、人は心の底から『呆然』とするのだと、たった今僕は理解した。
いいや、再確認だ。
「…………ん」
「声も出ない、か。まあよい。……首を差し出すことは諦めるが———貴様はよくぞここまで健闘した。……そればかりは称賛に値するゆえ、苦しませず楽に殺してやろう」
苦しませず楽に、か。
よくもまあ、お前ら全員揃ってそんな嘘が言えたもんだ。
「……ふ……ざ、けるな、よ……ここに来るまで……ここまで来るまでに、一体何人が……死んだと思っているんだ……!」
「知らん。無辜にして愚かなる者どもが勝手に死に行っただけだ———」
「……言わせない、それだけは……ぶっ、言わせない、あの地獄のような戦いを、無意味だと断定することは、決して……決して……!」
「ならば早く終わらせておけばよかったものを、貴様はそこを見誤った。だからこそ全てが無意味に落ちてゆく」
「ふざけるな、僕は認めない、こんなところで死ぬだなんて……認めるわけがないだろ……!」
「そうか。…………それが遺言なら、手早く終わらせて———?」
同時———ほぼ同時に2連続で響いた銃声は———。
的確に、そして確実にレインの両手首を貫いた。
すぐさまに爆剣を引き抜き、そのレインの身体に突き刺し後退する。
救われた、誰だか分からない———おそらくイデアさんだろうが、またも救われてしまった。
まただよ、また、また助けてもらったんだ。
もう、僕は1人でやらなきゃいけないってのに、何でここまできて助けをもらってるんだよ……!
「くだらん」
後ろから声がする。
もうそんな声に、頼るわけにはいかないってのに。
「……そうだ…………僕は、僕は……誓ったのに、護るべきものが、あるはずなのに……っ!」
嫌な情景が蘇る。
「あ……ああ……僕、僕、は……」
眼前にて転がり落ちた、██████の首。……いや、朧げだったから———そのイメージが伝わってしまった、とでも言えばいいのだろうか。
ソレはすなわち、その機体が撃墜されたことを指していた。
……だからこそ分かった、死。
アイツは死んだと分かった瞬間の、圧迫。
「う……あ、僕は……また……調子に、乗って……!」
真珠海作戦。
もはや思い出しただけで嗚咽の響く、最悪の戦いが思い起こされる。
「はぁ、はぁ、は……あ」
紅で埋め尽くされるディスプレイ。
初めて『死』が身近に迫った瞬間。
思い出してしまった。
「あ……うっ、ああああああああああっ!……あああっ、ああうぅ……ああああっ!!!!」
もう嫌だ。
なんで、なんで僕はこうもすぐに調子に乗るんだ。
そのせいだろ。
██が死んだのは、そのせいだろ……!
僕が、僕が天狗になったからだ、だから██は死んだ、僕のせいで死んだんだ!
調子に乗って、油断したから……そんなのはダメだって言われたはずだってのに、僕は———!
「……本当にくだらない」
また、背から声が聞こえる。
「顔を上げろ」
「……」
「上げろ」
「……」
「顔を上げろと言っているんだ、聞こえなかったのか」
頭の髪を激しく掴まれ、そのまま持ち上げられる。
脳天には刺すような痛みが未だに続いたまま。
「何を迷っている、貴様は今、何で迷っている!」
「……僕、は……僕は、また調子に乗った、だから、だからあの時みたいに……なるのが、怖くて……!」
「真珠海作戦のこと、か。……まだ、引きずっているのか」
「ぅ……!」
「こっちを向け、何をぐだぐだやっているんだ、貴様は!」
気が付いたら、気が動転していた。
文字通りだ、そのまま腹から崩れ落ちる。
「我が身体は———神技が何一つ使えぬ。……ゴルゴダ機関の隊長だと言うのに、だ。……それでもなおと、強さを追求した結果の道だとも」
……何を言っているのかが聞こえない、分からない。
興奮状態も切れてきた、思考は冷静に巻き戻り、薄れゆく景色を見つめなお意識を強く保つ。
「最後は我が手にて逝かせてやる、その方が幸いであろう」
ようやくはっきりと聞こえた。
「……っ、誰がお前の手なんぞに……ぎっ……ああああああああっ!!!!」
既に空気に晒された腹部の肌に、1本の爆剣が突き刺される。
そうだ、確実に入っている、確実に僕の腹の中にて、腸と共に爆剣が脈動しているのだ。
冷たい———わけないだろう、だがしかし痛みよりも呆然とした感情の方が前に押し出されてしまった。
ここまで身近に迫ったことはなかったのだ、ただそれはあまりにも唐突すぎた。
今から自分は確実に『死ぬんだ』という最悪の恐怖が、まるで夢から覚めた時のように突き出された時、人は心の底から『呆然』とするのだと、たった今僕は理解した。
いいや、再確認だ。
「…………ん」
「声も出ない、か。まあよい。……首を差し出すことは諦めるが———貴様はよくぞここまで健闘した。……そればかりは称賛に値するゆえ、苦しませず楽に殺してやろう」
苦しませず楽に、か。
よくもまあ、お前ら全員揃ってそんな嘘が言えたもんだ。
「……ふ……ざ、けるな、よ……ここに来るまで……ここまで来るまでに、一体何人が……死んだと思っているんだ……!」
「知らん。無辜にして愚かなる者どもが勝手に死に行っただけだ———」
「……言わせない、それだけは……ぶっ、言わせない、あの地獄のような戦いを、無意味だと断定することは、決して……決して……!」
「ならば早く終わらせておけばよかったものを、貴様はそこを見誤った。だからこそ全てが無意味に落ちてゆく」
「ふざけるな、僕は認めない、こんなところで死ぬだなんて……認めるわけがないだろ……!」
「そうか。…………それが遺言なら、手早く終わらせて———?」
同時———ほぼ同時に2連続で響いた銃声は———。
的確に、そして確実にレインの両手首を貫いた。
すぐさまに爆剣を引き抜き、そのレインの身体に突き刺し後退する。
救われた、誰だか分からない———おそらくイデアさんだろうが、またも救われてしまった。
まただよ、また、また助けてもらったんだ。
もう、僕は1人でやらなきゃいけないってのに、何でここまできて助けをもらってるんだよ……!
「くだらん」
後ろから声がする。
もうそんな声に、頼るわけにはいかないってのに。
「……そうだ…………僕は、僕は……誓ったのに、護るべきものが、あるはずなのに……っ!」
嫌な情景が蘇る。
「あ……ああ……僕、僕、は……」
眼前にて転がり落ちた、██████の首。……いや、朧げだったから———そのイメージが伝わってしまった、とでも言えばいいのだろうか。
ソレはすなわち、その機体が撃墜されたことを指していた。
……だからこそ分かった、死。
アイツは死んだと分かった瞬間の、圧迫。
「う……あ、僕は……また……調子に、乗って……!」
真珠海作戦。
もはや思い出しただけで嗚咽の響く、最悪の戦いが思い起こされる。
「はぁ、はぁ、は……あ」
紅で埋め尽くされるディスプレイ。
初めて『死』が身近に迫った瞬間。
思い出してしまった。
「あ……うっ、ああああああああああっ!……あああっ、ああうぅ……ああああっ!!!!」
もう嫌だ。
なんで、なんで僕はこうもすぐに調子に乗るんだ。
そのせいだろ。
██が死んだのは、そのせいだろ……!
僕が、僕が天狗になったからだ、だから██は死んだ、僕のせいで死んだんだ!
調子に乗って、油断したから……そんなのはダメだって言われたはずだってのに、僕は———!
「……本当にくだらない」
また、背から声が聞こえる。
「顔を上げろ」
「……」
「上げろ」
「……」
「顔を上げろと言っているんだ、聞こえなかったのか」
頭の髪を激しく掴まれ、そのまま持ち上げられる。
脳天には刺すような痛みが未だに続いたまま。
「何を迷っている、貴様は今、何で迷っている!」
「……僕、は……僕は、また調子に乗った、だから、だからあの時みたいに……なるのが、怖くて……!」
「真珠海作戦のこと、か。……まだ、引きずっているのか」
「ぅ……!」
「こっちを向け、何をぐだぐだやっているんだ、貴様は!」
感想 203
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第五章リード王国編
世の中は意外と魔術で何とかなる
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
『嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います』
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。Sランクモンスターが美少女に擬態して迫ってくる! どうするオッサン!?
『「命の恩人を見つけたから、お前との婚約を破棄する!」――お嬢様を捨てた領主様、その“ミストロンの奇跡”は私ですが?』
「命の恩人を見つけた。だから、お前との婚約を破棄する!」
領主から突然婚約破棄を告げられた令嬢。
彼が新たな婚約者に選んだのは、10年前に魔物の群れから自分を救ったという“ミストロンの奇跡”の女性だった。
だが、その女性は本当に奇跡の英雄なのか。
そして、婚約破棄された令嬢を幼いころから育ててきた地味なメイド・エナメルには、誰も知らない過去があった。
やがて大量の魔物が都市へ襲来したとき、偽物の奇跡と、本当の奇跡の正体が明らかになる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの一作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
婚約破棄されたので泣こうと思ったら、隣の王子が爆笑していました
婚約者に大勢の前で婚約破棄され、涙を流そうとした公爵令嬢リリアーナ。
ところが、その場にいた隣国の第二王子はなぜか大爆笑。
「その婚約者、昨日も別の令嬢に愛を誓ってたよ?」
その一言から、元婚約者の嘘は次々と暴かれ、自滅の連続!
泣くはずだった婚約破棄は、笑いと溺愛にあふれた人生逆転劇の幕開けだった。
恋人より先に、夫婦になった。
少子化対策の一環として創設された、全国唯一の実験校「国立未来共生学園」。
新入生たちは最新AIによって将来、最も幸せな家庭を築ける相手とペアを組み、3年間の模擬夫婦生活を送ることになる。学年トップクラスの優等生・神崎悠真の相手は、全国レベルのスポーツ少女・天海美羽。正反対の二人は衝突を繰り返しながらも、少しずつ互いを理解していく――。
これは、恋より先に「夫婦」を学ぶ二人の青春ラブストーリー。
巻き込まれただけの高校生、冒険者になる
クラスメイトに疎まれ、馬鹿にされ、蔑まれる男子高校生。
少し頭のネジが外れた彼だが、少ない友人や、家族の事だけは大切にしている、至って普通の高校生。
そんな彼がいつも通りの日常を送っていると、唐突に地面に穴が開き迷宮に落とされてしまう。
そこで出会った仲間と共に外を目指すが、数々の困難に出会い苦戦を強いられる事となる。
これは平凡な高校生が色々な悩みを抱えながら異世界を歩き、家族との再会を望む成長の物語。