Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

戦線復帰……?

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 遡る事約1時間前。

 未だ歩き続けていた、白とカーオ、アテナの3人はと言うと。

◆◇◆◇◆◇◆◇
********

 

「……で、こっちで合ってんのか?……歩き始めて何時間だ……?」

「残念ね白ちゃん、まだ15分しか歩いてないのよ」

「あぁっ?!……嘘だろ、たった15分でこんだけ疲れるなんて……」

 そうだ、俺自身数時間歩いたと思えるぐらい疲弊している、足も腕も、どこかしこ全てパンパンだ。
 それに、数時間歩いたって思えるぐらいの証拠はもう1つあった。


「……いや、だって……空……見てみろよ、もう夕方だぜ……?」




 青空のみが広がっているのではないかと、ふと見上げたその空は、既に日が落ちる寸前だったのだから。

 既に落ちゆく暁、それに比例して伸びてゆくオリュンポス外壁の影が、少しの瓦礫以外消し炭と化した荒野へと落ちゆく。
 その影と瓦礫を踏み分けて歩く白たち3人。

 ……が、それに近づく、不穏な人影。





「あわわわわわぁっ!……ぶつかる、ぶつかります、避けてっ!」
「会いに来たぜぇ、人斬りっ!」


 ……は?

 俺の眼前を覆い尽くしたのは、2つの人影だった。
 それも、1つはとても巨大で、もう1つは———それのにくっついてきたようなものだが。


「んうっ!」

 すぐさま神威を振り上げ、もう1つの人影に当たらないように、その振り下ろされた巨腕を食い止める。


「よぉ、昨日ぶりだなぁ……白さんよぉ」
「貴ぃ様かっ、クラッシャー!…………で、横の……何?」

「あうううう……」







 ……で。

「なあ、。なんでお前———?」

 そう、その『もう1つの人影』はコックだった。
 ……いやいや、これまた何がどうなっている?



「はうううう……まさか、まさかまさか、この機巧天使コックver.2ともあろうものが、こんな下等生物に、あっさりと……捕らえられてしまうとは!

 我が生涯において1番……いや3番目か4番目を争うぐらいの屈辱……許すまじ!」



「……まあ、コックはおいといて……クラッシャー、お前は今まで何をしていた?……てっきり俺はお前がセンと同行しているものかと———」

「俺が何をしていた、かあ?……テメェらが取り逃した、『機神アフロディーテ』の討伐作業に決まってんだろ。……コイツもそれ関連だ」


 心底ダルそうに、クラッシャーが左手で指した指の先には、未だに文句を垂れているコック……ver.2が。いや、冷静に考えたらver.2って何だよ。

「……とりあえず、機神討伐に関しては……ありがとう。そこに関して何か言っても仕方ないしな、いくらお前が気に入らない奴とは言えど、だ」

「利害の一致があっただけさぁ。近いうち、テメェもそれを痛感させられるだろうからなあ……!」

 ……意味深だな、でも今はそれを気にしている場合じゃない。

「———で、お前らはどこに行く予定だったんだよ?」

「どこか、だってえ?……βポイント、それが俺たちが行くべき場所なんだよ……」

 クラッシャーが言ったその場所———おそらく、そこが……!



「って事は、お前ら———どこでみんなが戦ってるのか知ってるのか?!」

「ええ、ええ、そうですとも! このコックver.2には、魔力探知で人物位置座標特定なぞ昼飯前なのですから!」

 朝飯前ってわけでもないのね。

「……よし、ならばβポイントに出発だ!……いいよな、みんな?」

 完全に沈黙を貫いていたカーオとアテナの方に振り向いてそう告げる。

「返事がない……って事はいいってことだよな?」
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