人間寸劇

宮浦透

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8.世界の端で

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 大戦争が起こった。
 ミサイルが飛んで行く。
 飛んで行く。どこまでも、いろんな命が、過ぎ去って逝く。
 そのうちの一つのミサイルが、僕らの街に向かっていった。
 「うそだろ…」
 戦争が起こって出稼ぎから帰っている僕はそのミサイルを頭上に見据えた。
 手に持ったラジオからは僕らの街への警報が流れた。
 テレキャスターは泣きながら他の街や村への被害状況を報告した。明日は黒い雨が降るらしい。
 二回の世界大戦を終えた人類は暫くの間戦争は起きないと踏んでいた。しかし平和はそんな長くは続かなかった。核を使い、魔法とも言える科学を使い、夜とは思い難いほど明るい平原の上を数多の飛行機が飛び立ち撃ち落とされ撃ち落とし、戦争というものを思い知らせる。
 星が浮かぶ明るい空はこれから世界が滅んで行くことを予言するようだった。
 今回の空撃で何万人死ぬだろう。もう我々の国の兵団は数えるほどしか残っていないと思う。
 あの街にはあの人がいるのに。
 どうか、どうか。あの街からミサイルが逸れることだけを祈った。
 まだ最期の愛してる。も伝えられてない。あの人は結核でベッドから動けない。誰かが一緒に避難させてあげられるほど、もう誰にも余裕なんてなかった。
 海辺、電線の向こうに、街が見える。この一瞬の間でさえ、ミサイルは前へ前へ進み続けている。焦りはだんだんと諦めに移り変わりそうだった。
 「あれは月…?!」
 月ですらも顔を出す。
 この夜を無理やり昼のような状況にしているのは恐らく空軍の新技術だ。
 一度ミサイルのようなものを空に飛ばせば瞬く間に昼のようになり、飛んでいる敵国の飛行機の場所は一瞬にしてわかる。そしてあまりの光の強さに敵軍は一時的に飛行能力は低下する。その隙を狙って撃ち落とそうとしているのだ。
 しかしこれには欠点もある。そもそも十分程度しか明るくならないこと。そして飛行能力が低下するのは敵軍だけはではない。そのため敵軍の場所を指定して打ち出すようなミサイルを自軍が狙い撃ちをすることは困難になる。また対象となるであろう村に防衛システムを置くことは金銭的にナンセンスだ。
 よって敵軍が明るくなったことに慣れ、ミサイルが発射される前にケリをつけるのが最適解となる。
 ミサイルはもう追いつけないほど向こうに見える。
 「もう…無理か…?!」
 ミサイルは村を手前に急上昇を始めた。一瞬救われたような気もしたが、そうじゃない。垂直落下することによって均等に攻撃するプログラムだ。
 あっという間に街は火に包まれた。キノコ雲が大きく打ち上がりもう希望が一切ないことを知らせてくる。
 まだ、愛してる。も伝えられていない。
 まだ、何も伝えられていない。
 おかしくなった虹色の空を眺める。
 もう、ここには何もない。
 何故人類は同じ過ちを繰り返すのだ。



 これは、世界が海に沈む数百年前の話。
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